地震の型

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日本で発生する被害地震のほとんどは海溝型地震と直下型地震の2つの型の地震で説明できるので、この2つの地震の型が新聞紙上などでよく用いられますが、時には聞きなれないタイプの型や別の表現で示されることがあるので混乱します。このページでは地震の型を次のように5つに区分します。なお、( )内は別名またはほとんど同じ意味で用いられる地震の型を示しています。

  1. 海溝型地震(プレート境界型地震、プレート間地震)
  2. 直下型地震(活断層による地震、内陸地震、陸側のプレート内地震)
  3. スラブ内地震(海側のプレート内地震)
  4. 日本海東縁地震(プレート境界型地震、プレート間地震)
  5. 直下地震

海溝型地震(プレート境界型地震、プレート間地震)

海溝は海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込む場所であり、海底の凹地として帯状に分布しています。日本列島の太平洋側には千島海溝、日本海溝、南海トラフ、琉球海溝などの海底の凹地が連なり、ここから海洋プレートが日本列島の下に沈み込んでいます。日本列島を載せた大陸プレートと海洋プレートの境界で発生する地震はプレート境界型地震であり、プレート間地震でもありますが、特徴的に存在する海溝(南海トラフは海溝ではないが同じ海底の凹地)をキーワードとして海溝型地震と呼んでいます。

本来、プレート間の相互関係はプレートが離れる場合は除いて、(A)一方が他方のプレートの下に沈みこむ場合(海溝型地震)、(B)プレートが互いに押し合い衝突する場合(日本海東縁地震)、(C)すれ違う場合の3つに分けることができますが、これらは全てプレート間地震でまとめることができます。

海溝型地震には、東北地方太平洋沖地震、関東地震、東海地震、南海地震などがあり、規模が大きく津波を伴う特徴があります。

直下型地震(活断層による地震、内陸地震、陸側のプレート内地震)

活断層によって発生する地震を直下型地震とよびます。日本列島はプレート運動により東西方向に圧縮されており、その応力の影響によって間接的に活断層が活動します。活断層が活動することによって発生する地震は生活の場である内陸部で発生するために内陸型地震とも呼びます。活断層の活動に伴って発生する直下型地震は海溝型地震と較べて規模(マグニチュード)が小さいのが普通ですが、生活の場である内陸部で発生するため、たびたび大被害が発生しています。

活断層は歴史的に繰り返し活動していることから、地震時の変位が蓄積されて地形として残されていたり、地層が断層で切られているような地震の痕跡が残されていることがあります。活断層の繰り返し間隔は千年~数万年で断層ごとに異なると言われ、ひとたび活断層が活動すると次の活動周期が来るまで活動することはありませんが、隣接地域の活断層が影響を受けて活動しやすくなるとも言われております。活断層の活動履歴を調べることによって発生確率が求められており、地震調査研究推進本部地震調査委員会によって活断層の長期評価として公表されています。

1995年の兵庫県南部地震(マグニチュード7.3)や1891年(明治24年)の濃尾地震(マグニチュード8.0)も直下型地震です。濃尾地震は大規模な地震であり、直下型地震でもプレート境界型の地震に匹敵するような大規模の地震が起こる可能性があることを示しています。

スラブ内地震(海側のプレート内地震)

海側のプレートは陸側のプレートの下に沈み込んでいますが、沈み込むプレートをスラブといい、スラブ内で発生する地震をスラブ内地震と呼びます。また、スラブは海溝やトラフ付近で浅く、陸側に向かって深くなります。プレート内(スラブ内)地震は時としてマグニチュード8程度以上の巨大地震であることがあります。

海溝の外側には海洋底より数百m高い緩やかに盛り上がった隆起帯が存在します。この隆起帯をアウターライズといい、アウターライズを震源域とする地震をアウターライズ地震と呼んでいます。 アウターライズ地震もスラブ内地震に属します。。

スラブ内の浅い地震としては、1933年(昭和8年)の三陸地震津波(M8.1)があり、震源域が浅いために大津波が発生しました。深い地震としては、1993年(平成5年)の釧路沖地震(M7.8)があり、深さは約100kmです。

海側のプレートおよび陸側のプレート内で発生する地震を合わせてプレート内地震と呼ぶことがあります(地震の辞典 宇津徳治他編集 13頁)。この分類によると、活断層による地震は陸側のプレート内地震、スラブ内地震は海側のプレート内地震に分類されます。

日本海東縁地震(プレート境界型地震)

東北日本の日本海東縁にはプレートの境界があり、南下して糸魚川-静岡構造線につながるという説があり、プレート境界は東西方向の圧縮力のために「歪み集中帯」と呼ばれる何条かの断層・褶曲帯が形成され、南北方向に延びています。日本海東縁地震はプレート間(プレート境界型)の地震ですが、太平洋側のようにプレートの顕著なもぐり込みは認められておりません。日本海東縁地震をプレート境界型地震と呼ぶとプレート境界型地震である海溝型地震と混乱するので、日本海東縁という場所を示す名前が付けられています。

日本海東縁地震はいずれも浅い地震であり、1983年(昭和58年)の日本海中部地震(M7.7、死者104人)や1993年(平成5年)の北海道南西沖地震(M7.8、死者行方不明者230人)のような津波を伴う地震が発生しています。

直下地震

都市などの直下で起こる地震を指し、地震の型を示さない地震であったり、想定地震であったりします。東京都の被害想定では、「直下地震」という名称が使われています。この場合の「直下地震」は、東京都の直下で発生する地震という意味での「直下地震」ですが、被害が想定される地震としてはプレート境界型地震やスラブ内地震があります。

中央防災会議の被害想定では地殻内の浅い地震として「横浜市直下の地震」などの表現が用いられています。地殻内の浅い地震とは活断層を示していますが、被害想定のための仮の地震であり活断層の存在は確認されているものではありません。規模の比較的小さい地震ややや深い地震の場合は過去に繰り返して発生していても地表にその痕跡がないことが多く、活断層があるとは認識できないのが普通です。

参考資料

地震調査推進本部地震調査委員会 日本海東縁部の地震活動の評価(2003)、相模トラフ沿いの地震活動の評価(2004)など

理科年表 国立天文台編 (2002)

宇津徳治他編 地震の辞典(第2版)(2001) 

茂木清夫 地震の話 朝倉書店 2001

安部勝柾 最近の大地震の特徴と教訓 「東海地震の予知と防災」 1997

高木章雄 これからの地震予知研究 「東海地震の予知と防災」 1997

石橋克彦 大動乱の時代 岩波新書 (1994) 

東京都 東京における直下地震の被害想定に関する調査報告書 1997