霜越四郎先生発行の雑誌「演人燈」昭和29年7月発行号
「迷信を征服したN牧師の武勇伝」より

(N牧師とは長尾丁郎牧師である。)

                          (越谷教会70年史より)
 「もう30年余りも昔の話である。そのころ若かったN牧師の伝道する越谷の御殿町に道路拡張工事をして、自動車を通じようと言うことになったのである。ところがここに難題な事があった。それはその道路の真ん中に四かかえもあるような榎の大木があり、これは御神木といってしめなわがはってある。この木の小さい枝一本でも折ろうものならたちまち病気になる。切り倒したりしようものなら即座に死んでしまうという迷信が言い伝わっていた。町内会で幾度か議論が出たが、いつも小田原評議に終わりどうにもならなかった。
 これを聞いたN牧師はよしそれでは俺が切ってやろうと決意したが土地のものは恐れをなして誰一人手出しをしない。やむなく東京より木挽き二人を雇って来て、夜陰に乗じ、たちまちのうちに切り倒してしまった。夜が明けるとご神木が切り倒されている、驚いたのは町内の人達、N牧師は端然とその根っこに腰掛けている。ははア、ヤソの先生がやったのだなア、可哀想になあ、今にも死ぬのではないか。しかし、何時になっても死なない、キリスト教の神様もごりやくはたいしたものだという。そしてうわさは町中に広がっていった。
 N牧師は平然として『おかげで教会は3ヵ年分のストーブの薪は買わないですみますよ、御殿町はおかげで邪魔ものがなくなり町民は大喜びですよ』と豪快笑いをする牧師であった」云々。

 この記事は当時朝日新聞や毎日新聞の全国版三面記事に「キリスト教牧師御神木を切り倒す」と言う見出しで記載された。