〔染人への旅〕  Vol.1  *****扉の言葉*****        目次    top

★日本の伝統工芸であり、我が国固有の染織文化の中でも
 冠たる位置を占むる「手描友禅染」。
 
 その手描友禅染を話題の中心に置き、歴史、技法、価値観、
 昨今の現状、そして染織文化のみならず、日本文化の今日
 の問題点を解き明かし、今後の発展への展望を模索しつつ、
 仕事と制作のための提言と主張を通して、文化のあり方、
 ポリシー、コンセプト等々、様々な角度からの考察を展開
 してゆくサイトとして、本日、このメールマガジンを立ち
 上げました。

 まだ、第一項目で、形も定まりませんが、順次回を追うご
 とに省察研究改新しながら、進めて参ります。

≪項目≫

▲染織史・友禅史
▲友禅染の紹介
▲友禅染の技法
▲染織文化について
▲日本の工芸との関係
▲展覧会案内とイベント情報
▲私見と随想

○内容につきましては、以上のキーワードに沿って
 進めて参ります。
  
 今回は先ず、友禅染の概略について、述べます。

≪手描友禅染---てがきゆうぜんぞめ≫

 西暦1682年、天和二年、二月。生類憐みの令発布の年を
遡ること五年。江戸を中心に、大規模な奢侈禁令の法度が出さ
れました。世にいうこの、天和の大禁令を一つのきっかけとし
て友禅染なる全く新しい紋様が世に生み出されることとなりま
した。
 
 いわゆる金襴緞子の着用を、幅広く制限されるを余儀なくさ
れた武家や町衆達の目が、それまでの刺繍、鹿の子絞り、縫い
箔といった最高級品に比べれば、多少は軽めですが、結構華や
かで優雅且つ派手な模様染めに向かっていったのは、自然な流
れでした。
 
 一説、京の都は知恩院前に住まいしたといわれる、扇絵師、
宮崎友禅斎による考案とも伝えられるこの友禅染は、数々の
染色技術中、一番最後に出現した、言わばそめの集大成、究極
の染法ということが出来ます。
 
 けれども、あまりに優雅で且つ技法技術に走り、いわゆるケレ
ン味なあくの強い表現は、民芸派の評論家、水野博氏などから
「堕落の工芸」と酷評されたほど、その作風、着想は絵画的且つ
作為的です。

 しかし、であるが故に、その表現の広がり、奥行きの深さは、
他の染法の追随を許さぬ、画期的な可能性を常に秘めています。

 只、価格の方も段違いで、武家や一部の豪商など、富裕層のみ
の専用品であったことなどから、何かと批判の対照となり易く、
本来の正しい文化的・美術的評価を与えられなかったというのが
真実です。

 友禅染のみの有する物語性、文学性。絢爛豪華たる中国・東西
アジア、ヨーロッパ等の歴史的服飾美術品に比してもけして見劣
りすることのない、豪奢で優雅なる美学は、我が国を取り巻く、
今日の世界の文化的見識より、再評価を与えられて恥じる事のな
い日本の誇りうる装飾文化の一つであろう、そう信じております。

○最初から少々、硬い話になってしましましたが、友禅染という
 言葉とイメージを知らない、又は思いつかないという方は、
 少ないのではないか、と思います。
 
 残念ながら、此の頃では、着物離れの現象が進みつつあり、多少
 なりとも友禅が話題になるのは、お正月や七五三の折のみとなって
 います。
 それも実は、我が国の染色界を圧迫する元凶ともなっているので
 すが、それらの事には又、先の回で詳しく触れたいと思います。

 このサイトを通じて、少しでも多くの方が、友禅染にご興味とご
 理解を深めて頂けたら、幸せこれに尽きません。
 どうか、末永くご購読下さいます様、お願い申し上げます