乳腺の診断

HER2/neu

 erbB2遺伝子はHER2/neuとも呼ばれ、上皮増殖因子受容体の構造に類似した受容体型の癌遺伝子です。HER2/neuの過剰発現は、乳癌以外にも、卵巣癌、胃癌、膀胱癌などで高頻度に認められています。乳癌患者の約20%に、HER2/neu遺伝子の増幅が認められ、乳癌組織のホルモンレセプターの陰性率が有意に高く、予後が不良であると言われています。また、抗エストロゲン剤や化学療法に抵抗性を示すことが多いのです。

 検査としては、ハーセプテスト、FISH法があり、手術などで採取した乳癌組織を直接検査します。現在、保険診療ではハーセプテストが行われています。この春からはFISH法も検査できるようになる予定です。
 ハーセプテストは、乳癌細胞の表面に発現されたHER2タンパクをモノクロナール抗体で免疫染色して検査します。0、1+、2+、3+と4段階で判定し、2+、3+をHER2過剰発現と評価することになっています。
 FISH法は、HER2遺伝子の過剰発現を検出するフローサイトメーターを利用した方法で、ハーセプテストのような免疫染色法よりも感度が高いと言われています。

 HER2過剰発現の人に対して、ハーセプチン(Trastuzumab)というHER2に対するヒト化マウスモノクロナール抗体を投与するという抗体療法が始まりました。転移性乳癌に対して、奏功率は、単剤で16.9%、パクリタキセルとの併用で48.5% と高値であり、奏功期間も平均 9.1ヶ月と延長がもたらされると報告されています。