鳥甲山−2/2


(赤クラの稜線と絶壁)

 途中で獣の匂いがしたので立ち止まった。背後で唸るような声か音を聞いたような気がした。熊が出たかと思って鈴を振り鳴らしたが、獣が動く気配がなかったのでホッとした。
(実は山から帰って5月に登った人のHPを見ると、白クラ付近に熊の糞があり、山頂まで足跡が着いていたと書かれていた)。やはり鳥甲山には熊がいるのだ。(熊が近くにいると獣の匂いがするそうだ)

 今度こそ白クラだろうと思って登り詰めると、さらに同じようなピークがあってガッカリした。そのピークの手前にあった小さなピークを登ると、そこに「白クラ三峰1705m」と書いてあった。そこで小休止。
 空には青空が広がり紅葉もすばらしい。山はこうでなくてはいけない。やはり山の中腹が色づく中旬に来て正解だった。
 ここで一服していると、やっと後ろから鈴の音が聞こえて来た。

 紅葉した斜面を登りきると、今度はササになった。しばらく登ると斜面が緩やかになり、やっと白クラへ着いた。8時20分着。そこには「白クラノ頭、1944m。山頂まで2.6Km」と書かれていた。

 周りはササに覆われて展望は利かないが、ここで一服しながら地図を見てコースタイムを勘違いしていたことに気づく。ここまで3時間30分のところを3時間で来た。私にしては上出来だった。

 しばらく休んでいると、鈴を鳴らしながらご夫婦が登って来て追い越して行った。駐車場で会った人だった。駐車場で見たのは旦那さんだけだったが、奥さんも車の中にいたようだ。

 ここから山頂までは1時間50分である。さあ、頑張ろう。気合を入れて歩き出す。8時35分発。
 すぐに左正面に一際高いピークが見えた。それが山頂だった。

 白クラから一旦下りとなるが、すごいドロンコ道だった。そこを下ると痩せた稜線へ出た。9時5分。先程会ったご夫婦がヤセ尾根を通り過ぎるところだった。

 最初にカミソリ刃(たぶん)といいわれる所があった。道幅は30、40センチしかなく両側が切れ落ちている。ここを登った人のHPにはかなりオーバーに書いてあるが、西穂高のウマノセに比べれば子供だましのようなものだ! 高度感がないので安心して歩ける。

 それにクサリもついているので心配することはない。キレットのようなヤセ尾根も、道はほとんど左側の森林地帯に付けられている。


(ヤセ尾根−1、左が山頂)

(ヤセ尾根−2)

(こんな所もあった)

 巻き道の急な登りを木の根っこにつかまって登ろうとした時、背後に黒い人影が現れてビックリした。黒いTシャツを来た熊のような風貌のニイチャンだった。こういう時は挨拶をするとか、何かあるだろう! ニイチャン、脅かすのはカンベンしてくれよ!

 分岐の手前の開けたところで一服していると、眼下に家並みが見えた。和山温泉だろうと思った。
 そこから分岐まで一気の登りだった。分岐へ10時2分着。ここでご夫婦とすれ違った。ご夫婦はもう下って来た。山頂は展望が利かないというから途中の見晴らしのいい所でお昼にするのだろう。

 分岐からすぐに山頂へ着いた(10時10分着)。熊のニイチャンが一人休んでいた。
 すぐ後から私と同年代の単独行が登って来た。この人は千葉県の柏を今朝2時に出て、登山口を7時に登り出したという。ここまで3時間10分で登って来たというから、すごい健脚だ。
 ここで弁当を広げる。熊のニイチャンは飯も食わずに下って行った。

 下りは斜面が急なので下りにくかった。岩場あり、ドロンコ道あり、昨日の雨で濡れた道は滑りそうでスピードが上がらない。時々、立ち止まっては紅葉を眺めながら下った。

 水場の分岐から右へ曲がって水場へ寄った。親指ほどのパイプから流れ出る水がうまかった。

 帰りに和山温泉へ寄ってみた。ここから見上げる鳥甲山が絵になるというが、あいにくガスが出てしまい上部は見えなかった。和山温泉は何にもない所だった。仁成館までは行かなかったが、民宿が数軒あるだけで何とも寂しい限りだった。
 関東地方は今日も雨だったらしい。

【紅葉のおまけ】