「は?」 「もうそれしかねぇよ」 両方まとめて握り締められた手に、冷たい汗が浮かぶのが分かった。どうにかこの混乱した状況を脱しようと頭はも がくのだが、どうしたって動揺が先に立って理屈が成り立たない。 ゾロは生まれてこの方感じたことのない難問にぶち当たった気分だった。 「なあ、そうだろ?」 目の前の男は、まるでそれが至極当然と言わんばかりにゾロに同意を求めてくる。それに益々混乱を深め、そうか、 そうだったか、軽薄そうに見えてこの男は案外真面目だったのだと思い当たって、ゾロは内心舌打ちしたいような気分 だった。 しかしそんなゾロの内心とは裏腹に、相変わらず真剣な様子を崩さない目の前の男は、掴み取ったままのゾロの両 手を閉じ込めたまま、神妙な口調で今世紀最大のギャグを再度繰り返した。 「結婚しよう、ゾロ」 「おい」 「俺も男だ。お前の貞操を奪った責任はきちんと取らせてくれ」 「おい」 「大丈夫。俺には反対するような両親も居ないし」 「おいって!」 「ルフィはお前のこと、すっげー気に入ってるし」 「おい!エース!人の話を聞け!」 「だから、お前は安心して嫁に来い」 そう言って目の前の男――エースがゾロの手の甲に唇を落とすのと、小さい台所と一間の家全体を容易に見渡せる 玄関が開いたのはほぼ同時だった。 そして、ゾロがそこに佇むサンジの姿を見たのは半舜後だった。 サンゾロです!サンゾロだったら、サンゾロです! うちは厳格なサンゾロですよ! |