デパートの屋上でようやく始まった大会ー。
 イベントの進行係の甲高い声、ストローのささったジュースを片手に走り回る幼児たち、疲れた表情でベンチに座り込む付き添いの親たち……久しく遠去かっていたこれらの風景を、現実のものとはなかなかとらえられないまま、わたしはそんなことを考えていた。
 周囲が賑やかであればあるほど、わたしの気持ちは内に向かう性質らしい。

 MYビーダマンを持ち込んでのぞんだにかかわらず、結果は思わしくなく、息子はがっかりした顔をわたしに気取られまいと、平然を装っていた。
 デパートの階段を2段跳びにかけのぼる息子の後姿は、彼の父親そっくりだった。
 2歳の時に別れたきり一度も会ったこともなく、顔やしぐさも覚えていないはずなのに,不思議な気がした。
 (そういえば君の好きなイチロー選手、彼の目は君の父親の目によく似ているんだよ。)
 こういうことに気づく瞬間が、これから段々増えていくのだろうか。

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子供の気持ちにおかまいなしに、ただ自分の義務と罪悪感に振り回されていただけだった。

2001/10