立石海岸の落日

絵 「立石海岸の落日」

  • 油彩画
  • サイズ 縦横:F10 横
  • 最終描画:2019年10月
  • 立石海岸所在地:神奈川県横須賀市秋谷
  • (三浦半島)



文 地形地質概要

1. 絵 「立石海岸の落日」

絵は海岸線からわずかに切り離された奇岩「立石」及び「梵天(ぼんてん)の鼻」と呼ばれる岩場周辺を眺めた風景です。現地の案内板によると、「立石」や「梵天の鼻」ばかりではなく「梵天の鼻」周辺に自生する松、さらには海を挟んで横たわる遠景の丹沢・箱根・伊豆の連山およびその背後に浮かぶ富士山を含んだ絵画的な構図に価値が見出されているとし、空気の澄んだ晩秋から冬にかけての季節が最高であるとのことです。

2. 地形概要

三浦半島には平坦地が少なく大きな河川も高い山地もありません。全体的には丘陵地が卓越しており三浦丘陵と呼ばれています。なお、最高標高は大楠山(おおぐすやま)の241mです。

「立石」は高さ約12m周囲約30mの奇岩で、三浦半島の西海岸のほぼ中央部で、丘陵地が海に没する立石海岸にあります。「立石」は硬質で亀裂が少ない岩体が波浪による侵食から免れ残存したものと思われます。一方、「立石」の後方から右側にかけて「梵天の鼻」と呼ばれる岩場が存在しますが、その先端周辺は似たような高さを保っており、波浪の侵食によって一旦水没した岩礁が隆起によって再び海面上に顔を出した岩体と思われます。三浦半島周辺では関東地震と呼ばれる相模トラフ沿いを震源とする地震によって隆起することが知られており、「立石」も「梵天の鼻」も地盤の隆起と波浪による侵食、あるいはやや長期的には海水準の変動を含めてこれらのはざまで存在しています。

3. 地質概要

「立石」や「梵天の鼻」の背後(遠景)には右(北)から順に丹沢山地、富士山、箱根火山が姿をみせており、さらに左(南)側の伊豆半島の山並みへと続いています。

プレート説によると丹沢は約500万年前に、伊豆半島は約100万年前にフィリッピンプレートに乗って日本列島に近づき衝突して付加した(かっての伊豆-小笠原弧の)火山島であるとされています。箱根火山や富士山は中新世-鮮新世に堆積した海成の堆積岩・伊豆半島や丹沢山地を形成している海底噴出の火山岩類およびこれに貫入した閃緑岩類などから成る地層を貫いて噴火した新しい火山です。


「立石」には葉山層群の最上部と考えられる安山岩質凝灰岩が分布しています。

葉山層群は断層によって著しく変形・ブロック化して、地層の連続性や上下関係の把握が困難とされるような特異な地質体で、三浦半島や房総半島に延びています。三浦半島の葉山層群は三浦半島中央部を西北西 - 東南東方向に 2 列(北列と南列)に分かれて複雑な形状で分布し、南列の西北西端に相当するような位置に「立石」があります。

プレート説によれば、葉山層群は新生代新第三紀の中新世前期~中期、約1,800~1,500万年前の伊豆・小笠原弧の前面に堆積した火山島弧由来の堆積物がプレートに乗って日本列島に近づき海溝で複雑に変形して日本列島に付加した地層(付加体)であろうと解釈されています。葉山層群は日本海やフォッサマグナが形成された頃の地層であり、周辺では最も古い地層です。

4. 付図及び参考資料

資料1

周辺図 矢印は絵の描画方向

資料3

図は資料1より

赤○印は立石海岸の位置

参考資料

・資料1 藤岡換太郎・平田大二編著 2014 日本海拡大と伊豆弧の衝突―神奈川の大地の生い立ち 有隣堂

・地盤工学会 関東支部神奈川県グループ編 2010 大いなる神奈川の地盤 その生い立ちと街づくり 技報堂出版

・神奈川の自然をたずねて編集委員会編著 2006 神奈川の自然をたずねて(2刷) 築地書館

・松田時彦2007 富士山の基盤の地質と地史 富士火山 山梨県環境科学研究所,p.45-57

・地理院地図(電子国土Web)