◆飛騨高山(岐阜県)

2001/8/7

上高地を後にして、「白骨温泉」に宿泊した。
久しぶりの露天風呂は、いつもは「カラスの行水」と言われているボクでもゆっくりと浸かることができた。青々とした木々に囲まれて湯煙の中でぼーっとするなんて、一体、何年ぶりだろうか。白く濁った湯を両手ですくって顔をなで上げると、一瞬、時間が止まったような気がした。

目覚し時計もないのに、6時には目が覚めた。いつもは布団の中で惰眠をむさぼるのだが、足は自然に大浴場に向かっていた。貸切状態の湯船の中で、小雨に煙る景色を眺めているのだが、目の焦点は定まっていない。ヒノキの香りが鼻腔をくすぐる。

折角の休みだ、焦ることはない。朝の膳に乗っている独特な香りのするミソを舐めながら、来た道とは違う行程を考えていると、案の定、「高山って、帰り道?」などと人の思を見透かしたように、連れ合いが話しかけてくる。20年以上も付き合うと、ほんのちょっとした仕草で企みがわかるようだ。油断できない。

最近、とは言っても2年ほど前に開通した「安房峠」のトンネルを抜けて、乗鞍を越えて高山に向かった。濃霧のせいでもないが気がつくと、どういうわけかトンネルの上(峠)を走っていた。ここで口煩いおしゃべりナビに文句でも言おうなら、後でどんな目に会うかわからない。「乗鞍スカイラインを眺めてみたい!」という無茶(霧と寒さで行く気にならなかった)を制するのが精一杯だった。

さて、平湯温泉で散策して高山市内に入った。
旅行雑誌などでは、「小京都」とある。確かに、歴史的にも町並みはそれらしい。が、個人的に言わせてもらえば、「高山」らしさというかオリジナリティがあったほうがいいと思う。「上三之町」の南端あたりを歩いてみると、そのすばらしさを「京都」に拘ることもないと思う。


一見、何気ない格子のある民家ですが、広くて贅沢なお家です。

維持費が大変そう。(^_^;)


人ごみに疲れて、少し静かなところに行きたいと思っていたけれど、我が家のミーハーどもはなかなか手ごわくて、散々歩きまわされた挙句、「いいもの、めっけ!!」とガイドブックを振りかざした。
高山市内から1kmほどのところに、「合掌村」が移築された「飛騨民族館」っていうのがある。
大小様々な合掌造りの家々が展示されている。ま、公園みたいなところか。

みごとな合掌造り。
こういいうのって、男の子は目がありません。

ともかく、よく出来ていました。

ほ、欲しい。(^_^;)


雨脚が強くなってきたのが幸い。帰路につくことにした。
東海北陸自動車道は、まだ、全線完成していない。「清見」という地区を抜けると、忽然とコンクリートと鉄柱の化け物が目の前に現れる。静かな山間には、およそ不釣合いな光景である。
車よりサルのほうが多いかもしれない、まっさらなアスファルトを滑るように走った。と、余計な看板が目の前に。「あ!!ねぇねぇ、ひょっとして『白川郷』って、世界遺産ってやつだよね!!」
まったく、おちおち高速道路も走れない。

というわけで、逆戻りするようにして「世界遺産」とやらに向かった。

観光地化された「白川郷」は、正直なところ、興ざめした。確かに、「民族館」とは違ってナマの合掌造りは、それはそれで見ごたえはあるのだけれど、何故か寂しい感じがした(うまく言えない)。
そんなボクの気持ちが伝染したのか小一時間も歩くと、みんな口数が少なくなった。誰ともなく帰りの渋滞を言い訳にして、帰り支度をはじめた。

実は、ボクは合掌村より余程気になっていたところがあった。それは道中にあった「御母衣湖」である。日本で最初の「ロック・フィル」式のダム湖である。ここにとあるへら屋さんが幾度か挑戦しているのだ。残念ながら釣れたのはウグイばかりだという。しかし、間違いなくへらさんがいるという。しかも巨べらが。

御母衣湖の堰堤
ほんとにロック(岩)なんだ!
ここに巨べらが棲んでいるというのだが・・。

しかし、どう見ても足場がない。一体、このバカでかいダムにどうやってポイントを見つけて釣台を構えるのだろうか。車を停めてじっと湖面を見ていたが、もじりもない。背後から痛いほどの視線を感じて、すごすごとシートに座った。