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スペイン語発音ピンポイントレッスン

第5回 強勢語と無強勢語,単語と単語のつながり(1)


5.1 無強勢語   (音声による説明はありません)

 前回、単語の中のどの音節にアクセントがあるかを見つける方法を学びましたが、そこでも予告したとおり、スペイン語の単語の中にはどこにもアクセントのない「無強勢語」と呼ばれるものがあります。(それに対して、どこかにアクセントを持つ単語のことを「強勢語」と呼びます。)たとえば、la casa「その家」という語句の中の定冠詞 la は無強勢語です。ですから、この la にアクセントをかけて la ca.sa と発音してしまうのは誤った発音です。la 自体にはアクセントをかけず、次の単語と続けてあたかも la.ca.sa という一つの単語であるかのように発音しましょう。前回 4.5.2. の (2) に出てきた a.que.lla, pe.lo.ta, e.ne.ro, Te.re.sa, bi.lle.te と全く同じメロディーで la.ca.sa と発音すればよいのです。

 数の上では強勢語のほうが圧倒的に多いのですが、無強勢語はこれから見るように頻度の高い単語が多いので無視できません。無強勢語のメンバーを覚えて、「それ以外は強勢語」と考えれば間違えることはありません。

5.2 無強勢語のメンバー   5.2 の音声
 では、これから無強勢語のメンバーを紹介します。無強勢語は原則として単独で発音されることがなく、ほとんどの場合、直後に強勢語が続きます。ですから、「無強勢語+強勢語」を一つの強勢語だと思って発音するのがコツです。
 以下の例を見て、( )の中のように発音しましょう。なお、以下ではたとえば las alas が (las.a.las) ではなく (la.sa.las) になるなど、単語の切れ目と音節の切れ目が異なっている例がたくさん出てきますが、それらのことについては第6回と第7回で少しずつ学びますので、今は「なぜそうなるのか」については気にせず、( )の中のように全体を一つの単語のつもりで発音するということだけを考えてください。また、上付きの小さな文字は「弱く短めに」発音してください。念のために、接近音の b (v), d, g を青字で、閉鎖音の b (v), d, g を赤字で示しますので、できるだけそれらも区別して発音しましょう。

5.2.1 定冠詞
  la casa (la.ca.sa)    las alas (la.sa.las)   las salas (las.sa.las)(≒ las alas)
  el hombre (e.lom.bre)    los hombres (lo.som.bres)

5.2.2 所有詞前置形
  mi amigo (mia.mi.go)   mis amigos (mi.sa.mi.gos)
  nuestra casa (nues.tra.ca.sa)
 注意:不定冠詞,所有詞後置形は強勢語です。 例:una casa nuestra (u.na.ca.sa.nues.tra)

5.2.3 二つの数詞が組み合わさった場合の前者
  veintiuno (vein.tiu.no)   treinta y dos (trein.tai.dos)
  ciento diez (cien.to.diez)   cuarenta mil (cua.ren.ta.mil)

5.2.4 目的格人称代名詞(再帰代名詞を含む)
  se va (se.va)   nos gusta (nos.gus.ta)   me escribe (mes.cri.be)
  lo hace (loa.ce)   se hace (sea.ce)   se lo dice (se.lo.di.ce)

5.2.5 前置詞,接続詞
  a las dos de la tarde (a.las.dos.de.la.tar.de)   con azucar (co.na.zu.car)
  desde aquí hasta España (des.dea.qui.as.taes.pa.ña / 速い発音では des.dea.quias.taes.pa.ña)
  ¿Por qué me quieres? (por.que.me.quie.res)   Porque te quiero. (por.que.te.quie.ro)
 注意: según の gún はアクセントをかけて発音されることもあります。
   例:según dicen (se.gun.di.cen または se.gun.di.cen)

5.2.6 関係代名詞,関係副詞
  la semana que viene (la.se.ma.na.que.vie.ne)
  la señora con quien están hablando (la.se.ño.ra.con.quie.nes.ta.na.blan.do)
  la ciudad donde nació (la.ciu.da(d).don.de.na.cio)
 注意:関係代名詞のうち、el [la / lo] cual, los [las] cuales は例外的にアクセントを持ちます。
   例:la señora con la cual están hablando (la.se.ño.ra.con.la.cua.les.ta.na.blan.do)

5.2.7 敬称など人の名の前につける名詞(呼びかけの場合に限る)
  señor González (se.ñor.gon.za.lez)   señorita Pérez (se.ño.ri.ta.pe.rez)
  don Luis (don.luis)   doña Ana (do.ña.a.na / 速い発音では do.ña.na)
  tía María (tia.ma.ri.a)
 注意:呼びかけ以外の場合は普通にアクセントを持ちます。
   例: la clase del señor González (la.cla.se.del.se.ñor.gon.za.lez)

5.2.8 複合人名,複合姓の第1要素
  José María (jo.se.ma.ri.a)   María José (ma.ria.jo.se)
  María Isabel (ma.riai.sa.bel)   Federico García Lorca (fe.de.ri.co.gar.cia.lor.ca)


5.3 単語と単語のつながり(1) 母音おわりの単語+子音はじまりの単語   5.3 の音声

 実際にスペイン語を読んだり話したりするときには、単語を1つだけ言うことはあまりなく、短い文でも2語か3語から成っていることが普通ですね。その際に大切なことは、単語を一つ一つブツブツ切って発音せず、意味的にまとまっている部分はひとつながりに発音するということです。
 たとえば、Todas las mañanas me levanto a las seis y media.(毎朝私は6時半に起きます。)という文を “todas / las / mañanas / me / ...” と発音していては、かえって意味が伝わりにくくなってしまいます。少なくとも Todas las mañanas / me levanto / a las seis y media. という3つのまとまりのそれぞれを途中で切らずに発音する必要があります。もっと早口で話すときには me levanto a las seis y media が一息に発音されるでしょうし、さらにこの程度の文であれば全文を一息で言ってしまうことも珍しくありません。

 この「ピンポイントレッスン」では、特に大切だと思われる韻律語を単語と同じように発音する練習をしたいと思います。内部にアクセントを持つ音節を1つだけ含んでいる語のまとまり(※1)を韻律語と呼びます。さきほどの例文を韻律語に分けると(アクセントのある音節を太字で示します)、
  Todas / las mañanas / me levanto / a las seis / y media.
となります。最低でもこの5つの韻律語のそれぞれはひとつながりに発音しなければいけません。las と mañanas の間、me と levanto の間で区切ったりしていては、意味が通じにくくなってしまいますね。ですから、ここでは las mañanas をあたかも lasmañanas という1つの単語であるかのように、me levanto をあたかも melevanto という1つの単語であるかのように発音する練習をするわけです。
 (※1)「韻律語」とは「内部にアクセントを持つ音節を1つだけ含んでいる語のまとまり」であると定義しましたが、「何をもって語のまとまりと見なすか」が明らかでないと思われたかもしれません。文法的・意味的に1つの単位を成している場合にそれを「語のまとまり」と呼ぶとお考えください。たとえば、 mañanas me や las seis y はそれぞれ中にアクセントのある音節を1つだけ含んでいますが、文法的・意味的に単位を成しているとは言いがたく、したがって「韻律語」ではありません。

 ではこれから韻律語の発音練習にはいります。コツは単語と単語の間のスペースを無視して、全体で1つの単語だと思って発音することです。
 今回練習する韻律語は最も発音が容易な種類のものです。なぜかと言うと「子音1つ+母音1つ」という単純な構造の音節しか登場していないからです(例外的に子音を含まない a と y という単語も出てきますが)。(※2)このため、単語と単語をつなげるときにいろいろと難しい問題が起きないのです。より難しいパターンは第6回と第7回で練習しますので、まずは今回の簡単なパターンにしっかり慣れておくようにしましょう。
 (※2)この「子音1つ+母音1つ」という構造の音節のことを 「CV型」と呼びます。Cは consonante(子音),Vは vocal(母音)の略です。 pa.ta.ta や se.ño.ri.ta はすべて CV型の音節だけからできている単語ですね。スペイン語では、この「CV型」が最も出現頻度が高く、最も基本的な音節構造です。これらのことについては次回もう少しくわしく扱います。

5.3.1 最後の音節にアクセントがある韻律語
(1) café (ca.fe) と同じメロディーで
  te di (te.di)   lo vi (lo.vi)   se va (se.va)   me da (me.da)
(2) comité (co.mi.te) と同じメロディーで
  te lo di (te.lo.di)   me la da (me.la.da)   su mamá (su.ma.ma)
(3) colaboré (co.la.bo.re) と同じメロディーで
  te lo pedí (te.lo.pe.di)   me la dejó (me.la.de.jo)   de su mamá (de.su.ma.ma)

5.3.2 最後から2番目の音節にアクセントがある韻律語
(1) aquella (a.que.lla) と同じメロディーで
  mi casa (mi.ca.sa)   te digo (te.di.go)   de Rosa (de.rro.sa)   a Cuba (a.cu.ba)
(2) Zaragoza (za.ra.go.za) と同じメロディーで
  a la mesa (a.la.me.sa)   me lo dice (me.lo.di.ce)   se la pido (se.la.pi.do)   
  a Gerona (a.ge.ro.na)
(3) civilizado (ci.vi.li.za.do) と同じメロディーで
  de su maleta (de.su.ma.le.ta)   a la chilena (a.la.chi.le.na)   para Toledo (pa.ra.to.le.do)
(4) comunicativo (co.mu.ni.ca.ti.vo) と同じメロディーで
  a la señorita (a.la.se.ño.ri.ta)   de lo que parece (de.lo.que.pa.re.ce)   
  para que lo sepa (pa.ra.que.lo.se.pa)

5.3.3 最後から3番目の音節にアクセントがある韻律語
(1) teléfono (te.le.fo.no) と同じメロディーで
  la cámara (la.ca.ma.ra)   de Málaga (de.ma.la.ga)   lo mínimo (lo.mi.ni.mo)
(2) analítico (a.na.li.ti.co) と同じメロディーで
  de mi cámara (de.mi.ca.ma.ra)   mi teléfono (mi.te.le.fo.no)   a lo mínimo (a.lo.mi.ni.mo)
(3) parasitólogo (pa.ra.si.to.lo.go) と同じメロディーで
  para mi cámara (pa.ra.mi.ca.ma.ra)   y mi teléfono (i.mi.te.le.fo.no)   
  de la fonética (de.la.fo.ne.ti.ca)



(第5回おわり)

第6回  単語と単語のつながり(2),音節末子音