なおじは小さな黒猫です。



※この時点でヤバいと思った人は、戻りましょう。









































 お日様が顔を出しいっぱいに降りかかると、なおじはなんだか体がじりじりしてたまりません。
 体がぐんにゃりするのです。
 ぺったりとお腹を床にくっつけていると気持ちがいいので大好きです。
 でも体はやっぱりぐんにゃりするのでした。
「おまえ、またそんなところで…」
 今日は一日下村が見えるところにいる日です。
 おなじが空の良く見えるところが好きなのでぐんにゃりしていると、下村はひょっと突然なおじの体をつかみました。
「ほら、熱くなってる」
 なんですぐにひなたへ行くんだ、と下村の目は少し端が上がっています。知らない顔です。なおじはびっくりして、に、と返事をすると困ったような
顔になりました。
「暑いんだから、窓際には行くな」
 ぶに、と鼻を押されてなおじはつぶっと目を瞑りました。なおじはあんまり鼻を触られるのが好きではありません。
 だから下村がどうやら怒っているのだと気がつきました。
 下村はそっとなおじをふわふわした布の上に置くと、また少し見えないところへ行ってしまいました。それはあんまりつまらない事なので、なおじ
は何度か、に、に、と鳴くと下村は慌てて戻ってきました。それが嬉しいのでもっと鳴くと、下村はなおじを持ち上げて木の台の上に乗せました。
「ほら、水飲め。干物になるぞ」
 そっと目の前に水の入ったお皿が置かれて、なおじは喉が渇いていると思いました。
 下村は何でも分かるのです。
 なおじが鳴くと、なおじのいいようにしてくれます。おなじは一生懸命水を飲みました。
「慌てるなよ」
 水が鼻から入ってふがふがしていると、下村はクスクス笑って楽しそうです。
 おなじが小さくくしゃみをすると、鼻を拭ってくれました。
「ゆっくり飲みな」
 水が無くなってしまうと今度はお皿に白いのを入れて、どうぞと下村が言うのでなおじは有頂天です。なおじはこれが大好きです。
「だから、慌てるなって…」
 なおじがまたふがふがしていると下村はまた笑っておなじの鼻を拭いました。
 そんな事を何度も繰り返して、ずっと下村がそうして笑っていればいいのになあとなおじは思いました。
















(04/08/14)
つづく