八ヶ岳を望む

絵 「春 八ヶ岳を望む」

  • 油彩画
  • サイズ 縦横:F8 横
  • 最終描画:2019年3月
  • 所在地:八ヶ岳 山梨県と長野県に跨る 
  • 絵のビューポイント:山梨県北杜市武川町付近



文 地形地質概要

1. 絵 「春 八ヶ岳を望む」

絵は山梨県北杜市武川町柳澤付近から八ヶ岳をほぼ北方向に眺めています。時期は桜の頃で、八ヶ岳最高峰の赤岳(標高2,899m)を中心としていくつものピークが雪を被っているのを望むことができます。

2. 地形概要

八ヶ岳は長野県から山梨県にまたがる複成火山で、南北約21kmにわたっていくつもの峰が連なり火山列を成しています。八ヶ岳は北側と南側では地形などが大きく異なり、中央部の夏沢峠を境に北八ヶ岳と南八ヶ岳に区分されています。南八ヶ岳は標高が高く、険しい山容を呈しており、南八ヶ岳を南方から眺めると絵のように左(西)側から順に編笠山・権現岳・赤岳・横岳などがスカイラインのピークとして連なっています。

3. 地質概要

八ヶ岳は南部フォッサマグナに位置しています。フォッサマグナは明治初期に来日したエドモンド・ナウマンが発見・命名したものですが、成因については当初から今日まで統一的な立場で解釈されるまでには至っていません。現在ではフォッサマグナの南北で成因や構造が異なることが分かり、諏訪湖付近を境界として北部フォッサマグナと南部フォッサマグナに区分されるようになりました。

プレート説によれば、南部フォッサマグナは伊豆小笠原弧の衝突帯とも考えられています。八ヶ岳・茅ヶ岳・富士山・箱根山はフォッサマグナの裂け目に噴出した第四紀の新しい火山であり、これ等の火山が南北方向に並んでいます。

八ヶ岳は約130~25万年前に活動し、約5万年間の休止期を経て約20万年前から再活動しました。現在は火山活動はありませんが、北八ヶ岳の横岳だけが活火山に指定されています。気象庁の活断層総覧によると、横岳は約800年前に八丁平溶岩を噴出した噴火がありました。

八ヶ岳は日本の火山では最大級の体積を持ち、山体崩壊と岩屑流の発生を繰り返したことが知られています。中でも、韮崎岩屑流は約30万年前に発生した日本最大の岩屑流であり、権現岳あるいは阿弥陀岳付近の山体が崩壊して、山体の一部が岩屑流として流下しました。その岩屑流堆積物は水無川や塩川などによって侵食を受けてきましたが、現在でもニラの葉(韮崎の地名の由来)のような細長い形状の七里岩となって残っています。七里岩は驚くべきことに比高40~150mの断崖をなす台地で、30個以上の流山を含む大規模なものです。なお、韮崎岩屑流と考えられる堆積物が甲府盆地の南縁に沿った曽根丘陵でも認められることから、分布範囲は延長40km以上、堆積土量は10km3以上と考えられ、甲府盆地はその東部を除いて埋め尽くされたようです。韮崎岩屑流のような大規模な山体崩壊と岩屑流はまれとしても、明治以降でも1888年の磐梯山、1911年の稗田山、1984年の御岳伝上川で発生しており、地質学的には頻度の高い現象であると考えられています。町全体が一瞬にして数十メートルの土砂の下に埋没するような激烈な災害を想定しなければなりません。

4. 付図及び参考資料

周辺図

周辺図 矢印は絵の描画方向

点線で囲まれた四角形は右の色別標

高図の範囲

色別標高図

色別標高図 表示範囲は左図の点線

で囲まれた四角形

細長い葉状の七里岩が、中央上から

斜め右に延びる 形状がニラの葉に似

ることから韮崎の地名の由来とされる

参考資料

・町田洋他編 2006 日本の地形5 中部 東京大学出版会

・井口隆2006 日本の第四紀火山で生じた山体崩壊・岩屑なだれの特徴 ‐発生状況・規模と運動形態・崩壊地形・流動堆積状況・発生原因について‐ 日本地すべり学会誌 vol.42 No.5

・全国地質調査業協会連合会 地質情報整備・活用機構 日本列島地質百選

・地理院地図(電子国土Web)