東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)

東北地方太平洋沖地震 3.11以後

 1 注目される(懸念される)地震

 2 巨大地震と噴火

 3 工事中

 1 注目される(懸念される)地震 

東北地方太平洋沖地震は巨大な地震であり、地震の発生前後で日本列島およびその周辺の応力状態が大きく変化したと考えられています。また、地震に関する新しい知見が加わることによって、地震(津波)の発生が危ぶまれるような状況にあることが報道されています。東日本大震災を経験することによって、可能性がある事象は公表および報道されやすいこととも関係していると思われます。そこで、3.11以後に発生が高まったとされる地震についてまとめてみました。

東北地方では陸のプレートの下に太平洋プレートが沈み込んでおり、それによって東北地方を西に押しつける力が働いていましたが、東北地方太平洋沖地震によって押し付ける力が開放され、東北地方は東側(海側)に向かって延びる方向に変位しました。地震後も余効変動として、地震の際の変位と同じような方向の変位や地震で沈下した地域がゆっくり上昇するなどの変位が継続しております。震源域では余震が頻発し、その周辺では誘発による地震が発生し、日本列島は広い範囲で地震活動が活発化しています。このような状況下で発生が懸念されている大地震を列挙すると次のようになります。
 @ 三陸沖北部と房総沖のプレート境界型地震
 東北地方太平洋沖地震の震源域周辺の領域では、まだ破壊されていない岩盤が残っており、海溝型の地震が発生しやすくなっていると考えられています。この地震は海溝寄りの領域と連動することがあります。
 2004年のスマトラ島沖地震(マグニチュード9.1)の3ヵ月後には隣接する領域で同じタイプの地震(マグニチュード8.4)が発生した事例があります。
 A 海溝寄りのプレート境界型地震
 三陸沖北部および福島県沖〜房総沖の海溝寄りの領域が挙げられます。海溝寄りの地震は揺れが小さくても大きな津波が発生する危険があります。
 B 海溝寄り、あるいは海溝の外側のプレート内の地震
 東北地方太平洋沖地震が発生することにより、陸側の岩盤のひずみが開放されることによって、沈み込む太平洋プレートに作用する圧力は減少するため、プレートは引きずり込まれるような力が掛かるとされ、引っ張りによる正断層型の地震が発生することがあります。地震は揺れが小さくても大きな津波が発生する特徴があります。また、海溝の外側の地震はアウターライズ地震と呼ばれる地震です。
 C 活断層による地震
 東北地方太平洋沖地震によって東北地方を西に押し付ける力は弱まりましたが、地震後も岩盤は海側に伸びる方向に変位しており、東北地方の岩盤に作用している力はさらに減少しています。活断層の断層面に作用している力が減少すると摩擦力も減少するので、活断層のなかには滑りやすくなる(地震の発生が高まる)ものがあると考えられています。
 地震調査研究推進本部の発表(2011年6月)によれは、「地震発生確率が高くなっている可能性がある」活断層として次の4つを挙げています。
 静岡-糸魚川構造線断層帯の中部 牛伏寺(ごふくじ)断層を含む区間
 立川断層帯(埼玉県〜東京都)
 双葉(ふたば)断層(宮城県・福島県を跨ぐ)
 三浦半島断層群(神奈川県)
 阿寺(あでら)断層帯 主部/北部 萩原断層(岐阜県、一部長野県にかけて)
「活断層による地震」の情報は「地震調査推進本部 地震調査委員会」
(http://www.jishin.go.jp/main/chousa/11sep_chouki/chouki.pdf)
 D 首都直下地震(代表として東京湾北部地震)
 首都直下地震は東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、茨城県にまたがる領域で発生する地震を指します。その発生確率は30年以内に70%(地震調査研究推進本部)とされていますが、東北太平洋沖地震以後は地震活動が活発化していることから、4年以内に70%程度と試算された例もあります(注;活動状況によって試算結果は変化する)。
 首都直下地震の代表となる東京湾北部地震はプレート境界型地震であり、関東地震の破壊領域より深い(陸側の)領域で発生する地震です。
 首都直下地震についてはこちらを参照ください。

@ 三陸沖北部と房総沖
A 海溝寄りの地震
B 正断層型で、海溝寄り、あるいは海溝の外側の地震
C 活断層による地震
ただし、Aは陸側のプレートでBは海洋プレートであり、海溝寄りの領域ではAの下にBが沈み込んでいる。@Aはプレート境界地震で、Bはプレート内地震、Cは直下型地震。
D 首都直下地震(代表としての東京湾北部地震はプレート境界型地震)

・薄いピンク色の領域は東北地方太平洋沖地震の概略の震源域で、余震活動が活発な領域。☆印はその震央。
・三陸沖北部などの領域区分は「三陸沖北部から房総沖の評価対象領域」地震調査推進本部の地震調査委員会による区分。
・評価対象とされている活断層のうち、「地震発生確率が高くなっている可能性がある」とされる活断層を赤色、その他を黒色で示しています。

2 巨大地震と噴火

3.11以後に発生が高まったとされるのは地震の他に火山の噴火があります。

東北地方太平洋沖地震(マグニチュード9.0)は日本で知られている地震の中では最大といわれる地震であり、連動型巨大地震です。この地震に伴う津波は貞観地震の津波とよく似ていることが津波堆積物の調査と研究によって分かってきました。貞観というと富士山の青木ケ原樹海を形成するもとになった貞観噴火が有名です。貞観噴火(864年)は貞観地震(869年)の5年前の出来事ですが、地震と噴火の間に因果関係があったかどうかは不明です。一方、貞観地震の2年後の871年には鳥海山が噴火しました。東日本(東北地方)でも貞観地震と鳥海山の噴火のように巨大地震の前後で周辺の火山が噴火する傾向が大きいことが認められており、貞観地震と鳥海山の噴火にはなんらかの因果関係があったものと予想されます。

富士山の最も新しい噴火は宝永山を形成した宝永噴火(1707年)です。宝永噴火は、1703年の元禄地震(元禄関東地震マグニチュード7.9〜8.2)に続く1707年の宝永地震(東海地震・東南海地震・南海地震の連動型巨大地震 マグニチュード8.6)を経て、宝永地震の49日後に噴火に至りました。。

世界の事例ではスマトラ島沖地震のようにマグニチュード9クラスの巨大地震が発生すると数年以内に周辺の火山が噴火することが知られています。

上記のようないくつかの事例によれば、地震から数年以内には噴火が起こる可能性が大きいと思われ、その火山は相対的には東北地方の火山の可能性が大きいと思われ、油断できない状況であることがわかります。

参考資料
 理科年表 国立天文台編 平成23年版
 1707年 富士山宝永噴火報告書 中央防災会議 災害教訓の伝承に関する専門委員会 平成18
 宍倉正展他 平安の人々が見た巨大津波を再現する -西暦869年貞観津波- AFERC NEWS No.16 2010
 中禮正明 東日本における火山噴火および内陸地震(M≧6.2)と三陸沖の巨大地震(M8クラス)との時間的関連性について 地学雑誌 111(2) 175-184 2002

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