トピックス


最新情報


骨転移に1年以上投与のZoledronateは12週毎投与が有効で安全
  ASCO口演発表で、Gabriel N. Hortobagyiらの報告によると、Phase III臨床試験OPTIMIZE-2において、骨転移の治療で1年以上毎月bisphosphonate (Zoledronate:ゾメタ)を投与された患者は、12週毎の投与に切り替えると、治療効果に差がないうえに、筋骨格障害SKEが22%(4週毎は 23.2%)、腎障害が7.9%(4週毎は 9.6%)と副作用が少なかった。           <2014. 6. 2>


小腫瘍のHER2陽性乳癌にTrastuzumabが有効
  ASCO口演発表で、Ciara O’Sullivannらの報告によると、術後補助療法Trastuzumabの効果検証するランダム化試験のメタアナリシスで、2cm以下(T1c)の小腫瘍のHER2陽性乳癌にTrastuzumabが有効で有り、ホルモン受容体陰性では、8年再発率を33.4%から24.0%に(HR 07)、死亡率を21.2%から12.4%に(HR 0.6)、と著明に改善した。           <2014. 6. 2>


両側卵巣摘出で、BRCA1/2変異の乳癌死亡率を減少出来る
  ASCO口演発表で、Kelly Metcalfeらの報告によると、両側卵管卵巣切除することにより術後20年の乳癌死亡率を有意に減少させ(HR 0.62)、とくにBRCA1変異陽性・エストロゲン受容体陰性乳癌には明らかに有用である(HR 0.27)。            <2014. 6. 2>


ビタミンD濃度は、乳癌の無再発生存率などと関連がない
  ASCO口演発表で、Ana Elisa Lohmannらの報告によると、MA.21臨床試験において、25-hydroxyvitamin D (25(OH)D)のレベルは、どのsubtypeでも全生存率、無再発生存率、乳癌死のいずれにも関連がなかった。            <2014. 6. 1>


インシュリン抵抗性転移性乳癌は、ファーストライン化学療法で予後不良である
  ASCOポスター発表で、Alessandra Gennariらの報告によると、HOMA (homeostasis model assessment) index >2.5のインシュリン抵抗性の転移性乳癌患者は、非抵抗性患者が無進行生存率PFSが14ヶ月に対して、8ヶ月と有意に予後不良であった。他の治療方針を検討する必要がある。            <2014. 6. 1>


HER2陽性早期乳癌の術後補助療法として、trastuzumab単独とlapatinib併用とで無病再発率に有意差なし(ALTTO, BIG 2-06)
  ASCO口演のLBAで、Martine J. Piccart-Gebhartらの報告によると、ALTTO (BIG2-06) phase IIIIランダム試験の第一報で、HER2陽性早期乳癌の術後補助療法において、trastuzumab(ハーセプチン)単独とlapatinib(タイケルブ)併用とでは、平均追跡4.5年の段階で、無病再発率を有意に延長することが出来なかった。            <2014. 6. 1>


アロマターゼ阻害剤(exemestane)と卵巣機能抑制(OFS)との併用が、タモキシフェンの併用よりも、閉経前ホルモン受容体陽性早期乳癌で、無病生存率を改善した。
  ASCO口演のLBAで、Olivia Paganiらの報告によると、IBCSG TEXT 2672例+SOFT 3066例のphase IIIIランダム試験で、閉経前ホルモン受容体陽性早期乳癌において、アロマターゼ阻害剤(exemestane)と卵巣機能抑制(OFS)の併用5年間が、タモキシフェンとの併用(T+OFS)5年間と比較して、有意に再発リスクを軽減した。5年無病生存率 AI+OFS:91.1% vs 87.3%: T+OFSであった。            <2014. 6. 1>


ホルモン受容体陰性乳癌で、化学療法中にLHRHアナログ(ゴセレリン)の使用により、早期閉経を予防できる
  ASCO口演のLBAで、Halle C. F. Mooreらの報告によると、SWOG関連のphase IIIランダム試験のPOEMS (Prevention of Early Menopause Study)において、化学療法と共にLHRHアナログを投与すると、早期卵巣不全(POF)を減少させ、より妊娠が増える。閉経前エストロゲン受容体陰性乳癌に、ゴセレリンを使用することで、無病生存率と全生存率を改善させる。            <2014. 5. 31>


ホルモン受容体陽性乳癌に対する術後補助ホルモン療法についてASCOガイドライン改定
  ASCOガイドライン改定において、閉経前・閉経期乳癌女性は、合計10年間のタモキシフェン内服が推奨され、閉経後乳癌女性は、タモキシフェンかアロマターゼ阻害剤に切り替えて、合計10年間の内分泌療法が推奨されることとなった。            <2014. 5. 27>


Citalopramが閉経後ホットフラッシュを軽減
  J Clin Oncology (5/24)に、新しいSSRI抗うつ薬のcitalopram (シプラム)を6週間服用すると、閉経後女性のホットフラッシュ頻度と程度を50%まで減少できたと報告された。パキシルと違って、タモキシフェンとも服用できる。            <2010. 5. 27>


ホルモン受容体陰性乳癌細胞に3マーカー群
  Cancer Research (5/18)によると、ホルモン受容体陰性の乳癌細胞上には3つの特異マーカー群XICが存在することが分かった。標的治療ができないホルモン陰性乳癌に対して、早期発見の画像診断と新たな標的治療の可能性が期待できる。            <2010. 5. 18>


成長ホルモンが乳癌の原因
  Lancet Oncologyに、成長ホルモンのIGF-1が乳癌の原因になり、高濃度の女性に乳癌が多いと報告された。IGF-1は特に小児期には細胞分裂を刺激し、老化防止治療として研究されている。高血中濃度の女性が28%多く乳癌を発生した。特にホルモン受容体陽性乳癌が主であった。            <2010. 5. 17>


2遺伝子発現の小変化が乳癌発生に
  Cancer Researchによると、p53とERα遺伝子発現の小変化が、乳癌に繋がる細胞変化を誘導すると報告された。p53変異とERα過剰発現がほとんどの乳癌患者で存在する。            <2010. 5. 13>


HER2標的薬耐性は克服できる
  IMPAKT Breast Cancer Conferenceで、HER2標的薬耐性が克服できると報告された。代替えHER受容体の活性化による問題をlapatinibやneratinibのような多種のHER受容体をブロックする新しい薬剤が解決できる。また、たのHER受容体活性を導くADAM17を標的としたADAM17阻害薬が有望かもしれない。            <2010. 5. 12>


より多くの乳癌遺伝リスク因子
  IMPAKT Breast Cancer Conferenceで、より多くの乳癌リスク遺伝子に関して以下のように報告された。18個の遺伝子変異やCDK2NAなどリスクに関連する。3個のみの遺伝子試験SCMGENE(ESR1, ERBB2, AURKA)で乳癌サブタイプを分類できる。1個の癌細胞のみで遺伝子検査で腫瘍全体を診断可能。            <2010. 5. 10>


タモキシフェンとの併用禁忌薬を公開
  J Clinical Oncology(5/3)に、メイヨークリニックが乳癌予防でタモキシフェンを内服している女性が避けるべき薬剤を公表しました。paroxetineやfluoxetine以外にも、向精神薬、循環器薬、抗菌薬などが含まれる。タモキシフェン代謝の律速酵素であるCYP2D6に関連している。詳しくは、こちら            <2010. 5. 5>


卵巣ホルモンが乳腺幹細胞成長と関連
  Natureで、プロゲステロンが乳腺幹細胞を変化させることが分かり、妊娠歴が乳腺疾患のリスクの根源になることが報告された。月経周期後半のプロゲステロン上昇で、乳腺幹細胞と近隣細胞との交信が導かれることが分かった。            <2010. 5. 6>


連邦判事が乳癌遺伝子BRCAの特許を打倒
  New York Times (3/30)によると、連邦裁判官の判断で、乳癌と卵巣癌に関与する遺伝子BRCA1とBRCA2に関連する7つの特許が無効であるとした。特許は、乳癌の遺伝子検査への道を妨げ、高価なものとし、セカンドオピニオンを抑制している。遺伝子や自然の産物は、特許の範囲外であるかが問題である。この判断が支持されるならば、他の数千の人間の遺伝子に関する特許が問題となってくる。            <2010. 3. 30>


ヨーロッパ乳癌会議EBCC 2010 情報
  1. 同部位に発生の乳癌は予後不良: 5年無再発後、10年無再発後、初発乳癌と同部位に発生した乳癌は、最も重要な独立した予後因子である。
  2. Bevacizumabが転移性乳癌の進行を遅らせる: 第一線治療として化学療法にBevacizumab (Avastin)の併用により、転移性乳癌の無進行期間PFSを1/3の症例で延長する。生存率も改善する傾向があり、奏功率は85%と報告された。
  3. 良い食事と運動で多くの乳癌は回避できる: 食事量を減らし、運動をするより健康的な生活で、年間18,000名の乳癌発生の40%を減らすことが出来る。400,000名の登録から、アルコールを減らし、穀物と野菜を多く摂ることで、11%の乳癌発生リスク減少が分かった。
  4. 妊娠では乳癌死は増加しない: 乳癌既往がある妊娠では、乳癌死のリスクは高くなく、早く多妊娠の方がリスクを減らせる。妊娠しない人よりも42%リスクを減少した。また、別の報告で、出産後1年以内に乳癌が診断された人は、同年代よりも50%死亡が多く、妊娠中の診断ではほぼ同じであった。
  5. Tamoxifen関連薬剤相互作用のリスクは少ない: 乳癌患者の約10%で、Tamoxifenやアロマターゼ阻害剤とともにCYP2D6経路の阻害因子として働く抗うつ薬が処方されていた。その相互作用は比較的小さく回避可能である。
  6. HER2レベルは、Trastuzumabの治療反応を反映する: 術前化学療法中にHER2レベルをモニターすることで、Trastuzumab (Herceptin)の治療効果を早期に認知することが出来る。Isabell Witzel先生(Medical University of Hamburg-Eppendorf in Hamburg, Germany)によると、高レベルのHER2レベルが20%以上減少すると、完全治癒pCRの可能性が有意に増加する。
  7. 術中照射IORTは有効: 術中麻酔下に手術創内へ小さな球状の容器を挿入し、腫瘍切除床の周囲2cm深度に直接低線量のX線を照射することにより、従来の6週間の治療を僅か30分に短縮する画期的な治療法である。77名に施行した第3期試験でわずか2件の局所再発であった。
  8. 遺伝子変異があっても温存と乳切で生存に違いなし: BRCA1変異陽性の655名で、乳房温存で乳房切除に比べ2〜4倍の局所再発がみられたが、15年後の生存率は同等であった。また、一側乳癌患者が反対側予防的乳房切除を受ける人が倍増しており、5〜10倍の反対側乳癌発生リスクを過剰評価している。別の報告で、390名でBRCA変異の有無関わらず再発・生存率は同等で、そのうち138名が反対側の予防的乳房切除を行った。
  9. 長期の授乳は強悪の乳癌発生リスク増加と相関: 6.2ヶ月以上の授乳で、grade 3やKi67高値の乳癌発生が統計学的有意に増加する。しかし、その根拠は不明。
  10. PARP発現は化学療法の効果を予測: 646名の調査で、Poly(ADP-ribose) polymerase, PARP発現が高値の腫瘍は化学療法が26%に効果があるのに対して、ないと9%であった。また、PARPは分化度や異型度よりも正確な予後因子であった。
  11. βブロッカーが乳癌の拡散を減小: 降圧薬のβブロッカーを乳癌診断時に服用していた人は71%の死亡減少があり、診断時に1年以上服用していた人は乳癌拡散を57%少なかった。癌細胞を刺激するストレスホルモンに対して、競合的に働くか標的受容体をブロックするかでその作用を抑制すると信じられる。
  12. ナベルビン+ハーセプチンで毒性を減小: HER2陽性転移性乳癌に第一選択化学療法として、ナベルビンとハーセプチンの併用は、中央生存期間が39ヶ月で、タキソテール+ハーセプチンの36ヶ月と有意差がないが、無進行期間で有意傾向、治療終結期間で有意に勝っており、有意に毒性が少なかった。
       <2010. 3. 27>


アロマターゼ阻害剤の関節痛に針治療が有効
  Journal of Clinical Oncologyによると、アロマターゼ阻害剤で治療中で、骨格筋痛を経験した人は、その関節を標的にした針治療で、ひどい痛みを減らし、身体的生活を改善できる、と報告されました。       <2010. 3. 5>


反対側乳房切除でホルモン陰性乳癌の生存を延長
  Journal of National Cancer Instituteによると、ホルモン受容体陰性の1期と2期の50歳以下の乳癌患者に、反対側乳房の予防的切除は5年後に無癌生存を4.8%改善させると報告されました。ただ、予防的乳切を行う人は、より健康な人が多く、さらに積極的な一般的治療の方が有益だとのコメントもある。       <2010. 2. 26>


ラソフォキシフェンLasofoxifeneで乳癌リスク減少
  New England Journal of Medicine (2/25)に、選択的エストロゲン受容体調節薬(SERM)のラソフォキシフェンLasofoxifene (ファブリン)は、骨粗鬆症の閉経後女性に0.5mgでエストロゲン受容体陽性乳癌発生を0.3対1.7 (/1000人年)で減少できた、と報告されました。。他に、骨折、心疾患などを予防する。       <2010. 2. 25>


マンモグラフィとMRI併用で、乳癌ハイリスク女性の寿命を延長
  Radiology誌に、マンモグラフィとMRIを併用して毎年検査することが、乳癌ハイリスクの女性の寿命を延長するのに費用対効果で勝っていると報告されました。早期の乳癌を発見でき、乳癌死を減少できる。       <2010. 2. 23>


ニガウリの抽出物が乳癌を予防
  Cancer Research誌に、ニガウリの抽出物で乳癌の予防が出来ると報告されました。細胞増殖を抑制し、アポトーシスを誘導し、細胞周期を調節する。また、p53, p21, pChk1/2を活性化し、cyclin B1 and cyclin D1発現を抑制する、と報じられています。       <2010. 2. 23>


短期間放射線治療で再発減小
  New England Journal of Medicine 2月11日号によると、1234名の乳癌患者の乳腺部分切除後、放射線治療は、5週間照射群が局所再発率6.7%に対して、3週間照射群(1回高線量)が6.2%と勝っていることが分かりました。       <2010. 2. 12>


ハーセプチン皮下投与剤
  ロッシュがハーセプチンの皮下投与剤の第3相試験を昨年10月より始めています。術後1年間の投与など、1時間の点滴で通院が必要でしたが、この製剤の登場により、自宅で自己注射も可能となります。早く実用化されることを切に願います。       <2010. 1. 27>


ザクロが乳癌の予防に
  ザクロを食事に取り入れると乳癌の危険を減らすことが出来ると、Cancer Prevention Researchに報告されました。ザクロに含まれるellagitanninsがエストロゲンの産生を抑制することが分かっている。他の報告では、術後の前立腺癌の再発を減少させ、冠動脈の垢の累積を減小、アルツハイマー実験ネズミの記憶と機能を改善させると報じられている。       <2010. 1. 5>


鍼がホットフラッシュに有効
  鍼治療が、ホルモン療法によるホットフラッシュに対する推奨薬である抗うつ薬Effexor (venlafaxine)の毎日内服と同等に有効であるとの報告がJournal of Clinical Oncologyで報告されました。鍼治療は、同様にホットフラッシュとうつ状態を50%減少させるが、さらに1/4の人で長期持続し、性への関心を持ち、より活発で清明な思考が持てた。鍼治療が標準治療になり得るそうです。       <2009. 12. 31>


フルベストラント ( ファスロデックス )  <新薬>
  サンアントニオでも報告されていた高濃度抗エストロゲン剤のfulvestrant (Faslodex) 500mg製剤が、アストラゼネカより乳癌適応で国内申請がされました。海外ではすでに250mgで認可され、ほとんどの国で使用されていましたが、日本では未だに申請さえされていませんでしたが、ようやく500mg製剤での申請が行われました。早期の認可を望みますが、1年以上はかかるようです。閉経前乳癌のホルモン療法に大きな力となるので、期待できます。       <2009. 12. 23>


ジェムザール ( ジェムシタビン )  <新薬>
  以前より乳癌への治療効果が報告されていたジェムザールが、いよいよ来年2月に乳癌に保険適応拡大されることになりました。血小板減少は辛いですが、脱毛もなく、副作用の少ない薬ですので、再発・転移性乳癌の治療にはQOLを維持できる治療として注目できます。また、トリプルネガティブ乳癌の治療でカルボプラチン(乳癌の国内適応なし)とPARP1 inhibitorとの併用は期待されています。       <2009. 12. 18>


サンアントニオ乳癌シンポジウム 2009 情報
  1. TEAM studyでDFS, TTR, OSに差なし: 術後補助療法として、タモキシフェンからエグゼメスタンへ切り替える群とエグゼメスタンのみの群で、平均追跡期間5.1年、無病期間、再発時期、生存率で差がなかった。
  2. 6g/日以上のアルコール飲酒は、それ以下の人と比べて、34%再発が多く、51%乳癌死亡率が上昇する。特に閉経後と肥満女性にその傾向が強い。
  3. 肥満(BMI≧25)で、10年以内の遠隔転移が42-46%増加し、乳癌死亡を26-38%増加させる。
  4. ビスフォスフォネート内服で、乳癌発生が32%減少する。ただ、DCISの発生は59%多く、浸潤を抑制している可能性がある。内服1年以内では効果がなく、2年以上の内服が必要。
  5. 抗RANKL抗体であるdenosumabは、zoledronic acid(ゾメタ)と比較して骨格関連障害発生を18%減少させ、骨格障害合併率を22%減少させる。
  6. bevacizumab(アバスチン)の乳癌治療での臨床試験: AVADO study: bevacizumab 15mg/kgとdocetaxel併用でdocetaxel単独よりも2ヶ月無進行生存を8.2から10.1に、奏功率を46.4%から64.1%に、1年生存率を76%から84%に改善した。RIBBON-2 trial: bevacizumabと化学療法併用で、無進行生存を5.1から7.2ヶ月に、奏功率を29.6から39.5%に、生存期間は16.4から18.0ヶ月に改善できた。
  7. 抗エストロゲン剤(主にタモキシフェン)は、肺癌の発生を37%、肺癌死亡率を87%減少させた。
  8. 黒人女性は乳癌発生が他の人種の1/3だが、30%以上死亡率が高い。より若いが、リンパ節転移が少なく、トリプルネガティブとHER2陽性が多く、DFSとOSが少ない。この違いは、ホルモン陽性・HER2陰性にのみ観察された。
  9. zoledoronic acid(ゾメタ)をLetrozole(フェマーラ)に併用すると、細胞増殖を52%減少させた。
  10. 循環腫瘍細胞CTCは、転移性乳癌の独立予後因子だが、従来のEpCAMで検出されない人の33%にEMT遺伝子過剰発現があり、その関連上皮蛋白の欠失がCTC検出不能の原因となる。
  11. 第3世代SERMのarzoxifeneは、ホルモン受容体陽性の浸潤性乳癌を56%減小、椎体骨折を41%減少させるが、椎体以外の骨折は減小がなく、子宮内膜ポリープ、静脈血栓塞栓症、ホットフラッシュ、筋痙攣、胆石、感染などの副作用がみられた。
  12. Lapatinib + Trastuzumab: trastuzumab (ハーセプチン)併用治療中に進行したHER2陽性乳癌に、lapatinib (タイケルブ)単独に対してtrastuzumab併用で、無進行期間が8.1週から12週間に、平均生存期間が9.5から14ヶ月に改善した。
  13. BCIRG006 (AC→T vs AC→TH vs TCH)第3報 (taxane=docetaxel): 平均追跡期間65ヶ月、死亡348名、無病生存率 各75%, 84%, 81%、生存率87%, 92%, 91% (AC→Tに対し各HR 0.63, 0.77)。リンパ節4個以上転移でもTCHはAC→THと同等。アントラサイクリンを含んだレジメは血液毒性非血液毒性ともにTCHで少なく、心毒性はAC→THの心不全ががTCHの5倍であった。
    TOPO IIaは、1/3の症例でHER2陽性と共に増幅がみられたが、以外の症例ではない。アントラサイクリンの有利性はTOPO IIa増幅例に限られ、それもアントラサイクリンを含まないtrastuzumabは同等で、アントラサイクリンによる長期毒性を回避できる。
  14. NCCTG N9831 trial( AC→T vs AC→T→H or AC→T+H→H, taxane=paclitaxel): 平均追跡期間5.5年、AC→T→Hは無病生存71.9%から80.1% (HR 0.7)に, 5年時でAC→T+H→H 84.2%, AC→T→H 79.8%と併用投与の方が25%改善がみられた。
  15. Ki67 (cut-off 10%: LumAとLumBを分類): 術前letrozole療法第2相試験で4週後生検の低・高リスク群が60ヶ月後の無再発生存と有意に関連有り。
  16. Z-FAST study 5年最終結果: zoledronic acid早期投与群で、5年間すべて腰椎6.2%と大腿骨2.6%の骨密度増加、遅延投与群では各2.4%, 4.1%の減小がみられた。予防投与が有用。骨折も12.4から10.7%に改善。
  17. 多発・多中心性が、粘液癌の38%にみられ、浸潤性乳管癌の8-15%に比べ多く、MRIなどによる術前評価が必要である。
  18. 乳腺幹細胞の新標的Notch受容体に対するγsecretase阻害剤とdocetaxelで、乳癌内のCD44/CD24表出の幹細胞を減少させた。
  19. fulvestrant (Faslodex)の高容量500mg投与で、通常量の250mg投与よりも、ホルモン受容体陽性転移性乳癌において、無進行期間を有意に延長し、20%の進行リスクを減少させ、生存率を改善する傾向がみられた。
  20. Trastuzumab-DM1投与で、多剤抵抗性HER2陽性乳癌患者110名中40%に奏功がみられた。
  21. DCIS切除後の補助療法は、乳癌再発リスクを軽減する。放射線治療は同側乳房内再発を抑制するが反対側は抑制しないが、効果は早期に現れる。ホルモン療法は両側とも抑制するが、効果が分かるのに期間がかかる。
  22. 経膣エストロゲン剤は、萎縮性膣炎に使用されているが、閉経後乳癌患者で血中エストラディオール濃度を有意に上昇させるので危険がある。リングは治療効果の3ヶ月間エストラディオール濃度の上昇を続け、週2回の錠剤は12〜24時間高濃度となる。
  23. 高濃度ビタミンDで、アロマターゼ阻害剤のアリミデックスによる筋肉・関節痛を有意に軽減できる。ビタミンD2 50000IU/weekを8週または16週続け、以後1ヶ月毎に続けると、疼痛が軽減し、歩行、階段登りが改善し、大腿骨頸部の骨密度も有意に維持できるが、1ヶ月毎の投与になってから4〜6ヶ月で効果がなくなる。
  24. Year-End Review この1年での乳癌に関する進歩を総括した。
       <2009. 12. 13>


ホルモン補充療法に関して、ファイザーに罰金と賠償金の支払いを命令。
  フィラデルフィア陪審員団は、ファイザー製薬に対して、ホルモン補充療法を受けた乳癌患者へ、罰金2800万ドル(28億円)、賠償金630万ドル(6.3億円)の支払いを命じた。同社の3製品「プレマリン」、「プレンプロ」、「プロベラ」は原告の癌に関与し、その薬品に関わる危険性を消費者へ適切に警告するのを怠ったとされた。
                           <2009. 11. 24>



米国の新ガイドラインにて、マンモグラフィ検診は50歳以後2年毎に変更。
  アメリカ政府は、新ガイドラインでマンモグラフィ検診は50歳以上の2年ごとに変更すると発表した。50歳から74歳までの女性に2年毎が推奨され、特に60〜69歳が最も有用であると報告した。これに対して、アメリカ癌協会ACS、アメリカ放射線協会ACR、アメリカ乳癌学会ASBDはこれに反対し、従来通り40歳以上毎年のマンモグラフィ検診を推奨すると主張しています。         <2009. 11. 16>


ホルモン補充療法は施行時期により乳癌発生リスクが異なる。
  更年期障害の治療目的でのホルモン補充療法HRTは、閉経開始後3年以内に、2年以内の施行により54%の乳癌発生リスク増加が認められ、閉経開始3年以後に2年以内の施行ではリスクの増加はみられない。また、いずれも2年以上の施行では、発癌リスクが増加した。Journal of Clinical Oncologyで報告されました。       <2009. 9. 18>


タイケルブ ( ラパチニブ )  <新薬>
  HER1とHER2に対する新しいチロシンキナーゼ阻害剤です。アントラサイクリン系薬剤とタキサン系薬剤、ハーセプチン使用後耐性患者に、ゼローダとの併用にて使用が認可されました。単剤、ホルモン療法との併用、ハーセプチンとの併用など、海外ではその治療効果が認められている使用法には、日本では未だ認可が下りていませんが、グラクソと日本化薬より、平成21年6月18日に保険収載・発売されました。       <2009. 6. 18>


アメリカ臨床腫瘍学会ASCO 2009 情報
  1. ビタミンDが乳癌発生を予防: ビタミンD欠乏が乳癌の発生と関係があり、その補充で予防できる。
  2. アロマターゼ阻害剤の骨粗鬆症にビスフォスフォネートデノスマブdenosumabの投与が有効。
  3. CYP2D6阻害剤(SSRIなど)とタモキシフェンを併用すると再発リスクが増加する。
  4. センチネルリンパ節に孤立腫瘍細胞pN0(i)、微小転移pN1miがあれば、腋窩郭清を省略すべきではない。
  5. 局所放射線治療は安全であるが、検証段階にある。
  6. PARP-1阻害剤のBSI201は、ジェムシタビンとカルボプラチンとともに併用することにより、転移性トリプルネガティブ乳癌患者の無増悪・全生存期間を延長できた(OS: HR 0.348)。
  7. 経口PARP阻害剤のオラパリブolaparibは、進行化学療法抵抗性のBRCA欠乏乳癌に有効である。
  8. RECIST(固形腫瘍治療効果評価基準)が1.1に改訂され、より正確に判定できるようになった。
       <2009. 5. 31>


第31回サンアントニオ乳癌シンポジウム情報
  1. BIG1-98: 術後補助ホルモン療法で、タモキシフェン先行(単独かレトロゾールへスイッチ)よりもレトロゾール先行(単独かタモキシフェンへスイッチ)の方で再発が少なく、生存率が改善された
  2. ABCSG-8: 術後補助ホルモン療法で、タモキシフェン単独に比べ、タモキシフェンからアナストロゾールへスイッチで、治療効果が勝った(RFS 0.79, OS HR=0.77)。
  3. TEAM: 術後補助ホルモン療法で、2.75年の段階でエギゼメスタンがタモキシフェンよりも無病生存率が勝っていた(DFS HR=0.89, RFS HR=0.85, TDM HR=0.81)。
       <2008. 12. 11>


牛白血病ウィルスBLVが乳癌の原因
  多くの牛乳と牛肉にBLV感染が認められ、乳癌の原因になる可能性が26th IABCRで報告されました。加熱処理により、滅菌は出来るそうです。将来のワクチン治療に期待が寄せられています。
       <2008. 9. 23>


ASCO2008乳癌情報
  1. 抗エストロゲン治療による耐性獲得後、エストロゲンが逆説的に細胞死を引き起こす事が分かり、周期的なホルモン療法が考案される。(Kamofsky Lecture)
  2. HER2 FISH陰性のpolysomyなど、陰性患者に対するTrastuzumabの治療効果は認められなかった。HER2過剰発現の判定にも問題が残っている。
  3. ビタミンD欠乏は早期乳癌患者の予後を悪化させる。
  4. 閉経前乳癌患者に補助ホルモン療法と併用でゾメタの半年毎1回投与は予後を改善する。(ABCSG-12)
  5. decetaxel + bebacizumabはHER2陰性転移性乳癌の無増悪生存を延長する。(AVADO)
  6. 再発・転移後に受容体(ER, PgR, HER2)の状態が変化するので、生検が必要だが、取れない場合CTCや血清HER2が有効か。
  7. HER2陽性転移性乳癌にpazopanib + lapatinibが有効である。
  8. trastuzumab術後補助療法後の転移に、trastuzumab継続 lapatinib追加投与が有効である。
       <2008. 6. 2>


第30回サンアントニオ乳癌会議情報
  1. 21遺伝子の再発スコアRSは、リンパ節転移陽性のタモキシフェン治療者の予後因子と考えられ、RS高値の人にCAF療法が有効であると判定できる。(SWOG8814/TBCI0100)
  2. ATLAS (Adjuvant Tamoxifen, Longer Against Shorter): タモキシフェンを5年以上服用により再発が減少する。
  3. HER2とともにTOPOIIaがアントラサイクリンの有効性を予言する(BCIRG)。
  4. 放射線治療も3次元照射に(IMRT)。42.5Gy/16回/22日照射(AHWBI)が再発同じで合併症少ない。
  5. アロマターゼ阻害剤による骨塩減少に年2回のゾメタが有効(ABCSG-12 trial)。
  6. ATAC tial: 100ヶ月追跡調査により、アナストロゾール(アリミデックス)が5年間服用後もその効果が持続し、再発までの期間、転移までの期間で優位性が証明され、骨塩現象による骨折の増加もタモキシフェンとほぼ同等になった。
  7. ホルモン補充療法の減少で、乳癌の発生が減少した。
  8. denosumabがAIによる骨塩減少に有効。
  9. センチネルリンパ節生検についての検討:ITC, micrometastasis、術中RT-PCRなど。
  10. 食事中脂肪を20%以下に減らすことで、再発なし生存率を高め、死亡率を減少させる(WHEL trial)。エストロゲン量と相関するHot Flashも減少する。
       <2007. 12. 17>


アバスチン(Avastin) 6月1日発売
  ついに抗VEGF抗体Bevacizumabが発売されました。進行乳癌にパクリタキセルとの併用で生存率の改善が、ドセタキセル+ドキソルビシンとの併用で奏功率67%との報告もあり、乳癌治療に有効性が証明されておりますが、今回の認可適応は大腸癌に限られています。乳癌への早期適応拡大が望まれます。       <2007. 6. 23>


ホルモン補充療法の減少により、乳癌発生が減少
  2006年12月サンアントニオ乳癌シンポジウムにて、2003年に乳癌発生の約7%減少が観察されました。その原因として、ホルモン補充療法を控えるようになり、施行件数が減ったことが考えられると報告されました。特に、エストロゲン受容体陽性乳癌の発生が減少しています。更年期障害には、決してホルモン補充療法だけは行わないようにしましょう。       <2007. 1. 26>


レトロゾール(Femara)4月24日発売
  ついに第3世代アロマターゼ阻害剤の真打ちレトロゾールが4月24日に薬価収載され、発売されました。これにより、アリミデックス、アロマシンと並んでようやく3剤が揃うことになります。発売が遅れましたが、これからのホルモン療法を担う貴重な戦力になります。       <2006. 4. 25>


ゾメタ (ゾメドロン酸)の適応拡大
 新世代ビスフォスフォネート剤のゾメタは、従来悪性腫瘍による高カルシウム血症に対してのみの適応でしたが、今回、「多発性骨髄腫による骨病変及び固形癌骨転移による骨病変」に対しても使用可能となりました。つまり、今までは骨転移があっても高カルシウム血症が無ければアレディアしか使用できませんでしたが、これからは骨転移全ての方により治療効果の高く投与時間がわずか15分間でよいゾメタを使用することが出来るのです。       <2006. 4. 22>


アブラキサン (Abraxane)
  大鵬薬品が日本での開発と販売権を取得しました。易溶性で神経毒や過敏症の少ない新規のタキサン系Paclitaxel製剤です。早く日本でも使用できることを期待します。   <2005. 12. 25>


TS-1が乳癌に適応追加
  11月14日、内服薬FU製剤の新世代TS-1が乳癌に適応追加となりました。ゼローダと同等の薬剤ですが、手足症候群などの副作用が少なく、長期間安全に使用することが可能ですので、非常に役に立つ薬剤となるでしょう。   <2005. 11. 14>


喫煙が閉経前女性のホルモン機能に影響を与える。
  1日10本以上の喫煙は卵胞期早期のエストロゲン、プロゲステロンが底値で25〜35%高く、FSHは移行期で30〜35%上昇していた。喫煙中に含まれる化学物質が卵巣レベルでホルモン機能に作用し、そのため下垂体ホルモン分泌に影響を与えたと考えられた。喫煙が月経不順、不妊、早期閉経といった生殖障害を与えることと関係している。Windham GC Environ, et al. Health Perspect 113: 1285-1290 (2005). <2005. 10. 25>


FEC100 (EC100)療法
  エピルビシンを併用したEC, FEC療法の投与標準量が引き上げられました。これにより最大効果発現量100mg/m2を使用することが可能となりました。朗報ですが、それなりの副作用もあり、十分な副作用対策が必要です。 <2005. 9. 15>


リュープリンSR ( 酢酸リュープロレリン )
  従来より閉経前乳癌のホルモン治療薬として使用されていた3.75mg製剤は4週間に一度の投与が必要でしたが、このリュープリンSRは12週間持続の徐放性製剤です。今まで前立腺癌にのみ適応されていましたが、このたび閉経前乳癌に対しても適応拡大となりました。4週間ごとの注射で辛い思いをされていた方には朗報です。 <2005. 7. 21>


ビノレルビン ( ナベルビン )
  タキサン系薬剤に続く、第3の乳癌治療抗癌剤として、海外では多く使われていますが、日本では未だ承認されません。その効果は実証済みなのに、使えないのは残念です。平成17年5月30日に承認されました。 <2005. 5. 30>


スタチンの使用が乳癌の51%減少と関連
 高コレステロール治療薬であるスタチンを使った米国の女性退役軍人は非使用者との比較で乳癌リスクを51%低下させたという観察研究の結果が第41回米国臨床腫瘍学会(ASCO 2005、オーランド)において報告されました。 <2005. 5. 30>


ゾレドロネート ( ゾメタ )  <新薬>
  悪性腫瘍の骨転移に対する治療薬としての第3世代ビスフォスフォネートがはじめて正式に認可されます。効果はアレディアの1000倍、点滴時間も従来2時間以上かかるのに対して15分で済みます。平成16年10月22日に承認されました。平成17年1月21日に発売されました。
<ノバルティス・日本化薬
> <2005. 1. 22>


非小細胞肺癌にTS-1が適応拡大
 胃癌・大腸癌に引き続き、TS-1が非小細胞肺癌にも適応となりました。次は、乳癌が適応となる予定です。ゼローダ以上の効果が期待されていますので、QOL改善のためにも是非期待したい薬です。 <2004. 12. 18>


喫煙で乳がん危険4倍に 閉経前の女性のみ影響
 喫煙しているか過去に喫煙していた人の乳がん発症の危険性は、喫煙、受動喫煙ともない人に比べ3.9倍。受動喫煙のみの人でも、危険性は2.6倍であった。厚生労働省研究班の大規模疫学調査により明らかにされました。 <2004. 11. 30>


パミドロネート (アレディア)
 11月29日、悪性腫瘍の骨転移に対するビスフォスフォネート製剤が高カルシウム血症から骨転移へと適応拡大となりました。投与法も1回90mgを4週間隔で点滴静注します。ゾメタが高カルシウム血症の制約で1月にも承認されますが、骨転移のある方には待ちに待った朗報です。 <2004. 11. 29>


新薬紹介 新治療紹介 新検査法紹介 Reports


New Reports

乳癌既往者のホルモン補充療法は乳癌発生のリスクが有意に高く、臨床試験HABITSが2年で中止。
 Lars Holmberg (Uppsala University)の報告によると、乳癌の既往のある女性345名に対して更年期症状治療としてホルモン補充療法HRTを施行した人としない人で乳癌発生を比較した。平均追跡期間2.1年の追跡調査報告で、再発又は初発乳癌発現がHRT群26例、非HRT群7例、ほとんどがHRTを受けている最中に発現した。この第1次調査でリスクが容認できないほど高いため試験が打ち切りとなった。Lancet February 7, 2004.
                        <2004. 2. 5>


閉経後早期乳癌Tamoxifen 5年間後のLetrozoleは無病生存を著明に改善する。
 Paul E. Goss, M.D., Ph.D.ら(Princess Margaret Hospital, Toronto他多施設)の報告によると、5187名の早期ホルモン感受性閉経後乳癌患者に、Tamoxifenによる5年間の術後標準治療の完了後、Letrozole治療を行う2重盲検試験を実施したところ、第1次調査でLetrozole群75名、プラセボ群132名の再発・対側新規発生がみられ、4年推定無病生存率は、Letrozole群93%、プラセボ群87%と有意にLetrozole群が良好であったため、第1次調査で試験が打ち切りとなった。つまりプラセボ群があまりに悪い結果であったためである。 A Randomized Trial of Letrozole in Postmenopausal Women after Five Years of Tamoxifen Therapy for Early-Stage Breast Cancer. N Engl J Med October 9, 2003;349:1793-802.
                        <2003. 11. 7>


高齢者に対する治療不足は著しく予後を悪くする。
 Christine Bouchardyら(Geneva University Hospitals, Geneva, Switzerland)の報告によると、80歳以上の高齢者に対する治療で5年生存率が、無治療46%、Tamoxifenのみ51%、乳房切除のみ82%、乳房温存+補助療法90%、無治療に対して温存+補助が10倍の危険回避できることが分かった。高齢者であっても、健康が許すかぎり治癒の可能性を探るべきである。 Undertreatment Strongly Decreases Prognosis of Breast Cancer in Elderly Women, JCO Vol 21, Issue 19 (October), 2003: 3580-3587                      <2003. 10. 14>

ハーセプチンとナベルビンがHER2 3+転移性乳癌に有効
 Dana-Farbar, Harvardなど17の多施設調査で、HER2過剰発現の転移性乳癌に対する第1選択薬として、Trastuzumab と Vinorelbineが68%の奏功率を示した。正常左心機能の患者には16週間の心毒性に勝る奏功を得た。HER2細胞外ドメインが腫瘍マーカーとして有効であった。 Trastuzumab and Vinorelbine as First-Line Therapy for HER2-Overexpressing Metastatic Breast Cancer: Multicenter Phase II Trial With Clinical Outcomes, Analysis of Serum Tumor Markers as Predictive Factors, and Cardiac Surveillance Algorithm, JCO Vol 21, Issue 15 (August), 2003: 2889-2895
                      <2003. 8. 23>


みそ汁などの大豆、イソフラボンが乳癌を抑制
 国立がんセンター研究所がん情報研究部の山本精一郎氏らの報告によると、みそ汁を毎日3杯以上飲む女性は、ほとんど飲まない人よりも、乳癌になる確率が4割少ない事が分かった。大豆食品に含まれるイソフラボンの含有量で最大乳癌の発生率が54%低くなった。乳癌予防に役に立つと考えられた。 Soy, Isoflavones, and Breast Cancer Risk in Japan Journal of the National Cancer Institute, Vol. 95, No. 12, June 18, 2003                    <2003. 6. 30>

乳房切除術後にも放射線治療が必要
 第11回日本乳癌学会「乳癌診療ガイドライン作成に関する研究」の報告で、乳房切除術後の胸壁再発制御と生存率の向上のためには、放射線治療量が必要であることが報告されました。今後は、乳房温存療法だけでなく、乳房切除術でも照射することになります。                 <2003. 6. 13>

遺伝子発現プロファイリングが化学療法の効果を予測
 Texas大学M.D.Anderson癌センターのL.Pusztai氏は、術前化学療法で腫瘍を完全消失させた人の遺伝子発現プロファイリングを解析することで延命効果のある患者を効率に選び出せる事を発表した。治療前に針生検で採取した組織からDNAアレイを用いて遺伝子プロファイリングを解析することにより、患者毎に最適な化学療法を選択することが可能になる。                <2003. 6. 3>

「ゼローダ」が6月6日に薬価収載
 期待の経口抗癌剤の新薬カペシタビン「ゼローダ」がついに6月6日薬価収載となる予定です。発売日は6月24日になるそうです。従来の経口抗癌剤にはない強力な治療効果が期待されます。           <2003. 5. 22>

余暇の身体活動により乳癌の発生が減少
 アジア系アメリカ人501人(対照594人)に対した調査で、余暇での運動量と年数が多いほど乳癌の発生率が著明に減少した(最大53%減少)。  Cancer Volume 97, Issue 10, 2003. Pages: 2565-2575                 <2003. 5. 6>


FISH法によるHER2遺伝子の測定が保険適用
 3月26日の中医協総会で、臨床検査として、FISH法によるHER2遺伝子の測定(2000点)が4月から保険適用となることが来ましました。いよいよHerceptin適応のもう一つの基準が使えるようになりました。従来のハーセプテストよりも治療効果をより正確に判定することが可能です。                   <2003. 3. 28>


授乳期間と出産回数により乳癌発生が減少
 The Lancet 2002; 360: 187-95で30ヶ国47試験より乳癌患者50,302名、対照女性96,973名を対象とした大規模調査の結果が報告された。乳癌発生の相対リスクは、授乳期間が12ヶ月ごとに4.3% 低下し、1児を出産するごとに7% 低下することが分かりました。(by Collaborative Group on Hormanal Factors in Breast Cancer)
詳しくは、こちらへ。                   
<2002. 11. 19>


乳房温存療法の20年生存で有効性を確認
 The New England Journal of Medicin, vol. 347 (16)で乳房温存療法単独、乳房温存療法+放射線治療、乳房切断術を施行された早期乳癌および浸潤性乳癌の20年生存率を比較したところ、いずれも差が認められなかった。このことにより、乳房温存療法の有効性が確認されたことになります。(Umberto Veronesi et al. p1227-1232, Bernard Fisher et al, p1233-1241) 詳しくは、こちらへ。                   <2002. 10. 17>


AJCC TNM病期分類第6版
 J Clin Oncol 20:3628-3636. 2002に新しいTNM分類が報告されました。2003年1月より適用予定とのことです。それに基づいて日本の分類も改訂中です。
詳しくは、こちらへ。               
<2002. 9. 15>

「アロマシン」8月30日薬価収載
 アロマターゼインヒビターの「アロマシン」が8月30日薬価収載されることとなりました。閉経後乳癌に適応です。            <2002. 8. 31>

「イレッサ」8月30日薬価収載
 チロシンキナーゼインヒビターの「イレッサ」が8月30日薬価収載されることとなりました。これからが本格的使用開始です。     <2002. 8. 27>
 5月1日オーストラリア、5月2日アメリカで販売認可がおりました。 <2003. 5. 6>

ホルモン補充療法に乳癌、心血管疾患の予防効果なし
 米国国立衛生研究所(NIH)の下部機関、米国国立心臓肺血液研究所(NHLBI)は7月9日、閉経後女性を対象とした臨床試験「WHI」(Women's Health Initiative)の一部を、予定より3年早く中断したことを発表した。エストロゲン・プロゲスチン合剤を用いるホルモン補充療法(HRT)のプラセボ対照試験で、乳癌や冠動脈疾患、脳卒中の増加が認められたため。   詳細はこちらへ。           <2002. 7. 11>

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新治療紹介

Photodynamic therapy
(PDT; 赤色光照射)
  5-ALAなどの増感作用のある物質を投与し、赤色の励起光を照射することで、悪性腫瘍だけを障害を起こし、正常細胞に影響を与えない、というものです。ただ、皮膚表面1〜3mm程度の深さまでしか有効ではないので、日光角化症、基底細胞癌、ボーエン病などの表在性上皮性皮膚悪性腫瘍が対象で、乳癌の場合には皮膚転移や乳房外Pagetが対象となります。治療希望の方はメールでご連絡下さい。
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新検査紹介

HER2抗原 (c-erb B2)
  c-erb B2抗原の測定が血清、乳汁、などで測定できるようになりました。HER2過剰発現されている方の追跡に腫瘍マーカーとしての働きが期待されています。再発・転移と平行して早期から測定値の上昇が認められ、早期発見に役立ちそうです。ただし、ハーセプチンとは共通抗原を認識するため、ハーセプチンの効果判定のモニターとしては使用できません。

FISH (Fluorescent In situ Hybridization)
  HER2遺伝子の過剰をFISHで測定します。従来、ハーセプチンの使用目的でハーセプテストを行い、HER2の過剰発現を免疫組織染色(IHC)で測定していましたが、今後はこのFISHで判定することが出来るようになります。FISHはIHCよりも正確な判定が可能になりますので、ハーセプテスト 1+ の方でもハーセプチンを使う可能性を再度調べることが出来ます。
4月1日より保険適応となりましたので、フジサワのパスビジョンで検査を実施しています。

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新薬紹介

タイケルブ ( ラパチニブ )  <新薬>
  HER1とHER2に対する新しいチロシンキナーゼ阻害剤です。アントラサイクリン系薬剤とタキサン系薬剤、ハーセプチン使用後耐性患者に、ゼローダとの併用にて使用が認可されました。単剤、ホルモン療法との併用、ハーセプチンとの併用など、海外ではその治療効果が認められている使用法には、日本では未だ認可が下りていませんが、グラクソと日本化薬より、平成21年6月18日に保険収載・発売されました。

エビスタ ( 塩酸ラロキシフェン )  <新薬>
  新しい選択的エストロゲン受容体モジュレーター ( SERM )です。適応は閉経後骨粗鬆症の予防です。臨床効果は、椎体骨折発生抑制効果はビスフォスフォネートと同等と言われ、乳癌の予防効果もあります。中外製薬より、平成16年5月に発売されました。

アブラキサン ( Abraxane )
  新しいナノ分子タキサン系薬剤で、溶剤を含まないためパクリテキセルと比べて神経毒性などの副作用が少なく、治療効果が高いことがサンアントニオ乳癌シンポジウムで報告されました(第III相試験)。奏功率(Abraxane 33% : PTX 19%)、進行までの期間(Abraxane 21.9週  : PTX 16.1週)。

ゾレドロネート ( ゾメタ )
  悪性腫瘍の骨転移に対する治療薬としての第3世代ビスフォスフォネートがはじめて正式に認可されます。効果はアレディアの1000倍、点滴時間も従来2時間以上かかるのに対して15分で済みます。平成16年10月22日に承認されました。平成17年1月21日に発売されました。 <ノバルティス・日本化薬>

カペシタビン
( ゼローダ )
  カペシタビン Capecitabine は再発・転移性乳がんに対して、単剤で20% の反応があり、50%の治療効果がみられました。さらに、ドセタキセルとの併用により、60%の奏功が得られます。脱毛などの副作用が少なく、経口の飲み薬ですので、非常に使いやすい薬と言えます。
  2003年6月6日に薬価収載、24日発売となりました。間もなく使用可能となります。ご期待下さい。

エキセメスタン ( アロマシン )
  エキセメスタン Exemestan は、ホルモン療法剤の新しい I 型アロマターゼ阻害剤(ステロイド性)で、 従来品と異なり非可逆的阻害作用を持っています。また、他のホルモン剤との交差耐性がありません。特に、II型アロマターゼ阻害剤(非ステロイド性)に不応性でも約20%の奏功がみられる。奏功率は、40.6%(ノルバデックス 13.6%)で非常に良い成績を納めており、期待の新薬です。適応は、閉径後乳癌です。術後補助療法としての効果は確かめられていません。副作用は、皮膚症状がわずかにみられるのみで、ノルバデックスのようなほてり、発汗、子宮内膜刺激作用、アリミデックスのような骨塩融解、などは全くみられません。9月6日に発売されました。

レトロゾール(Femara)
  レトロゾール Letrozole は、非ステロイド性の新しいアロマターゼ阻害剤です。アロマターゼ・チトクロームP450と競合結合することにより、アロマターゼ酵素を阻害します。奏功率30%、病勢コントロール率49%と、タモキシフェンと比較して優位に良好な成績が証明されています。アメリカ、カナダですでに発売中です。日本でも今年中には発売されます。

ファスロデックス
  ピュア・抗エストロゲン剤です。ホルモン療法剤の新世代となるはずの薬です。来年初に登場する予定です。

ビノレルビン ( ナベルビン )
  タキサン系薬剤に続く、第3の乳癌治療抗癌剤として、海外では多く使われていますが、日本では未だ承認されません。その効果は実証済みなのに、使えないのは残念です。平成17年5月30日に乳癌に承認されました。

経口ビノレルビン (経口 ナベルビン cap)
  乳癌に有効性が認められ、セカンドライン抗癌剤として多く使用されているビノレルビンに経口薬が登場しました。術後補助化学療法の第1選択としての使用が検討されています。日本でも早く承認されることを祈っています。

ゲフィチニブ ( イレッサ )
  イレッサは、チロシンキナーゼ・インヒビターです。ハーセプチンの作用するHER2と類似するEGF受容体に働きます。まずは、肺癌に対する適応で、8月末に発売されます。手術不能または再発非小細胞肺癌に対して奏功率18.4%、病勢コントロール率54.4%と非常に効果が高く、副作用が少なく、経口投与です。乳がんに対してもハーセプチンと同様に効果が期待されています。
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