ヒカゲツツジとイワウチワ紀行
坪 山 (つぼやま)

(1,103m、山梨県)


雨の中でひっそりと咲くヒカゲツツジ


2012年4月20日(金)
西コ−ス〜坪山〜東コ−ス

自宅500−540相模湖IC入口前−上野原−(R33−R18)−620西原・坪山登山口640〜御岳神社〜646東西コース分岐〜831坪山907〜946東西コース分岐〜951登山口(トイレがある方の橋)

 昨年の暮れに山仲間から、上野原の坪山にヒカゲツツジが咲くと聞いて驚いた。私は九州の市房山と尾鈴山でヒカゲツツジを見たことがあるが、それ以来見たことがなかったので、てっきり九州にしか咲かない花だと思っていた。それが何と隣町とも言える上野原に群生して咲くという。
 さらに、イワウチワやミツバツツジ、イワカガミなども咲くと聞いて、今年は何としても行こうと思っていた。

 そして、その時をじっと待っていた。しかし今年は桜の開花も例年より4、5日遅く、ヒカゲツツジが咲く”その時”を判断するのが難しい。そこで、「もし咲いていなかったら来週また行けばいい」と思い、まずは行ってみることにした。

 朝、5時に家を出た。知人から「駐車場はすぐに満車になってしまう」、と聞いていたからだ。
 まずは相模湖を目指して行き、相模湖駅前からR20で上野原を目指して行く。

 上野原の商店街を通過し、本町の信号から50〜60m先のY字路を右折してR33に入る。5、6Kmほど走ると十字路があった。これを左折してR18に入り、「小菅」方面へ向かって行く。
 R18は1車線の所もあるが、すぐに2車線になった。かなり山奥へ入り、少々不安になった頃、「びゅう館」の案内板があってホッとした。

 左手の西原川の対岸を注視しながら行くと、登山口のトイレらしいモノが見え、さらに進んで行くと対岸に御岳神社の鳥居が見えた。「ここが登山口だ!」と安堵。少し先でUターンして八ツ田バス停近くに路駐した。しかし、周りに車は1台もない。こんな所へ路駐して大丈夫だろうか? (R20からここまで約18Km、約30分)

 (写真は八ツ田バス停前から上野原方面を見たもの。正面の橋が八ツ田登山口、右手に公衆トイレが見える。
 
 また、帰りに気付いたことだが、あの橋のすぐ先の左手に駐車場があった。工事関係者の車が5、6台止まっていたが、若干、余裕があった。
 さらに、びゅう館との中間点あたりにも駐車場があった)

 先ほどから降り出した霧雨が気になる。しばらく様子をみるが止む気配はない。来る時は「天気が悪かったら登らずに帰ろう」と思ったが、この程度の雨で山屋が引き返す訳にはいかない。

 雨具を着込んで6時40分出発。まずは車道を歩き、鳥居の前で小さな橋を渡る。橋の所には「坪山登山口」の標識があった。
 鳥居の下に賽銭箱が置いてあったが、神社は見えなかった。
 鳥居の前から左手に登って行くと、すぐに八ツ田登山口からのコ−スと合流し、東コースと西コースの分岐へ出た。西コースには「ツツジ多いコース」と書いてあった。ここは迷わず右の西コースへ。

 すぐにネットで見覚えがある丸木橋を渡るが、雨に濡れた木が滑りそうだ。

 急な斜面を2、3分も登ると平らで開けた所へ出た。そこにも標識が立っていた。
 ここからすぐに檜林の中をジグを切って登るようになるが、支尾根へ出ると右側が落葉樹になって来た。

 そして分岐から30分も歩くと、ミツバツツジがお出迎え。さらに4、5分も登ると、「岩うちわ」の標識が立ち、雨に濡れたイワウチワの可憐な花が咲いていた。思わず「おー!」と歓声を上げる。イワウチワを見るのは新潟の二王子岳以来だから、もう6年振りだ。
 それに、びゅう館のHPに「4月14日、イワウチワ満開」とあったので、もう終わってしまったかと心配していたが、こうして薄いピンク色の花を見ることが出来て本当に嬉しい。


(まずはミツバツツジのお出迎え)

(イワウチワ−1)

(イワウチワ−2)

 しかし、イワウチワは下を向いて咲いているので写真を撮るのが難しい。トラロープで保護しているので、トラロープの手前に咲いている花を狙って撮った。
 イワウチワは、葉が団扇に似ていることからこの名が付いたという。

 次に「ひかげつつじ」の案内板があった。しかし、花がない。木が若いせいか蕾が付いていないのだ。少し気落ちしたが数メートルも登ると、ヒカゲツツジのオンパレードになって来た。思わず「ヤッター!」と歓声を上げた。


(ひかげつつじの案内板)

(ヒカゲツツジ−1)

(ヒカゲツツジ−2)

 この薄黄緑色のヒカゲツツジを「高貴な花」と見るか、地味で目立たない「しょぼい花」と見るか。いずれにしてもミツバツツジやアカヤシオのようには目立たないが、特に今日はガスった空に花が溶け込んでしまい、写真を撮っても余り絵にならない。

 写真を撮りながら登っている時、デジカメを落としてしまい、急斜面を3、4mも転がって止まった。何とか拾ったものの、カメラが動かない。どうしよう? 肝心な花の写真が撮れなくては来た意味がない。

 カメラのボタンを押したり触ったり、なでたりしたが動かない。苦し紛れに電池を抜いてもう一度入れたら動いてくれた。「あ〜あ〜、助かった!」

 ここからはヒカゲツツジの写真を撮るのが忙しい。それにしても凄い。ヒカゲツツジの群落だ。

 しばらくすると、「これより岩うちわ群落」の表示があり、まさにヒカゲツツジとイワウチワの競演になって来た。感激!


 さらに「つつじの群生地」の表示。ヒカゲツツジをかき分けるようにして登って行く。感動の連続だ!




 昨日までは、「来週にしようか」という思いもあったが、今日来て大正解だった。まさに満開である。来週にしなくて良かったと思った。

 ロープがぶら下がった岩場を登ると、またヒカゲツツジとイワウチワの競演になって来た。ヒカゲツツジはまだ蕾もあった。


 再びロープで岩場を登ると、今度は「岩かがみ」の標識があった。しかし、イワカガミはまだ花の季節には早く、蕾さえ見えない。

 ヒカゲツツジがまた群落になって来た。しかし、この辺は木が小振りで蕾も少ないようだ。
 イワカガミが一輪でもいいから咲いてないかと目を凝らすが、やはりまだ早いようだ。

 ロープが下がった岩混じりの急登になった。これが山頂直下の急登だろうと思った。
 その急登をしばらく登ると、標識が見え、ひょっこりと山頂の広場へ飛び出した。時に8時31分。山頂には誰もいなかった。


(イワカガミの標識とイワカガミ)

(山頂直下の急登)

(山頂)

 山頂で写真を撮り、三角点に腰を下ろして一服していると、遠くから熊鈴が聞こえて来た。
 しばらくすると、同じ西コースから単独行が登って来た。今日、初めて会った登山者だった。厚木から来たというEさんと、しばし山談義。Eさんはこの坪山は4回目だという。

 そして、「晴れていればこっちに雲取山、少し右手に三頭山が見えるんですがねえ・・・!」という。今日は生憎、何も見えない。しかし、私は花を存分に楽しんで来たので満足だった。

 Eさんより一足先に下山する。帰りは東コースである。
 東コースもヒカゲツツジが咲いていたが、西コースには及ばない。ここは群落というより、ポツン、ポツンという感じである。

 道はロープがぶら下がった岩場あり、急斜面の下りあり。落ち葉や木の根が雨に濡れて滑りやすいので、慎重に下って行った。
 途中で男性2人組とすれ違った。東コースを登って西コースの花を見下ろしながら下るのも良いかもしれない、と思った。

 桧の明るい植林帯を下ると、道路や川などが見えて来た。御岳神社への道を見送って公衆トイレがある八ツ田側へ下って行った。山頂でEさんから、トイレの近くにカタクリが咲いている、と聞いたからだ。しかし、カタクリを見つけることは出来なかった。場所をもっと詳しく聞いておくべきだった。

 それにしても、坪山のヒカゲツツジは凄かった。まさに大群生地であり、花は満開だった。こんなすばらしい所を仲間達に教えてあげたいと思う一方で、誰にも教えず内緒にして置きたいような山でもあった。
 今度は、イワカガミが咲く頃に訪ねてみたいと思う。