GWの北穂高〜奥穂高縦走

(残雪の槍ケ岳展望、穂高山荘でリタイヤ)

1980年5月

 もう残雪期のアルプスは最後にしようと思い、心残りだった北穂から奥穂の縦走をやるつもりで一人で涸沢へ出かけて行った。

 天気は申し分なく最高で、南稜もルンルン気分で登ることが出来た。北穂高からの展望は抜群だった。特に槍がいい。2年前の5月に来た時は山頂へ着く直前にガスが流れ出し、スッキリした槍をみることができなかったが、今日は申し分ない。


(涸沢小屋からの前穂)

(いよいよ出発)

(北尾根をバックに南稜を登る)


(北穂高からの槍ケ岳)

(奥穂への縦走路−1)

(奥穂への縦走路−2)

 北穂の山頂で充分展望を楽しみ、いよいよ奥穂への縦走である。

 しかし、ここから大苦戦することになった。夏なら何でもない登りの斜面が、ツルツルに凍って滑り台のようになっていた。私が装着していたアイゼンは10本歯のため、先端の歯が氷に刺さらない。これほど急なアイスバーンでは12本歯が必要だった。さりとて引き返す訳にもいかない。

 氷をピッケルで割ったり削ったりして足場にしたり、ピッケルを打ち込んでそれにしがみついたりしながら、やっとその斜面を乗り切った。しかし、この先、こんな下りがあったらと思うと、「生きて帰れないかもしれない」と思った。ここは12本歯のアイゼンが絶対に必要だった。

 幸い苦戦したのはその1か所だけで済んだが、穂高山荘へ着くまでは緊張の連続だった。山荘の前でぐったりしてしまい、もう奥穂へ登る気はなくなり、そのままザイデングラードを下った。

 翌日、横尾山荘近くでアイゼンを外した時、「もう雪山はや〜めた!」と10本歯のアイゼンを捨ててしまった。もうこれで残雪期にアルプスへ行くことはないだろう。ピッケルはさすがに捨てる気にはならず、持ち帰って来た。