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スペイン語発音ピンポイントレッスン

第4回 音節とアクセント



4.1 音節:発音の単位   4.1 の音声

 「音節」は発音する際の単位となるものです。これを理解するために、まず日本語の「拍」というものを考えて見ましょう。

(1) さくら    たんぽぽ    おにいさん    ちゅういほう

 私たち日本語ネイティブは、これらの単語に次のようなリズムがあると感じています。

(2) さ・く・ら   た・ん・ぽ・ぽ   お・に・ー・さ・ん   ちゅ・ー・い・ほ・ー(注意報)

 つまり、「さくら」は3拍、「たんぽぽ」は4拍、「おにいさん」と「ちゅういほう」は5拍から成っているわけです。1拍はだいたいカナ1文字に相当しますが、「ちゅ」などの拗音は2文字で1拍を表わします。
 また、「さくら」の「さ」は細かく見ると s と a という2つの音に分解できるのですが、普通私たちは「さ」を s と a に分けて考えたりしませんね。日本語ではこの「拍」が発音上の単位であるわけです。

 一方、スペイン語は「音節」を単位として発音されます。以下では、音節の切れ目をピリオド( . )で示します。いくつか例を見てみましょう。

(3) patata → pa.ta.ta   señorita → se.ño.ri.ta

 このように patata は3音節、señorita は4音節から成っています。ただし、patata や señorita のように比較的簡単に音節に分けることのできる単語はよいのですが、次のように分けるのがやや難しい単語もあります。

(4) internacional → in.ter.na.cio.nal   transcripción → trans.crip.ción

 このように internacional は5音節、transcripción は3音節から成っているのですが、スペイン語のネイティブスピーカーでない私たちは、これらの単語がなぜこのように音節に区切れるのか、直感的にはわかりません。次項で、単語を音節に分ける方法を学びましょう。

 ※「拍」と「音節」の違いについては、あまり気にする必要はありません。ただ、上の(1)に挙げた日本語の単語を音節に区切ると、さ・く・ら たん・ぽ・ぽ お・にー・さん ちゅー・い・ほー となって、拍に区切った場合と少し異なってきます。音節の厳密な定義は難しいので音声学の本をご覧頂くことにして、ここでは「スペイン語の音節は日本語の拍のような発音の単位である」というふうにご理解いただければ十分です。


4.2 単語を音節に分ける方法 

 ここでは、スペイン語の単語を音節に分ける方法を学びますが、そのための準備として「二重母音」「三重母音」「二重子音」について知る必要があります。

4.2.1 二重母音・三重母音・二重子音   4.2.1 の音声
 スペイン語の母音は5つですが、次のようにそのうちの3つを「開母音」、2つを「閉母音」と呼びます。

 母音:a, e, i, o, u (および語末のy)
 開母音:a, e, o    閉母音:i, u

 母音が2つ続いた場合、それが次の(1)〜(3)のいずれかの組み合わせであれば、それを「二重母音」と呼びます。二重母音は2つの母音をなめらかにつなげて発音します。

 二重母音:次の (1)〜(3) のうちのいずれか(下線部が二重母音)
(1) 開母音+閉母音 ai, au, ei, eu, oi, (ou はまれ) (語末では i の代わりに y と書く決まり)
  aire   hay   causa   seis   jersey   euro   boina   hoy
(2) 閉母音+開母音 ia, ie, io, ua, ue, uo
  piano   siete   Dios   cuatro   bueno   cuota
(3) 閉母音+閉母音 iu, ui
  diurno   fuiste

 母音が2つ続いていても、それが次のような組み合わせのときには二重母音にはなりません。

 注意:二重母音にならない組み合わせ
(1) 開母音+開母音 ae, ao, ea, eo, oa, oe
 caer   Bilbao   idea   paseo   canoa   oboe
(2) 開+閉 または 閉+開で、閉母音にアクセント記号がついている場合
 país   leí   día   tío   sitúa (比較:situacn)   continúo (比較:continuo)

 また、「閉母音+開母音+閉母音」がこの順番に続いているとき、これを「三重母音」と呼び、やはりなめらかにつなげて発音します。実際には iai, iei, uai, uei 以外の三重母音はまれです。

 三重母音:閉母音+開母音+閉母音
 estudiáis   estudiéis   Paraguay   averigüéis

 母音以外の音はすべて子音です。また、b, c, d, f, g, p, t のいずれかの次に l, r のいずれかが続いた場合、それらを「二重子音」と呼びます。ただし、dl, tl は二重子音にはなりません。結局、二重子音は下記の12種類です。

 子音:母音以外(および語尾以外の y)
 二重子音:bl, cl, fl, gl, pl, br, cr, dr, fr, gr, pr, tr の12種類

 二重子音は、2つの子音をなめらかにつなげて発音します。特に、2つの子音の間に母音を入れないように気をつけましょう。たとえば、blanco が bulanco、tren が toren のようにならないようにします。

 (1) blanco   clima   flor   globo   plan
    brazo   crema   drama   frío   grupo   primo   tren
 (2) habla   declaro   afloja   regla   suplemento
    abre   microbio   sidra   sufre   tigre   aprende   letra


4.2.2 音節分けの規則    (音声による説明はありません)

 いよいよ、単語を音節に分けるやりかたを学びます。まず、次の大原則と細則をお読みください。

 大原則
 (1) すべての音節は必ず母音を1つだけ含みます。ただし、二重母音・三重母音はそれぞれ「1個の母音」、二重子音, ch, ll, rr はそれぞれ「1個の子音」とみなすので、ご注意ください。
 (2) スペイン語の音節は原則として「子音で始まり、母音で終わる」ようになろうとする傾向があります。しかし、常にそうなるというわけでもありません。

 細則
 (1) 文字 h, および gue, gui, que, qui というつづりの中の文字 u は発音されないので無視します。
 (2) 文字 x は cs とみなします。

 お待たせしました。単語は次の(1)〜(4)の規則により、音節に分けられます。

(1) 母母 → 母.母
母音が2つ並んでいたら、その間で区切る
 tío → tí.o   día → dí.a

(2) 母子母 → 母.子母
母音と母音の間に子音が1つはさまっていたら、その子音の直前で区切る
 enero → e.ne.ro        patata → pa.ta.ta
 señorita → se.ño.ri.ta     teléfono → te.lé.fo.no
 pared → pa.red (× pa.re.d  子音だけでは音節にならない)
 reloj → re.loj (× re.lo.j  子音だけでは音節にならない)
 Italia → I.ta.lia (× I.ta.li.a  ia は二重母音)
 reina → rei.na (× re.i.na  ei は二重母音)
 avión → a.vión (× a.vi.ón  ió は二重母音)
 María → Ma.rí.a (× Ma.ría  ía は二重母音ではない)
 deseo → de.se.o (× de.seo  eo は二重母音ではない)
 Uruguay → U.ru.guay (× U.ru.gu.ay  uay = uai は三重母音)

(3) 母子子母 → 母子.子母
母音と母音の間に子音が2つはさまっていたら、それら2つの子音の間で区切る
 domingo → do.min.go     martes → mar.tes     español → es.pa.ñol
 examen → ec.sa.men (x は cs と見なす)
 arroz → a.rroz (× ar.roz  rr は1文字と見なす)
 muchacho → mu.cha.cho (× muc.hac.ho  ch は1文字と見なす)
 África → Á.fri.ca (× Áf.ri.ca  fr は二重子音)
 teatro → te.a.tro (× tea.tro  ea は二重母音ではない  × te.at.ro  tr は二重子音)
 Francia → Fran.cia (× Fran.ci.a fr は二重子音,ia は二重母音)
 anhelo → a.nhe.lo (× an.he.lo h は無視する)

(4) 母子子子母 → 母子子.子母
母音と母音の間に子音が3つはさまっていたら、2つめと3つめの子音の間で区切る
 instante → ins.tan.te   transcribir → trans.cri.bir (tr, cr はいずれも二重子音)
 empleo → em.ple.o (× emp.leo  pl は二重子音。 eo は二重母音ではない)
 explicación → ex.pli.ca.ción (= ecs.pli.ca.ción)


4.3 アクセントの位置の規則     (音声による説明はありません)

 単語を音節に分けるやりかたを学び、ようやくアクセントのお話ができるようになりました。と言うのも、スペイン語のアクセントは音節がになうからです。たとえば、adiós という単語を見ると、o という文字の上にアクセント記号がついていますが、これは決して o という母音だけがアクセントを持つという意味ではなく、diós という音節全体がアクセントを持つのです。以下では、アクセントを持つ音節を太字で示します。
 単語の中のどの音節がアクセントを持つかは、次の(1)〜(4)の規則によって決まっています。特に(1), (2)においては、単語の最後の文字が決め手になります。

(1) 母音または n, s で終わっている単語 → 最後から2番目の音節にアクセント
 enero → e.ne.ro     Italia → I.ta.lia     Carmen → Car.men
 contienen → con.tie.nen    lunes → lu.nes    paraguas → pa.ra.guas

(2) n, s 以外の子音(y を含む)で終わっている単語 → 最後の音節にアクセント
 hospital → hos.pi.tal     señor → se.ñor     universidad → u.ni.ver.si.dad
 reloj → re.loj     jersey → jer.sey

(3) アクセント記号がついている単語 → (1), (2) の規則にかかわらず、アクセント記号のついた母音を含む音節にアクセント
 jóvenes → .ve.nes     música → .si.ca     azúcar → a..car
 árbol → ár.bol     autobús → au.to.bús

(4) 1音節からなる単語 → 単語全体にアクセント
 yo → yo     pan → pan    té →    dos → dos

 ただし、ここでまた大切な注意があります。これまで、あたかもすべての単語がどこかの音節にアクセントを持つようにお話ししてきましたが、実はスペイン語にはどこにもアクセントを持たない「無強勢語」と呼ばれる単語があり、しかもその頻度はかなり高いのです。無強勢語については次回(第5回)で学びます。


4.4 復習問題    (音声による説明はありません)
 ここで、これまでの知識を確認するために復習問題をやってみましょう。次の単語を音節に分け、さらにそのうちのどの音節がアクセントを持つかを指摘してください。
 例題として ministro だけは正解が書いてあります。それ以外の単語は矢印の右をドラッグして文字を反転させると正解が現れます。

(例)ministro → mi.nis.tro
idea → i.de.a        maguey → ma.guey      animal → a.ni.mal
crisis → cri.sis       huésped → hués.ped     joven → jo.ven
empleamos → em.ple.a.mos alguien → al.guien    transatlántico → tran.sat.lán.ti.co


4.5 引用形イントネーションにおけるアクセントと声の高低の関係  4.5 の音声

 さて、これでアクセントの位置を正しく判断することができるようになったわけですが、アクセントのある音節をどのように発音すれば良いのでしょうか? 「強く」発音するのでしょうか? それとも「高く」? 「長く」? 「はっきりと」?
 この質問に厳密に答えるのはたいへん難しいのですが、とりあえず「アクセントは声の高さと密接な関係がある」とお考えください。そしてさらに「アクセントのある音節は少しだけ長めに、少しだけ強めに発音する」ということも覚えておきましょう。英語などと違ってスペイン語ではアクセントのない音節の母音もはっきり発音しますので、「はっきりと」ということとアクセントの有無とはあまり関係ありません。

 「アクセントは声の高さと密接な関係がある」と書きましたが、これは必ずしも「アクセントのある音節を高く発音する」という意味ではありません。たとえば同じ ja.po.ne.sa という単語でも

(1) Japonesa.(単語を1つだけ発音している場合)
(2) Soy japonesa.(普通の言い方)
(3) Soy japonesa.(やや気取ったしゃべり方)
(4) ¿Eres japonesa?(純粋な質問)
(5) ¿Eres japonesa?(確認のための質問)

のように様々な状況で発音されると、(1), (2), (5) ではアクセントのある音節 ne が前後に比べて高くなりますが、(3), (4) では逆に po よりも ne のほうが低くなります。これらはイントネーションの違いです。つまり、どこを高くどこを低く発音するかということは、アクセントの位置とイントネーションの組み合わせによって決まるのです。
 これらすべてについて精通するのはたいへんなことですし、実用上そこまでの必要もありませんので、ここでは最も基本的なイントネーションとして、上の(1)のように単語を1つだけ発音している場合のイントネーション(これを「引用形」と呼びます)のみを練習することにします。
 また、今回は簡単のため、スペイン語の音節の中で最も普通に現れる「子音1つ+母音1つ」の構造の音節だけで練習します。(一部「子音なし,母音1つだけ」の音節も登場しますが。)

4.5.1 最後の音節にアクセントがある単語   4.5.1 の音声
(1) va        yo        no        qué    
(2) ca.    co.    so.    ta.    Da.
(3) co.mi.    ja.ba.    Ca.na.    a.la.    co.me.
(4) co.la.bo.    to.ta.li.    a.na.li.

 これらの単語の場合、次の図4-1図4-2 の二通りの発音のしかたがあります。大きな黒丸はアクセントのある音節、小さな黒丸はアクセントのない音節を表わしています。図では大きな黒丸の前に小さな黒丸が3つ並んでいますが、実際にはアクセントのない音節がゼロの場合(上の(1)の単語)から3つの場合(上の(4)の場合)までいろいろあり得ます。4つ以上並ぶことも可能です。

図4-1 最後の音節にアクセントが
ある単語の引用形イントネーション(1)
図4-2 最後の音節にアクセントが
ある単語の引用形イントネーション(2)


4.5.2 最後から2番目の音節にアクセントがある単語   4.5.2 の音声
(1) a.la    pe.ra    ca.sa    co.che    ca.rro    ca.ma
(2) a.que.lla    pe.lo.ta    e.ne.ro    Te.re.sa    bi.lle.te
(3) Za.ra.go.za    me.ji.ca.no    mo.ne.de.ro    cho.co.la.te    ca.mi.se.ta    ca.ba.lle.ro
(4) ci.vi.li.za.do    mo.no.to..a
(5) co.mu.ni.ca.ti.vo

図4-3 最後から2番目の音節にアクセントが
ある単語の引用形イントネーション


4.5.3 最後から3番目の音節にアクセントがある単語   4.5.3 の音声
(1) .ba.do    á.gui.la    .ni.mo    .di.co    .si.ca
(2) te..fo.no    e..lo.go    fe..me.no    A..ri.ca    e.quí.vo.co
(3) a.na..ti.co    ja.po..fi.lo
(4) pa.ra.si..lo.go

図4-4 最後から3番目の音節にアクセントが
ある単語の引用形イントネーション


4.5.4. 最後から4番目の音節にアクセントがある単語   4.5.4 の音声
(1) .da.se.lo    .me.te.la    .ga.se.lo
(2) re..la.se.la

図4-5 最後から4番目の音節にアクセントが
ある単語の引用形イントネーション


4.5.5. 悪い例   4.5.5 の音声

 アクセントのある音節の前にアクセントのない音節が2つ以上続いている場合(4.5.1 の(3), (4), 4.5.2 の(3), (4), (5), 4.5.3 の(3), (4))、日本人の多くは(地域によって異なりますが)低い声のまま続けることが苦手なので、第1音節を低く発音するとどうしても第2音節以降を高く発音してしまいがちです。その結果、図4-6, 4-7 のような誤ったイントネーションが生じます。図中の白丸が、誤って高くなってしまった音節を表わしています。

図4-6 悪い例(1) 図4-7 悪い例(2)

 あらためて4.5.2 の (4) の単語が図4-6のようにならないように、4.5.3 の (3) の単語が図4-7のようにならないように、練習してみましょう。
4.5.2 の (4) ci.vi.li.za.do    mo.no.to..a
4.5.3 の (3) a.na..ti.co    ja.po..fi.lo

4.6 区別して発音しましょう   4.6 の音声
(1) .ne.ro    ge.ne.ro    ge.ne.
(2) .bi.to    ha.bi.to    ha.bi.
(3) .mi.te    li.mi.te    li.mi.
(4) .qui.do    li.qui.do    li.qui.
(5) .tu.lo    ti.tu.lo    ti.tu.



(第4回おわり)

第5回  強勢語と無強勢語、単語と単語のつながり(1)