釣鐘岩(左の写真、左側にある尖ったピーク)の右を巻いて行くと、吹き通しである。いよいよここからが高山植物、特に固有種のお出ましである。
しかし、近づいて見るとスケールが小さく、イメージが違いすぎた。吹き通しと言っても、幅はわずか20〜30メートルしかない。
ここは風の通り道になっており、吹き飛ばされそうだった。首に巻いていたタオルをポケットへ押し込んだ。
待望のユウバリソウ(左下)は強風の中で地面にへばりつくように生えていた。高さ約10センチ。ウルップソウのような感じであるが、すでに花はなく咲きガラだけが風に揺れていた。
ユキバヒコダイ(右下:これも固有種)もいっぱいあった。初めて見る植物なので良く分からないが、どうもツボミのようだった。
ユウバリコザクラがないかと、目を凝らして探したが、ついに見つけることは出来なかった。
ここは風が強くて長くはいられない。早々に歩き始める。最後の急登を登りながら、ユウバリソウもユウバリコザクラもない夕張なんて、フツーの山でしかないと思った。気落ちして足に力が入らなかった。せめて足元に咲いている小さなシャクナゲでも見て元気を出そう。
昨夜、ヒュッテに泊まった男性2人組が下って来た。4時にヒュッテを出たという。私より早く出発したとは知らなかった。
その男性が、「ここはキツイですねぇ・・・」と言った。私も、「そうですねぇ」と答えて別れたが、こんな所がキツイなんて言っていたら、ほとんどの山が登れないのではないかと思った。
今登っているピークが山頂かと思ったが、そこから少し下った所に神社があり、その奥に山頂があった。 |
8時55分、誰もいない山頂へ立った。
ここは最高の展望台だった。芦別岳、その奥に日高の山々。目線を左に動かすと、十勝岳、大雪の旭岳からトムラウシへ続く稜線が見え、さらには明日行く暑寒別、その左奥には羊蹄山まで見えた。
やっと二人の登山者が登って来た。交互に写真を撮りあった。
ここは風が強いので神社の所まで下った。近くに団体さんが休んでいた。どうも遅れている仲間がいるらしく、湯を沸かしながら待っているようだった。
私は神社の前に座り込んで湯を沸かし、昼食にした。
9時45分、下山。
途中のお花畑で、「これがユウバリコザクラですよ」、と教えてくれた人がいた(写真左)。コザクラは赤いと聞いていたが、それは青とムラサキ色の中間色のような色で、スミレのような花だった。ちょっと信じられなかったが、とにかくユウバリコザクラを見て嬉しかった。バンザーイ!
もう心残りはない。下ることに専念しよう。
湿原にある水場を過ぎ、蛇紋岩崩壊地まで来た時、写真を撮っていた人に聞いてみると、先ほどユウバリコザクラだと教えてもらった花は、実はムシトリスミレであることが分かった。やっぱりユウバリコザクラではなかった。
(写真右は何だか分からないが、初めて見た花なので固有種かも?)
憩沢で休憩。冷たい水を飲み、長袖を脱いでTシャツ1枚になった。
望岳台、11時45分着。
分岐から馬ノ背コースを下った。右手から沢のせせらぎを聞きながら、エゾマツが茂った尾根を下って行く。風がすずしく心地よかったが、次第に斜面が急になり、しんどい下りとなった。
ヒュッテまであと10分か20分という所で、左足を痛めてしまった。膝が曲がらない。いや、膝を曲げると痛いのだ。骨に異常はなさそうだが、ストックにつかまりながら左足を引きずるようにして、ヒュッテへ辿り着いた。13時15分着。
小屋の管理人に、足を痛めてしまったことを言うと、
「大丈夫だよ、半年もたちゃあ治るから・・・」と言われたが、半年もかかっては困るのだ。あした暑寒別を登るのだから・・・。
ついでに、下りは「馬ノ背コース」と「冷水コース」のどちらが楽かを聞いてみると、
「そりゃあ、冷水コースだよ」と言われる。やはり馬ノ背コースを下ったのは不正解だったようだ。