祝島のひじき



祝島のひじきは1月末の大潮の日が「口開け」(解禁日)で、3月頃まで採れます
今年(2002年)の口開けは1月28日でした

ひじきは、この時期の祝島では、知らない人が見ると
「雑藻かな?」と思うほど無造作に、たくさん岩から生えています

干潮時は真ん中の写真のように海面から出ているものもあるので、
海に入らなくても結構取れるものです(それでもかなり濡れますが)

しかし、体力のある人は胸まであるゴム長を履いて潮に浸かりながら採ります
その方がより沖に出られるので、長くいいひじきが採れます

冬は夜の方が干満の差が大きいので、ひじきは本来は夜採るものです
この日は午前3〜4時頃が干潮でしたが、あまりにも寒かったので
写真撮影も兼ねて、夕方5時頃にひじき採りに出ました

この時期は、ひじきの生えている場所に他の海藻があまり生えていないので
後で選り分ける手間もかなり省けます




この時期のひじきは他の時期のものと比べて柔らかく、味も濃いものが採れます
採るときは、根本から15〜20cmほどのところに鎌を当て
そこから先の「若芽」の部分だけを採ります

少々もったいない気もしますが
根元の部分はちょっと固く、味も落ちるので採らないそうです




このとき採れた今年最初のひじきは太くて重みがあり、色も濁りの無い赤茶色で
とても柔らかい、いいものが採れました

3人で1時間半ほど採った量で、「祝島市場」で販売しているパックの
だいたい300袋分ほどになりました




採れたひじきは鉄の大釜に入れ、薪でじっくりと時間ほどかけて炊きあげ、
その後、火を止めてさらに蒸しながら自然に冷まします




ひじきは煮ると2回色が変わります
煮る前は左の写真のように明るい赤茶色をしていますが、
5分も煮ると、真ん中の写真のように緑色になります
それから徐々に黒くなっていき、煮あがるころには
右の写真のように少し紫がかった黒い色になります




煮あがったひじきは3〜4日ほど天日で干せばできあがりです
家の屋上や海岸でひじきを干す風景は「寒干し大根」と並ぶ祝島の冬の風物詩です

祝島では、ひじきは野菜や揚げなどと一緒に煮物にしてよく食べます
ちなみにこの時期の祝島では生ひじき(煮ただけで干していないもの)も
お店に並びますが、これは一度干したものよりもさらに柔らかくおいしいです

祝島のひじきは「祝島市場」でも販売していますので、
食べた事の無い方はぜひ一度食べてみてください

祝島のひじきの材料は、ひじきと海と太陽だけです
「祝島のひじきを食べたらよそのは食べれん!」と言ってくれる人たちのために、
そしてなにより自分たちが美味しいひじきを食べるために
祝島の人たちは、この昔ながらのひじき作りを続けています






2008年のひじき

  ひじきの口開け、深夜のひじき採り

足下は一面、ひじきの海

 今年もようやくひじきの口が開きました。

 今の時期は昼より夜のほうが干潮時の潮位が低くなります。

 口開けの日は午前2時50分ごろが干潮、潮高7cmとよく潮もひったので、深夜にもかかわらずと何組ものひじき採りが海へ向かいました。

 夜間のひじき採りは一人で行くと危ないので、たいてい2〜3人が一組になって行きます。

 そのためひじき採りは「何人」でなく「何組」と数えることが多く、「昨日は(ひじき採りに)何組行っちょったで」、「三浦は、うちらあ入れて5組かねえ」といった感じで話します。

 今年のひじきはのびもそう悪くなく、新月で真っ暗でしたが口開け初日はどの組もかなりの量のひじきを採ったようです。

ひじき本来の色は、黒というよりつやのある茶色
乾燥すると黒っぽくなる



今年のひじきの「のび」は悪くなさそう
初日なので気合を入れて採ったひじきが山のように


 ひじきの採れる日は4〜5日で終わり、次の大潮までお休みですが、これからまだ釜炊きと天日干しという作業が待っています。
(撮影2008/2/7)


  ひじきの釜炊き

炊き始めのひじき
茶色のひじきは最初に緑になり、それから黒くなる

 夜中に採ったひじきは、さっそく翌朝から鉄の大釜と薪でじっくり時間をかけて炊いていきます。

 祝島の海で育ったひじきそのものの味はもちろん、昔通りのやり方で炊かれることで、祝島のひじきは風味を逃がさず、柔らかく仕上げられていきます。

 この後、火を消した後も蓋をしたままじっくりと蒸らして仕上げ、2〜3日ほど天日と浜風で干して祝島の干しひじきの完成です。

ときどき混ぜ、全体にまんべん無く火が通るように


薪で、じっくりと
(撮影2008/2/8)


  ひじきの天日干し


 じっくり炊かれたひじきは、今度は天日と浜風で干しあげていきます。

 海岸端に干されることが多いですが、練塀を使って立てかけたり、屋根を使ったりと、2月中旬頃の最盛期には、島のいろいろなところでひじきを干しています。

 寒い時期はまだ少ないのですが、ひじきに他の海藻や細かなゴミが混ざったりするので、なるべく混ざらないよう手作業で少しずつひじきをきれいにしていきます。

 なお、3月に入って暖かくなってくると小さなエビやカニなどの甲殻類の仲間がひじきに混ざるようになります。

 なるべく取り除くようにはしていますがとてもとりきれる量ではないですし、それらは食べても害は無いので、祝島市場で取り扱っている干しひじきにはそういったエビやカニの仲間が入っていることもありますので、ご了承ください。

練塀を使って干す家も


他の海藻やゴミが混ざっていないかチェック


手作業で丁寧に取り除いていく
(撮影2008/2/14)


 ひじきの干しあがり

乾いたひじきは板のように1枚に

 たいへん多くのご予約・ご注文をいただいているため、少々発送が遅れ気味な祝島の干しひじきですが、大潮のたびに頑張って生産しています。

 天候の良い日に浜で干されたひじきは、乾くと1枚の板のようになります。

 この状態から、島のおばちゃんたちが手作業でゴミなどを取り除きながら袋詰めをしていきます。

浜風が通る波止場を利用して天日干し

 時期的にもそろそろひじきに白いもの(たんぱく質や塩分がひじきの外にでてきたもの)やエビが混ざってきはじめました。また 今年は昨年に比べ入荷量がやや少なめなので、4月以降の出荷分にはそういったものも出荷させていただきますので、ご注文を検討されるお客様にはご了承いただきたいと思います。
(撮影3/26)


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