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スペイン語発音ピンポイントレッスン
第7回 単語と単語のつながり(3)
7.1 単語と単語のつながり(3の1) 子音おわりの単語+子音はじまりの単語 7.1 の音声
子音で終わる単語の後に子音で始まる単語が続く場合、気をつけるべきことは音節の数を増やさないようにするということです。
例えば、la casa (la.ca.sa) は全体で3音節で、2番目の音節にアクセントがありますね。ですから patata (pa.ta.ta) と同じメロディーで発音すればよいわけです。アクセントのある音節を大きな黒丸で、アクセントのない音節を小さな黒丸で表わすと ●●● となります。
さて、la casa の場合はカタカナで「ラ・カ・サ」と書いてもあまりスペイン語の発音からかけ離れませんが、これを複数形にして las casas にするとどうなるでしょう。las.ca.sas ですから、patata や la casa と全く同じ ●●● ですね。patata, la casa, las casas の3つはどれも同じメロディーで発音されます。「ラ・ス・カ・サ・ス」のように5拍で発音しないように気をつけましょう。
次の語句を、音節の数が多くなりすぎないように気をつけて発音してみましょう。
el tren (el.tren) ●●
el clima (el.cli.ma) el vaso (el.va.so) las cinco (las.cin.co) いずれも●●●
un rato (un.rra.to)●●●
tomar nota (to.mar.no.ta) llegar tarde (lle.gar.tar.de) いずれも ●●●●
los japoneses (los.ja.po.ne.ses) ●●●●●
dos mil quinientos cincuenta (dos.mil.qui.nien.tos.cin.cuen.ta)●●●●●●●●
7.2 単語と単語のつながり(3の2) 母音おわりの単語+母音はじまりの単語 7.2 と 7.2.1 の音声
母音で終わる単語の次に母音で始まる単語が続く場合、両方の母音がいずれもはっきり発音されることはあまりなく、一方の母音が短く軽く発音され、もう一方の母音と組み合わさって二重母音のようになったり、一つの母音のようになったりすることが多いです。
例えば su amiga という句の場合、su は1音節、amiga は3音節(a.mi.ga)ですから、合わせて4音節(su.a.mi.ga)になるはずですが、実際にはよほどゆっくりと話さない限り su の u と amiga の最初の a が組み合わさって sua という一つの音節になり、u のほうが短く軽く発音される(これを sua と書き表すことにします)のが普通です。
この現象を sinalefa(母音縮合)と言い、これはスペイン語の発音の顕著な特徴の一つです。この現象があるためにスペイン語は「早口でしゃべっている」ような印象を外国人に与えると言われています。
以下、母音で終わる単語+母音で始まる単語のすべてのパターンを列挙し(ただしアクセントのある i, u で終わる単語はまれなので、これらのパターンは除きます)、どのようになる傾向があるかを見ます。
7.2.1 同じ母音が続く場合
両方の母音にアクセントがある場合、その母音は長めに発音されますが、2つ分の長さには達しません。これを母音のあとに "=" の記号をつけて示すことにすると、次のようになります。
aa: vendrá Ana → ven.dra=.na
ee: compré esto→ com.pre=s.to
oo: llevó otro → lle.vo=.tro
いずれか一方の母音にアクセントがある場合、1つ分よりもちょっとだけ長めに発音されます。これを母音のあとに "-" の記号をつけて示すことにします。特に速い発話では1つ分と変わらない場合もあります。特に速い場合の発音を( )内に示します。
aa: está aquí → es.ta-.qui (es.ta.qui)
ee: compré entradas → com.pre-n.tra.das (com.pren.tra.das)
oo: quedó olvidado → que.do-l.vi.da.do (que.dol.vi.da.do)
aa: esta águila → es.ta-.gui.la (es.ta.gui.la)
ee: este hecho → es.te-.cho (es.te.cho)
ii: mi hijo → mi-.jo (mi.jo)
oo: número ocho → nu.me.ro-.cho (nu.me.ro.cho)
uu: su único mérito → su-.ni.co.me.ri.to (su.ni.co.me.ri.to)
いずれの母音にもアクセントがない場合は、完全に1つ分の長さになってしまうのが普通です。
aa: la habitación → la.bi.ta.cion
ee: me esperas → mes.pe.ras
ii: mi historia → mis.to.ria(※1)
oo: vino oloroso → vi.no.lo.ro.so
uu: tu universidad → tu.ni.ver.si.dad(※2)
(※1) historia の最後の音節には二重母音 ia が含まれています。今後、二重母音・三重母音の中の目立たないほうの母音も上付きの小さな文字で ria のように示すことにします。
(※2)語末の d も非常に弱い発音になるので上付きの小さな文字で示します。
このほか、同じ母音が3つ以上続くこともあり得ますが、いずれの場合も本来の長さよりは短く発音されます。その結果、特に速い発話では Llama a Alicia. と Llama Alicia. および Me he hecho. と Me echo. の違いはほとんどなくなってしまいます。
7.2.2 異なる母音が続く場合
7.2.2.1 両方にアクセントがある場合 7.2.2.1 の音声
この場合は sinalefa が生じず、それぞれの母音が独立して発音されることが多いです。これを hiato(母音分立)と言います。
ae: está él → es.ta.el
ai: tendrá hijos → ten.dra.i.jos
ao: habrá once → a.bra.on.ce
au: está húmedo → es.ta.u.me.do
ea: tomé algo → to.me.al.go
ei: canté himnos → can.te.im.nos
eo: no pegué ojo → no.pe.gue.o.jo
eu: tomé uno → to.me.u.no
oa: se quedó ácido → se.que.do.a.ci.do
oe: dictó Ética → dic.to.e.ti.ca
oi: probó hígado → pro.bo.i.ga.do
ou: tomó uno → to.mo.u.no
7.2.2.2 一方だけにアクセントがある場合 7.2.2.2 の音声
7.2.2.2.1 一方の母音が a の場合
a がはっきり発音され、aでないほうの母音が短く軽くなります。特に速い発話では、ea が ia のように、oa が ua のように発音されることも珍しくありません。
ae: está en casa → es.taen.ca.sa
ai: está intacto → es.tain.tac.to
ao: está ocupado → es.tao.cu.pa.do
au: está usted → es.taus.ted
ea: me quedé alejado → me.que.dea.le.ja.do (me.que.dia.le.ja.do)
oa: se quedó alejado → se.que.doa.le.ja.do (se.que.dua.le.ja.do)
ae: esta época → es.tae.po.ca
ai: esta índole → es.tain.do.le
ao: la hora → lao.ra
au: la única → lau.ni.ca
ea: se hace → sea.ce (sia.ce)
ia: mi agua → mia.gua
oa: lo han dado → loan.da.do (luan.da.do)
ua: su agua → sua.gua
7.2.2.2.2 一方が e または o で、もう一方が i または u の場合
普通の速さでは、本来アクセントのある母音が勝ち、そうでないほうの母音が短く軽くなります。特に速い発話では、本来のアクセントがどちらにあるかにかかわらず、e, o が勝ち、i, u が短く軽くなります。
ei: conté historias → con.teis.to.rias
ei: se iba → sei.ba (sei.ba)
eu: sé usarlo → seu.sar.lo
eu: este uso → es.teu.so (es.teu.so)
oi: contó historias → con.tois.to.rias
oi: pienso ir → pien.soir (pien.suir / pien.soir)
ou: llegó usted → lle.gous.ted
ou: tengo una → ten.gou.na (ten.gou.na)
ie: mi éxito → miec.si.to
io: mi ojo → mio.jo
ue: su éxito → suec.si.to
uo: su ojo → suo.jo
7.2.2.2.3 eo, oe, iu, ui の場合
普通の速さでは、本来アクセントのある母音が勝ち、そうでないほうの母音が短く軽くなります。特に速い発話では、本来のアクセントがどちらにあるかにかかわらず、後続する母音が勝ち、先行する母音が短く軽くなります。
eo: este hombre → es.teom.bre
eo: pensé oportuno → pen.seo.por.tu.no (pen.sio.por.tu.no)
iu: mi uso → miu.so
oe: llevo esto → lle.voes.to (lle.vues.to)
oe: se quedó en casa → se.que.doen.ca.sa (se.que.duen.ca.sa)
ui: su índice → suin.di.ce
7.2.2.3 どちらにもアクセントがない場合 7.2.2.3 の音声
7.2.2.3.1 一方の母音が a の場合
a が勝ち、a でないほうが短く軽くなります。
ae: esta escuela → es.taes.cue.la
ai: esta historia → es.tais.to.ria
ao: esta ocasión → es.tao.ca.sion
au: esta unidad → es.tau.ni.dad
ea: no me hacía caso → no.mea.ci.a.ca.so (no.mia.ci.a.ca.so)
ia: mi amiga → mia.mi.ga
oa: vino aquí → vi.noa.qui (vi.nua.qui)
ua: su amigo → sua.mi.go
7.2.2.3.2 いずれの母音も a でない場合
後続する母音が勝ち、先行する母音が短く軽くなります。
ei: no me importa → no.meim.por.ta (no.mim.por.ta)
eo: se me ocurre → se.meo.cu.rre (se.mio.cu.rre)
eu: se usaba → seu.sa.ba (siu.sa.ba)
ie: mi esposa → mies.po.sa
io: mi oficina → mio.fi.ci.na
iu: mi uniforme → miu.ni.for.me
oe: vino en coche → vi.noen.co.che (vi.nuen.co.che)
oi: largo invierno → lar.goin.vier.no (lar.guin.vier.no)
ou: vino usted → vi.nous.ted (vi.nus.ted)
ue: su esposo → sues.po.so
ui: su idea → sui.de.a
uo: su oficina → suo.fi.ci.na
さらに3つ以上の異なる母音が続く場合もあり得ます。早い発話ではそのような場合、例えば estudio español の dioes、fui a España のfuiaes、fue a Europa の fueaeu、envidio a Eusebio のdioaeu といった部分が非常に速く、事実上それぞれ1音節として発音されます。
(第7回おわり)
第8回 日本語的なクセを取り除こう