養老渓谷 滝めぐり遊歩道

絵 「養老渓谷 粟又の滝(ようろうけいこく あわまたのたき」

  • 油彩画
  • サイズ 縦横:F4 横
  • 最終描画:2019年3月
  • 所在地:千葉県市夷隅郡大喜多町粟又



文 地形地質概要

1. 絵 「養老渓 谷粟又の滝」

絵は養老川に懸る粟又の滝を下流側ほぼ正面から眺めています。泡立った流水は滝の岩肌に沿って流れ、春の日差しを反射してまぶしく光っています。

2. 地形概要

房総半島中南部に広がる房総丘陵は鴨川平野(鴨川地溝帯)を挟んで北側を上総(かずさ)丘陵、南側を安房(あわ)丘陵と呼ばれています。

養老川は安房と上総の境界を成す清澄山(377m)を水源とし、上総丘陵を下刻して深い谷(養老渓谷)を形成し、全体としては北ないし北北西に流路をとり、下総台地を経て、五井海岸から東京湾に注ぎます。養老川の中~上流部では激しい蛇行と深い渓谷(養老渓谷)が形成されていますが、河川勾配が緩やかであった頃の蛇行した流路を維持したまま、下方侵食によって生じた地形です。 粟又の滝は養老渓谷駅の南南東方向約5.6kmの養老川本流に懸る比高約30mの滝で、房総半島の本流河川の滝としては最大の落差があるそうです。滝は傾斜岩盤に沿って流れる急な「ナメ滝」であり、傾斜は概ね一様ですが、上部は緩やかに湾曲し裾部は急になっています。

3. 地質概要

上総丘陵には砂岩や泥岩より成る上総層群が分布しています。上総層群は関東平野の基盤をつくる堆積層で、房総半島南部や多摩丘陵では広く地表に露出しています。

養老川の中~上流域のほとんどを占める上総層群は北西方向に傾斜する砂岩泥岩層で、その多くは深海で堆積したタービダイト(乱泥流堆積物)であり、海底地すべりの発生により生じた堆積物です。

粟又の滝の滝面は泥岩より成り、地層の傾きと滝の傾斜がほぼ一致していることから、地質構造と滝の形状との関連が指摘されています。 一般に、滝の表面は流水によって侵食されやすく滝の位置は上流側に向かって後退していきます。粟又の滝の場合は、滝の前面に新旧3つの滝壺を形成されているのに対し、その下流1kmの区間には滝壺が確認されていません。滝壺の存在は滝の侵食後退が緩やかであることを示すことから、過去に存在していた滝状の地形は滝壺が形成されないほど急速に侵食後退して現在の滝の位置に近づいたか、あるいは滝壺が形成されないような渓床形状(急傾斜・複数の滝の連続等)であったと思われます。いずれにしても当時、段丘面を侵食しながら流れていた渓床に侵食に弱い凝灰岩が出現することによって現在の滝の原型が形成されたようです。即ち、侵食に弱い凝灰岩が急速に破壊・侵食を受け、下位の泥岩が掘り出されるようにして滝が生じたと考えられています。以後、滝の裾は侵食を受けて傾斜を増しますが、全体的には侵食に抵抗し、滝の後退は遅くなったようです。最近は滝壺を造りながらジリジリと後退していると思われます。

4. 付図及び参考資料

資料1

周辺図 赤○印は粟又の滝位置

矢印は絵の描画方向

写真

写真 粟又の滝 右岸の遊歩道は滝の

上まで延びています。

参考資料

・町田洋他編 2000 日本の地形5 中部 東京大学出版会

・八木令子・吉村光敏・小田島高之 2017 房総丘陵を水源とする河川流域の地域特性と地形誌 千葉中央博自然誌研究報告書特別号

・地理院地図(電子国土Web)