2002/01/20:兄弟銭発見か?(明四銭)
2002/07/14:調査結果判明
明四銭:戦国晩期(紀元前222年)「燕国」の貨幣(同時期に「明化銭」等を鋳行)
<入手背景>
明四銭は非常に数が少なく、即売会等でも見た事がない、幻の貨幣の一つとなっています。
昨年、運良く明四銭を購入する機会があり、幻の本銭を入手する事になりました。
本品は真贋不明として某ネットオークションに出品された品物で、当方も真正品を実際に見た事が無く、参考品という気持ちで
落札、購入した一品です。
その後、以前より明四銭を所有している方がおり、その方に見ていただいた所、製作がその方の
蔵品と似ている、との話があり、一度二つ並べてみよう、という事になりました。
2002/01/20、ようやく2品が揃い、並べてみたのが下の画像です。
左(明四銭A):知人の蔵品(重量7.3g)
右(明四銭B):自分の蔵品(重量7.1g)
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一瞬目を疑いました。文字の欠けや肌の状態、大きさ、面にある文字痕、窪みも同一です。
どうやら同一範で製作されているのは間違いない様です。
当時は石範にて作られていた様ですので、全く同じ物が複数存在するのは否定できません。
(半両銭でも発見の実例も有り、一度の製作で範を廃棄するとは到底考えられません。)
しかし一方では贋物(ある時期に作られた物)ではないかという点も否定できません。
その後、同様の形態の明四銭を他で見た、という情報も伝わってきていた為、真贋について
明確にしておきたい、という事で、「蛍光X線分析装置」にて非破壊による金属分析を行う
事にしました。
<分析結果>
分析については、同時期の同国にて鋳行されていたとされる貨幣(明化銭)で、真正品と確定
している物(発掘場所が明確に判明しているもの)と、これら明四銭との金属元素配合について
比較しました。
また、各国による材料差異についての確認をする為に、同年代の他国で製作されていた貨幣
(例として方足布、魏国にて鋳行)についても分析、調査しました。
分析結果を以下に示します。なお、下記のグラフは各元素が含まれている度合いを示したもので、
そのままの比率という事ではありませんが、大きく現れている元素は存在する割合が多い事を
示します。
明化銭
真正品
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Cu、Sn、Pbの
3元素がほぼ均等に
現れている。 |
明四銭
(A)
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Pbの割合がCu、Snの
約2倍現れている。
上の「明化銭」に比べ、
Pb成分が非常に多い。
↓
同時期、同国での
材料と異なる。 |
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明四銭
(B)
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同上
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方足布
真正品
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Cu、Sn、Pbの
3元素がほぼ均等に
現れている。
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方足布
贋作品
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CuがSn、Pbに比べ
約3倍の数値となっている。
真正品に比べCu純度が
高い。
↓
当時の材料と異なる。
※精錬技術が進んだ後の
時代の製作 |
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以上の分析結果より、真正品の場合、青銅(Cu+Sn)以外の成分としてはPbが含まれて
おり、本分析方法によると、それら3元素はほぼ均等に現れる様です。
また、同時代において他の国が鋳行した貨幣も同様の傾向にある事から、各国での精錬技術は
ほぼ同一と考えて良いと思われます。
さて、問題の明四銭についてですが、材料分析上、両者共に同一の材料である事が確定でき、
間違いなく兄弟銭である事が判明しました。
しかし、真贋については同年代の同国で鋳行された貨幣(明化銭)と成分が明らかに異なる事が
判明した事から、残念ながら真正品とは認められない、という結論に達しました。
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