ペイトンプレイス物語:あらすじ(1)

(第1話〜第137話)

*

主な登場人物

マイケル・ロシイ/Dr. Michael Rossi (ED NELSON) *** 新任医師

コンスタンス・マッケンジー/Constance MacKenzie (DOROTHY MALONE) *** 書店女主人

アリスン・マッケンジー/Allison MacKenzie (MIA FARROW) *** その娘

ジョージ・アンダーソン/George Anderson (HENRY BECKMAN) *** セールスマン

ジュリー・アンダーソン/Julie Anderson (KASEY ROGERS) *** その妻、ハリントンの秘書

ベティ・アンダーソン/Betty Anderson (BARBARA PARKINS) *** その娘、ロドニイの恋人

レスリー・ハリントン/Leslie Harrington (PAUL LANGTON) *** 工場経営者

キャサリン・ハリントン/Catherine Harrington (MARY ANDERSON) *** マーチン・ペイトンの一人娘、レスリーの妻でペイトン製作所の大株主

ロドニイ・ハリントン/Rodney Harrington (RYAN O'NEAL) *** その長男

ノーマン・ハリントン/Norman Harrington (CHRISTOPHER CONNELLY) *** その次男

ローラ・ブルークス/Laura Harrington Brooks (PATRICIA BRESLIN) *** レスリー・ハリントンの妹、亡き夫のブルークス医師はロシイの友人で前任者

エリオット・カーソン/Elliott Carson (TIM O'CONNOR) *** 妻殺しの冤罪で服役

イライ・カーソン/Eli Carson (FRANK FERGUSON) *** 雑貨店主、エリオットの父

ポール・ハンレー/Paul Hanley (RICHARD EVANS) *** エリオットの義弟

マシュー・スウェイン/Matthew Swain (WARNER ANDERSON) *** ペイトンプレイス日報社社主

モートン医師/Dr. Robert Morton (KENT SMITH) *** ドクターズ病院の院長

クレア・モートン/Dr. Claire Morton (MARIETTE HARTLEY) *** モートン医師の娘

チョート婦長/Nurse Choate (ERIN O'BRIAN-MOORE) *** ドクターズ病院の看護婦長

ビンセント・マーカム/ケネス・マーカム(双子2役)/Dr. Vincent Markham/Kenneth Marham (LESLIE NEILSEN) *** ペルー赴任の医師と、その双子の兄(実業家)

エイダ・ジャックス/Ada Jacks (EVELYN SCOTT) *** 酒場の女主人

リタ・ジャックス/Rita Jacks (PATRICIA MORROW) *** その娘

デビッド・シュースター/David Schuster (WILLIAM SMITHERS) *** 後任の工場経営者

ドリス・シュースター/Doris Schuster (GAIL KOBE) *** その妻

キム・シュースター/Kim Schuster (KIMBERLY BECK) *** その娘

スティーブン・コード/Steven Cord (JAMES DOUGLAS) *** ペイトン家の家政婦の息子、弁護士

ジョー・チャーナック/Joe Chernack (DON QUINE) *** 不良青年、リタの昔の恋人

ステラ・チャーナック/Stella Chernack (LEE GRANT) *** ジョーの姉

* 006以降のすべてのあらすじは「週刊TVガイド 関西版」に連載されたものから転載しています。
001 1977/09/05放映 小さな波紋
 ペイトンプレイスに新しい医師マイケル・ロシイがやってきた。父のレスリーに頼まれて、駅まで迎えに出たロドニイは、その報告をしにレスリーの会社を訪れ、父と秘書のジュリーがキスをしているところを目撃する。
 ロドニイは、いっしょに出迎えに行ったベティにドライブの約束を破って、一方的に帰ってくれという。ベティはジュリーの娘であったのだ。ロドニイは、やりどころのない怒りを、町角で見つけたアリスンとのデートの約束を取りつけることで解消しようとする。二人は土曜の夜を約束し、熱いキスを交わす。
 高校生のアリスンにとってそれは初めて男性を意識したキスであり、ロドニイにとって彼女は、弟ノーマンが心をひかれているガール・フレンドだった……。
002 1977/09/06放映 秘めごと
003 1977/09/07放映 胸のいたみ
004 1977/09/08放映 新しい恋
005 1977/09/09放映 忍びよる影
(上記4話のあらすじはありません)
006 1977/09/12放映 土曜日の夜
007 1977/09/13放映 不思議の国のアリス
008 1977/09/14放映 妊娠…
009 1977/09/15放映 祭りの日に
010 1977/09/16放映 決意
ジョージの怒り

 「なんだいなんだい、これは一体どうしたってんだい。」
 出張から帰って来たジョージ・アンダーソンは、わが家の異様な雰囲気に、ついに怒りを爆発させてしまった。
 娘のベティはロドニイにふられた、ということはわかったのだが、だからといって、妻のジュリーまでが、よそよそしい態度をとらなくたっていいじゃないか。
 ロドニイの父、ハリントンは昔の級友だが、いまでは雇い主。妻もまたハリントンの秘書をしている。学生時代はクラスの人気者だったジョージは、現在、一介のセールスマンの自分にひがみがある。
 美人の妻にハリントンが思いを寄せているらしいことも不安のタネだ。
 ジョージの怒りが爆発し、ジュリーははずみで足をくじいてしまった。階段から落ちたとごまかして、医師の来診を受けたが、新任の医師ロシイに、自分の夫と、妊娠している娘のベティのことで相談するのだった。
 妊娠の事実をなんとかして、彼ロドニイに知らせたいとベティは出かけるが、ロドニイはアリスンを連れており、冷たくあしらわれて打ち明けることができない。
 「もうボクたちの仲は終わりだ」
 と宣告されるのだ。悲しみをこらえながらも事実に立ち向かおうと、翌日、ベティはロシイの病院へ行く。
 「ベティ、やっぱりまちがいない、妊娠だよ」。
 いまはもう、母しか頼る者はいない。
 泣きくずれるベティを抱きしめた母ジュリーは、自分とハリントンがキスしていたのを目撃したロドニイが、そのためにベティを避けることになってしまっただけに悩みは深い。
 何も知らないで彼との別れを悲しむベティが不憫(びん)でならず、思わずジュリーは、わが娘をしっかり抱きしめたのだった。
 一方"アリスンは私生児"の秘密が明るみに出るのを恐れ、ロシイを遠ざけていたコンスタンスも次第に心を開いて行く。それを何よりも喜んでいるのはアリスンだ。そのアリスンも友だちノーマンの兄、ロドニイにデートを誘われ心を乱している。

今週の話題
プロフィール=ライアン・オニール

 映画スターとして大当たりの彼に茶の間で会えるなんて素晴らしいではないか!もっともこの番組の制作は一九六四年だから、アナタがライアンにおネツになったのはその後のやや渋みを加えた彼にちがいないけど。
 アメリカではこの番組で人気スターとなり映画でも話題作の主役を演じるようになって、いまでは大スター。「ある愛の詩」「バリー・リンドン」「栄光への賭け」また「ペーパー・ムーン」では、娘のテイタム・オニールと共演。テイタムもまたスターになった。(文・山口 浩)
011 1977/09/19放映 第一の破局
012 1977/09/20放映 くずれゆく城
013 1977/09/21放映 偽りの結婚
014 1977/09/22放映 愁雨
015 1977/09/23放映 悲しい花嫁
交通事故
 
 「あッ、危い!」。
 急ブレーキの音―。
 夜のペイトンプレイスの病院では、慌ただしく人影が動いていた。若い男女の急患である。
 患者はロドニイとベティだった。彼の車でドライブしながら、ベティに赤ちゃんができたことを告げられ、ショックで運転を誤り、前から来た大型トラックに衝突してしまったのだ。幸い、ロドニイはかすり傷程度ですんだが、ベティは重症で入院、親たちは動揺の色を隠せない。
 もう一人、傷を負った者がいた。傷といっても心の傷。アリスン・マッケンジーだ。ロドニイに求婚までされたし、自分だって彼を憎からず思っていたのに。
 入院しているベティの所にロドニイの父、ハリントンがやって来た。
 「ニューヨークへでも行くならできるだけのことはしてあげるよ」。
 「……それが大人の考えかたネ」。
 後からやって来たベティの父ジョージは、泣いている娘いとおしさに、ハリントンとは逆に、
 「お前一人でさんざん苦しんで来たんだ。もとを取らなくちゃ、そう、好きな男と暮らすんだよ」
 と、結婚を強くすすめるのだ。だが実をいうと、ベティのお腹の赤ちゃんは、事故のショックで流産してしまったのである。
 「向うはそれを知らないんだし、いう必要はないだろう」
 と父のジョージ。
 「だって……」。
 「本当にほしけりゃ強引に取ってしまうことだ」。
 ドアがノックされた。ジョージが開けると、ロドニイが立っていた。
 「結婚しよう」。
 「それしかないからでしょ」。
 責任を感じて結婚を口にしていることはわかっていたが、ベティには無上にうれしい言葉だった。
 ふと、流産の事実をいわねばと思ったが、いってしまったら愛する男が心変わりするかもしれない。不安が胸をかすめると、いまはただ結婚までこぎつけることだと、ベティは黙ってしまった。
 二人は結婚した。介添人も参列者もいない。
 事後承諾の形で結婚した二人にハリントン家は大あわてだ。だが初夜の二人、なんとはなしに気持ちがしっくりしない。

今週の話題
主役のプロフィール=ミア・ファロー

 親子ほど年の違うフランク・シナトラと結婚して世間を驚かした。彼女の父のジョン・ファローは「ホンドー」「男の魂」などの映画監督、母はターザン映画のジェーン役女優、モーリン・オサリバン。ミアは一九四五年ロス生まれ、ハリウッドの高校を出てロンドンの花嫁学校で学び、帰国して歌やバレエを習い十八歳でブロードウェーの初舞台を踏んだ正統派。その翌年、アリスン役が決定、数年間茶の間に清純なイメージを印象づけた。シナトラとはニ年後に離婚、映画では「ローズマリーの赤ちゃん」が代表作。(文・山口 浩)
016 1977/09/26放映 海岸の家
017 1977/09/27放映 娘からのプレゼント
018 1977/09/28放映 はじめての接吻
019 1977/09/29放映 死の影
020 1977/09/30放映 雪の夜のバス停で……
キャサリンの死

 「本当に赤ん坊ができてるのかしら、私はただの口実じゃないかと思うの、結婚してこのうちに入りこむための、ネ」
 と、ロドニイの母、キャサリンはいった。主治医のモートン医師も、ベティを診察したロシイのことを快く思っていない。
 "この新米の若造めが……"。
 モートンはドクターズ病院の院長で権力者だ。早速、ベティのカルテを見ると"流産"の記録が記されているではないか。
 ロシイの診療所を訪れたモートンがこの点を指摘するとロシイはキッパリ
 「もし、ベティのカルテを他言したら、州の医師会へ訴えますよ」
 とクギをさす。こうもいわれてはモートンとしては、キャサリンの頼みごととはいえ、事実を告げるわけにはいかない。
 だが老獪(ろうかい)なモートンはハリントン家を訪れると、ベティに面と向かっていったのだ。
 「ところで私は君のことを知っているんだがね」。
 「何でしょうか」。
 「みんなは君がロドニイの子を産むと思っている。君は例の事故で入院したが、私は責任者として記録を見た。赤ん坊を亡くした事実をいつまでみんなに隠しておけると思うのかね?」。
 「モートン先生!」。
 一方、ロシイの心情にほだされコンスタンスは、いつしかデートに応じるようになっていた。
 その夜も、ロシイが借りた海岸の家で夕食をともにした。
 そしてロシイの誘いに応じ、その胸に入り、落ちて来た男のくちびるを受けるのだった。
 この時、無情にも電話が鳴った。キャサリンの容態が急変したという。モートンはボストンへ行って不在。かけつけたロシイが診察すると十二指腸かいようらしい。
 ロシイはいやがるキャサリンを病院へ運び、モートンが帰って来るまで、とちゅうちょするハリントンを強引に説きふせ、手術を開始する。
 大急ぎで引きかえして来たモートンも病院に到着。手術を手伝うが、そのかいなくキャサリンは息を引きとってしまうのだった。
 果たして緊急な手術をすべきだったか、とつめ寄るモートン。二人の医師の確執は表面化した。

今週の話題
主役のプロフィール=バーバラ・パーキンス

 ベティ役で一躍人気スターになった彼女は、以来"第二のリズ"と呼ばれ、美人女優として男性に圧倒的な信奉者を得た。十八歳の高校生を演じている彼女はこの時、すでに二十三歳だったから五つもサバをよんでいたことになる。バーバラはこのドラマでテレビドラマ部門の最優秀賞エミー賞を獲得したのである。
 だが、このドラマ出演三年後に女優を廃業、ヨーロッパに住み詩作、カメラ(プロ級)などでゆうゆう自適の生活を過ごし、またカムバックした。目下独身。(文・山口 浩)
021 1977/10/03放映 悲しみをこえて
022 1977/10/04放映 待ちうける悪意
023 1977/10/05放映 宣告
024 1977/10/06放映 第二の人生
025 1977/10/07放映 もう一つの遺言状
夫婦の危機

 相変わらずアリスンは清そな女性だった。久しぶりに彼女と会ったロドニイは、失われたものの大きさを知った。
 「ボクは家庭はちゃんと守っていくつもりだ。でも変わらないよ、君への気持ちだけは……」。
 「いけないわ、そんなことをいっちゃ」。
 アリスンは涼しいまなざしで彼をたしなめた。だが、ロドニイと別れて家へもどったアリスンは、母のコンスタンスにだけは自分の気持ちを素直に打ち明けるのだった。
 「やっぱり……ロドニイが好きよ」。
 ロドニイとベティの感情の行きちがいはさらに悪化するばかりだった。何しろ二人きりの結婚式を挙げて、夫婦になったものの、夫は妻の体に指一本触れていないのだ。
 そのことを口に出してベティは夫をなじったが、ロドニイは妊娠させてしまった責任のために結婚したのだから、と義務を正面に押し立て、愛情はないのだから仕方がない、というのだった。
 その夜もまた、いさかいがはじまっていた。
 「この夏のころは、貴方は本気で愛してくれたじゃないの」。
 ベティは必死でそのころにもどりたいと夫頼んだ。
 「そのうち……うまくいくだろうし、ボクもこれで一生懸命なんだ、なんとかうまくいくようになるよきっと」。
 「ダメよもう!」
 激情にかられ、ベティはいってしまった。
 「大事な話があるの。ロドニイ、赤ちゃんは生まれないのよ」。
 いってしまってから、ベティは"これでいいのだ"と思った。
 「赤ん坊が生まれない?」。
 「そうよ、こないだの事故でダメになったのよ」。
 だまされた、という思いにロドニイはカッとなった。
 「やっという決心がついたわ」。
 ここでベティのほおでもなぐればよかったのかもしれぬが、ロドニイはだまって部屋をとび出した。
 ことの次第を知ったロドニイの父ハリントンは、ただちに離婚をしろとロドニイにいい、ベティにも強く迫るのだ。ベティはそれに対し、絶対に離婚には応じないとつっぱねたのだった。

今週の話題
ペイトンプレイスの町を全ガイドその@

 表玄関=ボストンからの汽車は町はずれのプレイス駅に着く。すっかり傾いた屋根と細長いゴシック風の窓がいくつか開いた見すぼらしい木造の駅舎正面左方に、青と白のペンキで「ペイトンプレイス POP3675」の文字。
 駅長さんは小使兼任のミスター・ローズ。
 町の名の由来=創始者サミュエル・ペイトンの名をとり、ペイトン館(プレイス)とした。丘陵と森林に囲まれた小さな田舎町だ。ここに住む人は封建的な気質でよそものをうけ入れたがらない。(文・山口 浩)
026 1977/10/10放映 過去を持った男
027 1977/10/11放映 嫉妬
028 1977/10/12放映 捏造(ねつぞう)
029 1977/10/13放映 医師の良心
030 1977/10/14放映 父と娘
エリオットが帰ってくる!

 妻殺しの犯人エリオット・カーソンが仮釈放になるかもしれないと、もっぱらの噂なのである。
 もし釈放になったら、ペイトンプレイスにもどって来ることだろう。
 釈放委員会の調査のため、エリオットに会いに州刑務所へ行くマットに、コンスタンスは"町にもどらないようそれとなくすすめてほしい"と、頼んだ。すでにロシイへの愛を胸の中ではぐくんでいる彼女にとって、エリオットの釈放はとまどいである。
 十七歳の娘を持つ彼女も、今度だけは分別がつかずに悩み抜くよりほかない。しかも十八年前彼女とエリオットは…。
 すべての事情を知っているマットにしても、彼女のためにエリオットを町に帰らせないほうがよい、と思っている。
 「君は実にいい青年だったよ」。
 「ライフボートで二ヵ月も漂流するまではネ、そしてペイトンプレイスへ帰ったら女房に男がいた」。
 「そして、女房を殺した、と思われ逮捕された」。
 「私は犯人を見つけ出しますよ、かならず!」
 「君は仮釈放になったらどうする?」。
 「ペイトンプレイスに帰って、親父の船具商を手伝いながら犯人捜しをやりますよ」。
 マットはここで下腹に力を入れた。
 「君が町に帰ったら、とまどう人間がいるよ」。
 「……コンスタンスですネ」。
 「亭主は死んだことになっているし娘が一人いる」。
 「アリスン!」。
 「そう、アリスン、アリスン・マッケンジーだ」。
 「アリスン・カーソンではなくてマッケンジーですか……」。
 そのころ、マッケンジー家では娘が母にしきりと尋ねていた。
 「奥さんを殺したって、いったいどんな人かしら」。
 「ほんとに殺したかわからないのよ、無実の罪かもしれないの」。
 「じゃステキじゃないの!」。
 「なんてこというの」。
 「ロマンチックだし、そんな人がこの町に帰って来るなんて、ちょっとときめかない?どんな人だか早く見たいなあ」。
 興味を持つアリスンである。

今週の話題
ペイトンプレイスの町を全ガイドそのA

 気候=冬は雪が多く猛烈に寒く近くのコネチカット川さえ凍るほどである。四月末から若芽がもえると、野山に花が満開、夏はこれまた猛暑、秋はニューイングランド特有の燃えるような真紅のもみじ、と四季の移り変わりが明確。
 若者のデートコース=道の果てと呼ばれる森の中、シルバー湖での水泳など、自然に隠れて彼らは開放的な青春を送る。
 銀座通り=駅から通りに出て二ブロック行くとこの目抜き通りに出る。「ハイド食堂」「アビー美容院」コンスタンスの「本屋」など商店、銀行が並ぶ。(文・山口 浩)
031 1977/10/17放映 絶望の果てに
032 1977/10/18放映 新たなる波紋の年
033 1977/10/19放映 18年目の再会
034 1977/10/20放映 たった一人の反乱
035 1977/10/21放映 名乗れぬ父娘
モートンの良心

 マイケル・ロシイは必死だった。キャサリンの死因は彼の手術の失敗によるもの、と判決が下されてしまったからだ。
 "私はまちがってはいなかった"。
 ともすればくじけそうになるおのれの心を励まし、真相究明に取り組むのだった。
 そんな彼の支えはコンスタンスである。そしてローラ(註:ローラ・ブルークスはレスリー・ハリントンの妹。亡き夫のブルークス医師はロシイの友人で前任者だった。)も協力してくれている。ついにある日、真相究明の糸口ともなる一つの事実にロシイはぶつかった。
 それはジョージ・アンダーソンのカルテを見ていると、彼の虫垂炎の手術執刀はブラッドレー医師となっていたのだ。
 ブラッドレー医師なら病理学専攻でキャサリンの死因についてロシイに不利な証言をした人だ。
 虫垂炎手術の執刀は外科医の担当であるはずである。
 ロシイはこのナゾを、直接ブラッドレーをつかまえて問いただした。彼はようやく自分が外科医だったことを認めた。
 次のヒントはローラが教えてくれた。彼女の夫がまだ生きていた時に、ブラッドレーが失敗をやったことを夫から聞いた、というのだ。
 ロシイは精力的に動き回った。患者はマットだったこともわかり、ロシイはブラッドレーと対決した。
 「マットを執刀したのはブラッドレー先生、外科医としてのあなたでしたネ。ところが手術中に何かまずいことが起こったらしい。といのは途中でモートン先生に代わったからだ、そして翌日、あなたは姿を消した……」。
 「ど、どうしてそれを……」。ブラッドレーはまっ青になった。
 「姿を消したあなたは一年後に町に戻った。外科医にカムバックしたのではなく、モートンはあなたに病理学科のイスを与えた。
 そのモートン先生の患者が今度は死んだってわけだ」。
 死んだキャサリンの遺言によると、工場は父親に返すこととし夫であるハリントンには渡さないことになっていた。ハリントンはこれを不服とし、彼女が狂人だったとモートンに証言させようとした。だが、モートンはキャサリンの手術失敗は自分のミスによるものと告白。やはりモートンも病院を預かる責任者だ。ギリギリのところで良心をよび起したのである。

今週の話題
陰の主役登場=彼らの声の主 ひとくち苦心談@

 ロドニイ・ハリントン(ライアン・オニール)役の山口哲也さんの巻。「ライアンって芝居の達者な人なんですよ。彼の声って、いろんな音調があるんです。とてもついて行けないって感じで、ボクなりに、若い男が女性を好きになる、あの若者の代表のようなロドニイを演じています。今回こんな大役を頂いたけど、実をいうとボクはアテレコ初出演なんですよ」。(文・山口 浩)
036 1977/10/24放映 私は無実だ!
037 1977/10/25放映 すれちがい
038 1977/10/26放映 幼い証言者
039 1977/10/27放映 揺れ動く女心
040 1977/10/28放映 大都会の甘い夜
ニューヨークシンデレラ

 とうとうベティは家出してニューヨークへ行ってしまった。
 あの大都会の片すみで、ペイトンプレイスの田舎娘ベティは、どんな生活を始めているだろうか。
 マンハッタン五番街の高級洋裁店のドアをおずおずと開けて入ってきた一人の若い女性がいた。
 ベティだった。
 「あのお……ここで人に会うことになっているんですが、シャロン・パーセルって人に」。
 店員がにこやかに答えた。
 「ただいま着付け室で試着なさってますわ。毛皮のショールですの、すばらしいお品であたくしが欲しいくらいです」。
 シャロンとは職業紹介所で知り合った。保証人がいないと仕事を紹介できないとニベもなく断られたベティに声をかけてきたのがシャロンだった。
 ニューヨークひとりぼっちのベティは、自分よりやや年上で明るく行動的な彼女と友だちになれるのは心強く、翌日も彼女の指定したこの洋裁店にやって来たわけである。
 次の日はシャロンのアパートに招かれた。
 「すごいお部屋ネ。こんな所に住んでる人が職業紹介所に行くなんて……」。
 「私だって時にはまともな仕事について、バイブル読んで、つつましく暮らそうって気になるのよ」。
 シャロンは、自分が"ニューヨークシンデレラ"であることを告げた。つまり、地方都市フィラデルフィアで会社を経営している男の"ニューヨーク妻"なのだ。
 それからまもなくベティは、シャロンの部屋に同居するようになった。シャロンの好意に甘えた。
 シャロンのスポンサーのフィルがニューヨークへやって来た。ロイという友人を連れて、である。
 ダブルデートの後、ベティはロイと二人になった。ロイはベティをくどきにかかり、果ては強引に体を開こうと挑んで来た。ベティは必死に抵抗しているうちに、涙がとめどなくあふれた。涙を見るとロイは手を止めた。
 「ボクはかんちがいしてたよ」。
 それからロイは、ペイトンプレイスへ帰ったほうがいい、とすすめ、ベティに帰りの旅費を握らせた。ベティは素直にうなずき男の好意を受けた。

今週の話題
陰の主役登場=彼らの声の主 ひとくち苦心談A

 ベティ・アンダーソン(バーバラ・パーキンス)役の北島マヤさんの巻。「彼女の演技ってすごく控え目に抑えた、心に秘めた芝居をしているんですネ。
 十八歳で男性を愛し、子までなしたけど結婚生活がうまくいかない、悩みの多いベティ役なので、こちらも低めの声で、やや甘く色っぽくやっています。彼女はしんが強いですからいまに幸せをかち取るんじゃない」。(文・山口 浩)
040 1977/10/31放映 大都会の甘い夜
041 1977/11/01放映 父からの贈り物
042 1977/11/02放映 故郷に帰って
--- 1977/11/03放映 (「ABCまつり」放送で休止)
043 1977/11/04放映 愛の清算
ベティの条件

 夜更けのペイトン街道に、ポツンと赤い灯。近づいて来たのはボストンからの長距離バス。ブレーキがきしみ、停留所で止まると、おりて来たのはベティだった。
 大都会ニューヨークでの二ヵ月間の生活に破れたベティはいままた、父の入院を知り、急ぎわが町にもどって来たところである。
 「父が精神病院にまで入院するほど悪くなった原因はなんでしょうか?」
 ベティは医師のロシイに尋ねた。
 「仕事の失敗、おかあさんとの別れ話。だが、君のせいではないよ」。
 「そうね。みんな私が悪いんだって悲壮がったこともあるけど、裏をかえせばいい子になりたかったのよ」。
 「……」。
 「父にあんなに可愛がってもらって、なのに私、家出なんかして、でも、人に可愛がられたからって私の責任じゃないわ、冷たいと思いますか?」。
 「別に」。
 「私、ロドニイが好きです。だからあの人も私を、と思うのはまちがいね、愛ではなくて足かせだわ。父はそれをやってああなったんですわ」。
 「ニューヨーク行きもあながちむだじゃなかったようだネ」。
 「私もやっと目が覚めたの。男の人とデートして、それだけですむはずがないのは私も知ってたくせに……だけど私にはできなかったんです」。
 「君が本当に愛情をささげるところはペイトンプレイスしかないんだよ」。
 ロシイ先生と話し、入院中の父と会ったベティは、ある決意を持って、数ヵ月住んだ夫の家へ出かけた。夫のロドニイに会うためではなく、しゅうとのレスリー・ハリントンと話し合いをするために、である。
 「亭主をさしおいてここへ来るのはどうかと思うネ」。
 「どうして?ロドニイのすることを決めるのはあなたでしょう」。
 ベティはハリントンに対し、ひとつの"取引"を申し出た。それはロドニイとの離婚を承諾するが、その換わり、父の入院費一切を負担して欲しい、というものである。かねがね息子の離婚を望んでいたハリントンは、この取引を喜んで受けることにした。

今週の話題
陰の主役登場=彼らの声の主 ひとくち苦心談B

 アリスン・マッケンジー(ミア・ファロー)役の宗形智子さんの巻。「いまの女優ファローとイメージがちがってますがあの目は同じですネ。ユメ見る乙女が現実にぶつかって揺れ動く。背のびして皮膚感覚ではなく頭で理解しちゃった気になり、現実生活に心すりへらされて、次第に大人になっていく。そんなリズムを細かく演じながら彼女の成長ぶりを声で表現したいと思います」。(文・山口 浩)
--- 1977/11/07放映 (「ソ連革命記念」特番放送で休止)
044 1977/11/08放映 あの声は誰だった?
045 1977/11/09放映 愛の詩集
--- 1977/11/10放映 (「'77 ABCカップ日米ゴルフ対抗戦」放送で休止)
--- 1977/11/11放映 (「'77 ABCカップ日米ゴルフ対抗戦」放送で休止)
コンスタンス迷う

 コンスタンス・マッケンジーはいま、まさにハムレットのような心境だった。医師ロシイと十八年前の恋人エリオットに板ばさみとなっているからだ。
 「実は……ボクははじめてこの町へ来た時、すぐにも結婚を申し込みたかったが、君の気持ちが固まるまで、待つことにした、そこへエリオット・カーソンが帰って来た。ボクが嫉妬(しっと)したことは事実でネ、前にエリオットにひかれたんだから……」。
 ロシイは不安だった。
 「エリオットは立派な人間だよ。とても妻を殺すようには見えないよ」。
 「私だって嫌いじゃないけど……」。
 コンスタンスにすれば、アリスンが明るく育ったいま、エリオットの娘だと公表すれば、犯罪者の子として世間から後ろ指をさされるし、アリスンの乙女心にどんな影響を及ぼすか、恐ろしくてとても打ち明けられないのだ。
 だが、アリスンは母が、エリオットにことさら無関心を装いながら、何かと気にしているのをちゃんと知っていた。
 アリスンもまた、詩を愛するエリオットに好感を抱いた。ただ、乙女心が、大学の講師ポール・ハンレーにもひかれていたのだ。
 ポールはエリオットに殺されたとされているエリザベスの弟で、十八年前、エリオットの有罪判決は、まだ少年だったポールの証言が決め手となってしまった。
 だがこの証言は、薬局をやっている彼の父カルビン・ハンレーに指示されたもので、ポールはこうしてエリオットと会っているいま、あの時聞いた男の声は、彼とは似てないと思えてならない。真犯人捜しのエリオットの厳しい追及にハンレー親子はたじたじとなる。
 エリオットは兵役から帰ると、妻エリザベスの浮気を知った。夫婦仲がまずくなり、彼はコンスタンスに生きがいを求めた。ニューヨークでのつかの間の幸せな生活。彼女はアリスンを身ごもり、一人ペイトンプレイスに戻った彼はすぐさま妻殺しの犯人とされ、十八年の刑務所暮らしをした。
 ポールもさるもので、こうした年月の符合を解明し、エリオットとコンスタンスの仲、そしてアリスンの出生の秘密などに疑いをもちはじめる。

今週の話題
アメリカの若者たちの生態@

 ロックンロール育ち=このテレビ映画が全米に放送されたのは一九六四年から六年間だ。さらにこの原作が発表されたのは、一九五六年、かのエルビス・プレスリーが、カーター大統領いうところの衝撃的デビューをしたのが一九五六年だ。つまり、このペイトンプレイスの町の若者たちも、カントリー、リズムアンドブルース、ポップスなどを包含したまったく新しいロックンロールの影響を受けたことが分かる。このように若者たちは、ロックン育ちで踊りが好きで行動派なのも、画面からもうかがえよう。(文・山口 浩)
046 1977/11/14放映 あなたに孫が……
047 1977/11/15放映 離婚の条件
048 1977/11/16放映 真実を求めて
049 1977/11/17放映 離婚
050 1977/11/18放映 謎を秘めた日記
ポールとアリスン

 コンスタンスはおびえている。アリスンの父が、実はエリオット・カーソンだったなんて、彼女が聞いたらどんなに悩むことか。
 いや、エリオットに対してアリスンは好意を寄せているからよいが、それにしても"父親"と単なる"おじさん"はちがう。乙女の心は傷つくだろう。
 しかもコンスタンスは、買って来た男の写真を飾り立てて、アリスンの父親だとだまして十八年間を過ごして来た。
 そうした母親の心情を理解することはある程度はできるだろうが、だましていたことには変わりがないから、傷つくことはまちがいない。
 そんな時にエリオットから、アリスンの大学の講師、ポール・ハンレーも、エリオットの娘がアリスンだとうすうす感づいたようだ、と知らされて、コンスタンスはまたしても動揺するのだ。
 しかもエリオットは、アリスンに早く打ち明けてしまったほうがいい、と強く迫る。
 そんなところへ、アリスンが、ポールとニューヨークへ芝居をみに行く、といい出した。
 さあ大変、ニューヨークへ行く間に、ポールがアリスンにどんなことをいうかわからない。
 「それはダメ!」
 と、いつにない厳しい口調に、アリスンのほうが驚いた。
 ポールがコンスタンスの店に本を買いに来た。
 「何もアリスンと二人だけじゃない、演劇部で行き、ボクはその付き添いです。アリスンはお母さんも私ぐらいの時にはニューヨークにいたんだから大丈夫、といってましたが、でも結局はダメだとおっしゃると思いましたがネ」。
 いつにないコンスタンスの反対に、アリスンもすっかりむくれて母と娘の間には険悪な空気が漂ってしまった。
 レスリー・ハリントンは亡き妻の遺言が自分に不利なのでなんとかばん回しようと顧問弁護士に調べさせているが、亡妻の父ペイトンも弁護士を派遣し、次第にレスリーと殺されたエリオットの妻との関係にまで調査の手をのばして行く。そんな時、ポールの父、カルビン・ハンレーが倒れ急逝した。
 ニューヨーク行きも中止となりコンスタンス母娘も和解する。

今週の話題
アメリカの若者たちの生態A

 デート学入門=アリスンはかつてノーマンのガールフレンドだった。にもかかわらず兄のロドニイにちょっかいをかけられると、以来ロドニイと親密になっていく。
 視聴者の中には"アリスンってずいぶん尻軽な女だな"と思う人がいるかもしれないが、彼女の名誉のためにデート作法を解説すると、ノーマンとの間にセックスは介在しないから彼女はほかの男を選んでもかまわない。ステディーな仲ではないからだ。フリーセックスは一部の考え方で、特にこの時代はむしろ保守的とさえ思える女の子が多かった。(文・山口 浩)
051 1977/11/21放映 あばかれてゆく真相
052 1977/11/22放映 脅迫
--- 1977/11/23放映 (「雪の女王」放送で休止)
053 1977/11/24放映 母親っ子
054 1977/11/25放映 慰謝料
エリザベスの相手がわかった!

 ポールの父カルビン・ハンレーが急死した。アリスンとのニューヨーク行きを中止にしたポールは薬局を継ぐ意志がないので、店じまいに大わらわだった。
 競売にして整理すると、手元にいくつかの品が残った。その中にポールの姉でエリオットの妻だったエリザベスの日記もあった。
 その日記を読んだポールは驚いた。彼女が殺された夜、彼女はレスリー・ハリントンと会う約束をしていたのだった。日記にはこう書かれていた。
 <○日。明日はいよいよエリオットが帰ってくる。来てもはたして以前のようにうまくいくかどうか。
 ○日。英雄のがい旋で町は大騒ぎ。エリオットがいないのをいいことに、私をねらった男たちが、まるで手の裏をかえしたように「おめでとう」とエリオットに握手を求めている。
 ○日。私が男と付き合っていた噂が、エリオットの耳に入った。でも私の身にもなってほしい。女一人で暮らすには四年は長い。
 ○日。レスリー・ハリントンから電話。私たちのことを奥さんがかぎつけたらしく、そのことで話があるから今夜来るという。このまま私がすんなり別れると思ったら大まちがい。せっかく釣り上げたペイトン一の魚。みすみす逃がす手はないだろう>。
 ポールは日記をこっそりエリオットの家に持って行った。
 この日記を見てエリオットは躍り上がって喜んだ。
 妻の相手がわかったのだ。彼は弁護士とハリントンの所へ出かけた。弁護士もまた喜んだ。重要な証拠になる。一方のハリントンのほうは追いつめられた。
 ハリントンはコンスタンスを訪れた。エリオットが日記を出したら、アリスンのことをばらすぞなかば脅迫した。コンスタンスがエリオットに頼む。エリオットは苦しむ。この日記は妻殺しの容疑を晴らす絶好の材料だったのに。
 だが、愛する娘のためだ。
 「コニー、わかったよ。君のいう通りにするよ」。
 思わずコンスタンスはエリオットに抱きつく。あの十八年前のエリオットとのニューヨークでの、はかなくも甘い蜜月の日々が、あるいは彼女の胸をよぎったのかもしれない。

今週の話題
アメリカの若者たちの生態B

 ロドニイたちのような若者の生き方は、アメリカ映画においても見られる。ジミーことジェームズ・ディーンが出現した時、アメリカ中の若者は熱狂した。ジミーこそ、自分たちの代弁者だ。ひたむきに青春を生きることを演じるジミーに彼らはおのれの実像をみた。「エデンの東」「理由なき反抗」など思い出深い。「草原の輝き」「ボーイハント」「恋愛専科」その時代のアメリカの若者の姿をとらえている。「卒業」「俺たちに明日はない」「ラブ・ストーリー」「アメリカン・グラフィティ」などたくさんある。(文・山口 浩)
055 1977/11/28放映 日記のゆくえ
056 1977/11/29放映 ペルーから来た女
057 1977/11/30放映 裁判の前夜
058 1977/12/01放映 挑発のわな
059 1977/12/02放映 歪んだ殺意
ジョージ・アンダーソンの暴動

 精神病院から一週間の帰宅を許されてジョージ・アンダーソンがペイトンプレイスへ戻って来た。
 娘のベティはまだ早いと危ぶむが"良くなったから許可してくれたんでしょ"とジュリーは、久しぶりの夫の帰宅にうれしそうだ。
 だが、ベティの危ぐは現実となった。大事件へと発展したのだ。
 親子三人で水いらずの昼食をしジュリーとベティが職場にもどりジョージは一人になった。
 ジョージはふらりと外へ出た。ハリントン家へ向かった。そこでポール・ハンレーに出会った。ポールは、せっかく渡したエリザベスの日記をエリオットが公開しないので業をにやし、ハリントンにじか談判をしに行ったところだ。
 ポールに誘われ、つい酒をのみ出すジョージである。ポールがいった。
 「ボクの姉とハリントンは関係があったんですよ、信じますか?」。
 「からかっちゃいけないよ」。
 「姉は日記をつけてたのです。それが証拠です。ところであなたの病気はもう想のせいだと思われているけど、実はあなたの方が正しかったんですよ」。
 「なんだって!」。
 「そう、ハリントンはあなたのおくさんと深い仲だ、だがハリントンが追い回したのはあなたのおくさんがはじめてじゃない、その前にボクの姉がいた……」。
 「チクショー!」。
 ジョージは怒りにふるえた。ポールの車で送られハリントン家へ向かった。
 ガラスを破り、カギをあけて侵入したジョージの前に、ヌッとピストルが突き出された。ハリントンだった。いなくなったジョージに心配して、ジュリーが方々を捜した。エリオットも応援した結果、酔っ払ったジョージがハリントン家へ向かったことが分かったので電話で報せたのである。
 ジョージは手も足も出なくなった。だが、いままでの怒りをあからさまにいいつのった。
 ハリントンは、バカなことをいうな、と相手にしない。
 この時、心配したエリオットがやって来た。スキを見てハリントンの手からピストルを奪ったジョージが思わず引き金を引いた。タマはエリオットの胸に命中した。

今週の話題
アメリカの旅

ペイトンプレイスツアー 何ごとにも商売に結びつけるのがうまい日本の旅行代理店のこと。ペイトンプレイスツアーなんて組むのでは? とはいってもこの町は実在しない。ニューハンプシャー州ギルマントンをモデルにしたのだから。
 日本からは羽田国際空港から空路ニューヨークへ。日本航空、ノースウエスト航空、パンアメリカン航空で十七時間。ニューヨークからボストンまで五十分。長距離バスで約三時間でニューハンプシャー、ここから車で一時間でギルマントン町に到着。コネチカット川近い大自然の美しい田舎だ。(文・山口 浩)
060 1977/12/05放映 思惑ちがい
061 1977/12/06放映 復讐のあとに……
062 1977/12/07放映 ついに事件の真相が
063 1977/12/08放映 お母さんの嘘
064 1977/12/09放映 傷ついた娘
あの人が私のおとうさん!

 ジョージに撃たれたエリオット・カーソンの容態は予断を許さなかった。人々は次々と見舞いに来た。その中にハリントンもいた。
 「礼をいいに来た、なぜ私を助けてくれた」。
 「……なぜかな」。
 弱々しくエリオットは答えた。ハリントンは彼の手を握ると言った。
 「私は決心したよ、君の無実を晴らす、約束するよ」。
 この時、エリオットの容態がおかしくなり、あわてて看護婦がとんで来た。
 医師のモートンとロシイは出血がひどいので再手術ができず苦慮していた。ロシイは、もしものことを考え、いまのうちにと、コンスタンスを呼んだ。彼女はベッドに横たわるエリオットを見て、ひそかにある決意をした。
 一方、ハリントンは急いで自分の弁護士を呼びつけた。
 「私はエリオットの無実を晴らしたい、なぜなら彼はエリザベスを殺していないからだ」。
 驚く弁護士にハリントンは意外な事実を打ち明けた。
 彼とエリザベスの仲を知った妻のキャサリンがエリザベスを殺した、というのである。その時のことを詳しく弁護士に話しているところへ、女中が、エリオットの容態の急変を知らせに来た。エリオットが危ない。ハリントンは話を止めた。
 「この話はもう少し待とう」。
 つまりエリオットが死ねばすべてが丸くおさまるわけだ。彼のずるさに弁護士は怒って帰った。
 コンスタンスは病院からもどると、マットに大学へ行ってアリスンを呼んで来てほしいと頼んだ。
 早退して帰宅したアリスンに母のコンスタンスは話しかけた。
 「小さな町にね、あなたぐらいの女のコが母親と暮らしていたの、お父さんはもう亡くなっててね、そのコはとても世間知らずの箱入り娘だったの。そのコがある時、激しい恋をしたの、でも母親は反対して、そのコを旅に出したわ」。
 「なぜ?」。
 「許されない恋だったの、相手に奥さんがいたのよ、まちがってたわ、そのコのしたことは…でも二人は心から愛し合っていたの」。
 「その女のコはお母さんなの?」。
 「そう、私よ、私はニューヨークへ行き、彼も来たわ、彼は離婚して出直す決心をしたの」。
 アリスンはこの時、父親の写真の前に立った。それに気づいてコンスタンスはいった。
 「その写真の人、あなたの父親じゃないわ、買ったものなの。あなたを私生児にしたくなかったから。いままでのお父さんの話は全部ウソなのよ」。
 「じゃ私の本当のお父さんは?」。
 「離婚する前に彼の妻が殺されて、それで終わりだった」。
 アリスンが息をのんだ。
 「エリオット・カーソン……」。
 アリスンは黙って家を出た。うれしいのか、悲しいのか自分でもわからない。(文・山口 浩)
065 1977/12/12放映 愛と勇気
066 1977/12/13放映 父娘の対面
067 1977/12/14放映 試練のとき
068 1977/12/15放映 未来に向けて
069 1977/12/16放映 春の訪れと共に
父と娘としての対面

 エリオットを本当の父親だと知らされたアリスンのショックは、いまだ収まらなかった。手術が終わってもエリオットの容態は予断を許さない。
 「お母さんは今まで私をだまして私からお父さんを奪っていたんじゃないの、お母さんはマッケンジーさんの写真が待っている家に帰ればいいのよ、私は病院にいるわ、もしお父さんが死んだらお母さんを許さないわ!」。
 ふだんはおとなしいアリスンなのに、母コンスタンスに食ってかかる有様なのである。そしてベティにあなたの家に泊めてほしいと頼むのだった。
 ようやくエリオットは容態を持ち直した。面接も許されるようになると、彼がまっさきに呼んでもらったのはアリスンだった。
 二人は見つめ合い、アリスンは父の手を握った。二人は初めのころ図書館で話し合ったことを同時に思い出し、それを口にした。
 やはり、血のつながっている父と娘だった。
 「私、アリスン・カーソンに変えたいんです」。
 いろんな話をした後で、娘は甘えるように父に言った。エリオットはゆっくりとかぶりをふった。
 「それはよしたほうがいい、君はアリスン・マッケンジーとしての人生を歩いているのだ、私は君を育てなかったし、君の長所を伸ばしたわけでもない、私がいたからって、今の君に育てられたかどうか……」。
 「喜んでくれると思ったのに」。
 「私が喜ぶのは、お母さんと二人でそろって来てほしいってことだよ」。
 「私、もうお母さんと会いたくないの」。
 アリスンは優しい娘だった。始めはショックでそうは言っていたものの、二日目になると彼女は自分から我が家へ帰っていった。コンスタンスの喜びは大変なもので、母と娘は、
 "ウソのない家庭にしましょう"
 と誓い合うのだった。
 だが一方、ハリントン家の父レスリーと息子ロドニイ、ノーマンの一家には最大の危機が訪れていた。
 レスリーは、ポールがロドニイに、自分の姉エリザベスを殺したのは、君の父親だ、と告げたことがわかると、もはや隠しておく場合ではないと悟り、ロドニイに全てを打ち明けた。そしてレスリーは翌日、エリオットの容疑を晴らすため副知事に会いに町を出た。すでに彼は工場の経営から手を引くことをマットに告げ、マットはそれを新聞に書いた。
 ペイトンプレイスの権力の象徴でもあったハリントン家は、こうして没落寸前となったが、ロドニイはむしろ、いさぎよく責任を取ろうとする父に好感を持った。
 だが、次男のノーマンは違った。死人に口なしで、父は死んだ母に罪をなすりつけようとしているのだと、ロドニイに激しく食ってかかるのだった。(文・山口 浩)
070 1977/12/19放映 新たなる人生のとき
071 1977/12/20放映 ふれあう心
072 1977/12/21放映 背のびした愛情
073 1977/12/22放映 耳の聞こえない子
074 1977/12/23放映 閉ざされた心
コンスタンスとエリオット結婚!

 妻殺しの犯人とされ、十八年間も刑務所に入れられていたエリオットは、まさかこのような晴れがましい日がやって来るとは思わなかったにちがいない。
 この日、コンスタンス・マッケンジーとエリオット・カーソンは結婚式を挙げたのである。
 コンスタンスとは十八年前に愛し合い、アリスンという子までなした。二人にめぐってきた春、そして時あたかもペイトンプレイスの町に、ようやく花が咲き若芽もふく陽春の季節がやって来ていた。
 この日、町の教会には、二人の結婚式を祝うために大ぜいの町の人たちが着飾ってやって来た。
 アリスンも、モートン医師も、ロシイも、ベティも、ロドニイ、ノーマンの兄弟の顔も見える。
 式を終えた二人は、やがてボストンへハネムーンに旅立つのだが夫婦にはやはり、置いていくアリスンのことが気がかりだった。
 「二人で幸せになってください」
 とアリスンは改まって父エリオットに祝福の言葉を送る。
 「アリスン、私は三人で幸せになりたいんだよ」。
 エリオットは娘の手をギュッと握りしめる。
 「アリスン、寂しいでしょうネ」。
 コンスタンスも気がかりでならない。
 やがて二人はみんなに送られて車に乗ってボストンへ向かったのだった。アリスンは翌朝、一人で店を開けて仕事に精を出す。彼女の心は父母が幸せになることを望み、喜びながらも、これからの自分の生き方をどのようにすべきか、迷いや不安や複雑な思いでいっぱいなのであろう。
 そんな乙女心が、ロドニイと会うと微妙に揺れ動く。
 結婚式の披露宴でロドニイと踊りながら、彼に誘われとアリスンは、つい彼のアパートへ行くことを承知するのだった。
 ハリントン家を出たロドニイは弟のノーマンとアパート暮らしを始めたのである。
 そのアパートで、アリスンは料理の腕をふるった。ロドニイと二人だけの部屋で、二人だけの食事……。
 「私、絵に描いたようないい奥さんになりたいの、子供を学校に送り出して、掃除や洗濯を能率的に片づけてしまって、ご主人が帰るまで小説を十ページぐらい読んでそれから夕食の支度よ」。
 結婚―。アリスンにはまだ、ユメのような出来事でしかない。
 だがこうしてロドニイと向かい合ってると、これが結婚生活なのかしら、なんて思えたりする。
 "彼の手がのびて来て私の体を抱きしめてくれないかしら……"。
 だが、ロドニイは以前の彼ではなかった。今のアリスンなら自分が手をさしのべれば一線を踏み越えてしまうにちがいない。ロドニイはわざと明るい声で言った。
 「さあ送って行くよアリスン、ごちそうをどうもありがとう!」。(文・山口 浩)
<お知らせ>
(1977年)12月26日から(1978年)1月6日まで、年末・年始特別番組のため、放送はお休みです。
「ペイトンプレイス物語」の、これからのみどころ、話題を、集めてみました。

* ハリントン王国の崩壊

 ペイトンプレイスきっての名門ハリントン家の一員になった時はとても誇らしい気持ちだった、とベティはそう言っている。だが名門ゆえにベティは義父と折り合いが悪く追い出された。レスリー・ハリントンはかつてエリオットの妻エリザベスと恋仲になったが、キャサリンに感づかれて別れを迫られた。彼に言わせると、この三角関係のもつれからキャサリンがエリザベスを殺してしまったのだと言う。
 真犯人究明のために町に戻って来たエリオットや、エリザベスの弟ポールの追及と、出て来たエリザベスの日記によりついにその真相をさらけ出さねばならなくなった。
 その結果、ハリントンは工場経営から手をひき、本人はやがてヨーロッパ旅行に旅立って行く。子どものロドニイ、ノーマン兄弟はアパート暮らしを始める。

* エリオットとコンスタンスの結婚。そして、他の人はどのように変わったか。

 人の世はさまざまだ。平和そのもののペイトンプレイスの人々も変わっていく。十八年ぶりの愛を結婚にまで届かせたエリオットコンスタンス
 父がエリオットだと聞かされたアリスンも、ショックから立ち直ると、父を得て幸せをかみしめている。プレイボーイのロドニイもすっかりおとなになった。どんなに辛いことがあってもこの町に残ろうと、旅行に誘う父の申し出を断った。ノーマンは父が死人に口なしと母に罪をなすりつけたと固く信じて、すっかり世をすねている。モートン院長にまでくってかかる始末だ。
 コンスタンスを永年思い続けていたロシイ医師に、モートンの娘クレアという相手が出て来た。医師のクレアにも悩みがあるらしい。
 エリオットをピストルで撃ったジョージは目下ボストン郊外の精神病院暮らし。妻ジュリーには、ロドニイと離婚して病院の看護婦をしているベティだけが頼りだ。ベティもすっかりおとなになった。ノーマンの女友達リタは、家柄の良いノーマンに合わせようと努力する。ハリントンに代わって新しい経営者が町にやって来た。デビッド・シュースターと妻のドリス、耳の不自由なひとり娘キムの三人家族だ。

* クレア・モートンという女性

 ペルーの医療奉仕団の一員として赴任していたクレアが町に帰って来たのは急なことだった。最初のころロシイと確執のあったモートンは、娘が帰って来たのでホッとした。そして、ロシイと和解したモートンは、娘のクレアとロシイの交際を喜んだ。ところがクレアは感情が不安定でロシイを再三困らせている。彼女は母に打ち明ける。彼女はペルーへ一緒に行った主任博士と結婚していたのだ。その夫といさかいを起こして町へ戻って来たらしい。
 ロシイのことは憎からず思っているクレアだが、夫のある身としてセーブせざるを得なかったのだ。(文・山口 浩)
075 1978/01/09放映 人生うす曇り
076 1978/01/10放映 館の住人
077 1978/01/11放映 新しい来訪者
078 1978/01/12放映 家政婦の息子
079 1978/01/13放映 ペルーでの傷あと
キムはしゃべれる?

 父母がボストンへ新婚旅行で、今日もアリスンは一人ぼっちだ。
 とは言っても、十八年間も刑務所に入っていた父エリオット、彼女を育てるのに心血をそそいでくれた母コンスタンスの晴れてのハネムーンだ。アリスンにとって嬉しくないはずはない。
 朝、店へ行って店を開けて、学校がない日は店番をする。日中、いろんな客が来る。ハリントン家の新しい住人、デビッド・シュースターとドリス夫人、八歳になる一人娘のキムとも顔見知りになった。キムはかわいそうに耳が聞こえない。
 今夜は父母が帰ってくると思っていたら、コンスタンスから電話があって、もう一日帰るのを延期するという。
 その夜、店じまいをしていると、ロドニイが迎えに来た。
 「うちで壁塗りパーティーをやるから来ないか」。
 だが、アリスンは断った。
 イライ・カーソンのところへ行く約束があるからだ。病気治療でマイアミへ行っていたイライ老人は、息子のエリオットの容疑が晴れたのを喜び、ペイトンプレイスに住みたいと戻って来たばかりなのだ。
 「アリスン、わしは自分の孫と知らずにお前さんを見て来た、だがその頃からお前さんは、わしを明るくしてくれた。感謝しとるんだ、わしはお前さんを見てるだけで嬉しくてネ」。
 「ありがとう、おじいちゃん!」。
 やはり一人というのは寂しい。家に戻ったアリスンは、断ったはずのロドニイのパーティーに出かけた。大勢の友だちが壁にペンキを塗ってワイワイ騒いでいる。
 その中でノーマンはすっかり人が変わり、アリスンは胸が痛い。
 その頃、シュースター家では大変な事が起こっていた。父母のいさかいで、八歳の娘キムが人形を連れて家出してしまったのだ。キムの聾唖(ろうあ)学校の先生もこの町に来てもらおうと言っていたのだが、来なくなったのをしゃべっている母の唇を見て知ってしまったからだ。
 ロシイも呼ばれた。耳の聞こえないキムに、ひょっとしたら交通事故などという事態が起こらないとも限らない。
 警察が動員され捜索が始まった。それから一時間ほどして、キムは意外なところで発見された。
 それは川岸の船の中である。
 発見者はアリスンだった。
 キムは家に帰りたがらなかった。ようやくなだめすかしてアリスンはまず店へ連れて行き、そこからシュースター家に連絡する。
 「子供って自分じゃ知らずに親を悲しませるのネ」。
 母のドリスはわが子が見つかって嬉しいのだが、何か釈然としない。
 アリスンは言った。
 「キムは一人で話してましたよ」。
 まさかキムが話せるなんて、それを聞いた一同はびっくりする。(文・山口 浩)
--- 1978/01/16放映 (「華麗なるワイセンベルク・ピアノ・リサイタル」放送で休止)
080 1978/01/17放映 インスタント・パパ
081 1978/01/18放映 離婚の障害
082 1978/01/19放映 過去を忘れたい
083 1978/01/20放映 一人だけの乾杯
ロシイの新しい相手は?

 コンスタンスはエリオットとめでたく結婚したが、彼女に思いを寄せていたロシイ医師はどうしたか―。
 彼は十八年前にニューヨークでアリスンを生んだコンスタンスの看護人をしたが、その時、美貌の彼女に惹かれ、以来、結婚もしないでニューヨークで医師としての修業を続けていた。
 医学の学校時代の先輩が死んで、その病院を継がないかと話を持ちかけられた時、彼がそこを辺ぴな田舎町だとわかっていながらも承知してやって来たのも、十八年間思い続けている女性の住む町だったからである。
 赴任して来た当時、この町の人たちの態度は冷たかった。コンスタンスにしても同じことだった。特に彼女はアリスンの出生の秘密があばかれるのをおそれ彼を遠ざけた。
 だが、次第にロシイは医師としての信頼を得たし、コンスタンスとの間にも、いつしかほのぼのとしたものが通うようになった。
 それもつかの間、妻殺しの犯人として刑務所に入っているエリオットが仮出所して町に戻って来たから、コンスタンスはじめ多くの関係者は動揺した。
 結局、エリオットの妻エリザベスは、実はハリントンの亡き妻キャサリンに殺されたことが明るみに出て、エリオットの嫌疑は晴れ、ついに無罪となった。そして、エリオットとコンスタンスの仲が再燃し、エリオットはアリスンに実の父娘だと明かし、めでたくエリオットとコンスタンスは結婚したのである。
 ロシイは町の人のためにつくして来て、多くの人たちがこの医師のアドバイスで立ち直った。コンスタンスはロシイとエリオットの間で、女心を揺らせたが、ロシイはアリスンのためを考え、二人が一緒になることに力を貸して、自分は身を引いたのだった。
 そんなロシイの前に一人の女性が現れた。それはモートン院長の娘クレアである。同じく医師だ。ペルーへ赴任していたが郷里へ戻ったのである。
 どういうわけか初めて会った時からしっくりいかなかったし、ロシイがデートに誘っても、承知しながら急に断ってきたり、クレアは気むずかしい娘だった。
 だが、ようやくこの病院で働くと言う彼女の言葉に、ロシイはホッとした。これからは毎日のように病院で顔を合わすことになるロシイ医師とクレア・モートン博士だ。父のモートンも二人の交際には大賛成。
 だが、クレアの気まぐれはなかなかのものだ。気まぐれというよりもロシイに心を開かない。彼も彼女の気持ちをはかりかねた。
 その謎は母にだけクレアが打ち明けた。ペルーへ一緒に行った主任博士と現地で結婚していたのだが、けんかして戻って来たのだ。クレアが他人の妻と知ったらロシイはさぞ落胆するだろう。(文・山口 浩)
084 1978/01/23放映 さまざまな過去
085 1978/01/24放映 時計飾り
086 1978/01/25放映 かくれんぼ
087 1978/01/26放映 新しい職場
088 1978/01/27放映 嵐の訪れ
スティーブン・コード登場

 ロシイ医師の紹介で看護婦になったベティだが、職場は必ずしも快適とは言えなかった。
 それというのも、入った時からチョート婦長が何かとベティを目のかたきにするからだ。ついにはベティの抑えに抑えた気持ちが爆発し、ロシイにぶちまけてしまうのだった。
 その日、ベティは入院患者を見舞いに来た牧師のベドフォードに車で家まで送ってもらった。車中、ベドフォードは、ベティにデートの申し込みをする。
 病院で働き、家へ帰ればやはり一日働いている母と二人だけの寂しい生活。頼りになるはずの父は精神病院に入ったきり……今のベティは毎日がなにかしら投げやりな感情で、忙しい時の流れに身をまかせているにすぎない状態だった。
 そこへ男性からのデートの申し込み、若いベティの胸に温かな火がともった。
 だが、家へ帰って母のジュリーと話していると"このチャンスを逃してはタイヘンよ"といった気持ちがあからさまな母の言葉に反発を感じ、デートの時間が来ても、支度をしない娘に母はハラハラ気をもむ。ベティが言った。
 「私がベドフォード牧師さんと腕を組んで歩いたら、町の人たちは恥さらし女に石を投げつけるこの町の古い習慣まで持ち出してくるに決まってるわ」。
 「過去のことは忘れるものよ。ベティはまだ若いのよ、ベドフォードさんがあなたの過去を知らなかったら話して気持ちを楽にさせるのよ、お勤めに出て帰って来て寝るだけの生活なんて味気ないじゃないの」。
 と母のジュリーは懸命だ。この時、電話が鳴る。ベドフォードからだ。電話に出たベティは、デートに行くことを承諾しジュリーはホッとした。
 ベティのもと夫のロドニイのほうはどうしているかといえば、もっぱらアリスンへのアタックだ。
 大学で会ったり映画を見に行ったりしている。その夜も二人はレストランへ食事に行き、そこでバッタリ、ベドフォードとベティの初デートの現場に遭遇する。
 四人があいさつを交わすと、そこへさらに、ロドニイの母方の、ロドニイには祖父のペイトン老に仕える家政婦の息子で、十数年ぶりに戻って来たスティーブン・コードもやって来た。ロドニイとは同じ年で幼なじみ、学校まで一緒だった。
 ところがこのスティーブン、来た早々に、ノーマンに「君のお母さんは人殺しなんかじゃない」とささやいて、彼の母思いの情をあおったりする。
 来た目的というのは、ノーマンたちの祖父で工場の実質上の持ち主であるペイトンの弁護士の助手になったからだ。
 さらにスティーブンは工場の新しい雇われ社長デビッド・シュースター夫妻にも近づいた。台風の目になりそうだ。(文・山口 浩)
089 1978/01/30放映 雨やどり
090 1978/01/31放映 アンデスの聖者
091 1978/02/01放映 母の資格
092 1978/02/02放映 妻として母として
093 1978/02/03放映 ティー・パーティー
デビッド・シュースターの悩み

 レスリー・ハリントンがペイトンプレイスのシンボルともいうべきペイトン邸を出て、また工場の経営者の職を辞した後、新経営者としてデビッド・シュースターがやって来た。
 だが、この町の人を使いこなすのは至難の技である。
 彼の家族は妻のドリスと一人娘のキムだが、このキムは耳が聞こえない。キムをはさみ、シュースター夫妻はいさかいが絶えないのだ。
 ドリスはまた、工場の持ち主ペイトン氏に、デビッドには内証で手紙を出したりして、夫の気持ちを逆撫でするようなことをしてしまう。
 もちろん、これとてドリスからすれば夫のタメと思ってやったのだから、怒られるとは心外だ。つい、言い争いになる。
 ある夜、アンダーソン家のドアをたたく者がいた。
 ベティがドアを開けると、そこにデビッド・シュースターが立っていた。
 「アンダーソン夫人はいらっしゃいますか?」。
 デビッドはジュリーに
 「秘書として工場に戻っていただけませんか?」と、ズバリと切り出したのである。
 「でも―マリアンがいるでしょうに」。
 「経理のほうにまわってもらいます」。
 「なぜ私に?」。
 「理由はいろいろありますが、給料は前よりたくさんさし上げるつもりです」。
 「とてもありがたいことですけど、なぜそうなさるのですか?」。
 「率直に言うと今、人事で頭を痛めているんです。暗礁に乗り上げたくないが、もう波風は立ってしまっています。だから経験の豊かな人に、時々アドバイスしてほしいんです」。
 デビットは強引だった。彼のやり方はハリントンに似ていると思いながら、ジュリーはその強引さに負けて、現在勤めている病院のロシイ先生に相談すると返事をしたのだった。
 結局、ベティの勧めもあり、ロシイもまた、ジュリーのためには秘書のほうがよかろうと気持ちよく転職をOKしてくれたので、ジュリーは再び思い出多い元ハリントン家のオフィスで働くことになった。ジュリーはデビッド・シュースターをどのように助けて盛り立てていくだろうか。
 ロシイはシュースター夫妻より前、この町の住人になっている。
 その目的は十八年前の思い人コンスタンスにあったが、彼女は無罪となったエリオットと結婚してしまった。次に町へ帰って来た病院長モートンの娘クレアと心が通い合ったが、彼女はすでに人妻で、やがて夫の元に帰って行く。
 今後どんな女性が独身ロシイの前に現れるだろうか。しかもその女性が重大な事件の主役になるというめぐり合わせもある。それは後のお楽しみ。(文・山口 浩)
放送時間変わります
「ペイトンプレイス物語」
2月6日から毎週月曜


 これまで月〜金曜の午後4時から三十分間放送していた「ペイトンプレイス物語」が、二月六日から週一回月曜日に三本分(一時間三十分)まとめて放送することになった。
 放送時間は夜11時10分から。さまざまな愛の形を、人間味豊かに描いているこのドラマを、夜もふけてからじっくりとお楽しみください。

(朝日新聞 1978年2月の記事より)
放送時間の変更により、初めて見られる方のため前回までのあらすじを三十五分間放送し、ひきつづき

094 1978/02/06放映 時は限りなく貴い
095 1978/02/06放映 新しい出発の日

を放送いたします。
今日のペイトンプレイスは卒業式でにぎわっていた―。

 ノーマンは多いにはしゃぎまわり、アリスンはほおを染め、いつになく落ちつかない。
 ペイトンプレイス高校の卒業生の名簿に、二人の名が載っている。思い出多い学舎を後に、それぞれの人生の一歩を踏み出していく。
 卒業とはどこの国の若者にとっても、青春の甘き里程標のひとつと言えようか。
 特にノーマンにとっては、この卒業式は感慨深いものがあったに違いない。
 父ハリントンが要職の座を追われ、屋敷からも出なければならなくなった。兄のロドニイとの自活。愛する母がエリザベス殺しの犯人と言う父への反抗……など、さまざまな出来事が、この傷つきやすい世代の若者を襲った。
 そんな境遇にヤケを起してノーマンは精神的に自堕落な日々を過ごし、学業も放棄しかかった。
 ノーマンを救ったのはリタの温かな愛情だった。
 リタに支えられ、いつしか彼は立ち直り、卒業のよき日を迎えることとなったのだ。
 その夜は、二人のための祝賀パーティーだった。
 リタも呼ばれていた。パーティーに着ていくドレスを新調し、彼女は洋服屋さんに取りに行った。
 バーをやっている母のエイダも口ではなんだかんだと言うもののノーマンと自分との交際を賛成してくれている。"私もしっかり夜学に通って勉強し、ノーマンにつり合う女性にならなければ……"リタは洋服箱を抱え、今夜会うノーマンのことを考えながら、家路を急いだ。
 と―。
 目の前に立ちふさがった男がいた。
 ジョー・チャーナックだった。以前つき合っていた不良少年だ。冷たくなったリタにしつっこくつきまとい、エリオットから厳しく勧告されていたジョーだった。
 男の力は強く、必死に抵抗するリタを倉庫に引きずり込んだ。
 倉庫から出て来たリタの服装は乱れ、足取りも重く、目はうつろだった。
 悲しかった。むなしかった。幸せになりたいと願う、ささやかな女の祈りにも似た望みも、無残に踏みにじられて、しょせんはかなわぬ夢なのだろうか。
 入り口で、迎えに来たノーマンの明るい声がした。
 思わず、自分の部屋に隠れてしまったリタ。
 が、心の傷を押し隠し、正装で現れたリタに、「きれいだよ」と、浮き浮きしたノーマンの賛辞が重苦しかった。
 何も知らないノーマンは、リタにこの上ない優しい心づかいを見せてくれた。
 リタはつらかった。
 楽しくあるべきはずのパーティーが、リタには針のむしろのように感じられた。(文・山口 浩)
096 1978/02/13放映 憂うつな夜
097 1978/02/13放映 男と女の距離
098 1978/02/13放映 館の少女
夫婦の危機

 ペイトンプレイスの朝、突如、町の上空に爆音が聞こえヘリコプターが飛んで来て、町の広場に着陸した。
 さあ大変、この町ではめったにないことだから、人々はダレが乗って来たのか知りたがった。
 キムは母親のドリスと外で遊んでいた。ヘリコプターがやって来たのを見て、
 「エイミー!、エイミー!」
 と呼んだ。ドリスはあわててキムを抱きしめて、
 「エイミーが来たんではないのよ」
 と慰めた。耳の不自由なキムの付き添いのエイミーと別れペイトンプレイスにやって来たことが、幼いキムにとってどれ程辛いものか。
 デビッドもドリスもわかってはいるがエイミーは都合でやって来ることは出来ない。この子を私が育てると決意するドリスだったが、わが子のかたくなな抵抗にあって、挫(ざ)折感が色濃く、夫婦仲もとげとげしてしまっている。
 さて、ペイトンプレイスの町の人々を驚かせたヘリコプターの主は、ケネス・マーカム。
 ドクターズ病院に入院中の双子の弟、ビンセント・マーカム医学博士を見舞いに来たのだ。
 ビンセント・マーカムは、バスの事故で傷を負い、病院にかつぎ込まれた。この人、クレアの主人である。ペルーの辺地へ奉仕に行き、向こうで結婚した。
 クレアを迎えに来て災難に遭った。クレアはある日、置手紙をおいて六千マイルのはるかな地から帰って来たのだった。
 ロシイ医師は、ペルーでの激務から解放されて、ノンビリしないと体に毒だし、すでにビンセントの体は無理できないと忠告するが、ビンセントは聞き入れない。
 治り次第ペルーに戻ろうと考えている、そんなビンセントに、クレアは離婚を迫り、二人は話し合うが平行線をたどるばかり。
 「こうやって私たちは二人の結婚の貧しさをののしり合いながら、一方ではペルーインディアンの栄養失調の心配をしている。確かに人間って変わっていくわ、でも根本は変わらないはずよ」。
 「ボクらは長い時間をかけて何のためにやってきたのか、全く、何ひとつ変わってやしないんだ……」。
 「私は結婚した時から一人ぼっちだった……」。
 医師として、貧者救済のビンセントの意志を理解したつもりでも、それに没頭する夫に、クレアの妻としての感情がついて行けなかったというわけなのだろう。
 ペイトン高校の卒業式である。卒業パーティーが盛大にホテルで行なわれた。アリスンは晴れて父と名乗ったエリオットとダンスを踊る。
 幸せがアリスンの胸を浸す。卒業生の一人のノーマンは、心が通い合ったリタを連れて堂々と胸を張ってパーティーに臨む。
 だが、同級生たちは
 "あの女は不良の仲間じゃないかノーマンもバカだな"
 と噂し、白い目でリタをながめている。リタは"私はここに来る資格のない女なんだわ"と自分を卑下する。(文・山口 浩)
099 1978/02/20放映 双子の兄弟
100 1978/02/20放映 病める者のしもべ
101 1978/02/20放映 父親の心配
くびになったアリスン

 ヘリコプターで飛んで来たのは入院中のビンセント・マーカム博士の双子の兄ケネスだった。彼は事業家で金持ちだ。ビンセントの身を案じ、ペルーに戻らず、ここで十分に休養するように言う。
 だが、ビンセントは体が丈夫になったらペルーへ行く気なのを知ると、ケネスは弟のために年十万ドル基金のマーカム財団を設立することで、彼を引き止めようと図る。
 ある朝、いつものようにアリスンがシュースター邸へキムの子守りに行くと、ドリスが言う。
 「これからは今までのような生活を少しずつ変えて行きたいと思っているのよ」。
 「あの……おっしゃることがよくわかりませんけど」。
 「私がキムと一緒にいる時間を増やしたいのよ」。
 ドリスは夫のシュースターに相談しないで、アリスンに解雇を言い渡す。帰りかけるとキムがアリスンにひしとしがみついて泣く。
 ドリスは必死になる。
 「キム、アリスンを離しなさい。早く行ってお願い!キムわかって!もう私たちには誰もいらない、アリスンもいらないのよ。キム、いい?ママがついているわ。さあ、今日からはママと二人だけで暮らすのよッ」。
 泣きやまないキムを抱きしめてドリスも泣きそうである。
 ロドニイがシュースターの工場にやって来た。つい先日まで父ハリントンが運営する工場だった。ロドニイはこの工場で働かせて欲しいとシュースターに申し出る。
 「ボクの父だって最初は材料運びから始めたんです。祖父だってそうです。ボクもそうしたいんです」。
 「ほかにだって仕事はあるだろうに」。
 「ええ、ありました。ボクは父の働いたところで働きたいのです」。
 この工場ではシュースターが新しい経営者になってから、合理化を図って十五人を解雇にした。このことは町の大きなニュースとして、駆け巡った。
 エリオットは、この解雇を不当だとして、マットに言い、不当解雇に対する抗議の投書を新聞に載せたいと言う。
 出来上がった原稿をコンスタンスに見せると、ちょっと激しすぎやしないかしらと危ぶむ。マットもまた同じことを言った。
 「まるでこれじゃ個人攻撃だ。この投書は面倒のタネになるよ」。
 マットはそれよりも、と耳寄りな話をエリオットに持ちかけた。
 マットの新聞社をエリオットに譲りたい、と言うのだ。マットは引退して世界旅行へ行きたい。新聞をやることにエリオットは大いに心を動かされている様子だ。
 コンスタンスの店から外を見たエリオットは、広場でシュースターとわが娘アリスンとが親しげに話しているのに気がついた。
 シュースターもアリスンが解雇されたのを知らなかったのだ。
 エリオットは、ドリスがアリスンをやめさせたのは、シュースターがアリスンに気があるからだと悟る。(文・山口 浩)
102 1978/02/27放映 ?
103 1978/02/27放映 ?
104 1978/02/27放映 ?
(上記3話のあらすじはありません)
105 1978/03/06放映 ?
106 1978/03/06放映 ?
107 1978/03/06放映 ?
(上記3話のあらすじはありません)
108 1978/03/13放映 二人だけのパーティー
109 1978/03/13放映 兄と弟
110 1978/03/13放映 ベビーシッター
リタとノーマンの恋

 また今週もノーマンとリタの話から入らねばならない。
 なにしろ二人の仲は風雲急を告げているのだ。
 ロドニイとアリスン、ノーマンとリタ、この4人はダブルデートを計画し、ロドニイたちは先に行って待っているのに二人は来ない。いや、リタもまたノーマンを待っていたのだ。
 待っていたがついにノーマンは来ない。来ないはずだ。恋仇(がたき)ジョー・チャーナックと殴り合いをやっていたのだから。
 心配したリタが夜、ノーマンのアパートへ行く。
 「ノーマン、いることはわかっているのよ。早く開けて!」。
 リタは必死だ。やっとドアを開けたノーマンの顔の傷に気がつく。
 「ジョーがどんなこと言ってケンカになったの?答えてよ」。
 くいさがるリタに、
 「ようし、そんなら話してやる。ジョーはお前に聞いてみろって言った。君と倉庫で何があったか聞けって。リタ、倉庫で何があったんだ?」。
 「……」。
 リタを突きとばすノーマン。
 リタは、ただ無理やりキスをされた、それだけだと告げる。
 「ほかに何もなかったと誓うわ、信じてノーマン!」。
 「わかったよリタ、もう何も言わない。でもジョーはなぜ倉庫へ連れ込んだんだろう」。
 何も言わない、というすぐそばからまた問題をむし返すノーマンに、リタはひそかに決心した。
 "この人と別れよう……"
 ノーマンの嫉妬深さは、先々どんな不幸につながるか知れないからこそ、別れようと考えたのだ。
 翌朝、ロドニイはノーマンの傷に気がつく。
 「ジョーには近づくな、まずリタを信じることだ」。
 ロドニイは弟のためにひとはだ脱ぐことを決意した。
 ロドニイはリタに会い、リタと弟が愛し合っていることを確認すると、彼はジョーに会いに出かける。ジョーはどうやらペイトンプレイスの若者たちに、とんでもない不幸をもたらすことになるかもしれない。
 離婚の意思を抱いてペイトンプレイスへ戻ったクレア・モートンは、夫のビンセント・マーカム博士と和解する。マーカム博士は実業家の兄から基金を受け勇躍ペルーに戻る。夫の不治の病のためにも、クレアは再び夫の片腕として、この町を後にすることになる。
 去る人もあれば来る人もある。ジョーの姉のステラが帰って来た。
 エリオット・カーソンはクビ切りを宣言した工場の新しい経営者デビッド・シュースターを新聞で激しく責める。そのデビッドからパーティーに誘われる。
 その席上ではどんなことが起こるだろうか。一方、パーティーを催すシュースター側もまた、キムを誰かに預けなくてはならない。ドリスはつらい思いをしながらアリスンに頼むのだった。(文・山口 浩)
111 1978/03/20放映 いやがらせ
112 1978/03/20放映 波止場で……
113 1978/03/20放映 幼い目撃者
ジョー死ぬ……

 ロドニイは決心した。弟ノーマンと恋人リタ・ジャックスの仲を、平和なものにしてやりたい、そのために、リタにしつっこくつきまとうジョー・チャーナックに話をつけて、二度と二人に手を出させまい、と決心したのだ。
 チャーナック家に行ったが、ジョーは留守だった。そして見知らぬ若い女性がいた。
 「あなたはダレです?」。
 「ジョーの姉のステラよ、あなたは?」。
 「ロドニイ・ハリントンです」。
 ウエストコーストで暮らし、つい先日この町に帰って来たばかりのステラ・チャーナックだった。
 ロドニイが帰った後、入れ違いにジョーが戻って来た。
 「この町じゃオレ、全然ツカないんだよ」。
 「ねえ、しっかりおしよ、ジョー」。
 「なあ姉さん、こんなとこ出てやり直そうよ、二人だけで」。
 「私は帰って来たばかりよ」。
 「なぜ帰ったの、年とった酔っ払いがこの掘っ立て小屋でウロチョロしてるのを見るためかい?」。
 「パパのことはあんたと関係ないでしょ」。
 「姉さんは年寄から金を巻き上げて大学へ行ったが、残ったオレはどうなったと思う?」。
 「今度は私を責めるの?」。
 「姉さんは頭がいいがオレはクズさ、オレは一度でもいい、幸運にありつきたいんだよ」。
 「自分のことを棚にあげて八つ当たりするのはやめなさいよ」。
 「頼むから姉さん、こんなとこ出ようよ」。
 「ここでがんばるのよ、マトモな生活をしようと考えなきゃダメよ」。
 その夜、波止場でとうとうロドニイはジョーをつかまえた。
 「リタは君をふったんだ、お前はふられたんだよ、さあ一緒に行って二人の前でハッキリさせようじゃないか」。
 すきを見てジョーはロドニイを突きとばす。格闘になる。年上のロドニイが勝つ。鉄の棒を持って戦ったジョーだったが、それも取り上げられてしまう。
 「思いっきりぶん殴ってやりたいが、そんなことしてもしょうがない。こんなもんいらん」
 と言ってロドニイが棒をジョーに投げる。その拍子にジョーは足をすべらせ岩場から落ち、後頭部を強打してしまう。
 一度は起き上がったものの再び倒れるジョー。ロドニイはあわてて電話ボックスを探す。
 ロドニイの急報を聞いたのはベティだった。
 「その声は―ロドニイ?」。
 だが、救急車を頼むと言ってロドニイは切ってしまう。
 ジョーの所へ戻ったロドニイは彼を起そうとするがなかなか起きない。数人の釣り人が来るので、ロドニイは足早に立ち去る。
 やって来た釣り人たちは、倒れているジョーに気がついた。
 介抱しようとした一人が驚いて言った。
 「や、死んでるぞ」。
 二人の格闘の一部始終を、ものかげから幼いキム・シュースターが見ていたのだった。(文・山口 浩)
114 1978/03/27放映 不安な夜
115 1978/03/27放映 疑い
116 1978/03/27放映 自首
ロドニイへのけん疑

 "ある事故にロドニイが関係している"。
 ベティ・アンダーソンは、シュースター家のパーティーに出ていても、不安でならなかった。
 そのパーティーへ入って来たのは、キムを抱いたノーマンとアリスンだった。
 キムは体を震わして何かにおびえている。
 「本当にすみません。キムはスキを見て逃げ出したんです。私たちようやく探し出したんです」とアリスンは懸命にあやまる。
 ゴダード警部がエイダの店で調べている。エイダは店でジョーに酒をすすめないと言い、リタはここ何週間も会っていないと答える。
 ロシイ医師が呼ばれてやって来た。急患はステラ・チャーナックである。
 「ジョーがカリフォルニアに行こうと言ったのに私、断ったのよ。弟の言う通りカリフォルニアに連れて行ってやればよかった……」。
 ステラは泣く。ジョーがまさか死んだなんて。ロシイは言う。
 「お母さんに知らせなければ」。
 ステラは気をとりなおし、
 「私が言うわ。ついて来てくれない?」とロシイに頼む。
 シュースター家のパーティーではベティが気にしてキムの部屋に来る。アリスンが寝かしつけていた。ベティがアリスンに尋ねる。
 「キムがどこに行って何を見たか分かる?」。
 「キムは波止場に立っていたの」。
 「キムを探したのはあなたとノーマンだけ?ロドニイはいなかったの?」。
 ロドニイの名を聞き、キムはアリスンにしがみつくのだ。
 パーティーにステラとロシイが入ってくる。ジョーとステラの母アンナは、シュースター家の家政婦をしている。ジョー死亡の報を聞いたアンナは、ぼう然とそこに立ちつくす。そしてこのニュースはパーティー会場に素早く広まるのだ。
 ベティは、かつての夫ロドニイがいま聞いた忌まわしい事件に関係してやしないか不安でたまらない。たしかに、病院へ事故を知らせてきた声はロドニイに違いないのだ。
 ベティは思い切って、ロドニイとノーマンが二人で住んでいるというアパートを訪れる。ロドニイが言った。
 「ジョーを殺す気はなかった。あれは事故なんだ」。
 「なぜ救急車が来るまでそばにいなかったの?」。
 「電話で病院に知らせた後、彼のそばに戻ってみたら死んでたんだ。そうと分かったらいたたまれなくなって……恐かったんだ」。
 「警察に行かなくては……」。
 「わかってるんだ、もう遅すぎるくらいだよ」。
 この時ノーマンが帰って来て、自分とリタのために大変なことになったのを知る。ノーマンは言う。
 「ジョーを殺したかったのはボクなんだ。兄さんじゃない!」。
 この時、ゴダード警部がロドニイを訪ねてやって来た……。(文・山口 浩)
117 1978/04/03放映 息子の死
118 1978/04/03放映 渦中の兄弟
119 1978/04/03放映 意外な証言
キムの意外な証言

 ロドニイは自ら警察に出頭し、ジョー・チャーナックの死について尋問を受けることになった。
 長年ハリントン家の弁護士を務めてきたテッド・ダウエルは、ロドニイに不利になるような自白をやめるよう忠告した。
 だが、ロドニイは聞き入れない。こうして一同はジョン・ファウラー検事が現れるのを、取調室で待った。やがてやって来たファウラー検事はロドニイに言った。
 「どうしても供述をしなくちゃいけないということじゃないんだよ」。
 ダウエル弁護士が不服そうに口をはさんだ。
 「やめるように説得したんだがネ」。
 ファウラーがロドニイに言った。
 「黙秘権の行使は、ちゃんと法律で認められ保証されているよ」。
 「わかってます」。
  ロドニイの決意は動かない。こうしてロドニイはジョーと波止場で会い、殴り合いなったいきさつを話し始めた。
 その頃、ロドニイの父ハリントンが経営していたペイトン製作所の夜警室に、ロシイ医師が訪れた。
 夜警のガス・チャーナックはジョーの父親だった。
 「用ってなんですか。何かお説教でも……」。
 「いやなに、ボクがやって来たのは……」。
 ガスは夜警室でロシイに子供たちの写真を見せて自慢する。
 「ステラは頭もいいしきれいな子ですよ。こっちはオレの大事なジョーだ」。
 「実はそのジョーのことで……悪い知らせです……ジョーは死にました」。
 「――」。
 ロドニイは正直に供述したのだが、状況は彼に不利だった。ジョーが死んだと分かってから彼が逃げ出したのもまずい。家に帰るとベティがいて、そこへ警部がやって来た。ロドニイが自ら進んで警察へ出頭するところだ、と説明してもそれを証明するベティが彼のかつての妻では説得力がない。
 アリスンが警察に駆けつけた。ロドニイのことをエリオットが知らせてくれたからだ。
 エリオットは新聞記者として、ファウラー検事を取材する。だがこの二人は奇しき縁に結ばれていた。ファウラーの父も検事だったが、その父がエリオットの妻殺しの裁判の時の担当検事だった。
 そして、エリオットを有罪に追い込んだが、十八年後にレスリー・ハリントンの妻キャサリンが犯人だと判明した。つまり、ファウラーの父がエリオットを十八年間刑務所に追いやったのだ。そしてファウラーは、エリオットの娘の恋人のロドニイと対決することになったのだ。
 アリスンは何とかしてロドニイを助けたく、目撃者のキムから聞き出そうとした。ところがキムはこう言ったのだ。
 「ロドニイが、あの……人……をおとした!ロドニイが、何かを……投げて、その人を……ケガ……させた」。(文・山口 浩)
--- 1978/04/10放映 (「ルーツ」放送で休止)
120 1978/04/17放映 逮捕
121 1978/04/17放映 父帰る
122 1978/04/17放映 弁護士と検事
ロドニイ逮捕さる

 ついにロドニイは逮捕されてしまった。最悪の事態になった。
 ロドニイがジョーを殺した、と断定し、逮捕に踏み切らせたのは何か。唯一の目撃者と思われるキムの証言からだった。アリスンは何とかロドニイを助けようと必死だった。ためらうシュースター夫妻を説得し、キムに聞こうとしたが、その結果は、ロドニイがやった、としゃべったのである。
 人生とは何と皮肉なものだろう。よかれと思ってやったアリスンの行為が、愛するロドニイを窮地に追い込んでしまったとは。
 また、キムがしゃべったことは、大いに喜ぶべきなのだが、それがロドニイへの不利な証言だったなんて―。
 ロドニイの父ハリントンはひさしぶりに故郷に帰って来た。だが、これまたわが息子との久々の対面が、息子が裁きをうける法廷でだった。
 何しろロドニイには不利な局面が展開されている。現場から立ち去ってアパートへ逃げ帰った時の彼の心理は自分自身でも説明のしようがない。またさらにその後で警察へ出頭しようとした彼の意思を証言出来る人間は、かつての妻ベティだとしたらそれは説得力がない。
 ロドニイがジョーからもぎ取った武器を投げ捨てたのを、自分に向かって投げつけられたと思い避けようとして、よろけて崖(がけ)から落ちて頭を打った……自分が直接手を下したのではない、とロドニイは主張するのだが、目撃者がないだけにどうも弱い。
 レスリー・ハリントンはひさしぶりのペイトンプレイスに戸惑いを見せていた。何しろいまや町全体が彼の出方を注目している。
 彼はそれでも精力的に動いた。ホテル住まいの彼はまずダウエル弁護士を訪れた。
 「何しろロドニイを保釈させなきゃならん、これ以上刑務所に入れておくのは親として耐えられないんだよ」。
 ダウエル弁護士は、そんなハリントンを危惧(ぐ)した。
 「権力を振り回すのはやめてくれ」。
 「くだらんこと言うな。圧力をかけられるものなら断じて使うべきだ」。
 相変わらず強気なハリントンなのである。
 ダウエルは、自分よりもっと優秀な弁護士を雇うことを勧める。それも一理ある。だが、ハリントンの読みは深かった。
 「陪審員が町の者たちで構成される以上、"よそ者"の弁護士はまずい。"ハリントンは何かを恐れているから著名な弁護士を引っぱって来た""実際に殺しをやっているから罪を逃れるために優秀な弁護士を頼んだのだ"と町の連中は詮(せん)索するに決まっている、やはり陪審員の前に立つのは町の連中の反感を買わない者のほうがいいのだよ」。
 だが、ハリントン側の思惑は外れ、ロドニイの保釈請求は却下されてしまった。(文・山口 浩)
123 1978/04/24放映 無実の牢
124 1978/04/24放映 牢の中の恋人
125 1978/04/24放映 父子の恨み
スティーブン・コードの勝負

 スティーブン・コードがペイトンプレイスで、弁護士としての才能を十分発揮し、名声を高めたのは、まさにロドニイ・ハリントンの「ジョー・チャーナック殺害事件」において、であった。
 この頃、ダウエル弁護士の助手として働き始めたばかり。この事件をキッカケに、頭角を現すのだが、ヤリ手のスティーブンは次第にこの物語の主人公になっていく。
 スティーブンはまずノーマンに会いに行った。ダウエル弁護士が、ファウラー検事が何をつかんでいるか知りたがっているからである。
 「動機は何だろう」
 とのスティーブンに答えてノーマンは
 「兄さんにはそんなものはなかった」
 と言う。だが、スティーブンは追求する。
 「検察側はロドニイに殺意があったと主張するよ。計画的殺人は重罪に処せられるんだ。リタはジョーと付き合ってたが今は君とだ。話してくれないか」。
 「……分かったよ。ジョーはリタをあきらめ切れなかったんだ」。
 「なぜ?」。
 「リタはジョーを振って、ボクと付き合い始めたから"殺してやるぞ"とも言った。兄貴じゃなくボクに」。
 「君らは兄弟だ。同じハリントンじゃないか」。
 「君にはそうでも、ジョーには違う。リタを取ったのは兄貴じゃない。ボクをねらうよ。それにジョーはすごく単純な男なんだ。取っ組み合いをしたって、いきなり頭突きで来るんだ」。
 「いつケンカしたんだ」。
 「事件の前の日だよ。殴られた」。
 「そのことをロドニイに?」
 「言うもんか」。
 「しかしそれは検察側にすれば立派に殺人の動機になる」。
 「バカな。そんなことが動機になるんだったら、ボクだって、いつも兄貴面しておせっかいを焼く兄貴を殺す動機だってあるさ」。
 事務所に帰ってスティーブンはダウエルに報告する。
 「ジョーは女の子をノーマンに取られたと思い、逆恨みをしたんです。つまりロドニイの行為は正当防衛だと主張出来ると思います。ジョーが先に手を出したことを証明出来るといいんですがネ」。
 さらに事件の目撃者の氏名などを調べた報告書をダウエルに提出して感心させる。そしてスティーブンは言う。
 「ジョン・ファウラー検事について調べたんです。彼は検事になる以前にわずか一年ほどですが、さる有名な法律事務所にいました。次に華麗なる地方検事に変身しました。政治的野心があるわけです。今度の事件こそ名をあげるのに絶好のチャンスです。ペイトンとハリントンの名前はニュースバリューがありますから」。
 そのファウラーはダウエルの事務所にもいて、その間一度も裁判で負けた事がなかった、という。
 このファウラーに対してスティーブンは果たして勝つことが出来るか。(文・山口 浩)
126 1978/05/01放映 ひき逃げ
127 1978/05/01放映 三組の親子
128 1978/05/01放映 悪夢
アリスン重体!

 「瞳孔(どうこう)が正常じゃない、かなり悪い」。
 「血圧はどうだ?」。
 「高いです。170に100ですから」。
 「他の兆候は?」。
 「呼吸は正常ですが、ひどい打撲傷を受けています」。
 「頭蓋(がい)骨の骨折は?」。
 「レントゲンを撮ってみないと」。
 頭部を調べてみて、
 「しこりがあるようですね」。
 「クモ膜下出血か」。
 「可能性あります」。
 海岸沿いの道で、通りがかりの車が、一人の少女の倒れているのを見つけた。
 救急車が出動し、ドクターズ総合病院にかつぎ込んだ。
 意識不明の少女の名は――。
 アリスン・マッケンジーであった。
 モートン院長をロシイ医師が捜している。
 生か死か!
 いまやアリスンの命は、その境界線をさまよっている状態であった。ロシイ医師の必死の診断が始められた。
 "アリスン瀕死(ひんし)の重傷!"のニュースは、たちまち町中に知れ渡った。知らないのは、牢(ろう)屋の中のロドニイだけだった。
 「……全ての事が、この世界では点滅するのね。ついたと思ってると消えている……終わりのない繰り返し。私たちの人生を回しているメリーゴーランドは、いつ止まるのかしら……」。
 アリスンの母コンスタンスは、娘の重傷を知り、半狂乱になり、病院の廊下で寝もやらず、娘に一目会わせてと叫ぶのだった。
 だが、興奮もおさまると、メリーゴーランドのような人生の厳しさに改めて思い知らされるのだ。
 確かに、コンスタンスは十八年間の刑を終えて町へ戻って来たエリオットと、アリスンに囲まれ、幸せに包まれた日々に満たされていた。
 それが急転直下、最愛の娘が明日をも知れぬ命の危機にさらされる羽目になるなんて、あまりにも人生って残酷ではなかろうか。
 「予想した以上にひどくやられています。かなりの出血です」。
 「へたをすると命とりだ」。
 「まずクモ膜下出血でしょう」。
 だが、このアリスンの重傷を"チャンスだ!"と、これを利用しようと考えた人物がいる。
 ロドニイの弁護士ダウエルの助手スティーブン・コードだ。
 「傷ついたアリスンにはむごい意見ですが、これこそ裁判を有利に導く大事なファクターです。ロドニイとアリスンのことは皆もよく知っている。アリスンの不幸に、町の人が寄せる同情は、大きなプラスになると思いませんか」。
 ダウエルとハリントンはこの言葉に深くうなずいた。ハリントンは他の町で裁判をしようと強く主張していたが、ダウエルたちに拒否された。彼はわが息子の保釈のため、ある考えを持って汽車に乗りどこかへ出かけて行った。ロドニイはアリスンの重傷を知り取り乱した。(文・山口 浩)
129 1978/05/08放映 知らされた凶報
130 1978/05/08放映 保釈してくれ!
131 1978/05/08放映 新聞記者の勇気
ロドニイ取り乱す

 ロドニイは留置所でアヤトリをしていた。そこへ父ハリントンとダウエル弁護士がやって来た。
 ハリントンとダウエルは、次のことを言いに来たのだ。
 「裁判はペイトンプレイスでやらんほうがいいと思うんだ」。
 つまり、裁判地変更の申請をしろ、と言うのだ。被告側に不利だと認められる場合には弁護士は、裁判地変更の申請が出来る。これはハリントンの考えだ。なぜなら、保釈が却下されたし、状況がどうもロドニイに不利、と見ているのである。だが、ダウエルは反対だった。変更するのは陪審員に悪い印象を与えてしまう。
 ロドニイは言った。
 「裁判地を変えることはボクがこの町の人たちを信じてないってことになるネ」。
 「よく聞けロドニイ、この町の連中は公平な意見など言ってくれやしない。ガス・チャーナックはジョーが死んだのはこの私のせいだと言ってるし、ほかの連中だってエリザベス・カーソンが死んだ責任は私にあると言う。エリオットを十八年も刑務所にやったのも私だというわけだ。お前はそのレスリー・ハリントンの息子なんだぞ、ロドニイ。なのに公平な裁判が望めるか!」。
 「でも、ボクとあなたは違う人間ですよ」。
 「誰がそう思ってくれる、あぶない橋を渡ってはいかん!」。
 ロドニイは毅(き)然と言った。
 「ボクはここで裁判を受けたいのです。その他も望むことはありません」。
 ついに彼は父の提言をしりぞけた。
 留置所を出てからダウエルは言った。
 「ロドニイは実に冷静でいたが、もしアリスンの話をしていたら、ああはいかなかったろうね」。
 そうなのだ。ロドニイはまだアリスンのことは知らされていなかった。それなのに、その数時間後に訪ねて来たベティが言ってしまった。
 「なぜパパたちは言わなかったんだ。誰も教えてくれなかったんだ。ボクはここから出てアリスンのそばへ行ってやらなきゃ。ベティ頼む、オヤジを呼んでくれ!」。
 ロドニイは大変に取り乱した。
 再びやって来たハリントンに、なぜ教えなかったとなじり、なんとしてでもここを出たい、とロドニイは父に頼む。
 ハリントンはダウエルの事務所へ行き、もう一度保釈の申請を出すよう言いつけ、そのためには七ケタ近くの膨大なお金が必要になる、とのダウエルの言葉に、深くうなずいて、この町を出てどこかへ出かけて行くのだった。
 死んだジョーの姉ステラは、ドクターズ病院に就職し、ロシイの秘書になった。張り切って仕事をしているし、ロシイとの間に何かほのぼのとしたものが通い始めたようである。
 アリスンはいまだ重体だ。脳の血管が破裂し、その血液が脳の内部に浸透し、髄液の中にまで入り込んで来ている。(文・山口 浩)
132 1978/05/15放映 負け犬
133 1978/05/15放映 保釈金
134 1978/05/15放映 ひき逃げ犯人
ペイトンからの電話

 アリスンはまだ昏(こん)睡状態のまま今週は過ぎてしまう。
 「岩よお前は/全てを見ている/過ぎゆく日々や……満ちてくる潮/浜辺にしっかりそそり立つ/人の歴史を見守りぬ
 我が行く道を知らしめよ/永遠にこの地にとどまるか帆を張り海原に/漕ぎ出るのか……」(アリスンの詩)
 ペイトン日報のエリオット・カーソンは、わが娘アリスンの交通事故のニュースを、第一面のトップで扱った。
 編集室でその記事をエリオットが書いている時、デビッド・シュースターが訪れた。
 二人はデビッドの会社経営の合理化に関して、激しい対立を見せていたので、デビッドは、近くまで来たので寄った、と言いわけする。
 アリスンの容態を尋ね、デビッドは
 「あなたとは立場が違うがアリスンを思う気持ちは同じです」
 としみじみ言う。この言葉にエリオットは、アリスンが以前書いていた新聞のコラムを見せる。
 デビッドはそれを読み、
 「アリスンのように繊細だった女性を知っています。姿かたちも似ていました。……アリスンに対する私の気持ちにはお気づきでしょう?」
 と心の中を打ち明ける。
 「男同士ですからネ」。
 エリオットは知っていた、と答える。
 妻子あるデビッドが、娘みたいなアリスンを、実は思っていたのだと、彼女の父に打ち明ける。これを受けたエリオットもまた、かつて妻がいたのに(その妻エリザベスが浮気をしていたとはいえ)年下のコンスタンスと愛し合い、アリスンという子までなした、そんな人生を歩んで来たゆえか、デビッドの感情を理解出来たのであろう。
 この物語が数年間も全米の視聴者を惹き付けたのは、こうした因果の理といった人間の宿縁や、人と人との絡まり合いを、実に深くえぐって見せたからであろう。
 先週、いずことなく出かけたレスリー・ハリントンは、亡妻の父ペイトン氏を訪ね、ロドニイの保釈金を借りに行ったのだった。
 かわいい孫のロドニイのためだから貸すと思ったらさにあらず、激しく罵(ば)倒され、レスリーは引き下がらざるを得なかった。
 町へ戻ったレスリーは気落ちしていたが、ノーマンとリタと一緒に食事をし心慰められる。
 ノーマンも父を励ますのだが、レスリーには昔の権力者の傲(ごう)慢ぶりが次第に影をひそめて行くようである。
 翌日、保釈申請を取り下げるようダウエル弁護士のところへレスリーは出かける。
 「せっかく明日審査会開かれるというのに……」。
 「実は、ペイトンに借金を申し込んだのだが断られたんだ」。
 この時、電話が鳴った。ペイトンからだった。保釈金を出す、という電話なのだ。レスリーはホッとした。(文・山口 浩)
135 1978/05/22放映 保釈!
136 1978/05/22放映 妻の秘密
137 1978/05/22放映 予審の朝を迎えて
マリアンの告白

 審査会が行なわれ、ロドニイの保釈が許可された。十万ドル(約二千三百万円)という大金を積めばロドニイは保釈されるのだ。
 町の人は今更ながらハリントン家の権力に驚いた。だが、これが裁判になった時に、どのような影響が生じてくるか、それは誰にも分からない。
 スティーブンが刑務所にやって来た。ロドニイは首を長くして待っていた。
 「却下されたら?」。
 「通ると思ったか?見たまえ……保釈請求は通ったよ」。
 「本当かい!君に会ってこれほど嬉しい思いをしたことはないよ。さあ早く病院へかけつけなくちゃ」。
 彼はアパートへ走り帰るとシャワーを浴び衣装をかえ、転ぶようにして病院へ駆けつけた。
 アリスンは眠っていた。いや、昏(こん)睡状態でベッドに横たわっていたのだ。
 ロドニイはそんな彼女を痛ましそうにジッと見つめ、そっと額にキスをした。この時の彼の気持ちは祈るような思いであったろう。
 病室の外にはベティがいた。
 「熱いコーヒーでも入れましょうか」。
 「ありがとう」。
 ベティはなんとかロドニイを元気づけようとして、内科の臨床医(トレーナー/マッサージ師)のゲーリングを紹介した。だが、ゲーリングはかえって医者らしくシビアに、良くなるか悪くなるか"予想しないこと"だと答える。
 「あなたを安心させようと思ったのに、ごめんなさい」。
 ベティは謝った。ロドニイは寂しそうな顔で答えた。
 「いや、いいんだよ……アリスンの安らかな顔を見られただけで」。
 ゲーリングはファウラー検事の妻、マリアンと病院の廊下で会った。
 「いつ話し合えるんだい、君、避けてるみたいだよ」。
 「私、ほかの病棟への転属願を出したの」。
 「やっぱりそうか、でも許さないぞ、(君が病院で世話をしている)子供たちだってなついている」。
 マリアンがゲーリングの治療室に奉仕に来て、急速に親しくなっていたのだ。時折、逢い引きをしていた。
 「私に話す事があるはずだ。君が悩んでいることをネ」。
 ようやくマリアンは後で治療室へ行くと承諾した。
 「もうオレに飽きたのか?」。
 「いいえ、自分をコントロール出来ると思ったのに……」。
 「あの日、海岸沿いの道をどこへとばして行ったんだ、ファウラー夫人。あんなにスピードを出して。あれは君が通った道で起こったんだ。ひき逃げは……君だろ!」。
 「いいえ」。
 「いや君だ!」。
 マリアンは泣き出した。
 「オレには信じられないんだ、あんなに子供たちを好きな君が、どうして少女を置き去りにするようなことが出来たんだ!」。
 「恐かったのよ私!恐かった。気がついたらアリスンが倒れていたの。私、夢中で逃げてしまった」。(文・山口 浩)
138 1978/05/29放映 尋問はじまる
139 1978/05/29放映 証言台の少女
140 1978/05/29放映 偽証

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