◆食は文化なり(和歌山県)

2002/1/12〜13

12日のまだ暗い早朝に家を出たので、いつもより早いランチタイムをとることにしました。新宮の市内でもきっと美味しいものが食べられたのでしょうけど、なにしろボク達は食についてもミーハー的で、せっかくの旅行だからと「太地」(たいじ)まで足を伸ばしました。もちろん、お目当てはクジラ料理です。

クジラの博物館

ハーバーを抜けると「くじらの博物館」があります。お近くの折には是非。


とは言っても、何のあてもなくて、やはりシーズンオフのだろうか行き交う人も少ない。ガイドブックには「ほにゃらら屋」とかたくさん掲載されているけれど、観光地的なところに迷い込んでこういうものをあてにすると碌なことはない、という経験値はボク達は山ほどあります(何度もひどい目に会ってるンです(^_^;))。

くじら博物館の隣にリゾートマンション風のホテルがあって、このレストランで情報を収集しようと思っていた(こういうところでは絶対に食べない)ら、なんと完全にクローズしている。ふむ、こうなるとその辺に歩いている地元の人を拉致して聞いたほうが無難ですね。と、花壇で草むしりをしている品のいい感じの女性に聞いてみました。「フラワーガーデンのレストランがよろしいでしょう。すぐそこですよ。」とのこと。「フラワーガーデン」??

5分ほど歩くと、確かにありました。「フラワーガーデン」。あ、植物園ね。なるほど2階部分にあります。でも、入園しないとレストランに入れないようになっている。入り口の係りの人に恐る恐る「あのー、食事をしたいだけなんですけど。」と聞くと、「あ、どーぞ、どーぞ。(ニコニコ)」ありゃ。どうもレストランだけの利用者は入園料を支払わなくていいようになっているみたいです。道路には「民宿ほにゃらら・くじら料理」という看板があちこちあります。どうにも迷ってしまいますね。環境客相手だから、多少の誇大広告はあるにしても、植物園のレストランよりはマシなんじゃないの?と思ったりしちゃいます。

看板はレストランと言っても、中は「食堂」と言ったほうが正解のような、どこにでもあるような平凡なフロアーだったけど、入ったら潔く?するのが我が家の作法。
ともかくメニューを覗く。ありますがな。「くじら料理」。コースってのがあって、値段は想像よりも安い。が、これがいいのか悪いのか・・・。連れ合いは、ヤケクソ気味で「コース。食べましょ。」とボクにささやく。

そして出てきた料理は。

クジラ料理のフルコース

これがコースの一部です。

うわわ!!凄い!!いきなり、「サエズリ」が出てきた。
「寒露煮」も「腸」も完璧な出来で、ベーコンは油が舌にとろけて、甘い。尾身(おのみ)を食したのは、30年ぶりだったけど、ボクのシノプスは高速で回転してその記憶を蘇らせた。

鍋でもいけます。

これは鍋仕立て。味は、マグロとサクラ肉(ウマ)をミックスした感じです。

連れ合いは、初めて食べるクジラ料理に言葉を飲み込んでいる。「なにこれ!!すっごく美味しいわよ!!」当たり前である。何しろクジラなんだから。ともかく、この料理は100年や200年ぐらいでできた料理とはわけが違う。クジラを食べるということは、飢餓から逃れるためだけ発展したわけではないわけよ。わかる?キミ。などとウンチクをひとくさり語ったが、どうも聞いていない。

クジラのベーコン

マーケットで売っている「クジラのベーコン」とは『月とすっぽん』なのです。

東京は新宿で、クジラ料理の専門店があります。ボクも数回行ったことがありますが(一番最後に食べたのはいつだったかなぁ)、確かに美味しいものを揃えています。でも、財布の中とよくよく相談しなくてはなりません。
しかし、ここの料理はすべてのコースを食べて4000円ほどです。それでも贅沢と言えばそれまでですが、この値段でこれだけのものを食べられるところは、他にはないでしょうね。植物園にある「食堂」なんですけど。

内臓だぞう(^_^;)

左が「腸」の部分です。上は「肺」(ちょっとクセがあります)。

デジカメで料理を撮影して(フラッシュまでたいてしまった(^_^;)いる)と、ウエトレスはニコニコして部位を説明してくれました。

ところで、日本が捕鯨できなくなってずいぶんと経ちました。いま食べているものは、輸入モノです。もちろん、冷凍ですね。技術力がアップして解凍もうまくできるようになったんでしょう。

さて日本が捕鯨できなくなった発端は、環境保護団体の反対のようです。ボクは新聞報道とかTVとか、ありていのマスメディアからの情報しか持ち合わせいませんが、彼らの言い分は要するに、「クジラは賢い動物だから。」とか「量が少ないから。」とか「他に食べるものがあるぢゃないか。」とか主張していることを見聞きしています。

ボクに言わせれば、この主張は許し難いものです。
こいう主張をする人達は、他人の「文化」というものを全く理解できない人達でしょう。誤解を恐れず言わせてもらえれば、人種差別主義者と言われても仕方ありません。

ボクは、あるものを食するということは、それを食する人達の「文化」そのものだと思っています。好き嫌いでいうならともかく、自分(達)と違うものを食べている他の人(達)を「野蛮人」扱いするということは、つまり、自分(達)以外の人間(達)を否定していると言わざるを得ません。

中国料理を言うとき、「四足で食べないのは椅子と机だけだ。」なんていう、ちょっと大げさな表現を見聞きすることがあります。ボクはこれを聞くと拍手喝さいしてしまいます。かといって、ジャガイモと牛肉だけしか食べ物を知らない人を軽蔑するつもりも、さらさらありません。人工的に動物の肝臓を肥大化させてこれを珍味というのも、釣りたて(獲りたて)のサカナや軟体動物をナマで食するのも、無精製のオイルをかけまくるのも、なんでもかんでもケチャップをかけるのも、これすべて「文化」だと思います。

つまりクジラを食べるということは、食べる人(達)の「文化」そのものなのです。この「文化」を否定するということは、クジラを食べる人(達)の存在そのものを否定することになるのではないでしょうか。一体、だれがどんな権限や資格をもって他の人間の存在を否定できるのでしょうか。

先だって新聞で、「捕鯨肉を輸入して消費を拡大して、かくて捕鯨解禁を期待する。」なんていうバカバカしい記事を読みました。これは、本末転倒でしょう。なぜ、正面切って言えないのでしょうか。「クジラを食べることは、私達の文化なのだ。だから捕鯨はする。クジラを食べる。」と。

「文楽」は、初めて見る者でさえ感動を与えるパフォーマンスです。言葉が分からなくても、その演ずる喜びや悲しみが心に体にずんずん伝わってきます。この文楽人形に使われる仕掛けのなかに、クジラの部位があるといいます。捕鯨禁止は、つまり文楽をも消滅させるわけです。そんなことは許せるはずもありません。
なぜ、みんな声を出していわないのでしょうか?「クジラを食べることは私(達)の文化なのだ。」と。

閑話休題。

満足できる食事というものは、大げさに言えば、生きている実感を味わえますね。

さて、今夜は「渡瀬温泉」に。

ホテル

夜のとばりも下りたホテル。大浴場との交通は、この吊橋を使います。苦手だなぁ。

白い外観に青い屋根。芝生の手入れはしっかりしていて、コントラストがいいです。館内は天井が高くて清潔です。

2割引だというから、正規の料金を払っている宿泊者とは違うところに放り込まれるかと思っていましたが、そんなことはありませんでした。(^_^;)
料理も一緒で、これはお徳でした。

晩餐メニュー

これが夕食。さんま寿司は、絶品でした。

ホテルと日帰り入浴もできる大浴場とは、吊橋で行き来します。さすがに夜は寒いです。

大浴場への吊橋

水面からの高さはあまりありませんが、何人かが通ると揺れます。い、嫌ぢゃ。

ホテルや旅館というと、例外なくメインのフロアにはお土産屋さん(コーナー)がある。紀州の名物と言えば梅かしら。でも、ひとつぶ200円もする梅干は予算的に買えないし、かといって定番の「温泉まんじゅう」もどうかと思うし。いつも悩んでしまいますね。と、あちこちに「ほんまもん」というコピーがあります。梅酒、まんじゅう、石鹸、キーホルダーetcなんでもかんでも「ほんまもん」という肩書き?がある。はて?これはなんぢゃろか。と思って眺めていると、「ああ、NHKでやってるからねぇ。なるほどねぇ。」なんのこっちゃ?よく聞くと朝の連続TVドラマが和歌山を舞台にしてるらしい。なるほど。でもさ、番組が終ったらどうなんの?

さて、ゆっくり睡眠をとって帰路に。
我が家の行動パターンとしては来た道を戻るわけもなく、まずは「瀞峡」に向かったのですが、それこそ季節はずれで川には水もなくジェットバスも開店休業状態。それに、思った以上に寒い。

で、十津川渓谷を抜けて「谷瀬の吊橋」に。

谷瀬の吊橋

長い!!高い!!い、嫌ぢゃ!!

R168旧道の上野地と十津川を挟んで対岸の谷を結ぶ全長297mの吊橋。鉄線の吊橋としては日本一最長だそうです。昭和29年に地元の人達によって総工費800万円をかけてつくられたそうです。一戸あたり40万円ぐらいの負担だったようですが、当時は羽振りがよかったんでしょうね。ちなみに川面まで56mもあります。ボクは、三歩ほど歩いて撤収しました。だって、揺れるンですもの。

高さ56m!!

手前には管理人さんがいて、人数制限をしています。行ったら、帰ってこなくてはいけません。(^_^;)


このあと、途中のダム湖でへら屋さんらしき姿を横目で見ながら奈良を抜けて帰路につきました。彼の釣果はどうだったのでしょうか?今でも気になります。(^_^;)