セヴァーン渓谷及びゴーツウッドについて

 「とらのあな」けえにひ様が、"The Creature Companion"「ハンセン・ポプラン卿の手記」から「セヴァーン渓谷」及び「ゴーツウッド」に関する項を提供してくださいました。ありがとうございました。


ハンセン・ポプラン卿(Sir Hansen Poplan)の手記より

セヴァーン渓谷(SEVERN VALLEY)――類は友を呼ぶと言う。神話に関する熱心な調査を惹きつけてきた、ニューイングランドにある街の群(訳者註:アーカム、インスマス、ダンウィッチ等)は我々神話研究者達の間でかなりよく知られているが、西イングランドの都市群、セヴァーン渓谷(Severn Valley)という名の未知なる場所についてはその存在すらあまり知られていない。

 この渓谷は少なくとも四柱の重要な神性:バイアティス、アイホート、グラーキ、そして緑の神(The Green God)にとっての本拠地である。最初にグラーキ、そしてシャンと、神話的存在が宇宙からそこに来訪した事実が少なくとも二回あるという事が奇妙に暗示的であるにも関わらず、何故この世界の片隅がそのような活動体達の連鎖を有しているのかという理由は判っていない。

 以下はセヴァーン渓谷にある各都市についての解説である。

 バークリィ(Berkeley)は未だに中世に閉じ込められているように見える。村人達は今でも「バークリィの蟇(ヒキガエル)」から我が身を守ろうとする。それがセヴァーンフォード近くのモーリィ卿(Morley)の城に幽閉されていると言われているバイアティスと同じものであるかもしれない、という事を私の解釈が示したにもかかわらずである。

 ブリチェスター(Brichester)はセヴァーン渓谷においては貴重な、グロウスターシャー(Gloucestershire)の近代的な街である。そこはブリチェスター大学の本拠地である。しかし、街の下に張り巡らされた秘密の通路や数マイル北にある幽霊湖から送られてくるという恐ろしい夢に関する言い伝えもまた存在する。ある人達は、街の西方で魔女達が巨大な石板を崇拝しているという事さえ囁きあっている。

 キャムサイド(Camside)は神話研究の原典資料において、ブリチェスターに向かって四方に広がる迷路に棲んでいる、地下世界の神アイホートの本拠地であると主張されている事で有名である。いくつかの話においては、アイホートの雛が人間の似姿をまねて街に潜入している、という事さえ語られている。

 クロットン(Clotton)(ある時はクロス・タウン(Cloth Town))はかつて、セヴァーン渓谷のただ中においては稀少な正気の拠り所であると思われていた。だが1931年に起きたある出来事が、そのような考えの間違いである事を証明した。研究資料は不足しているが、河に面していた地区の多くが破滅に襲われたという事は知られている。ライオネル・フィップス(Lionel Phipps)という人物の記述は、それが「深淵に棲むもの」(Dwellers in the Depths)の仕業であると囁いている。

 ゴーツウッド(Goatswood)はセヴァーン渓谷において特に有名な街であるが、私は既にここについて記述している。42ページを見よ(訳者註:下記「ゴーツウッド」を参照)。

 リドニィ(Lydney)はセヴァーン河の西方にあり、そのためか渓谷の有する怪しさをほぼ免れている。しかし私は偶然、この場所と「輝く顔の魔女集会」(Coven of the Shining Face)及びノーデンス神の失われた神殿との関連についての言及を発見した事がある。

 セヴァーンフォード(Severnford)もまた「バークリィの蟇」に関する言い伝えを残している。近くにあるモーリィ卿の城には、それがどれくらいの期間になるのかという事は誰も言えないにも関わらず、バイアティス自身が幽閉されているという噂がある。セヴァーンフォードの近くには「怪音の地」(The Plain of Sound)という名で呼ばれる渓谷があるのだが、そこはある古の資料に記述されている「スグルーオ湾」(The Gulf of S'glhuo)と隣接している場所なのかも知れない。

 テンプヒル(Temphill)は奇妙な場所であり、ここに関して語られる事も断片的である。それらは、かのヨグ=ソトースが「墓所に群れなすもの」(The Tomb Herd)として知られる奇怪な存在を通じてこの街の中に顕現の場を得ているという事を暗示している。テンプヒル(あるいはテンプル・ヒル(Temple Hill))は遙か昔に聖堂騎士団(Templars)によってその基礎を築かれた。そしてそこが有するであろう太古の秘密が何であるのかという事は未知のままである。

 ワレンダウン(Warrendown)は人里離れているために、神秘に覆われた街である。神話に関する何冊かの書物はそこで崇拝されている植物性の神性、イースター島の巨頭像と奇妙な繋がりを持つ神性について言及している。また私は、ワレンダウンの人々によって売られている野菜類に用心するよう個人的に警告してきた。

 セヴァーン渓谷にはこれらの他に、オールド・セヴァーンフォード(Old Severnford)シャープネス(Sharpness)等、神話の汚れを免れているように思われるいくつかの街が存在している。しかし、概してこの渓谷についての評判を考えると、我々はこれらの街にも疑念を持ちつつ接近しなくてはならない。

 「ゴーツウッド」の項も参照せよ。


ゴーツウッド(GOATSWOOD)――私は「セヴァーン渓谷」の項において、グロウスターシャー(Gloucestershire)にある、神話怪物達が死体の上の蛆のように群がっている都市群について記述している。しかしこの渓谷にはある特別な街、別項を設けて扱うべき超自然的恐怖を帯びた村がある。その街の名は、私の研究資料によれば、ゴーツウッド(Goatswood)という。

 冒涜的な豊饒の女神シュブ=ニグラスは、もし魔術における呪文の中で繰り返される彼女への祈願が何かを示すものであるならば、神話における最も強大な神の一柱である。それにもかかわらず、私はこの神の祭祀の大規模な中心地についての言及をただ一ヶ所偶然に発見しただけであり(他にも存在すると私は確信しているのだが)、そしてそれがゴーツウッドだったのである。そこはローマ人が街に最初の通りを敷いて以来、ずっと「黒き山羊」に関する祭祀の地であった。

 ゴーツウッドの近くにある丘の下には、シュブ=ニグラスの化身が棲んでいる。丘自体は、ムーンレンズ(Moon-Lens)として知られる特殊な配置の鏡が向けられた時、その内部への秘密の通路をあらわにする。

 丘の内部には、我々の住む世界とは全く異なる領域が広がっている。「シュブ=ニグラスに祝福されしもの」(The Blerred of Shub-Niggurath)が、シュブ=ニグラス自身や「ムーンレンズの番人」(Keeper of the Moon-Lens)のような彼女の化身がするように、そこにある回廊を歩き回っている。

 これらの回廊には、他にも何かがあるかも知れない。黒き豊饒の力を操る祭器、外なる神である彼女自身に対して使用する事の出来る武器……私には推測する事しか出来ないが。ここでは、ゴーツウッドの丘の下に広がる洞窟は、我々の世界に対する神話的恐怖の最も強大な侵攻のひとつである、と言うにとどめておく。

 ゴーツウッドのそばにあるコッツウォルズ(Cotswolds)もまた、昏く危険な場所である。少なくとも、その丘陵地帯の森に棲むと言われているシャン、ザイクロトル、そしてアザトース崇拝者達の話について言及しなければ、私は怠慢の誹りを受けるだろう。


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