雨あがる(洒水の滝)

絵1 「雨あがる(洒水の滝)しゃすいのたき」

  • 油彩画
  • サイズ 縦横:M30 縦
  • 最終描画:2018年8月
  • 洒水の滝の所在地:神奈川県足柄上郡山北町平山



洒水の滝

絵2 「洒水の滝しゃすいのたき」

  • 油彩画
  • サイズ 縦横:F10 縦
  • 最終描画:2020年1月
  • 洒水の滝の所在地:神奈川県足柄上郡山北町平山



文 地形地質概要

1. 絵 「雨あがる(洒水の滝)」

洒水の滝はJR御殿場線山北駅の南西約2kmに位置し、酒匂川の支流の滝沢川にかかっています。

絵は山アジサイの仲間が咲く杉林越しに洒水の滝を眺めています。雨は上がっていますが、杉の葉には水滴が残されています。

2. 地形概要

山北町山北の国道246号線より県道726号線を約650m南下すると、平山地区の集落を経て滝沢川に架かる橋に差し掛かります。この橋を渡り右折して遊歩道および滝沢川に沿った足柄山地の谷筋を進むと突き当りの岩壁に懸る洒水の滝(落差69m)を正面から望むことができます。この滝は一の滝で、その上流には二の滝(16m)・三の滝(29m)があるそうです。

酒匂川と洒水の滝を通る地形断面は、酒匂川の河床(平坦)→河岸段丘(平山の集落や畑などで平坦)→山地(傾斜地 洒水の滝までの河川勾配は緩やかで洒水の滝で一挙に上昇する)の順となります。

滝の周辺は急峻な側壁が迫っています。この地形は滝自身がつくったものであり、河岸段丘(旧河床)と山地の境付近にあったと思われる滝が山地の山肌を侵食して山側に食い込んだ跡を示しています。

滝ができる要因としては、地殻変動による地盤の上昇およびその違い、本流である酒匂川と支流の滝沢川の侵食速度の違い、地盤の主な亀裂の方向(平山断層の存在)と滝沢川の流路方向の関係などがあり、最初は当時の酒匂川との合流点に生じた段差(懸谷)が後退して断層と出会うことによって大きな落差に成長したのではないかと予想されます。

3. 地質概要

プレート説によると、伊豆半島はかっては南方の火山島でしたが、この火山島がフィリッピン海プレートに載って日本列島に近づくと丹沢と伊豆の間の海峡は徐々に狭く浅くなり、やがて両者は衝突して日本列島に付加します。約100万年前、伊豆が丹沢に衝突すると丹沢は急激に隆起し、隆起したことによって侵食は激しくなりました。侵食された砂礫は浅い海峡に運搬され堆積し、海峡は埋め立てられました。新生代第四紀更新世前~中期、約200~70万年前にかけて、この海峡に堆積した地層を足柄層群と呼んでいます。伊豆半島と丹沢に挟まれた足柄層群は約70万年前に陸化し、隆起と圧縮変形によって現在の足柄山地を形成しています。

洒水の滝周辺の足柄層群は当時の海峡が狭くなり陸化する頃の堆積物であり、礫層です。滝を正面から眺める位置周辺の露頭にも礫岩が分布し、河床には大小の礫岩が転がっています。礫岩中の礫は角が取れ、現在の河川の中流から下流域あるいは河口域に分布するような丸みを帯びた礫です。礫の形状は玉砂利のようであり、岩塊はコンクリートブロックに似ています。

4. 付図及び参考資料

資料1

周辺図

矢印は絵の描画方向

赤○印は洒水の滝の位置

資料2

写真 河床に転がっている礫岩

滝周辺はこのような岩石より成る

参考資料

・地盤工学会 関東支部神奈川県グループ編 2010 大いなる神奈川の地盤 その生い立ちと街づくり 技報堂出版

・見上敬三監修 奥村清編 1981 改訂神奈川県地学ガイド 神奈川県の地質とそのおいたち コロナ社

・小田原啓2009 かながわ露頭マップ ~「平山断層」 神奈川県温泉地学研究所観測だより 第59号

・山北町ホームページ http://www.town.yamakita.kanagawa.jp/index.php トップ>観光情報>洒水の滝

・地理院地図(電子国土Web)