東海地震はその発生が迫っているといわれる地震であり、「大規模地震特別措置法」という法律のもとで震災軽減対策や直前予知を目指した対策が取られています。「大規模地震特別措置法」は東海地震だけを対象としています。
南海トラフで起こる地震の繰り返し
地震の発生が懸念される根拠
東海地震の地震のシナリオ
大規模地震特別措置法
情報の発表と警戒宣言
警戒宣言に伴う問題と発表情報の変更
震度分布および震度6弱以上が予想される市町村
津波の高さと到着時間
地震防災対策強化地域
気象庁発表資料は こちらへ
気象庁ホームページ内の報道発表資料 の「判定会」にリンクします。
http://www.jma.go.jp/jma/press/hantei.html
図 TK-1 南海地震と東海地震の発生時期(黒丸印は遺跡で地震跡が認められたもの) (寒川明 遺跡に刻まれた地震の痕跡 地質と調査 '93第4号より) |
【南海トラフでおこる地震の繰り返し】
南海道・東海道沖には南海トラフと呼ばれると呼ばれる海底の凹地が連続しています。南海トラフでは、日本列島を載せたユーラシアプレートの下に、一定の速度でフィリッピン海プレートが沈み込んでいる場所に相当し、プレート境界型の巨大地震が繰り返して発生しています。(プレート境界型の地震については、第一部「1.3 地震の型」参照)
図 TK-1は、古文書の調査(図の下段の実線)と遺跡の調査から推定される南海トラフでの地震(黒丸印)の発生時期を示しており、歴史的に繰り返して大地震が発生していることが分かります。比較的資料の多い1605年以降では、100〜150年程度の周期があります。一方、それ以前の繰り返し周期は一見異なるようにも見えますが、資料(古文書)が少ない、あるいは欠如しているためと考えられ、周期は不明であっても、有史以来、繰り返して発生していることは分かります。
図 TK-1において、A、Bの範囲でおきる地震を南海地震、C、D、E の範囲でおきる地震を東海地震と呼んでいました。ところが、1944年に起きた地震は
E の領域を含んでいないことから、東海地震と呼ばずに東南海地震と呼ばれています。この地震以前に発生した地震については、C、D、Eの領域で発生する地震を総称して東海地震と呼ぶことがありますが、本文では震源域によって東南海地震と東海地震に分けて呼ぶとにします。
1944年の東南海地震が発生した2年後の1946年に南海地震が発生しましたが、周期として一つ前の1854年には東海地震および東南海地震が発生したその32時間後に南海地震が発生しました。このように、1605年以降に限れば東南海地震と南海地震は同時に発生するか、あるいは先ず東南海地震が発生し、その後2年以内に南海地震が発生するような特徴があります。
東海地震は、1970年頃に、茂木清夫氏や力武常次氏などによってその可能性が指摘され、その震源域は漠然と遠州灘方面とされていましたが、1976年(昭和51年)、石橋克彦氏によって発表された「駿河湾地震説」によって東海地震がどのような地震か具体的に示されました。
駿河湾地震説の内容は、
『@駿河湾トラフは巨大地震発生能力をもつプレート沈み込み境界である、1854年安政東海地震の震源域は図 TK-1、図 TK-2の C+D+E だった、B1944年東南海地震の震源域は C+D だった、Cしたがって E が大地震空白域で、来るべき東海地震はむしろ「駿河湾地震」である、D明治以来進行している駿河湾西岸の沈降と湾一帯の西北西−東南東の短縮は駿河湾地震の準備と考えられる、E大きな変形量と1854年以来の経過時間から考えて大地震発生は切迫している恐れがある、F駿河湾地震が完全な形で起こればM8級直下型地震となって最悪の災害が予想されるので直ちに地震予知防災対策に着手すべきである』(石橋克彦 第地震動乱の時代 岩波新書)
というものでした。
「駿河湾地震説」では、静岡、清水、焼津などの都市直下を震源域とする巨大地震であることから、地震学会での発表が社会に大きくインパクトを与え、東海地震の予知の実現についての社会的要望が高まることになりました。
これによって、『1976年12月測地学審議会が予知計画の見直しの建議を行い、翌年の地震予知推進本部の決定によって、観測の強化、常時観測体制の充実、判定組織の整備が推進されることとなった。この結果、気象庁、国土地理院、国立大学などのデータが気象庁の一室にテレメータで集められ、24時間監視されることになった。これをじっさいの防災に役立てるためには法的裏づけが必要とされ、1978年に「大規模地震対策特別措置法」(大震法と略記する)が制定、施行されている。』(茂木清夫 地震のはなし 朝倉書店)
という経過をたどるたどることになりました。
図 TK-2 東海地震と東南海・南海地震について(中央防災会議 2001年 に着色) |
図 TK-2は、平成13年に中央防災会議が発表した資料に色付けをしたものであり、東海地震の発生が懸念される根拠(空白域の存在)を示しています。
図TK-2によると、1944年の東海地震の震源域で発生した地震(東南海地震)は、E
の領域を含んでいません。E 領域のひずみが開放されずにその後も今日までひずみが増え続けていることが観測されています。
南海トラフで発生した地震は、1605年の慶長地震から1946年前回の東南海地震まで4回あります。その期間での最大発生間隔は147年ですが、E
の領域では、安政東海地震以来、既に147年を経過しており、E 領域ではいつ地震が発生してもおかしくない状態にあると考えられています。
ひずみが増え続けている根拠としては、明治以来繰り返して実施されている水準測量や最近のGPS測量により、掛川に対して御前崎周辺が一定の割合で沈降している(国土地理院 2001)ことや三角測量により水平的な移動が蓄積していることなど挙げられています。
E 領域単独の大地震は歴史上例がなく、次の南海トラフでおこる一連の巨大地震を待って、一緒に起るのではないかという意見もあります。これは、現在想定されている東海地震が図
TK-2の最下部に黄色のバー示した時期(今世紀中頃近く)まで起こらないのではないかということです。
判定会会長の溝上恵氏はその著書「徹底検証 東京直下大地震」(小学館文庫)で、"東海地震へのシナリオ"
-M8級巨大地震への条件は整った- という章を設け、章の扉で、東海地震を次のように紹介しています。
『過去を遡ると、南海トラフのプレート境界を震源域とする巨大地震は周期的に起きている。また、東海・東南海沖の2地域の震源地で発生する巨大地震は、互いに間をおかず連動している。しかし、東海沖一帯は、1854年の「安政東海地震」のとき、未破壊領域として震源域とならないまま取り残され現在に至った。146年間もの長い間、断層の歪は蓄積され、すでに限界状態に達している。巨大地震は、いつ起きても不思議ではない。』いつ起きても不思議でない巨大地震、これが東海地震です。
溝上恵氏は前回の東海地震(1854年「安政東海地震」)から近い将来に起こる次の東海地震に至るシナリオを6段階に分けて解説していますが、そのシナリオの一部を抜粋あるいは簡略にして示すと次のようになります。
第1期 長期的前兆活動(1974年〜1989年)
伊豆半島沖、浜名湖付近、山梨県東部、長野県西部などの地震活動は、東海地震の震源域を遠く取り巻く、いわゆる「ドーナツ・パターン」を形成した。
第2期 中期的前兆活動T(1990年〜1996年10月)
伊豆半島の地震活動域が一歩駿河トラフよりに西進し、新島、神津島付近を中心とした銭洲海嶺北東部の地震活動が活発化した。また、御前崎の沈降速度の低下が見られるようになり、プレート間の固着状態にやや弛みが生じ始めた兆しとも考えられる。
第3期 中期的前兆活動U(1996年10月〜2000年)
東海地方のプレート境界の固着域と推定される領域を縁取り、地震が発生した。固着域のほぼ全域でまだ固着状態が保たれているものの、その周辺部では固着域の「剥がれ」が進行しつつある。これは、固着域の一部が緩やかに「滑り」出す”プレスリップ”の発生の準備段階に対応する。御前崎の沈降速度の低下はその後も継続し、その傾向はさらに目立ち始めた。
第4期 中期的前兆活動V(2000〜?)
東海地震の震源域の外縁域でM6クラスの地震が発生し始め、固着域の「剥がれ」現象が加速する一方で、静岡県を中心とした固着域では地震が減少し、静穏期が続く。同時に、御前崎の沈降速度の低下も引き続いており、1999年8月頃からはフィリッピン海プレート内の地震にも静穏期の傾向が出てきた。これは、巨大地震の前の静穏期に入ったと考えることができる。
第5期
御前崎では沈降の停滞が終わり、隆起傾向が始まる。プレート境界付近では前震活動と考えられる微小な地震活動が始まる。GPS(汎地球測位システム)によって陸プレートの動きが広範囲にわたり変化し始めたことが観測される。
第6期
GPSは第5期の変化がいよいよ加速しつつあることを確認し、体積歪計観測では三地点以上でほぼ同時にあらかじめ設定されてレベルを超える異状が表れ、地震防災対策強化地域(東海地震)判定会が急遽招集される。
判定会で東海地震が目前に迫っているという判定が下されると、その結論を気象庁長官が内閣総理大臣に対し、地震予知情報として伝える。内閣総理大臣は閣議を経て、警戒宣言を発し、東海地震の発生に備える。
(注)判定会とは、気象庁長官の諮問機関として気象庁に設置されている「地震防災対策強化地域判定会」の略称です。
1978(昭和53年)に施行された「大規模地震特別措置法」は、大規模地震に備えて国や地方自治体・企業・事業所などが取るべき対策を定めた法律であり、事前対策および予知された場合の対策について定められています。
第三条では、地震防災に関する対策を強化する必要がある地域を内閣総理大臣が地震防災対策強化地域(強化地域)として指定することとなっており、東海地震を対象とした強化地域として、8都県の263市町村が指定されています。
強化地域の指定により、
@観測および測量が強化(第四条)、
A中央防災会議における地震防災基本計画(第五条)、
B行政機関等における地震防災強化計画(第六条)、
C病院、劇場、百貨店、石油類の取り扱い施設、鉄道等の特定民間業者における地震防災応急計画などの計画の作成(第七条、第八条)
事前・直前対策の推進が求められています。
D警戒宣言の発令(第九条)
Eこれに伴う地震災害警戒本部、都道府県地震災害警戒本部、市町村長地震災害警戒本部の設置(第十条、第十六条)
などが定められています。
(「図 TK-3 警戒宣言の発令と備え」を参照)
警戒戒宣言は「大規模地震特別措置法」の第九条に規定されています。
内閣総理大臣は気象庁長官から地震予知情報の報告を受け、地震防災応急対策を実施する必要があると認めるときは、閣議を経て警戒宣言を発する(第九条)と規定されています。
図 TK-3の左側の図は異常現象が検出・発見されてから警戒宣言が発令されるまでの過程であり、気象庁から発表される情報によって、国や地方自治体および事業所、住民などが取るべき対応を示しています。
南関東から中部地方にかけて展開されている地殻変動や地震活動の常時観測網のデータは気象庁(東京都千代田区大手町)にリアルタイムで集められて自動処理による常時監視(地震活動等総合監視システム)が実施されています。
異常現象が検出・発見され、東海地震注意情報が発表されると、判定会が招集されます。
判定会の招集基準は「ひずみ観測点のうち、3箇所以上でそれぞれの地点の検出可能レベルの変化が観測された場合」とされています。
判定会によって、東海地震が発生する恐れがあると認められた場合は、東海地震予知情報が発表され、警戒宣言が発令される手順になっています。
表TK-1は、気象庁から発表される情報の発表基準と防災対応であり、情報には東海地震観測情報、東海地震注意情報、東海地震予知情報の3種類があります。
表TK-1 東海地震に関連する情報 (内閣府および気象庁ホームページより編集) | |||
情 報 名 | 発 表 基 準 | 防 災 対 応 | |
種 類 | 東海地震 観測情報 (青信号) |
東海地震の前兆現象について直ちに評価できない場合 (少なくとも1ヵ所の歪計で有意な変化が観測された場合等、または、顕著な地震活動が発生した場合であっても東海地震との関連性について直ちに評価できない場合等。) |
国や自治体では情報収集連絡体制がとられる。 |
東海地震 注意情報 (黄色信号) |
東海地震の前兆現象である可能性が高まったと認められた場合 (2ヵ所の歪計で有意な変化が観測された場合であって、前兆すべりによるものである可能性が高まった場合等。) |
防災の準備行動がとられる。 (児童、・生徒の帰宅、救助・救急・消火隊などの派遣準備) 判定会が開催される。 |
|
東海地震 予知情報 (赤信号) |
東海地震が発生する恐れがあると認められた場合 (3ヵ所以上の歪計で有意な変化が観測された場合であって、前兆すべりによるものと認められた場合等。) |
警戒宣言の発令。 地震災害警戒本部の設置 住民避難、交通規制等の実施 |
図TK-3および表TK-1の情報の発表と防災対応は、平成16年1月5日から実施されています。
【警戒宣言に伴う問題と発表情報の変更】
「大規模地震特別措置法」では、直前予知が可能であることを前提とした法律であり、非常に厳しい規制が実施されることになっています。
ところが、法律の施行後、地震の研究が進むにつれて地震の予知はそう簡単でないことが明らかになり、多くの地震学者が警戒宣言とこれに伴う発生する問題を提起していました。
問題とは、予知の不確実さと警戒宣言を出した場合の社会的影響の大きさであり、両者が相互に関係しています。
予知の不確実さについては、「@相当の確信を持って大地震が起こると判断できる場合であっても、数時間以内に起こるのか、あるいはニ、三日以内ぐらいか、あるいはもっと先きなのかの判断は難しいこと、A確かな前兆を待って予知情報を出そうとすると、予知情報を出す前に地震が起こってしまう(見逃す)可能性が大きくなりますが、一方では、弱い前兆だけで予知情報をだすと、地震が起こらない(空振り)可能性が大きくなること」が挙げられています。
社会的影響とは、警戒宣言がだされた場合、規制内容が余りにも厳しい規制等に起因し、警戒宣言発令後から地震発生まで、社会がどのくらいの期間耐えられるかということになります。
地震学者から指摘されている警戒宣言に伴う問題などについて、以下に示します。
@予知の問題
「大規模地震特別措置法」は、確実に予知できるという、予知を前提としており、その制定過程で国会に参考人として招致された地震専門家は地震予知にかなり慎重な意見を述べているように、当時の学会の一般的な見解から突出した見解が成立の根拠になったことを指摘しています。(茂木清夫 地震予知を考える 岩波新書)
A社会的影響の問題
地震予知の不確定さが大きいにもかかわらず、判定会の判定結果は地震が起こるか起こらないか(白か黒か)しかだせないとし、『さて判定会が開かれて、かりに黒になった後にも、じつは問題があるのです。地震はすぐには来ないかもしれないのです。一日、二日はまだいいかもしれません。でもそれが三日になり、四日になりそしてもっと長くなったら騒ぎは大きくなるはずです。いつまでも交通や社会的な活動や工場をストップしておくわけにはいきません。新幹線だけでも一日三五万人もの人を運んでいます。ストップが一日長くなるたびに、運賃収入だけでもニ八億円ずつ失われていくのです。全体としての人的、経済的な損失は大変なものになるでしょう。・・・(中略)・・・ 前兆らしい信号が捉えられてから、もし地震がすぐには来なかったとしたら、じつは今の学問では、警戒宣言を解除していいものかどうか、ほとんど分からないのです。』と指摘しています。(島村英紀 地震はどこで起こるのか 講談社)
日本総合研究所の警戒宣言発令による社会的コストを引用して、一日あたり少なくとも7,200億円になることを紹介し、『警戒宣言が発令されると、強化地域内ではこれらの新幹線、高速道路をストップさせ、銀行・郵便局の窓口を閉め、デパート・スーパーも窓口を閉じる。病院の外来診療も中止し、学校の児童生徒は帰宅させることになる。これはまるで、戒厳令下の規制のようなものである。首都圏と中京・関西圏が分断され、その影響は日本国内ばかりでなく海外にも波及するであろう。』と社会的影響の大きさを指摘しています。(茂木清夫 地震予知を考える 岩波新書)
B対応策の提言
『第一に、ひじょうにはっきりした異常変化が観測されて、判定会のメンバーのほとんどの人が「これは東海地震の前兆と考えられる」とした場合には警戒宣言をだす。第二はそれほど明瞭ではないが、平常の状態と違って専門家にとって気になる変化が観測された場合は注意報をだす。』ことを提言し、『現行の大震法では、異常があたら見逃しはしないというのを基本的な立場としているので、注意報に相当する状況でも警戒宣言をだすことになるかもしれない。その場合は空振りとなる可能性が大きい。一度このような空振りで何兆円もの社会的損害、会社の倒産の続出などがあれば、「警戒宣言など出すな」、「地震予知は有害だからやめるべきだ」という大合唱が起こるかもしれない。一方、警戒宣言の発令による膨大な社会的経済的コストを考慮して、よほど明確な変化が起こるまで躊躇してしまう可能性が大きく、そうすると見逃してしまうことになる。見逃しと空振りの両方をできるだけ避けるためには、白か黒かの二者択一ではなく中間の灰色情報が必要となる。 ・・・(中略)・・・ そこでもっと規制の緩い中間的予知情報、すなわち注意報をもつけくわえることが必要なのである。』と述べています。(茂木清夫 地震予知を考える 岩波新書)
これらの問題に対して、平成10年からは気象庁が解説情報と観測情報の2種類の情報を発表するということで対応しており、解説情報は平成11年5月10日に第1号が発表されて以来、平成15年4月9日で第4号が発表された実績があります。
解説情報はいわゆる安全(青色)信号に相当します。
一方、判定会招集には至っていないが観測データの推移を見守る必要があるような場合には観測情報が発表されることになっており、この情報が発表されると、関係者は続報を逃さない連絡体制をとることが求められ、いわゆる注意(黄色)信号になります。
更に、平成16年1月5日からは、表TK-1のように東海地震に関する情報が「東海地震観測情報」・「東海地震注意情報」・「東海地震予知情報」の3段階になりました。
いわゆる、青信号、黄色信号、赤信号に相当します。
図 TK-4 中央防災会議 東海地震に関する専門委員会より(2001/11/27) 橙色:震度6強もしくは7、黄色:震度6弱、黄緑色:5強以下 |
中央防災会議*は最新の情報をもとに東海地震による震度分布や津波の高さなどの見直しを行い、震度6弱以上の分布域が西に広がるという結果を発表(2001/11/27)しました。
中央防災会議*
災害対策全般にわたる基本とな法律「災害対策基本法」で規定されており、地震対策の充実強化の検討を目的に2001年(平成13年)に設置されました。
図 TK-4 は、見直された想定震源域と震度分布です。橙色の範囲は震度6強もしくは7で、立っていることができず、はわないと動くことができない、もしくは揺れにほんろうされ、自分の意志で行動できないような強烈な震動で、耐震性の高い住宅でも破損や破壊するものがあります。また、黄色の範囲は震度6弱で、人が立っていることが困難であり、屋内では固定していない重い家具の多くが移動・転倒するような震動であり、耐震性の低い木造住宅では倒壊するものがあります。
表 TK-2は、中央防災会議が発表(2001/12/11)した震度が6弱以上になる区域が存在する市町村名です。
表 TK-2 震度6弱以上の1kmメッシュが存在する市町村名(中央防災会議 2001/12/11) | ||
神奈川県 | 19市町 | 平塚市、小田原市、茅ヶ崎市、秦野市、厚木市、伊勢原市、海老名市、南足柄市、寒川町、大磯町、二宮町、中井町、大井町、松田町、山北町、開成町、箱根町、真鶴町、湯河原町 |
山梨県 | 57市町村 | 甲府市、富士吉田市、塩山市、都留市、山梨市、大月市、韮崎市、春日居町、牧丘町、勝沼町、大和村、石和町、御坂町、一宮町、八代町、境川村、中道町、芦川村、豊富村,上九一色村、三珠町、市川大門町、六郷町、下部町、増穂町、鰍沢町、中富町、早川町、身延町、南部町、富沢町、竜王町,敷島町、玉穂町、昭和町、田富町、八田村、白根町、芦安村、若草町、櫛形町、甲西町、双葉町、明野村、白洲町、武川村、道志村、西桂町、忍野村、山中湖村、河口湖町、勝山町、足和田村、鳴沢村、須玉町、高根町、長坂町 |
長野県 | 21市町村 | 中川村、飯田市、伊那市、駒ヶ根市、飯島町、宮田村、松川町、高森町、阿南町、阿智村、下条村、天龍村、泰阜村、喬木村、豊丘村、南信濃村、諏訪市、茅野市、高遠町、大鹿村、上村 |
岐阜県 | 1市 | 中津川市 |
静岡県 | 74市町村 | 静岡市、浜松市、沼津市、清水市、熱海市、三島市、富士宮市、伊東市、島田市、富士市、磐田市、焼津市、掛川市、藤枝市、御殿場市、袋井市、天竜市、浜北市、下田市、裾野市、湖西市、東伊豆町、河津町、南伊豆町、松崎町、西伊豆町、賀茂村、伊豆長岡町、修善寺町、戸田村、土肥町、函南町、韮山町、大仁町、天城湯ヶ島町、中伊豆町、清水町、長泉町、小山町、芝川町、富士川町、蒲原町、由比町、岡部町、大井川町、御前崎町、相良町、榛原町、吉田町、金谷町、川根町、中川根町、、本川根町、大須賀町、浜岡町、小笠町、菊川町、大東町、森町、春野町、浅羽町、福田町、竜洋町、豊田町、豊岡村、龍山村、佐久間町、水窪町、舞阪町、新居町、雄踏町、細江町、引佐町、三ヶ日町 |
愛知県 | 45市町村 | 新城市、名古屋市、豊橋市、岡崎市、半田市、豊川市、碧南市、刈谷市、豊田市、安城市、西尾市、蒲郡市、常滑市、東海市、大府市、知多市、知立市、高浜市、豊明市、日進市、東郷町、長久手町、阿久比町、東浦町、南知多町、美浜町、武豊町、一色町、吉良町、幡豆町、幸田町、額田町、三好町、設楽町、東栄町、津具村、鳳来町、作手村、音羽町、一宮町、小坂井町、御津町、田原町、赤羽根町、渥美町 |
図 TK-5 海岸における津波の高さ(中央防災会議) |
中央防災会議は最新の情報をもとに東海地震による震度分布や津波の高さなどの見直しを行い、更にこれらの結果をもとに、「大規模地震特別措置法」に基づく地震防災対策強化地域が新たに指定(平成14年4月)されました。
図 TK-5は中央防災会議(2001/11)により発表された東海地震の際の想定される津波の高さであり、3つの条件(断層モデル)を変えた計算ケースの最大値が示されています。
千葉県南房総沿岸から和歌山県熊野灘沿岸までの範囲に津波が押し寄せると想定されており、特に、伊豆半島先端周辺、伊豆半島西岸、駿河湾東奥、三保半島周辺、御前崎周辺、天竜川から渥美半島先端部にかけて、津波の高さが5〜10mの区域が広がっています。
東京都の新島村、神津島村、三宅村および三重県志摩半島先端部にあたる大王町、志摩町、可児町は、震度は基準に達しませんが、津波の基準により、地震防災対策強化地域に指定されています。
図 TK-6 東海地震津波の第一波予想到達時間(中央防災会議) |
東海地震は陸および陸に近い海域が震源域となるので、強い地震動に襲われるとともに地震発生から津波の来襲までの時間が短く、この意味では震源域が陸地から遠い三陸沖の地震と大きく異なります。
図 TK-6は東海地震の第一波(波先)予想到達時間です。
図 TK-6によると、起震後の津波予想到達時間は、駿河湾西部沿岸から遠州灘にかけての範囲で0分、伊豆半島先端で5分です。遠州灘東部および駿河湾西部沿岸では、立っていることができないような大きな地震動に引き続き、その直後に津波が押し寄せてくると予想されます。避難は秒単位の時間を争わなければならないことの認識が必要です。
「大規模地震特別措置法」に基づく地震防災対策強化地域(強化地域)は、中央防災会議が公表した震度分布や津波の高さをもとに、国・都道府県・市町村の間で調整(意見照会・要望)が進められた後、東京都の伊豆諸島の一部など全国96市町村を新たに加え、表 TK-2の通り、8都県の263市町村とすることが決められ、平成14年4月24日に指定されました。
表 TK-2 東海地震に係る地震防災対策強化地域(防災会議 市町村一覧を編集) | ||||||
東京都 | 3村 |
|
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神奈川県 | 19市町 | 平塚市、小田原市、茅ヶ崎市、秦野市、厚木市、伊勢原市、海老名市、南足柄市、寒川町、大磯町、二宮町、中井町、大井町、松田町、山北町、開成町、箱根町、真鶴町、湯河原町 | ||||
山梨県 | 61市町村 | 甲府市、富士吉田市、塩山市、都留市、山梨市、大月市、韮崎市、春日居町、牧丘町、勝沼町、大和村、石和町、御坂町、一宮町、八代町、境川村、中道町、芦川村、豊富村、上九一色村、三珠町、市川大門町、六郷町、下部町、増穂町、鰍沢町、中富町、早川町、身廷町、南部町、富沢町、竜王町、敷島町、玉穂町、昭和町、田富町、八田村、白根町、芦安村、若草町、櫛形町、甲西町、双葉町、明野町、白洲町、武川村、道志村、西桂町、忍野村、山中湖村、河口湖町、勝山村、足和田村、鳴沢村、上野原町、秋山村、須玉町、高根町、長坂町、大泉村、小渕沢町 | ||||
長野県 | 29市町村 | 飯田市、伊那市、駒ヶ根市、飯島町、中川村、宮田村、松川町、高森町、阿南町、阿智村、下條村、天龍村、秦阜村、喬木村、豊丘村、南信濃村、岡谷市、諏訪市、茅野市、高遠町、下諏訪町、富士見町、原村、大鹿村、上村、辰野町、箕輪町、南箕輪村、長谷村 | ||||
岐阜県 | 1市 | 中津川市 | ||||
静岡県 | 74市町村 | 静岡市、浜松市、沼津市、清水市、熱海市、三島市、富士宮市、伊東市、島田市、富士市、磐田市、焼津市、掛川市、藤枝市、御殿場市、袋井市、天竜市、浜北市、下田市、裾野市、湖西市、東伊豆町、河津町、南伊豆町、松崎町、西伊豆町、賀茂村、伊豆長岡町、修善寺町、戸田村、土肥町、函南町、韮山町、大仁町、天城湯ヶ島町、中伊豆町、清水町、長泉町、小山町、芝川町、富士川町、蒲原町、由比町、岡部町、大井川町、御前崎町、相良町、榛原町、吉田町、金谷町、川根町、中川根町、本川根町、大須賀町、浜岡町、小笠町、菊川町、大東町、森町、春野町、浅羽町、福田町、竜洋町、豊田町、豊岡村、龍山村、佐久間町、水窪町、舞阪町、新居町、雄踏町、細江町、引佐町、三ヶ日町 | ||||
愛知県 | 58市町村 | 新城市、名古屋市、豊橋市、岡崎市、半田市、豊川市、碧南市、刈谷市、豊田市、安城市、西尾市、蒲郡市、常滑市、東海市、大府市、知多市、知立市、高浜市、豊明市、日進市、東郷町、長久手町、阿久比町、東浦町、南知多町、美浜町、武豊町、一色町、吉良町、幡豆町、幸田町、額田町、三好町、設楽町、東栄町、津具村、鳳来町、作手村、音羽町、一宮町、小坂井町、御津町、田原町、赤羽根町、渥美町、津島市、七宝町、美和町、甚目寺町、大治町、蟹江町、十四山村、飛鳥村、弥富町、佐屋町、立田村、八開村、佐織町 | ||||
三重県 | 18市村町 | 伊勢市、尾鷲市、鳥羽市、熊野市、長島町、木曽岬町、二見町、南勢町、南島町、紀勢町、御薗村、浜島町、磯部町、紀伊長島町、海山町
|
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計 | 263市町村 | |||||
凡例 |
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本文記載外参考資料
東海地震に関する新しい情報発表について 気象庁報道発表資料 平成15年7月28日
中央防災会議「東海地震に係る被害想定の検討結果について」 2003/3/3
東海地震による震度分布等のみ直し検討結果について 内閣府(防災担当) 2001/11/27
中央防災会議「東海地震に関する専門調査会」 とりまとめ資料(案) 中央防災会議事務局 2001/11/27
力武常次 新版 日本の危険地帯 新潮選書 1996
中央防災会議「東海地震に関する専門調査会」とりまとめ資料(案) 2001/11/27
尾池和夫著 地震発生のしくみと予知 古今書院
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