宮 城 県 沖 地 震  



 【2011年5月3日更新】
 2011年4月26日の地震予知連絡会によると、同年3月11日の東北地方太平洋沖地震発生時に宮城県沖地震も起きていたとする見解が発表されました。宮城沖地震の震源域の断層も東北地方太平洋沖地震の断層と一体となって動いたという解釈です。
 なお、国の機関である震調査研究推進本部 地震調査委員会からは発表されていません。(5月3日現在)

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 宮城県沖地震は、平均37年程度の活動周期で発生しており、次回の地震が徐々に近づいています。今後は、年々地震発生の可能性が高まってきますので、注意深く地震情報に接するとともに個人としての防災対策に留意する必要があります。

 2005年8月の宮城県沖の地震
 宮城県沖地震および再来の根拠
 発生確率(地震調査研究推進本部)
 被害想定(仙台市)
 迫りくる宮城県沖地震

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2005年8月の宮城県沖の地震

 2005年8月16日に宮城県沖で地震が発生し、最大震度6弱を観測しました。46名の負傷者が出てそのうち3名は重傷者でした。この地震の発生箇所は想定宮城沖地震の震源域に含まれており、この地震が想定宮城沖地震かとも思われましたが、地震の規模が小さい(M=7.2)こと、及び余震分布や地震波から推定された破壊領域が想定震源域全体に及んでいないことから、地震調査研究推進本部 地震調査委員会によって想定宮城沖地震ではないと評価されました。
 想定宮城沖地震のマグニチュードは7.5 前後であるとされ、日本海溝寄りの海域の地震と連動して発生した場合にはM8.0 前後と考えられています。

宮城県沖地震および再来の根拠

図マーク  図 my-1 繰り返される宮城県沖地震
(グラフは地震調査研究推進本部 H12.11.27 を使用して作図)
表マーク  表 my-1 1973年以降の宮城県沖地
発生年月日 前回の地震からの
経過年数(年)
地震の規模 単独/連動 被害状況
1793年 2月17日 --- M8.2程度 連動 死12?
津波被害
1835年 7月20日 42.4 M7.3程度 単独 仙台城の石垣崩壊
1861年10月21日 26.3 M7.4程度 単独 死傷あり
1897年 2月20日 35.3 M7.4 単独 小規模の被害
1936年11月 3日 39.7 M7.5 単独 非住家全壊3
1978年 6月12日 41.6 M7.4 単独 死28、傷1,325
住家全壊1,183
経過年数平均      37.1
宮城県沖地震の長期評価地震調査研究推進本部 地震調査委員会 H12,11,27 より
被害状況は理科年表より
 
宮城県沖地震集積確率の時間推移
図マーク  図 my-2 宮城県沖地震の集積確率の時間推移
(地震調査研究推進本部 地震調査委員会 H12,11,27)

 宮城県金華山沖を震源とする地震は宮城県沖地震と呼ばれ、、右の図 my-1のグラフおよび表 my-1(地震調査研究推進本部 地震調査委員会)に示すように、1793年以降平均約37.1年の活動周期で発生しています。
 図 my-1の水色の棒はそれぞれ1つ前の地震からの経過年数です。最下段の黄色の棒は前回1978年の宮城沖地震から現在(2011年1月1日現在)までの経過年数です。
 現在の経過年数(32.6年)は最小経過年数(26.8年)を既に越え、徐々に平均経過年数(37.1年)に近づいています。
 このように、歴史地震の活動間隔が、宮城県沖地震が再来する根拠になっています。

 前回の1978年の宮城県沖地震とは、仙台市を中心に死者28名、負傷者1,325名を出し、市街地周辺の造成地に被害が集中した地震です。また、死者28名のうち16名はブロック塀や石塀の倒壊によるものであったことも注目を集めました。本震の約8分前にM5.8の地震が発生したことや同年2月20日にこの地域にある程度の被害を伴う地震(M6.7)があったことが、本震被害の予防・軽減に効果があった(樋口政志 宮城県における建築物地震防災対策 建築防災 2001)といわれているものの、それでも、過去の歴史地震と較べて大きな被害が発生しました。
 被害が拡大した背景には、仙台市の都市化の拡大があり、地震被害の様相が古い時代とは変わっているように思われます。
 なお、表 my-1において、単独/連動の2つに区分されていますが、連動とは日本海溝寄りの海域の地震と連動した場合であり、過去に連動した例があります。表 my-1の表の最上段に記載されている1793年の地震がこれに当たります。

地震調査研究推進本部 地震調査委員会の発表

 宮城県沖地震の発生の可能性が今後年々高まっていくことから、平成12年11月27日に地震調査研究推進本部の地震調査委員会は「宮城県沖地震の長期評価」と題する情報を公表しました。なお、図 my-1のグラフは、この「宮城県沖地震の長期評価」に記載されている数値から作図したものです。
 「宮城県沖地震の長期評価」によると、『地震発生の可能性は、年々高まっており、今後20年程度以内(2020年ごろまで)に次の地震が起こる可能性が高いと考えられる。また、地震の規模は、単独の場合にはM7.5前後、連動した場合にはM8.0前後となると考えられる。』と評価され、発生確率などが示されています。

 図 my-2は、「宮城県沖地震の長期評価」(地震調査研究推進本部 H12.11.27)に示されている宮城沖地震の集積確率の時間的推移であり、前回の地震から評価時点までに地震が発生しているはずの確率を示しています。

表マーク  表 my-2 評価時点と地震発生確率
(地震調査委員会)
評価時点 10年以内 20年以内 30年以内 地震後経過率
2005年1月1日 50%程度 90%程度 99% 0.72
2006年1月1日 50%程度 90%程度 99% 0.74
2007年1月1日 60%程度 90%程度 99% 0.77
2008年1月1日 60%程度 90%程度以上 99% 0.80
2011年1月1日 70%程度 - 99% 0.88

 表 my-2は地震発生確率を数値で示したもので、2011年1月1日現在、10年以内に地震が発生する確率は70%程度に上昇しています。

被害想定

 仙台市では宮城沖地震の単独型と連動型、および長町−利府断層による3つのパターンの地震について、被害想定を発表しています。長町−利府断層による地震とは、仙台市の中心部を横断する断層が活動することによって発生する地震であり、宮城県沖地震の被害より大きな被害(死者数:1,032人)が想定されています。(平成14年度 仙台市地震被害想定調査報告書(概要) 仙台市による)
 地震調査推進本部 地震調査委員会の発表によると、今後30年以内に長町−利府断層が活動することによって地震が発生する確率は1%以下(平成14年時点)とされており、相対評価では、「今後30年の間に地震が発生する可能性は、我が国の主な活断層の中ではやや高いグループに属する」となっています。

 ここでは、長町−利府断層ではなく、地震の再来が迫りつつある宮城県沖地震(単独型および連動型)ついて仙台市の被害想定についてのみ示します。

表マーク 表 my-3 宮城沖地震被害の概要 単独 (条件:冬・夕)
(仙台市 平成14年11月 より)
青葉区 宮城野区 若林区 太白区 泉区
建物全壊・大破棟数 13 1,295 1,716 666 47 3,740
うち、木造棟数 4 799 1,073 461 33 2,371
焼失棟数 1,595 1,072 1,422 168 429 4,686
死者数 4 15 5 2 1 27
負傷者数 327 671 554 193 161 1,906
うち、重傷者 57 81 77 21 17 253
長期避難者数 6,836 17,237 18,913 7,756 4,189 54,931
表マーク 表 my-4 宮城沖地震被害の概要 連動 (条件:冬・夕)
青葉区 宮城野区 若林区 太白区 泉区
建物全壊・大破棟数 73 1,649 2,611 1,682 174 6,191
うち、木造棟数 59 1,053 1,777 1,196 143 4,228
焼失棟数 1,734 953 2,072 655 371 5,785
死者数 7 27 32 14 7 87
負傷者数 754 1,059 1530 841 479 4,663
うち、重傷者数 99 123 190 91 49 552
長期避難者数 11,026 22,043 30,593 21,809 9,045 94,516

 宮城沖地震の被害の概要を表 my-3 に示します。この表の数値は火災による被害が大きいと思われる冬の夕方(18:00)・風速6m/sという条件を基にして想定されたものです。単独の場合の宮城沖地震による被害は、死者28人、負傷者1,906人、建物の全壊・大破棟数3,740棟数で、前回、1978年の宮城県沖地震での被害とほぼ同程度の被害が想定されています。
 連動したときの被害は、単独の場合と較べると(表 my-5参照)、死者で3倍強、その他で2倍弱から2倍強が想定されています。

表マーク 表 my-5 単独・連動被害比較
被害項目 連動/単独
建物全壊・大破棟数 1.7
うち、木造棟数 1.8
焼失棟数 1.2
死者数 3.2
負傷者数 2.4
うち、重傷者数 2.2
長期避難者数 1.7


迫りくる宮城県沖地震

 「迫りくる宮城県沖地震」(建築防災 日本建築防災協会 2001)と題した東北大学の大竹政和教授の論文には、宮城県沖地震の全体像が解説されており、文末には高所から見た防災対策の必要性が示されています。文末をそのまま引用します。

 『次の宮城沖地震は、今世紀の早い時期にほぼ間違いなくやって来る。さらに、仙台の市街地を貫く長町−利府断層帯の活動も予断を許さない。被害が予想される地域では、地震防災対策を早急かつ抜本的に強化しなければならない。

 その際に、前回の1978年宮城沖地震以後に進行した、仙台市を中心とする都市構造の変容に特別の注意を払う必要がある。この23年間に、超高層ビル群、新幹線、地下鉄が新たに出現した。仙台市の北部と南部の副都心には高層マンションが林立し、宅地開発はさらに郊外へと広がっている。一方で、老朽化した住宅の耐震改修は遅々として進んでいない。仙台市は、東北地方でもとりわけ人口の流動性の高い都市である。前回の宮城沖地震の体験者は、おそらく、前市民の半数にも満たないだろう。来るべき宮城県沖地震の災害は、前回の地震体験の単なる延長線上でとらえるわけには行かない。

 地震は自然現象であり、その発生は止めることができない。残念ながら、現段階では地震の予知に多くを期待することは困難と言わざるを得ない。しかし,地震災害は、事前の対策によって確実に軽減することができる。次の宮城県沖地震が宮城大震災として名を残すことにならぬよう、国、自治体、地域住民をあげての取り組みが求められている。』

 関東地震や南海地震の活動周期は100〜150年程度であるのに対し、宮城県沖地震の活動周期は40年弱です。活動周期が異なる最も大きな要因は、大陸プレートの下にもぐりこむ海洋プレートの速度が異なるためであるといわれており、宮城県沖ではもぐり込み速度が大きいことが特徴です。
 宮城県沖地震の活動周期が短いことから、人の一生のうちに一度か二度はこの地震に遭遇することになります。

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本文記載外参考資料
理科年表 国立天文台編 2001年発行
宇佐美龍夫著 新編 日本被害地震総覧 東京大学出版会 1987
 

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