TRUE LOVE            ― 欲望 ―

 私の心の中に、小さな穴があいている。
 あなたのあの言葉は、私の心に小さな穴をあけた・・・――
 どうやって、この穴をうめましょうか・・・・・。



「榊、コーヒーをいれてくれないか?」
邑輝は物心ついた時から、この榊に身の回りの世話をしてもらっている。故に邑輝にとって、
榊は家族同然となっていた。
「榊。私は今夜から、長崎の別荘に行って来る。だが、今回はついて来なくていい。
ある人と2人きりで会いたいのでね。おっ、、、と。正確には3人か・・・・。
当分、帰ってくるつもりはないが、心配しなくていい。」
「わかりました。」
そう言って、榊は一礼し邑輝の書斎を去った。このように榊について来て欲しくないというのは、
何か悩みがあるからに違いなかった。そして、そこで会う人物がその悩みの元凶なのだろう。
榊は少し心配だったが、文句を言える立場でもないのでその言葉に従った。



「都筑さん、手紙が来てますよ?」
「手紙?いったい誰から??巽。」
「差出人の名前はありませんね。どうぞ。」
「有難う。本当に名前、書いてないね。いったい誰だ?」
都筑は差出人不明の手紙の封を切った。中に入っていた便箋には綺麗な字でこう書かれていた。
「愛しの都筑さんへ ―― 都筑さん、元気にしていますか?私は少し元気がありません。
そこで私は、長崎の別荘でパーティーを開く事にしました。そこに、あなたを招待したいと思います。
長崎の別荘は前に来たので覚えているでしょう?必ず1人で来て下さいね。
日時:1月25日6時 場所:長崎の別荘             邑輝 一貴より。」
「邑輝!フザケタ事を!!」
手紙を読み終えた都筑が叫んだ。巽は「邑輝」という言葉を聞き、都筑の手から便箋をとり、読んだ。
「何のつもりでしょう?パーティーだなんて。たぶん罠ですよ、都筑さん。」
「うん、わかってる。しかし、行くしかないだろう。あいつがこんな物をよこす時は、何かある時だ。
あれ?まだ手紙があった・・・・・・。」
「追伸 ―― いつも激貧なあなたの事でしょうから、パーティーの礼服なんてないでしょう。
だからモーニングを一着、用意しました。こちらは店からの直送なので、後ほど届くでしょう。
必ず着用して来て下さい。」
「激貧で悪かったな・・・・!礼服まで用意するとは、本気だな。」
「何を考えているかわかりませんね、あの変態は。」
「でも行ってくるよ。1人でというのがひっかかるけどね。」
「気をつけて下さい。ちゃんと通信機も持っていって下さいね。」
「うん、わかった。ねぇ、巽・・・・。」
さっきまでとは、打って変わって猫なで声を出す都筑。その声に巽は都筑が何を言いたいかを
瞬時に理解した。そして・・・・・・。
「ここは職場ですよ、都筑さん。今は私たちだけですが、いつ誰かが入ってきてもおかしくない
状況ですよ。我慢しなさい。」
「む〜。巽、その心配は無用だよ。さっき、鍵をかけといたから・・・・。ね!」
「本当にあなたは・・・・・。一度だけですよ?」
巽は目をつぶっている都筑の唇に己の唇を重ねた。
これが、都筑と巽に襲いかかる災難の始まりになったのだった・・・・・。



―― 1月25日 ――
都筑は巽から借りたコートをはおり、邑輝の長崎の別荘に向かっていた。
「長崎の街はいつも変わらないな・・・・。そして、この長い坂道。情緒がある。
俺、何浸っているのだろう。もうすぐしたら、奴の別荘か。あいつ、何をしでかす気だ?」
都筑が1人で考え込んでいるうちに、邑輝の別荘に着いた。しかし、不思議な事にパーティーの用意
などされていなかった。その事に不信を抱きながら、都筑は別荘のベルを鳴らした。
綺麗な鐘の音が家中に響く。そしてすぐにドアが開き、邑輝が出てきた。
「ようこそいらっしゃいました、都筑さん。お待ちしていました。どうぞ中へ・・・・。」
邑輝は都筑と同じくモーニングを着ていたが、その素材は都筑の物よりも上等そうだ。
「邑輝!いったいどういう事だ?手紙にはパーティーを開くと書いてあったはずだぞ。
どこが、パーティーだ?俺とお前しかいないぞ。」
「都筑さん。パーティーというのは、決して大勢でやるものではないですよ?私はあなたと2人だけで、
パーティーを開きたいと思ったんです。さあ、中へ・・・・。」
優しい声だったが、その声は有無を言わせない勢いだった。都筑は仕方なく、別荘の中へ入った。
「邑輝?お前、いったいどうしたんだ??珍しく元気がないな。」
「うれしいですよ、都筑さん。私の異変に気付いてくださるなんて。それから、このコートの下には
あのモーニングを着ているのでしょう?さあ、脱いでくださいよ。」
邑輝は都筑のコートに手をかけ、脱がそうとしたが、その手を止めた。ふと、彼の鼻に
ある香りが舞い込んで来たからだ。都筑の香りではないとわかった邑輝は言った。
「都筑さんにしては、珍しいですね。茶色のコートだなんて・・・・。」
「ああ、これ?これは巽から借りたんだ。いつもの安物はダメだと言い張って、貸してくれた。」
「そうですか、あの秘書殿が・・・・ですか。」
「珍しいだろ?」
「さて、都筑さん。来て下さい。おいしい料理を用意してますから。クス。」
「おいしい料理・・・・か。楽しみだな。」
「どうぞ、こちらへ。」



「おいしかった。あ、、、れ、、、俺、眠、、、、。」
食事を終えた都筑は、突然の眠気に襲われた。
「都筑さん。また、ひっかかりましたね。本当に不用心なんだから・・・。覚悟して下さいよ。」
邑輝はテーブルの上で静かに寝息をたてている都筑を抱き上げ、寝室へ運んだ。



ジャリ・・・・。冷たい鎖の音に都筑は目を覚ました。そして、己の今の格好に驚いた。
「何だ?これは。おい!邑輝!!どこにいるんだ!?」
都筑は裸にされ、両腕には手錠がかけられそれぞれ、ベットの軸につけられいた。また、足首にもそれぞれ
鎖がかけられていた。
「あっ、都筑さん。起きられましたか?」
邑輝は手に何かの小瓶を持って、寝室に入ってきた。
「どういうつもりだ、邑輝?これをはずせ!」
「お断りします。以前から言っている通り、私はあなたの全てが欲しいのです。あなたの力も体も
そして、心もね。」
冷たく笑った邑輝は、手にしていた小瓶を机の上に置き、ベットの上にあがった。
「やめろ!俺はお前とこんな事をするつもりはない。俺には・・・・。」
「巽 征一郎ですか・・・?」
都筑の言葉をさえぎるように邑輝は言った。
「えっ・・・・。どうして、巽の名前が出て来るんだよ?」
「あの秘書のことをあなたは愛していらっしゃるんでしょう?どこまでいきました??
キスですか?SEXもしちゃいました?」
「どうして・・・・それを・・・・?」
「この前、都筑さんの口から聞きましたよ。あの時以来、私の心には穴があいてしまったようです。
その穴をうめさせていただきます。」
すると邑輝は都筑の上にのり、彼の唇を奪った。そして、すばやく手を下へ滑らせた。
都筑は抵抗を試みたが、何分両手足の自由を奪われているため、満足な行動がとれない。
その間にも、邑輝は都筑の胸に唇を落とし胸の突起を口に含んだ。舌先で器用に弄ぶと、すぐに
都筑の突起は桜色に染まっていく。片方の突起も同じように弄んだ。
「や、、、めろ、、、。んぅ、、、、。」
嫌悪感と共にやって来る快感に都筑は甘い吐息をもらした。
「都筑さんって、感じやすいんですね。あっ、ここにもある・・・・。どうやら都筑さん、あの秘書と
交わったんですね。あの男の刻印があちこちに刻んである。まるで『私の物だ』と主張しているように。
こんな物は私の『愛の刻印』で消してしまいましょう。」
赤みが少しづつひいていた皮膚に、また新しく赤さが増した。
「うぅ、、、、んぅ、、、、。」
「都筑さん、気持ちいいですか?何も考えずに快感だけを味わってください。」
「いや、、、だ、、、。んん、、、、あ、、、、。」
都筑はこれ以上、邑輝の思い通りにさせまいと思って首を振って、抵抗を試みる。
「聞き分けのない人ですね。人がせっかく気持ち良くさせているのに。なんなら一度、達きます?」
邑輝は都筑の返事を待たずに都筑自身に手をかけた。都筑自身は都筑の意思に関係なくその存在を
示すようにたちあがりだしていた。
「こちらの方がとっても正直ですね。」
「うぁ、、、はぁはぁ、、、や、、、めろ、、、、。」
「もっと感じてくださいよ。」
「あぁ、、、い、、、、やだ、、、離、、、、、うぅ、、、。」
邑輝は都筑自身を口に含むと、ていねいに舐め始めた。すでに張り詰めていた都筑自身は邑輝の愛撫で
すぐに果てるまでにきていた。すると邑輝は何を思ったか、口から都筑自身をだした。
「都筑さん。体はちゃんと反応してますよ。もう一度聞きます、達かせてあげましょうか?」
「あ、、、んぅ、、、、。」
限界まで来ていた都筑自身は、途中で放り出され、早く解放して欲しいかのようにひくついた。
しかし、都筑にとって巽意外の男の手で自身を解放させるのは、巽を裏切ることだった。
「都筑さん、どうなんです?あなたの口から言ってください。」
「んぅ、、、、はぁ、、、、。」
『達かせてください』この一言で、都筑はどんなにスッキリするかわからなかった。そして・・・・。
「あぁ、、、、達かせ、、、、て、、、、くだ、、、さ、、、い。」
小さな声でそうつぶやく。邑輝はその声をはっきりと聞き取ったが、意地悪くいった。
「声が小さいですよ。もう一度。」
一度言うだけでも屈辱的だったのにそれをこの男は二度も言わせようとしている。巽への懺悔の気持ちで
いっぱいの都筑は、その感情を抑えながら、
「達かせてください。」
と、さっきよりはしかっりした口調で言った。
「わかりました、都筑さん。」
邑輝はもう一度、都筑自身を口に含んだ。解放を待ち続けていたそれは、少しの刺激ですぐに邑輝の
口腔の中で果てた。そして都筑の罪悪感は増したのだった。
「はぁ、、、た、巽、、、ごめんさ、、、さ、、、、い、、、。」
「何を謝っているんですか?あなたは私の事だけを考えてればいいんですよ。」
「離、、、、せ!」
思いっきり都筑は腕を振り上げて、鎖を切ろうとした。しかし、男一人の力で鎖など切れるわけでもなく
ガチャリと虚しい音だけが響いた。己の無力さに嫌気がさした都筑は眦に涙を浮かべた。
「泣かないでくださいよ、都筑さん。私まで悲しくなる。どうしてあなたは、私の腕の中にいるのに
他人の事を考えるのです?」
「俺が愛していて、抱かれたいと思っている人間はただ一人だけだ。お前なんかじゃない!巽だ!
征一郎だ!!」
その言葉に語調を優しくしていた邑輝は、語調を強めて言った。
「都筑さん!私はあの男の名を聞きたくありません。あなたの目の前にいるのは、巽 征一郎では
ありません。邑輝 一貴です!!言ってくださいよ、『一貴』と。」
「誰が言うか!お前は俺の力が目的で俺が欲しいんだろう?征一郎が違う!!俺の事を本当に
愛してくれるから、抱かれたんだ。その証拠にお前は一度でも俺に『愛してる』と言ったか?
征一郎は何度も言ってくれたよ。そして俺もそれに答えた。」
「都筑さん・・・。私は決してあなたの力だけが目的ではありませんよ。あなたに言われた通り、
私はあなたに一度でも『愛してます』と言った事ががありませんね。不器用な私ですから、
どうあなたにこの気持ちを伝えようか迷っていた。そして、私はこんな行動に出てしまった。
もっと早くに気付くべきでした。力だけでは人の心を奪えない事を・・・・。」
「わかったなら、この鎖をはずしてくれ。俺はお前とこれ以上、何もする気はない。」
「断ります!!」
「なっ・・・・。どうして!?」
「都筑さん・・・・いえ、麻斗さん。愛してます。あなたの心が私に向いていなくても私はあなたを
愛し続けます。いつか、あなたが私を愛するようになるまで・・・・。しかし、それがいつになるか
わからない今、私はあなたを力ずくでも抱いてしまう。一生、叶わない望みになるかもしれないので。
『また次に同じチャンスが来ると思って、今のチャンスを逃すと、一生そのチャンスは来ないかも
しれない。』」
「お前、全然わかってない!俺は征一郎以外の人間とは何もする気はない。さっき、お前の口腔で
果てた事だけでも・・・・!」
都筑が邑輝の言葉に反論していると、邑輝はその先を言わせまいとその唇を己の唇でふさいだ。
「んぅ、、、、、んん、、、、。」
邑輝は都筑の歯列を割って、奥で縮こまっていた都筑の舌を絡み取った。都筑はどうにかこの状況から
脱しようと、首を振ろうとするが邑輝の手で顎と頭を固定され、思うように動かない。
「うん、、、、んぅ、、、、うぅ、、、。」
都筑の鼻にかかった声が響き渡る。やっと、唇を離されると都筑は大きく息をつき、
「やめろよ!」
と一言だけ叫んだ。しかし、こんな都筑の訴えも次には虚しいものと変わる。
邑輝は何も言わずに、都筑の胸の突起を再び愛撫し始めた。今度はさっきまでの優しい物ではなかった。
「んぅ、、、、やめろ!、、、、あ、、、んん、、、。」
そして、胸への愛撫を続けながら、邑輝は手を下へとすべらせていく。また、自身をやられるのかと思い、
目をつむっていた都筑は邑輝の手が己の襞の中へ入ったのに気付き、目を見開いた。
「本当、、、、に、、、やめ、、、ろ、、、。あぁ、、、俺は、、、お前のモノ、、、なん、、、か、、、
受け、、、いれな、、、い、、。」
「それは仕方ありませんね。都筑さんがそんな気持ちのままだと、私が入れても苦痛しか感じない
でしょうね。さて、これの出番になりますか・・・・。」
邑輝は都筑への攻めを一度止め、テーブルの上に置いてあった小瓶をつかんだ。
そして、中から怪しげなオイルを手の平に出し、都筑の襞の周りにぬりはじめた。
「なっ、、、、あつい!やめろ!!何を、、、ぬってるんだ!!」
「都筑さんをもっと気持ち良くさせる薬・・・とでも言っておきましょうか。」
都筑は己の中に襲いかかる熱に怯えを感じ始めた。
「あぁ、、、やめろ!、、、、あつ、、、い、、、、。」
そんな都筑の叫びは邑輝に聞き入れられず、邑輝は都筑の中へ慣れた手つきで指を入れていく。
オイルでやわらかくなった都筑の襞は何の苦痛も与えず、邑輝の指を易々と飲み込んでいく。
そして、邑輝の指が中へ入る度に都筑には信じられないほどの快感が襲うのだった。
「はぁ、、、あっ、、、、あぁ、、、、んぅ、、、、。」
都筑は意識が遠のくかと思うくらいの快感にただただ、声を上げるしかなかった。邑輝はさっきまでとは
違う都筑の声に満足しているようで、指を1本から2本へと増やしていき、もっと都筑に快感を味わわせて
やろうと思った。
「そうです、都筑さん。あなたは快感させ味わっていれはいい。楽でいいですよ。
後は私に任せてください。」
「あぁ、、、、うん、、、んん、、、。」
都筑の中が熱く、やわらかくなった事を確認して邑輝は指をぬいた。そして・・・・。
「都筑さん、体の力をぬいていて下さいよ。」
と言うとすぐに、邑輝は自身を都筑の秘部に入れ始めた。オイルでやわらかくなったその部分は、
少しの苦痛を都筑に与えたが、その痛みはすぐに快感へとすりかわった。
「やぁ、、、ぁ、、、んぅ、、、、んん、、、、。」
邑輝は自身を適当な位置まで入れると、腰を動かし始めもっと都筑に快感を与えようとした。
「あぁ、、、、んぅ、、、うん、、、、。気持、、、ち、、、い、、、い、、、。」
すでに都筑の理性は吹っ飛んでいた。普段の都筑なら、邑輝にこんな事をされていて「気持ちいい。」
なんて言うはずがなかった。
「うれしいですよ、都筑さん。さて、もう少しであなたの中に私の刻印が刻めそうだ・・・・。」
「んぅ、、、こく、、、い、、、ん、、、?あぁ、、、。」
「そうです。っう!」
邑輝は都筑の中で精を放った。都筑は中で邑輝自身が果てた時、今までで一番の快感を味わった。
そして、疲労感とその快感に意識を手放していた。



「都筑さん?」
いつのまにか眠ってしまっている都筑に少々驚き、邑輝は苦笑した。
「意識が遠のくほど、気持ちよかったですか?少し薬の効き目がきつ過ぎたかもしれませんね。
しかし、いいんですか?都筑さん。あなたが無防備な格好で寝ていると、
私は何をするかわかりませんよ。」
意地悪く、寝ている都筑に声をかけながら彼は自身を都筑の中から引き出した。
「んぅ、、、うぅ、、、、。」
すこし、都筑は声をあげたが目覚める様子ではなかった。
「なんてね。さすがに、スヤスヤと眠っている人間を襲うほど、私は人間性を失っていませんよ。
ゆっくりお休みなさい、都筑さん。パーティーは始まったばかりです・・・・。」
邑輝は都筑の足に噛み付いている鎖をはずし、都筑に毛布をかけると寝室を出て行った。
寝室を出るとすぐに都筑が持っていた通信機の電源を入れた。電源が入るのを待っていたかのように
通信機が鳴り・・・・。
「都筑さん!何をしてたんですか?大丈夫ですよね??」
と巽の声が入る。邑輝は、口にフッと小さく笑みを浮かべて言った。
「巽さん、急いで私の長崎の別荘に来て下さい。おもしろい物をお見せしますよ。」
「邑輝!何のつもりだ!!都筑さんは・・・・麻斗は、どうし・・・・・・。」
邑輝は巽の言葉を最後まで聞かずに通信機を切った。
「さてと。どれくらいの時間であの男は来るのでしょう?コーヒーでも飲んで待ちましょうか・・・・。
これで、役者は全てそろった・・・・・・・。」
邑輝はリビングへ行き、コーヒーをいれた。怒りに燃える巽の顔を想像しながら・・・・・。


                                TRUE LOVE ― 欲望 ― 終

                          

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