温泉ケ岳ゆせんがたけ ・ 金精山こんせいざん−2/2

 峠では休むこともなく右へ折れて温泉ケ岳へ向かって行った。モミやツガの森林の中にシャクナゲがあった。しかし、ちょっと早すぎた! まだ蕾だった。
 それでも日当たりの良い所では、かなり膨らんでいるが、ほとんどはまだ蕾が固い。

 登って行くにしたがってシャクナゲの木が多くなって来た。しかし蕾が固くてはシャクナゲ紀行とは言えない。

 それにしても蕾が少ないような気がした。今年は花付きが悪いのか、それとも毎年こうなのか、初めて来た者には分からないが、期待が大きかっただけに残念だった。

 シャクナゲの木は確かに多い。今まで行った十文字峠には及ばないが、秩父の和名倉山よりは遥かに多い。せめてあと一週間遅く来ればそれなりに楽しめただろうに・・・。

 少し気抜けしてしまったが、シャクナゲの蕾のトンネルの中を歩いて行く。つい、「これが満開だったらなあ・・・」とグチが出る。タラやレバばよそう。花紀行は満開時期に行くのは難しいのだから・・・。

(写真はシャクナゲの群落)

 開けた笹の斜面へ出ると、男体山がボンヤリと見えた。背後の白根山は堂々とした山容がクッキリと見え、さすがは日本百名山だと思った。そして、あの山はもう一度登らなくてはならないと思った。


(白根山がすばらしい。左手前から五色山・前白根、中央が白根山、右が金精山)

 再び針葉樹林帯へ入って行く。日当たりの良い所ではシャクナゲの蕾も大分膨らんでいた。

 しばらくすると残雪が現われた。そして、すぐに見晴らしの良い所へ出た。正面に白根山がひときわ高く、そして実に堂々と聳え立っていた。ここで下山者5、6人と会った。この人達もきっとシャクナゲを見に来たのだろう。ガッカリしているに違いない。彼らの顔に元気がないように見えたのは気のせいだろうか。

 急斜面を少しばかり登ると、平らになり残雪が多くなった。トレースはしっかりしており、標識もあるので迷うようなことはない。トレースを外さないように進んで行った。

 温泉ケ岳の標識から少し進むと、雪がなくなり、シラビソ?と笹の急登になった。これを登れば山頂だろうと思ったが騙された。またなだらかな雪の斜面になった。しかし、すぐに雪のない急斜面になり、それを20mも登ると山頂だった。先客が2人いた。10時10分着。

 山頂からは、残雪をたらふく抱いた燧ケ岳や至仏山、平ケ岳が薄っすらと見えた。男体山は樹木に隠れて半分しか見えなかったが、ここから見る太郎山や大真名子、小真名子がいい。いずれもモヤっていたが、あの太郎山と大真名子は一度は登らなくてはならないと思った。


(温泉ケ岳山頂)

(山頂からの燧ケ岳)

(山頂からの至仏山)

 山頂にいたご夫婦は、私と同世代で宇都宮から来たという。旦那さんにシャクナゲについて聞いてみると、ここはいつ来ても花が少ないという。「ここはシャクナゲの木は多いが、花が咲かなきゃあ、ネエのと同じだんべぇ!」と栃木弁でいう。

 その旦那さんに、この辺でシャクナゲの花が多い所を聞くと、
「そりゃあ、△△だよ」と言いった。△は企業秘密?ではなく、よく聞き取れなかったのだ。もう一度確認すると、中禅寺湖近くの黒檜山か高山だと言う。

 このご夫婦より一足先に下山する。10時40分。
 写真を撮りながらのんびり下り、金精峠へ11時12分着。神社の陰で4、5人が休んでいた。私も日陰で一服し、オニギリをむさぼる。
 温泉ケ岳を往復して会ったのは7、8人だった。あの駐車場へ止めたほとんどの人は温泉ケ岳ではなく、金精山から白根山を往復しているようだ。

 さて、私も金精山をめざそう。
 ここから一気の登りかと気合を入れて登り出す。するとシャクナゲが至る所に咲いていた。こっちの方が日当たりが良いとみえ花数も多かった。やっとシャクナゲ紀行らしくなって来た。

 ここは一気の登りかと思ったが、手前のピークを登って鞍部までわずかに下って行く。鞍部は登山口、つまり駐車場の真上にあり、眼下に駐車場が見えた。シャクナゲもここでお終い。

 (写真左は鞍部から見上げた金精山)

 ここからは駐車場側(東)のガレを避けて西側を巻きながら登って行く。ロープが張ったトラバースを過ぎると一気の登りになった。

 足元に咲いている白い花はなんだろう。ヒメイチゲ?だろうか。イワカガミが咲いていないか探したが、やっと葉が出たばかりだった。

 次々とロープや梯子が現われ、雪渓を巻きながら登って行く。梯子は朽ちかけているものや完全に固定されずに不安定なものもあった。


(トラバース)

(荒れた急登)

(壊れた梯子)

(グラグラする梯子)

(山頂らしい)

(金精山の山頂)

 やっと尾根へ出た。もう頂稜の一角だった。若いご夫婦がくつろいでいる山頂へついに到着。12時15分着。

 ここからは正面に男体山、眼下に金精道路や湯ノ湖がボンヤリとモヤって見えた。そして、もっと近くにある白根山は樹木が多くてシャッターは切れない。まあ、今日は白根山を充分見せてもらったので諦めもつく。

 さて、ほちぼち下ろう。
 途中にあったグラグラする梯子を慎重に下る。どうせ梯子をかけるなら、もっとしっかり固定すればいいのに!ったく!

 峠で一服してから駐車場へ下った。駐車場の車は少しも減っていなかった。ということは、やはり白根山を往復している人が多いようだ。

 私の車の後ろで大きな望遠レンズを付けたカメラマンが、さかんにシャッターを切っていた。何を撮っているのか聞いてみると、何とシャクナゲだという。確かに遠くの斜面がピンク色に染まっていた。

 カメラマン曰く、「あそこは南斜面でシャクナゲが多いんですよ。温泉ケ岳や金精山の登山道は北斜面だから花が少ないんですよ・・・」

 しかし、あのピンク色に染まった南斜面はガレていて登山道もなく、近づけないという。いくら花が多くても近づけなくては意味がない。

 今回の花紀行は時期が一週間ほど早過ぎたこともあって、肩透かしをくった感じだったが、残雪の温泉ケ岳とアルペン的な金精山へ登れたので「良し」としよう。