輝くすすき その1(仙石原すすき草原)

絵1 「輝くすすき その1(仙石原すすき草原)」

  • 油彩画
  • サイズ 縦横:F30 横
  • 最終描画:2019年10月
  • すすき草原の所在地:神奈川県箱根町仙石原
  • (箱根火山)

箱根の仙石原すすき草原をモデルとして、逆光で輝くすすきを描いています。

すすき草原は中央火口丘の台ヶ岳の麓に位置し、古くは生活に使用する茅場として用いられていましたが、すすきが生活に使用されなくなり放置されると樹木が侵入してきました。景観を維持するために山焼きが復活し、毎年実施されているそうです。

輝くすすき その2(仙石原すすき草原)

絵2 「輝くすすき その2(仙石原すすき草原)」

  • 油彩画
  • サイズ 縦横:M30 縦
  • 最終描画:2019年10月
  • すすき草原の所在地:神奈川県箱根町仙石原
  • (箱根火山)

群生するススキと相対する暗い樹林を描きました。残念ながら地味な絵になりました。

1. 地形概要

箱根火山は外輪山およびこれに囲まれたカルデラと中央火口丘などで形成されています。芦ノ湖を源とする早川はかってのカルデラ湖が干上がった仙石原を経由して北から東方向に回り込み、中央火口丘と外輪山の間の谷を深く削り塔の沢の先で外輪山の外に出ています。

芦ノ湖の前身である古カルデラ湖は遅くとも18万年前に形成され、その後の火山活動によって湖が生じたり消滅したりを繰り返していたようです。現在の芦ノ湖は3,100年前の神山の山体崩壊による岩屑なだれが当時の古芦ノ湖を南北に分断し、南側が湖として残って拡大したものです。一方、分断された湖の北側では湖水が早川によって排出され干上がって湿地状の仙石原となりましたが、約2,600年前の湿原が消失した時期を経て、再び湿原が形成されて現在に至っています。湿原が消失した時期は杉などの木が生い茂っていたようで、箱根湿生花園にも杉の株が神代杉として残されています。

2. 地質(火山活動)概要

箱根火山の活動は古く約65万年前に始まったようであり、活動の位置や岩質を変えながら時にはカルデラを形成するような大規模な噴火を交えて複雑な活動をしてきました。

先に複数の成層火山の活動から始まり、金時山・明星ヶ岳など玄武岩質の火山の活動から明神ヶ岳・丸岳・白銀山(しろがねやま)などの玄武岩~安山岩質の火山の活動に変化しました。これ等の山体は現在の箱根外輪山を形成しています。

約35万年前後から安山岩質の火山体が卓越するようになり、安山岩~デイサイトの単成火山群も発達しました。約23万年前頃から山体中央部付近から規模の大きい噴火が繰り返されてカルデラが形成されました。約13万年前頃から約8万年前頃は屏風山・鷹巣山・浅間山などの前期中央火口丘が形成され、規模の大きな噴火は約4万年頃まで続きました。特に約6万6千年前には規模の大きな爆発的噴火があり、東京でも厚さ約20㎝もの軽石層が堆積しました。これを東京軽石層と呼んでいます。東京軽石層の上位には軽石流堆積物を載せており、爆発的な大規模な噴火と火砕流の発生を示しています。三浦半島南端でも東京軽石層と軽石流堆積物が見つかり、火砕流が海を渡って三浦半島まで達した可能性が大きいと考えられています。

爆発的噴火は約4万年前頃に終了し、その後は安山岩質の小規模な成層火山や溶岩ドームなどの単成火山群(後期中央火口丘)が形成されました。後期中央火口丘は北西-南東方向に2列あり、先ず東側の小塚山・台ヶ岳・早雲山などが活動し、次いで西側の神山(箱根の最高峰で1,437m)やロープウエイのある駒ヶ岳など現在の箱根を代表する火山が活動しました。なお、仙石原のすすき草原は中央火口丘の溶岩ドームである台ヶ岳(標高1,045m)の麓の緩傾斜部に設けられています。

現在は概ね静穏ですが、活火山であり大涌谷周辺では噴気活動が活発であることから気象庁では注意を呼び掛けています。

3. 付図及び参考資料

周辺図

周辺図 実線の矢印は絵の描画方向

破線の矢印は下の写真の撮影方向

色別標高図

周辺図(色別標高図)

矢印は絵の描画方向置

赤〇印は仙石原すすき草原の位置

写真 

写真 箱根湿生花園より台ヶ岳とその

裾野の仙石原すすき草原を望む

参考資料

・藤岡換太郎・平田大二編著 2014 日本海拡大と伊豆弧の衝突―神奈川の大地の生い立ち 有隣堂

・高岡貞夫・吉田真弥 植物珪酸体と微粒炭の分析から推定される箱根町仙石原におけるススキ草原の成立過程 第四紀研究 50(6)p.319-325

・地盤工学会 関東支部神奈川県グループ編 2010 大いなる神奈川の地盤 その生い立ちと街づくり 技報堂出版

・長井雅史・髙橋正樹 2008 箱根火山の地質と形成史 神奈川県立博物館調査研究報告(自然科学)13号

・笠間友博・山下浩之 いわゆる「東京軽石層」について 神奈川県立博物館調査研究報告(自然科学)13号

・神奈川の自然をたずねて編集委員会編著 2006(2刷) 神奈川の自然をたずねて 築地書館

・地理院地図(電子国土Web)