金沢区　---　龍崋寺の震災横死者供養塔と建碑の由来碑　---

龍崋寺

真言宗　御室派（おむろは）　知足山　龍華寺（ちそくざん　りゅうげじ）

龍華寺ホームページより　http://ryugeji.com/index.html

鎌倉の外港として栄えた武州金沢に整然とたたずむ古刹「龍華寺（りゅうげじ）」。寺のおこりは、文治年中（１１８５～１１９０）に源頼朝が六浦山中に創建した浄願寺で、明応８年（１４９９）に融弁上人によって現在の地にあった光徳寺と併合され、移築されました。

通算八百年もの歴史のなかで、複数の寺院の統廃合があった関係上、貴重な宝物も多く、旧本尊「弥勒菩薩坐像」（室町時代）のほか、「脱活乾漆造菩薩坐像」（天平時代）、「木造阿弥陀如来坐像」（平安時代）、「地蔵菩薩坐像」「木造龍頭」（室町時代）などが、横浜市指定文化財となっています。また、境内には、四季折々の草花が咲き誇り「華の寺」として、多くの皆様に親しまれています。

なお、本山は京都、御室（おむろ）、仁和寺（にんなじ）です。

龍崋寺の震災殃死漂流者供養塔と建碑の由来碑

写真3に示すように、震災殃死漂流者供養塔を中心として、その建碑由来碑と地蔵尊があります。

震災殃死漂流者供養塔

石塔の正面には「震災殃死漂流者供養塔」、背面には「大正十三年八月廿四日　施主　大橋須磨子」と刻まれています。

建碑の由来碑

震災殃死漂流者供養塔の併設碑に相当する建碑由来碑には、次のようなことが記されています。

• 関東大震災の犠牲者である40名余りの遺体が金沢一帯の海岸に漂着したこと、
• 当地の住民も震害を蒙っており、漂着遺体を手厚く葬る余裕はなく、各字で仮埋葬を9月14日に終了させたこと、
• 翌年の大正13年7月22日に、大橋新太郎氏の令夫の須磨子氏は町内有志の同意を得て、遺体を荼毘に付しこの浄地に葬り終えたこと、
• 13回忌に当たる昭和10年にこの碑を建て盛大に法要を行ったこと、
• 建碑の由来を記して、将来に引き継ぐこと

　⇒　建碑の由来碑の碑文を見る

震災殃死漂流者供養塔と建碑の由来碑の記載内容から、
・大正13年7月に各地区に仮埋葬されていた遺体を荼毘に付して改葬、
・同年8月に震災殃死漂流者供養塔を建立（建立者　大橋須磨子氏）、
・13回忌に当たる昭和10年に法要を行い、建碑の由来碑を建立（建立者　龍華寺）

されたことが分かります。

漂着遺体と慰霊碑など

東京湾沿岸には漂着遺体を埋葬・供養したことを示す碑などがいくつか存在しています。漂着場所、碑などの設置場所、漂着遺体数などを挙げると次のようになります。

• 東京　品川海岸　海臧寺　震火大災横死者供養塔　数10体
• 東京　大井町海岸　大震火災殃死者供養塔　37体
• 東京　羽田の多摩川河口　五十間鼻無縁仏堂
• 横浜　金沢海岸　龍華寺　震災殃死漂流者供養塔　40余体
• 横須賀　馬堀海岸　浄林寺　大震災殃死者の霊（墓）　6体

＜参考＞　金沢八景と野島

京浜急行の駅名でもある金沢八景は江戸時代からの人気の八つの優れた風景を指しましたが、海岸線は埋め立てによる造成が進み、当時の面影はほとんど残っていないそうです。

金沢八景の中に、野島・夕照橋付近の野島夕照（のじま の せきしょう）というのがありますが、歌川広重の錦絵によると写真6の眺めがこれに相当します。

夕照橋の架かる平潟湾は、砂州で形成された潟湖でした。砂州・潟湖・野島という自然の景観が人気であったと思われますが、現在は平潟湾の周辺は埋立てられて写真6のように川のようになっています。