なおじは小さな黒猫です。



※この時点でヤバいと思った人は、戻りましょう。









































 突然窓がガタガタというので、なおじは驚いて尻餅を付きました。しっぽがボワリと膨らみます。
 隣では下村が寝転んで本を読んでいましたが、そんななおじを見ると笑って、こっちへおいでと手招きしました。けれどもなおじは腰が抜けてしま
って上手く立ち上がれません。
「今日はちょっと風が強いな…」
 下村は簡単に動けないなおじの体を持ち上げると、横に寝転んでなおじをお腹の辺りにぴったりくっつけてくれました。下村はとてもいい匂いがし
て暖かいので、なおじは嬉しくてに、に、と喉を鳴らすと、大きな手で頭を撫でてくれました。
「びっくりしたな」
 なおじは下村の笑った顔が大好きです。いつもはちょっとツンとした顔が、ほんわりと笑うととても優しい顔になります。大きな目元が細いお月様
の様になって、ちょっと頬が赤くなります。そういうのを見るのがなおじはとても好きでした。
 そのまま下村はまた本を読み始めました。なおじの鼻の先でぺらぺらと紙が踊ります。そうなるとなおじはもうウズウズしてじっとなんてしていら
れません。
「あっコラッ」
 なおじはぎゅうと爪を出して、ぴょんと本の紙に飛びつきました。手の中で紙がくしゃくしゃと音を立てるので、なおじは余計に楽しくなります。飛び
上がってあちらこちらに爪を立てると、ますますなおじは興奮して、踊るように飛び跳ねます。
「本当にお前は…」
 このやんちゃ者、とぺしっと頭を叩かれて、なおじはびっくりして飛びのきました。なんだか下村もびっくりしているみたいです。なおじもびっくりした
のでしっぽはまたボワリと大きくなりました。
 今度は声を立てて下村は笑うと、またなおじを持ち上げて、お腹の辺りにくっつけましたが、なおじはなんだか体が固まって置物みたいです。
 すると下村は何度も何度もなおじの背中をさすってくれました。
「ほら、もう大丈夫だから」
 何度も何度も優しい手が触るので、なおじはようやくぐにゃりと体がやわらかくなりました。そうすると下村は楽しそうに笑いました。
「今日は夜まで家にいるからな」
 夜は空が暗くなる事です。いつも下村はたくさんいなくなるので、空が暗くなるまで下村がいるからなおじは嬉しくて、にゃあと一生懸命鳴きまし
た。すると下村はまた何度も何度も体を触るので、なおじは外ががたがたして怖いのに段々眠くなります。それがあんまり気持ち良いので、ずっと
ずっと、下村がたくさんいればいいのにと思いました。
















(04/04/08)
つづく