好二郎
動・静
 日々の思いをイラストを交えて淡々と綴ります 好二郎
この連載は、原則として、五・十日(ごとうび=5と10の日)に更新します  過去の動静一覧  表紙へ戻る
 
2005年2月、3月、4月

小円朝師匠真打ち昇進
おめでとうございます


4月25日。

4月23日、三遊亭円之助兄さんが真打昇進及び、4代目三遊亭小円朝襲名のパーティを開いた。

我々円楽一門の二つ目と前座さんはこのパーティのお手伝いをしたのだが、とりわけ私には感慨深いものがあった。

というのは、何度も書いたり、高座で喋ったりしていることだが、新小円朝師匠は私の入門を間接的に許可した人なのである(直接に入門を許したのは我が師好楽、好楽師のお上さん、我が妻、「へえ、好楽師匠のお弟子さんになりたいの? あの人、いい人だよ、よくうちにも食べにきてくれるけど。あの人ならいいよ、なりな、なりな、俺が許すよ」と言ってくれたラーメン屋のおじさんなどである)。

私が入門したいと言ったとき、我が師匠は新小円朝師に「あいつ長続きしそうかどうか、やっていけるかどうか、ちょっと調べてくれ」と特命を下し、新小円朝氏はそれを忠実に守り私を見張ること2時間、電車内でさり気なく会話を交わし、私から重要な情報を聞き出すこと30分、たいした情報を引き出せずに電車の外の風景を眺めること20分、それらの結果を我が師に報告したのだ。

どう報告したのかはっきりとした内容は未だにわからない。

「あいつ、顔はいいが、性格的に申し分ない、欠点がないのが欠点のような人だ」とか「落語家にするにはもったいない、総理大臣にしたいような人だ」と言った、という未確認の情報があるだけである。

いずれにしても、新小円朝師のおかげで私は入門できた。だから、とても感謝している。これからしばらくは小円朝襲名と真打昇進を祝う会があちこちで開かれるだろう。どうぞ皆様お時間のある時は足を運んでくださいませ。

では、円之助改メ小円朝、真打昇進を祝して万歳、万歳、万歳

2005年4月16日配信
好二郎には
気象庁がついている


4月21日。

昨日、第14回「30の手習い」が無事終了。会の内容(落語ので出来不出来、売上、客入り、前座さんの体調、ゲストの方のギャラ、妻の機嫌、地震、火災などを含む)より、前日から心配だったのは、開演直前に激しくなると予想されていた雨と風だった。

当日の朝の天気予報でも、激しい雨と強い風が開演前後に訪れるのは間違いないように思われた。雨だけならお客様も我慢してくれるだろうが、強い風が加わっては、嫌な思いをするだろう。その上間違えだらけの落語を聴かされたのでは、たまらない。

「ああ、神様、私を応援してくれるお客様、数多くいる落語ファンの中でも私を応援してやろうという本当に心やさしいお客様が雨や風で苦しみませんように」。そう祈らずにはいられなかった。

しかし、そう祈る反面「いや、雨も風も開演前後におさまっているかもしれない」そう思った。というのは、私の落語会に時々、気象庁にお勤めの方がいらっしゃるのだ。直接言葉を交わしたことがないので、たぶんあの方だろうなあと高座から見て思っているだけなのだが、その気象庁さん(と思われる方)が客席にいらっしゃると、必ずと言っていいほど天気がいい。おそらく気象庁さんは一般に流されている天気予報より正確な天気の情報を握っていて、それに基づいて落語会に足を運んで下さるのだろう。

きっとそうだ。で、その気象庁さんから「30の手習い」の前売り予約が入り、当日キャンセルもなかった。

このことから、私は「天気が持ち直すかも」と推理したのだが、果たして結果は当たった。雨も風も大丈夫だった。本当に良かった。これで落語がもっとうまくいっていれば、もっとよかった。「30の手習い」に足を運んでいただいた皆さまありがとうございました。

次回も天気に大きな崩れがないよう、心から祈るとともに、気象庁さん、何か裏情報があるなら、今度そっと教えて下さい。

2005年4月24日配信
女の子が欲しいカップルは
好二郎の会へ行こう


4月15日。

私が結婚式で司会をすると、そのカップルに生まれる子どもは必ず女の子である、という古い言い伝えは今回も守られた。

昨日、「桜の咲く頃、長女が誕生しました」

とハガキで報告してくれた〇村さん夫妻で3組目である。

〇村さん夫妻は見た目あやし気な旦那とやさしそうな奥さんという組み合わせで、はたから見ても楽しそうなカップルである。4月の始め頃生まれると聞いて心配していたが、花見、宴会、頭痛、新学期、皿洗いなど、忙しい日が続いていたので、連絡ができないままになっていた。

桜が散ってさみしくなったなあと思っていたところだったので、本当に嬉しい便りだ。

それにしても、私の知り合いにはよく女の子が生まれる。女の子が欲しい人は私と知り合いになったほうがいい(ただし女の子といっても赤ちゃんのことであって「彼女が欲しい」という意味で女の子が欲しいという人は自分でなんとかしなさい)

男の子が生まれるのは私の知り合いであっても@私がどうしても逆らえない天敵のような人。例、相模原在住の〇ち氏長男。A私が生涯頭が上がらないであろう、弱みを握られた人。例、会津若松在住のY田氏長男。Bなんとか縁を切ろうと努力しているのになぜか、離れられない人。例、N氏。小田原在住、長男、次男、男のような妻。など、ごく一部に限られれる。

したがって、私と知り合い、かつ円満な関係を築いていれば、必ず女の子を授かるはずである。そろそろ女の子が欲しいという方、私の落語会に来たほうがいい。

2005年4月24日配信
桜の頃に容体が急変!

4月10日。

桜が満開になるころ、私の体の具合がとても悪くなることは名のある生物学者なら不承知のことである。生物学者は知らなくても全国にちらばる私のファン10人くらいには知っていて欲しい。私のファンが知らなくても本人が実際不調になるのだからしょうがない。ここ3日ばかりひどく体調が悪かった。外の桜は満開。毎年のことなので半分はあきらめているが、もう半分のうちの5分の3はなぜなのか知りたいと思い、残りの5分の2のうち8分の3は全体の何分の何でしょう。

で、どう具合が悪いのかと言うと、普段なら前日の晩に飲み過ぎて朝起きることができないのだが、桜のころはなんとなく起きることができない。食事のあと「ああ、おいしかったなあ」と思うのだが、「ああ、もう食べられない」と思うようになる。妻に小言を言われてイヤだなあと思うのが、妻を見ただけでイヤだなあと思うようになる。つまり、マイナスがとてもマイナスになるのだ。

でも、桜は散り始めた。夏のような暑さと、強い風のお陰で桜はもう散る。そうすれば私はもう大丈夫。5月病まで、元気でいられる。

2005年4月13日配信
妻がテレビに出た

4月5日
 
4月3日。妻がテレビに出た。スマップの稲垣吾朗さんが出演している「忘文」という番組である。ある人からある人へ手紙を書き、その手紙を稲垣さんが受取人に読んで聞かせるという内容のものだ。出演の経緯はともかく、私が妻に手紙を書いて、それを稲垣さんが妻に読んで聞かせたのだ。
 
テレビに映った妻はすばらしかった。私のような素敵な男性と暮らせているせいか、稲垣さんを目の前にしても緊張した様子はなく、普段通りのふてぶてしい態度で画面におさまっていた。
 
手紙を聞いている間、しきりに頷いていて、見ている人からは感心しながら熱心に耳を傾けているように見えたかもしれないが、それは妻が退屈すると必ずみせる仕草だ。
 
稲垣さんが手紙を読み終えて、「お届け料として一言感想を」と言うと、妻はこれ以上可愛く聞こえる声は出せないだろうというような作られた声(何か食べる前に時々これと似た声を出す)で、「すばらしい手紙でした」と棒読みのセリフを吐いていた。
 
しかし、テレビの技術は大したもので、妻がいつも見せる険しい目つきやあくびをかみ殺した口、他人を小ばかにしたような薄ら笑いなど、すべてをカットして、それらしい番組に仕上げていた。
 
放映されたテレビを自分で見た妻は、2度首を傾け、3度舌打ちをし、髪型、服装、化粧に反省点を見出していた。妻がこの反省を何にいかそうとしているのかはさっぱりわからないが、やる気になったことだけは確かだ。
 
番組の後半で読まれた絵本「ねェおぼえてる?」(木村裕一・作)を買ってきて、「忘文」ごっこをやろうと言っている。
 
また我が家に変な遊びが増えた。
 
2005年4月7日配信
高校野球って本当に面白い

4月1日。

 春の高校野球が終盤戦を迎えている。夏の甲子園より盛り上がりが足りないのは残念だが、一生懸命白球を追う姿は妻に虐げられた毎日を送る私を勇気付けるには充分だ。

 私の知り合いにFさんという外見のとてもカッコイイ、中身の非常に怪しげな方がいる。この人は「高校野球がとても好きだ」と自分で言っている。だから周りの人が野球好きのさわやかなスポーツマンなんだと思ったら大きな間違いで、彼は「高校野球で賭けをするのが好きだ」という人である。現に会社の同僚と「高校野球賭博」をやっているらしい。もっとも「警察にお世話になるような大そうなものじゃないですよ」と慌てて付け加えたから、大そうなカケに違いない。

 で、Fさんは北海道の生まれだ。だからカケをするとき必ず北海道代表の高校に一票入れるのである。もちろん北海道代表は毎年負け続け、Fさんも賭けに負けつづけた。そして昨年の夏、とうとうFさんは北海道代表校に見切りをつけ、九州だとか、近畿だかの高校に願いを託した。

 神様っているのかもしれない。Fさんのような悪人にあぶく銭を持たせてはいけないと思ったのだろう、見事、北海道代表の「駒大苫小牧」が優勝した、

 Fさんの落胆といったら見ているこっちが幸せになるくらいだった。

 そして春。夏春連覇を夢に駒苫が甲子園に帰ってきた。Fさんの夢も帰ってきたに違いない。そして、駒苫が完封負けをしたのを知って落ち込んでいるのに間違いない。ああ、Fさんのガッカリした姿、目に浮かぶようだ。ああ、高校野球って本当に面白い。

2005年4月3日配信
「大人っぽくて素敵だ」

チョゴリさんより「感想を!」のメッセージをいただき、あわてて筆をとった。

随分前にCDをいただいていたのにまだ何の感想も伝えていなかったのは本当に申し訳ありませんでした。

チョゴリさんには何度もお会いしてお話する機会もあったのにゴメンナサイ。

で、改めてCDの件。

寄席のサウンドトラックを作ろうということもすごいが、本当に作ってしまうのが偉い。なかなかできることではない。曲も(私は音楽に関してまるで知識がないのでほめられてもうれしくないだろうが)大人っぽくて素敵だ。興味のある方はぜひ一聴。

私も、開演前の音楽については色々と考えている。というより落語会のやり方について考えている。開演前から終演まで他のお芝居や音楽会、、もちろんその他の落語家の会を勉強させてもらって、最近自分なりに答えが出たような気がする。

もちろん、「答えが出た」と思ったことはこれまでに27回あり、「今後の方針が決定した」ことも14回あり、「その決定を変更した」ことも14回あるから、今回も「出たと思っていたが、出ていなかった」ということになりかねない。マ、いずれにしても今年度はそろそろ終わり(子どもが小学校に通うようになってから1年を年度で区切っている)、新年度が始る。色々考えたことを新年度に生かしていこう!

2005年3月30日配信
犬桜を探しにゆきます

3月25日

仕事で四国に行っていた管理者くんからお土産が届いた。ありがたい。できれば毎週どこかへ行ってお土産を送ってもらいたい。

四国と言えば、毎年桜の開花予想を見ると、東京と四国の開花日があまり変わらないのが不思議だ。

つい最近の開花予想では高知で26日、東京が27日、あんなに離れているのだから、もう少し日数にズレがあってもよさそうなものだ。

桜と言えば、私が毎年花見に出かける上野の公園には桜の木が1200本も植えられているらしい。

1200本の木には41種類もの桜があって、もちろん一番多いのは染井吉野、ついで山桜、小松乙女だの、新墨染、千里香などという風流な名の桜もあるそうだ。

「犬桜」という名の桜の木も、上野公園に一本あるらしい。今年はその一本しかない桜を探しに行こうと思っている。

犬と言えば、この間、よく通る道でいつも見かけていた大きな犬が死んでしまった。見るからに老犬で、いつもだらしなく腹ばいになって、通る人を目だけで見送る姿はどこか愛嬌があった。別にその犬が私に何をしてくれたという訳ではないが、いなくなるとやはり淋しい。

淋しいと言えば管理者くん。皆からとても淋しい不幸な人だと思われているが、そうではない。あくまでもこのHP上そうしているだけで、本当はとてもモテてたくさんの女の子と付き合っているプレイボーイなのである。

という夢を見ている。

可愛そうなので、今年のお花見は管理者くんを誘って犬桜を探すつもりである。

2005年3月25日配信
「似てねえぞ!」 怒号と罵声
好二郎の似顔絵に非難殺到


3月20日

 私が描く似顔絵は、描かれた本人に評判が悪い。別段悪く描こうと思っているわけではないのだが、「これ、あなたの顔です」と絵を差し出すと皆一様に顔をしかめ「ちっとも似ていない」と言うか「似ている似ていない以前に不愉快だ!」と怒鳴るか、何も言わずにその絵を破り捨てるかするのである。

 本人に瓜二つに描いた友人のN君や本人よりすこしサッパリとした好男子に描いた管理者くんからも文句が出る。つい最近は本人よりかなり美しく描いた「たまちゃん」からも「もう少し美人に描け!」と脅迫を受けた。

 だから今回描いた義姉の似顔絵が、本人及び家族の皆様を怒らせていないか心配である。

 義姉は我が妻の実の姉であるから普通の人ではない。といって、私の妻のように私に命令したり、私を脅したり私に無理な要求をしたりすることがないので妻よりはいい人である。また、口調がゆっくりでほんわかとした雰囲気をかもし出し、周囲にいる人を和ませながら本人が一番のんびりしている姿は好感がもてる。

「〜ですよね?」「・・・・・・は?」「だから〜ですよね?」「・・・・・・え?」「だから、〜ですよね!?」「・・・・・・んー、あ、ええ、そうね」といった口調で会話が進み、スムーズに意思の疎通が出来ないところも私好みである。

 で、この義姉、私たちと同じく足立区に住んでいる。このHPでも少し話題になった正月の区の広報を見たらしい。そこで私のことを発見し、何を考えているのか「色紙プレゼント」に応募したらしい。

 お義姉さん、しょっちゅう顔を合わせているんですから、別に応募しなくてもいいじゃないですか! しかもこの義姉のすごいところは、その私の色紙が当たってしまったところである。お義姉さん! ものすごく近い身内なんですから当てなくてもいいじゃないですか! さらにこの義姉のすばらしいところは色紙が当たって一言「応募したのは私だけだったのね!」

 おい! 義姉で私をいじめてうれしいのか! よし、お義姉さんめおぼえている。今度お義姉さんの似顔絵の入った色紙をたくさんもっていってやる。お酒を用意して待っていろ。

2005年3月21日配信
ファン拡大は難しい

3月15日。

 先日、相模原で「さがみはら若手落語家選手権」の本選があった。私は相模原在住のファン、知人、友だちをはじめ、「ペコペコ応援団」「好二郎親類のつどい」など、様々な個人、団体に応援していただき、かなりの組織票で正々堂々と戦ったが、私の知人の倍以上客が入るという誤算が最後まで響いて、わずかの差で大敗した。

その後、「祝勝会改め反省会」(12回目)を開いた。

「もう少し知人を増やさないと好二郎が優勝できる時はこないのではないか」「好二郎より上手な噺家が多いのが問題だ」「好二郎は落語以外のもの、例えば、そば打ち、徒競走、障害物競走などで勝負した方がいいのではないか」など、建設的な意見が多く出た。

中でも今回初めて“好二郎の落語を聞いた”という通称たまちゃんの意見は大変参考になった。

まず、彼女は私の顔を見るとニヒルに笑い、反省会の会場となったお店の女性にテキパキと自分の食べたいものを注文した。

その後、私の顔を見て再びニヒルに笑い、自分の食べたいものが来たのでそれを食べ、他のメンバーの意見を聞き流しながらデザートのアイスを食べ、ひとりで寒がっていた。

結果、私にはまるっきり興味のない人なのだろうと判断して、同席していた管理者くんと仲良くさせ、今後も私の落語会に足を運ばせる作戦に出た。

「管理者くんは普段物静かだが、熟睡するとうるさい」「自由になるお金はたくさんもっているが、将来的な見通しは暗い」「山登りが趣味で健脚だが、人生は常に下り気味だ」など、彼の美点をいくつか挙げ、「こういう管理者くんはどう?」と聞いたら、力強く「ヤダ!」。

新しいお客さんを増やすのは難しい。

2005年3月14日配信
ホリエモンが
口内炎にならないのはなぜ

3月10日

世間ではホリエモン(見た目がドラえもんに似ているから、またはいろいろな企業を盗むように乗っ取るので石川五右衛門のような野郎だということから、あるいは本名・堀江貴文の堀と江と文をとってなど諸説ある)さんと日枝久(日なたの枝のように長くのびのびと暮らしていたから、または株より枝が好きだから、あるいはそれが本名なので仕方なくなど諸説ある)さんの戦いが盛り上がりを見せている。

フジテレビを除く各メディアが無責任にあおっている姿が面白く、「ホリエモンさんが負けると一気に大貧民よ!」などとトランプをしているようで楽しい、というのが人気の秘訣だそうだ。

ただ、子どもには今一つ人気がないらしい。ホリエモンと日枝さん、どちらも悪役めいているところが、子どもを戸惑わせるのだという。

しかし、「時間外取引」、「公開買い付け」、「新株予約権」など、次々繰り広げられる新しい技の名前をもう少し格好のいいわかりやすいものにすれば、子どももくいついてくるのに違いない。

で、そんなことは私にはどうでもいい。私には、口内炎を克服したということのほうが重要なのである。私は口内炎ができやすい人間だということは以前ここにも書いた。そうしたら、こんな治療法があるという意見をいろいろいただいた。私はそれらをすべて試し、毎日薬でうがいをし、誤って口の中をかまないように妻との会話を控え、落語の稽古も極力少なくして、ついに口内炎ができやすい人間から口内炎が時々できる人間に進歩した。

きょうも一つある口内炎ができないよう、うがいをし、ストレスを感じないように努力している。

ところでホリエモンさんも日枝さんもあれだけストレスの感じる状況で、口内炎ができているようには見えない。私には株のやりとりより、そのほうが気になるのである。

2005年3月10日配信
雪の日は、無理せず長靴を履こう

3月5日。

 2月に催した「30の手習い」の反省(ビデオの時間が長すぎる、暗い時間が長いので眠くなる、明るい時間でも眠っている人が随分いた、後ろの幕がずっと揺れていたので気になった、好二郎が3席しゃべるのが多すぎる、出来ればゲスト3席好二郎1席がいい、帰りに丸井で買い物できたのでその点はよかった、など私に寄せられた意見を参考に反省)していたので、外が大雪だったのを知らなかった。

 私は雪に驚かない。雪国の立派な家庭に育ったためでもあり、寒さを感じないためでもある。だから真っ白に染まった街を見ても、その日の予定を変えるつもりはまるでなかった。

 その日の予定とは、こうである。

 午前中いっぱい一生懸命床につき、12時ちょうどに起きて、朝食と昼食を一緒に済ませ、ラジオを聞きながら昼寝をして夕方起きて読書をしながらウトウトして夕食後はぐっすり眠る。

 何一つ変更するつもりはなかったのに、忘れていた仕事があって、昼から両国に行き、人形町で用を済ませて上野で買い物をしなければならないことになった。

 とても嫌である。着物で外出するのに雨や雪は天敵だ。特に履物に困る。今回のように雪が積もっていると歯の高い下駄ということになる。しばらく歩いてみたら、雪が歯の底にくっついて歩き難いったらない。歯の低いものに履き替えたら雪の中に足がもぐってしまい、これもいけない。

 私は3度履き替えて長靴にした。着物用コートに長靴。これが案外合う。そんな格好イヤだ、という人もいるかも知れないが、粋、乙、センス、恥、正常、そういったものを捨てれば簡単に着こなせるものである。

 それにしても長靴はやっぱり雪に強い。皆が雪のかたまりや水溜りを避けて慎重に歩く横をズカズカ大股に抜き去るのは快感である。

 皆様も雪の日は、無理せず長靴を履こう。

2005年3月6日配信
妻の寝顔にサングラス

3月1日。

 先日、「30の手習い」を終えてからお腹が痛くなった。

 どうやら自分の落語にあたったらしい。おかげで、その翌日の落語会の打ち上げでは、大好きなお酒が一口も呑めなかった。くやしい。もっとも、呑まずに帰宅すると打ち上げ会場から自分の家まで、どこをどう通って、電車賃を誰に払ってもらって、何時帰ったのかはっきり覚えていて不安がない。

 呑んでいると「変なものを食べてしまったのではないか」「誰かにおごってしまったのではなか」「電車賃を自分で払ってしまったのではないか」など、あとから不安になる。

 で、すっきりした頭で夜中に帰宅すると、妻は私がいない安心感からふだん決してみせないやすらかな顔で、眠っていて、「ただいま」と小さな声でささやいても気づかない。しかたがないので、「ただいま」と再び小さな声でささやきながら額をパチンと強めに叩いてみたが、起きる様子がないので、胸をなでおろした。

 酔っていれば、すぐに寝てしまうのだが、頭がはっきりしているので、眠れない。ふとTVの上を見ると、市松人形がのっている。桃の節句を前に、雛人形とこの市松人形が飾られているのだ。

 この人形、昼間見ると可愛いのだが、夜中一人で見ているとこわい。

 何が怖いのだろうと見ていると、その目がリアルな輝きをもっているせいだとわかった。そこで、サングラスをかけて目を隠せば怖くないだろうと、人形に掛けさせてみるとすごく怖い。

 なんだか怪しげな化粧品の販売で財をなした女社長のように見える。

 また、自分にはあなたの未来がわかりますとすまして言う女占い師にも見える。

 今にも喋りそうだ。怖い人形は、サングラスをかけると一層怖くなる。

 私はサングラスをとって、そっと、寝ている妻に掛けてみる。

 やっぱり怖くなる。

 2005年3月1日配信
いよいよ明日
乞うご期待!


2月26日

 自分の落語会「30の手習い」が明日に迫った。

 というのにまたお酒を飲んでしまった。
 
 いけない。

 明日のために稽古しよう。

 と、いうことできょうはこの辺で。

 まだまだゆとりと空白とすきまがありますので、みなさんお出かけくださいませ。

2005年2月26日配信
好二郎の確定申告

2月21日

先日、確定申告に行ってきた。私が税務署に足を運んだのは、これが初めてである。今までは私の妻が一人で行っていた。計算や数合わせや英語や国語は苦手なので、嫌がる妻に無理やり頼んでいたのである。

今年もいつものように「確定申告頼んだね。本当に君は美しい、きれいだ。確定申告をしている君はさらに美しい」と心にもない言葉を並べて頼んだが「あなたも勉強のために私に着いていらっしゃい」と一喝されて行くことにした。

はじめての税務署は楽しかった。普段は根の暗い計算好きの人達が不機嫌なときに嫌なことが重なって起きたけど仕事だから仕方なしにやっているような雰囲気のところなのだろうが、この時期はとにかく活気があっていい。

なにせお金をなるべく払いたくない人間が大勢集まってきて、できない計算と合わない帳面にイライラしながら、だけど、役所の人達に逆らわず椅子に座って自分の番を待っているのだからその殺気はヘタなお祭りより面白い。

中でもいかにもいつも仕事のできそうもない中年のおやじさん、おそらく長年税務署に務めているが係長とまりと思われるさえない男性がおかしい。

この人の仕事は書類を作る順番を待つ椅子に並んだ人たちを一人抜ける度に詰めさせるというものである。これが実にイキイキと働いている。

「ハイ、ずれてください!」

「ワッと、ずれてください!」

「こちらずれてください」

もう座っている間がないくらいずれさせる。

スクワットを無理やりやらされているようなものだ。

現に、私たちの隣にいた老人は後半足がもたついてうまく立てなかった。

それを見た例の係長どまりは、ひときわキレのある大きな声で「ハイ! ずれてください」

この時期、税務署が、面白い


2005年2月22日配信
長髪の通う床屋

ここ数年床屋に行っていない。短くザッと刈り上げるだけだから、家で妻に切ってもらっている。

もっとも本当は短く切るほうが技術的に難しいのだそうで、事実、最初の頃はどう慎重にやっても必ずトラ刈りになっていた。

それが、今では妻の床屋としての腕があがり、とても機嫌が悪い、月収が足りなくて頭に来ている、肩が凝っている、目が痒い、きょうは曇天だ、今月は偶数月である、などの障害がなければ、トラ刈りにされることはない。

馴れてしまえば、家の中で気楽に金もかからず切ってもらうのは悪くないのである。ただ、時々床屋さんで顔をあたってもらったらさぞ気持ちいいだろうなあ、と思うことはある。

特に、古いが小奇麗にしている床屋で、スマートな初老の親方がカミソリを持っている姿を見ると、その客がうらやましくなる。

きょうもそんな一軒を覗くと、毛糸の帽子をかぶった30でこぼこの髪の長い無精ヒゲを生やした男が私の目の前を横切って床屋に入っていった。すると、中にいた親方が親しげにその男の顔を見て「どうも、まいど。いつもありがとうございます」と声をかけた。男も「ええ、いつもどうも」などと挨拶をしている。

長髪で無精ひげのこの男。毎度床屋に来て何をしているのか。床屋のおやじが親しげに挨拶するような常連なら、もっとさっぱりした頭をしていてもいいはずだ。

それとも毎回伸ばして伸ばして伸ばしきって、一気に坊主にするような気前のいいお客なのか。

長髪男と床屋のおやじ。いま私が気になる二人である。

2005年2月17日配信
ミンナニデクノボートヨバレ
ホメラレモセズ
クニモサレズ
ソウイウモノニ
ワタシハナリタイ


2月9日

わが次女が学校の宿題で宮沢賢治の「雨ニモマケズ」を朗読している。

次女はとても大きな声を出す。いい声だ。

耳元で読まれるとうっとりと殴りたくなる。

次女は「ミヤザワケンジ」と言えない。

「ミザワヤケンジ」と言ってしまう。

それは違うよと言うと「ミワザヤケンジ」となる。


それも違うねと言うと「ミヤワザ」となって決して「ミヤザワケンジ」と言えない。

本人は違えずに言おうとしているから面白い。

「ジャイケルマクソン」や「ジョンベンソン」よりいい。

朗読はミヤザワケンジが正しく言えないまま先へ進む。

「雨にもまけず、風にもまけず、雪にも、夏の暑さにもまけぬ丈夫な体をもち」まで、読むと「パパ、これ知ってる?」

「ああ知ってるよ」

「見ないで言える?」

「ああ、暗記しているよ」

「へぇ、じゃあ言ってみて!」

「今度の日曜日に言ってあげるよ」

「そんなのダメじゃん」

「ではやってやろう」

ここで私は随分と前に暗記した「雨ニモ……」を口に出して言ってみる。

人間、一度好きで覚えたものというのは、そう簡単には忘れないものだ、まして、それがリズムのある詩だと体が忘れない。

24回ほどつかえたが、スラスラと暗唱することができた。

次女は私を尊敬の白い目で見て私から去っていった。

子どもにもまけず、妻にもまけず、相手にされなくても決してくさらず、そういうものに私はなりたい。

2005年2月10日配信


財布をおとしてがっかり

2月5日

 財布を落とした。とてもくらい気持ちになっている。

 といっても私が財布を落としたの一度や二度ではない。

 3度目だ。

 一度目はどこでどうなくしたのか検討もつかない。

 仕事に出かけ、落語を一度喋って、酒も飲まずに帰宅したのに財布がなくなっていた。

 楽屋が怪しいと思っている。

 2度目は道路に落としたのを近所の人が拾って交番に届けてくれて、翌日には私の手元に届いた。これは嬉しかった。

 そして今度が3度目だ。いずれもお金はたくさん持ち歩かないがモットーになっている私にとって、被害金額は少ない。

「申し訳ありませんが、お客さまの場合はカードはおつくり致しかねます」と銀行がいつも下手に言ってくるので、カードは持っていない。

に、しても財布を落とすとがっかりする。悲しくなる。妻が落ち込んだ私に向かって「今度から財布を首からさげれば、ひもに財布を縫い付けてやるわよ」と言う。

「俺もそれはやってみたんだよ。ただ、それをやると肩と首筋がこっちゃてダメなんだよな」

「ふーん」

 しばらく考えた妻はニヤリと笑って「磁気ネックレスに財布つければ?へへへへ」

 妻め!

2005年2月6日配信
好二郎、本頁アジトを急襲

2月1日

人の家を訪ねることが最近とても少なくなった。

以前は、どこで酔っ払っても困らないように、宿泊場所の確認をするため、方々友人の家を訪ねたものだが、今では、それほど酔うこともなく、その家の壁に落書きをする元気も、酔ったふりして何かを盗んでくる勇気もなくなり、また、それを「冗談にしてもひどすぎる、今度やったら殴るぜ!」とか、「信じられない! 犯罪よ!犯罪!」などと言いながらも許してくれる心やさしい友人がいなくなってしまったので、やめてしまった。

だから、管理者くんの家に行ったときは少し緊張した。

彼の住む街は、地震や火災などの災害時、東京都内(約5000地域に区分)で5番目に多くの犠牲者を出すであろうと予測された地区で、道行く人たちは皆不安そうな顔をしていた。

しかし、彼の住んでいるところは、この危険な町にあって、鉄筋コンクリート風の数少ない建物の2階部分だから、災害時にはきっと本物の鉄筋コンクリートかどうか分かるはずである。

ビル自体は「中央デパート」だの「中央百貨店」というものものしい名がついていて、1階部分には、日曜日の夕方、買い物客がどっと押し寄せてきそうな時間に開いていないお店が並ぶ名店街になっている。

まるで、「ライオン」という名の小型犬のようである。

非常時には決して使いたくない細くて急なしゃれた階段を昇ると、住人が共同で使えるテラスが目の前に広がる。異国情緒あふれる造りである。

イタリアの日当りの悪い集合住宅のようだ。

奥から2番目が、管理者くんの家のドアだ。ビールの空き箱で作ったダンボール製の郵便受けが、彼の手先の器用さを象徴している。

中に入る。彼の説明通りに言えば、玄関のすぐ入口左手にキッチンがある。靴を脱がずに卵焼きを焼ける便利なキッチンである。

これを横目に中へ進むと8畳ほどのリビング。左側に彼がホームバーと呼んでいる戸棚と冷蔵庫。右側に4日間吊しておくと何でも乾く、室内物干し兼用の洋服かけ。ウォークインクローゼットの中に冷蔵庫が置いてあるところを想像してもらえればいい。

その奥は和室。これも8畳あったろうか。ビートルズ、ジョン=レノン、忌野清志郎などのポスターが貼られ、テレビ、コンポなどが整然と置かれている。

「独り暮らしにしては広いね」

「そうですね」

「誰か一緒に住めるよね」

「誰でも住めますよ」

「淋しくない?」

「別に淋しくないですよ」

「……ジョン=レノンすきなんだ?」

「ええ、昔から好きですね」

「……淋しくない?」

「……淋しくないですよ」

管理者くんの家はモダンである。誰か一緒に暮らしてやってくれませんか?

2005年2月2日配信

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