夕景 湘南の海と富士山

絵1 「夕景 湘南の海と富士山」

  • 油彩画
  • サイズなど:F12 横
  • 最終描画:2019年 4月
  • 所在地:江の島 神奈川県藤沢市
  • 絵のビューポイントは神奈川県鎌倉市七里ヶ浜(しちりがはま)東端

鎌倉市の稲村ヶ崎は富士山を眺める景勝地の1つです。絵1および絵2は稲村ヶ崎を背にして七里ヶ浜東端から西方を眺めた夕方の風景です。前面の湘南の海(相模湾)には影絵のように江の島が浮かび、遠景(江の島の背後)には左(南)側から箱根火山の山並みが、右側に富士山が見えています。

3月下旬の夕日は絵のように江の島あるいは箱根と富士山の間に沈みます。

日没近づく江の島

絵2 「日没近づく江の島」

  • 油彩画
  • サイズなど:F8 横
  • 最終描画:2019年 8月
  • 所在地:江の島 神奈川県藤沢市
  • 絵のビューポイントは神奈川県鎌倉市七里ヶ浜(しちりがはま)東端

同上

日没の位置は春から夏に向かって日々右(北)側にずれ、夏から秋に向かって同じような位置まで戻り、冬に向かってさらに左(南)側にずれて行きます。10月末頃には絵のように箱根火山の中央火口丘の南側に沈みます。

ユーチューブ版はこちらです。

https://youtu.be/RBjJSvUmIMw

1. 地形概要

絵の遠景右側に富士山(標高3,776m)があり、左側には右から順に箱根の外輪山である金時山(標高1,112m)・明神ヶ岳(標高1,169m)などおよび中央火口丘の神山(標高1,438mで箱根の最高峰)などが連なっています。さらに、山並の延長は画面外側の伊豆半島の山々へと続いています。

江の島は周囲約5km、標高約60mで、頂部が平坦であるのが特徴的であり、絵にみられるように江の島灯台と合わせた島影は航空母艦にも似ています。

約12万5千年前には温暖化が進行し、氷河が溶け出して世界的な大規模な海進が起こりました。この海進を下末吉海進と呼んでいます。その後、徐々に寒冷化に向かって海退が進行してきますが、約10万年前あるいは約8万年前にも比較的温暖な時期があり、海退から海進に転じる時期を挟みました。江の島の頂部の平坦面は約10万年前の波食台を起源としています。東京の豊島台もこの時期に形成された平坦面で、小原台面と呼ばれています。

江の島の外洋に面する南側(絵では裏側にあたり見えない)には波浪による侵食地形である波食台(付図の写真参照)や海食崖が発達しています。その海食崖には江の島岩屋洞窟と呼ばれる長さ150mほどの海食洞があります。現地の説明板によると、「今からおよそ6,000年程前から」とあり、縄文海進の最盛期の海水面が安定していたころ(縄文時代前期に相当)に形成されたようです。江の島の頂上部には縄文時代早期の住居をはじめ、土器や石器などの生活道具が発見されています。岩屋洞窟に海水が侵入していたころも人が住んでいたかも知れません。当時、海が荒れると岩屋洞窟はどんな音響を発していたでしょうか。高波が海食崖を打つ音、洞窟に侵入した寄せる波と出口を求めて引く波の競り合う音、あるいは閉じ込められた圧縮空気が洞窟の出口から噴出するときの音などが重なり合っていたことでしょう。この音響を龍の鳴き声として聞いたのでしょうか。江の島の対岸*1の龍口明神社(りゅうこうみょうじんしゃ)には伝説の五頭龍(ごずりゅう)が祀られています。

*1 対岸:龍口明神社は滝口(たきくち)鎌倉市津の飛び地で鎌倉市津1番地(藤沢市片瀬3丁目付近)にありましたが、1978年に遷宮があり、現在は鎌倉市腰越。

2. 地質概要

プレート説によると、約1500万年前、日本海の拡大とフォッサマグナの形成が終了したころ、時を同じくして伊豆小笠原弧(火山列)がフィリッピン海プレートに乗って北上し、次々とフォッサマグナ地域に衝突・付加していきました。丹沢は約500万年前に、伊豆半島は約100万年前に本州に衝突して日本列島に付加したと考えられています。絵1、2のように江の島の背後には箱根火山、中央より右側に富士山が見えますが、これ等の火山は伊豆半島と丹沢に挟まれた地域に形成された第四紀の新しい火山です。フォッサマグナ地域には第四紀の新しい火山がたくさんありますが、箱根火山や富士山は南部フォッサマグナ地域に生じた代表的な火山です。

箱根火山も富士山も活火山であり、箱根大涌谷の小噴火や富士山の火山性地震など現在も活動の余韻が継続していいます。箱根火山の活動は約65万年前に始まったと考えられています。一方、富士山は先小御岳火山、小御岳火山、古富士火山、新富士火山の4つが重なり合って形成されており、活動は数十万年前に始まったようです。約10万年前から始まる古富士および約1万7000年前から8000年前の多量の玄武岩質溶岩を噴出した新富士を経て現在のような端麗な山容になりました。

江の島の主体部は葉山層群の砂岩(凝灰質)が分布しています。葉山層群は三浦半島や房総半島に延びる特異な地質体で葉山‐嶺岡帯と呼ばれています。プレート説によれば、新生代新第三紀の中新世前期~中期、約1,800~1,500万年前の海洋底に堆積した堆積物がプレートに乗って日本列島に近づき海溝で複雑に変形して日本列島に付加した地層(付加体)と解釈されていますが、長年にわたり謎の地質体として存在していました。葉山層群は日本海の拡大やフォッサマグナが形成される頃の地層であり、周辺では最も古い地層です。


3. 付図及び参考資料

資料1

周辺図 矢印は絵の描画方向

資料2

写真 江の島の隆起した波食台で葉山

層群より成る

周辺の海岸は1703年の元禄関東地震お

よび1923年の大正関東大震で隆起した

ことが知られていますが、この波食台

は元禄関東地震の前にはすでに海面上

に現れていたらしい

参考資料

・大いなる神奈川の地盤 その生い立ちと街づくり 2010 地盤工学会 関東支部神奈川県グループ編

・町田洋他編 2006 日本の地形5 中部 東京大学出版会

・神奈川の自然をたずねて編集委員会編著 2006(2刷) 神奈川の自然をたずねて 築地書館

・須貝俊彦・松島紘子・水野清秀 2013 過去40万年間の関東平野の地形発達史 ―地殻変動と氷河性海水準変動の関りを中心に― 地学雑誌 122(6)

・藤岡換太郎・平田大二編著 2014 日本海拡大と伊豆弧の衝突―神奈川の大地の生い立ち 有隣堂

・松田時彦・ 松浦律子他 2015 神奈川県江の島の離水波食棚と1703 年元禄関東地震時の隆起量 地学雑誌 124巻4号

・龍口明神社 ホームページ gozuryu.com

・地理院地図(電子国土Web)