なおじは小さな黒猫です。



※この時点でヤバいと思った人は、戻りましょう。









































 なおじは猫なので何も出来ませんが、玄関で大人しく帰りを待ちます。
 そうすると帰ってきた途端に抱き上げられて、またあの茶色くて大きな目でじっと覗き込んでくるのです。
「ただいま」
 そう言って頭のところにくちびるをくっつけてきます。それがとても気持ちよくて好きなので、なおじは足がぶらぶらして怖くても、一生懸命我慢し
ます。そうすると今度はちゃんと抱っこしてくれるので、やっぱりなおじは嬉しいのです。
「飯にするか?」
 なおじは大きな声でにゃあと鳴きました。なおじは猫なので人間の言葉が話せません。でもきちんと伝わるのでなおじは一生懸命にゃあと鳴きま
す。そうするとまた頭のところにくちびるをくっつけてくれます。
 人間の名前は下村といいました。
  でもなおじは猫なのでそんな風には呼べません。だからいつもとちょっと違う風ににゃあと言いました。
「なんだ?」
 そうすると人間はちゃんとこちらを向くのです。
 だってなおじは猫なのに、人間はきちんとこちらを向くのです。
「腹減ってるんだな」
 でもやっぱりなおじは猫なので、本当のところは伝わりません。人間はなおじを座布団の上に置いて離れてしまいました。
 そうするとなおじは心配でたまりません。人間は体が大きいのにすぐなおじの見えないところへ行ってしまうのです。
 なおじはお腹が空いていましたが、力いっぱい声を出して、人間を呼びました。
 たくさんたくさん呼びました。
 そうすると人間は慌てたようにお皿を持って駆けて来ます。なおじはそれが嬉しくて、またたくさんたくさん鳴くのです。
「ほら、いっぱい喰いな」
 さっきまでの不安が、目の前のご飯に飛んでしまいました。だってなおじは猫なので、あまりいっぱいの事を一緒には考えられません。
 お腹がとても空いていたので、なおじは急いでご飯を食べました。
 そうしていると人間はなおじの頭をなでてくれます。おっきくてとても暖かいので、なおじはとても安心します。もう寒くないし、ひもじくもないので、
なおじはとてもいい気持ちになるのです。
 そうやって人間はなおじがご飯を食べている間、ずっと頭を撫でているので、時々首がもげそうになりましたが、人間がとてもニコニコしているし気
持ちいいので、なおじはやっぱり我慢するのでした。









(04/02/24)
つづく