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スペイン語発音ピンポイントレッスン

第3回 b (v) と d と g



 今回扱う b, d, g の3つの音には、それぞれ「閉鎖音」と「接近音」という2つの発音のしかたがあり、どの場合にどちらの音で発音するかということが決まっています。
 このページでは一貫して閉鎖音は赤接近音は青で書くことにします。

3.1 b (v)   3.1 の音声

 標準スペイン語では b と v をどちらも同じように発音します。南米には、v の文字のほうを英語の v のように上の歯を使った発音で読む、かなり広い地域があるのですが、ここではその発音のことは扱わないことにします。

 さて、b (v) には「閉鎖音」と「接近音」の2種類の発音があります。

 閉鎖音の場合、図 3-1赤い線(※1)で示したように、上下の唇が一瞬ピッタリと閉じます。閉じるので「閉鎖音」と呼ぶわけです。
 (※1)うっかりして、舌も赤線で描いてしまいました。舌はこの際関係ないので無視してください。
 ゆっくりと「ばっばっばっばっ・・・」と言ってみてください。「ば」のたびに上下の唇がピッタリと閉じるはずです。これが「閉鎖音の b」です。

 それに対して接近音の場合は、図 3-1青い線のように、上下の唇がピッタリ閉じずに少しだけすき間があいていて(※2)、その狭いすき間を空気がすり抜けて行きます。
 (※2)この図の青い線だと、ちょっと上下の唇の間のすき間が広すぎるような気がします。絵がヘタで申し訳ありません。
 なるべく速く「ばばばばばばばば・・・」と言ってみましょう。2回目以降の「ば」のときには、いちいち唇が完全に閉じないのが普通ではないでしょうか。これが「接近音の b」です。

         図 3-1 b (v) の発音図

 さて、スペイン語の b (v) は、直前にどんな音があるかによって、次のように閉鎖音接近音のどちらで発音するかが決まっています。とても大切な規則なので、ぜひ暗記してください

    休止の直後、m, n の直後では閉鎖音
    それ以外の位置では接近音


 ここで「休止の直後」というのは、「言い始め」ということです。休止のことを # という記号で表わすことがあります。 下の (1) の最初に #Bien. と書いてありますが、これは「その前に何もなく、いきなり "Bien." と言った場合、その B は閉鎖音で発音する」という意味です。

 まず次の (1)〜(3) を見て、そこに出てくる b または v が、なぜ閉鎖音なのか、またなぜ接近音なのかを、上の太字で書かれた規則と見比べて納得してください。その後で、発音を練習しましょう。

(1) #Bien.   también   invierno
(2) Muy bien.  una bomba   en avión
(3) un vaso de vino


3.2 d   3.2 の音声

 d にも「閉鎖音」と「接近音」の2種類の発音があります。

 閉鎖音の d は t と同じように、舌先を上の前歯の裏につけて発音します。
 それに対して接近音の d の場合は舌先がさらに前に出て、舌先と前歯の先が非常に接近した形になります。その間(歯の先と舌先の間)を息がすり抜けていくときの音が「接近音の d」です。英語の this とか they とか言うときの th の発音がきちんとできる人は、それがほとんどスペイン語の「接近音の d」と同じだと思って差し支えありません。ただし厳密に言うと英語の th は「摩擦音」で、舌先と前歯の先のすき間がスペイン語の d のときよりももっと狭いです。

         図 3-2 d の発音図

 b (v) と同じく d も、直前に来る音によって、閉鎖音接近音の発音のしわけが決まっています。これも大切です。ぜひ暗記しましょう

     休止の直後、l, n の直後では閉鎖音
    それ以外の位置では
接近音


(1) #Doy.   Él da.   falda   #dónde   anda
(2) No doy.   Ella da.   Me lo han dado.
(3) el dedo   un dedo   #dos dedos   los dos dedos
(4) ¿Por dónde anda?
(5) una boda   Me lo daba.


3.2.1 語末の d    3.2.1 の音声

 ご存知のように、語末の d はほとんど聞こえないことが多いです。実際、語末の d を全く発音せず、usted を usté のように発音しても構いません。しかし、ネイティブの発音を観察すると、ぞんざいでない発音の場合には、ちゃんと接近音の d の位置にまで舌先を持っていっていることが多いのです。ただ、その位置に舌先を持っていくのとほぼ同時に息を出すのをやめてしまい、その結果ほとんど聞こえなくなる、ということが多いようです。また、「息は出ているが声は消える」という発音もよく耳にします。そうなると、usted がまるで ustez のように、Madrid は Madriz のように聞こえます。(※3)

 (※3)実際、Madrid では MADRIZ というタイトルの雑誌が発行されています。
    http://www.madriz.com/index.html


(1) usted   Madrid
(2) mucha variedad



3.3 g (ge, gi を除く)   3.3 の音声

 g にもやはり「閉鎖音」と「接近音」の2種類の発音があります。(ge, gi というつづりは、それ以外の g とはまったく異なる発音 ― それぞれ「ヘ」「ヒ」に似た発音 ― で読まれますので、ここでは除外します。)

 閉鎖音の場合、舌の後ろの方(この部分を「後舌面(うしろじためん)」と呼びます)が 図 3-3赤い線のように盛り上がり、口の中の天井に一瞬ピッタリとくっつきます。口の天井のこの部分は前回出てきた硬口蓋よりもうしろで、「軟口蓋(なんこうがい)」という名前がついています。硬口蓋と違ってこの部分には骨がなく、軟らかいからです。
 ゆっくりと「がっがっがっがっ・・・」と言ってみましょう。「が」のたびに後舌面が赤い線のように軟口蓋に密着します。実感できますか?

 接近音の g の場合は、図 3-3青い線のように、後舌面が軟口蓋にピッタリと密着せずにすき間があいていて、そのすき間を空気がすり抜けて行きます。

         図 3-3 g の発音図

 g の閉鎖音接近音の発音のしわけは次の規則に従います。これも暗記必須です

    休止の直後、n の直後では閉鎖音
    それ以外の位置では接近音


(1) #guerra   #gusto
(2) tengo   venga   manga   lengua(鼻濁音にならないように)
(3) una guerra   mucho gusto
(4) amiga   sigue   águila   agosto   laguna   agua



3.4 発音練習   3.4 の音声

(1) legumbre
(2) agotado
(3) abogado
(4) agradable



(第3回おわり)

第4回  音節とアクセント