前立腺癌体験記 http://www5d.biglobe.ne.jp/~m-okamot/a_ilst043.gif  prostata-k-taiken

PSAの経過                     BGMはタイスの瞑想曲です

平成15年8月(2003.8.27)私は数十年來の胸痛に対して結論をだすべく、神戸中央市民病院の
循環器科で盛岡部長の診察を受けていた。典型的な胸痛発作があり、ニトロールの舌下挿入にて
緩解すること、但し胸部に多少圧痛があると申し上げたところ、圧痛があるのは狭心症でないと
否定された。岡本医院での
ECGも24時間ホルター心電図も著変なく、最終決定は心カテーテルに
よるしかないと言われ、私も覚悟をきめたが、同時に検査していた血液検査で
PSA 58.0(正常値
04.0)の高値を認めた。心カテどころか、前立腺癌は直接生命を脅かすピンチである。前立腺癌
は泌尿器科医が一番よく知っていると思われるので泌尿器科医に意見を求めた。

尚、数十年間苦しめられて、片時も二トロールを手放すことができなかった狭心症の方は、禁煙に
より雲散霧消してしまった。今になって思うことは私の狭心症は典型的なタバコ狭心症であったとい
うことである。

平成15年9月12日(2003.9.12森脇泌尿器科を受診PSA 59.7 PAP(前立腺性酸性ホスファターゼ)

2.4ng/ml(正常値0〜3)森脇先生の意見では神戸では神大が一番進んでいるとのことである。

2003.9.17:神大泌尿器科受診 検血PSA 50.9直腸診で前立腺左葉に塊として触れる。

MRI
:前立腺左外腺に被膜外浸潤を伴う腫瘍     癌の大きさ:25×20mm

2003.10.9:神大:前立腺針生検右葉3/4、左葉4/4からGleason3+4=7の中分化型腺癌。

8本の内7本で腺癌が認められ、その2本に神経周囲浸潤もみられた。

病理診断:Adenocarcinoma prostateBiopsy Gleason3+4=7

骨シンチ、CT:腰椎L4右への集積あるがLN、骨への明らかな転移を認めず 

               診断:
前立腺癌T3aN0M0

要するに私の前立腺癌は前立腺の左側に被膜を越えて拡がっていて25×20mmの大きさであり、
ひどく悪性ではないが中分化型の腺癌であり、骨やリンパ腺には転移がない。手術は絶対的適応
ではないとすると、ホルモン療法と放射線療法(粒子線療法も含めて)と言うことになる。

 粒子線治療兵庫県には粒子線医療センターなるものがあり、X線の代わりに陽子線を
用いる粒子線治療なるもののあることを知った。現在、日本で重粒子線治療装置を有するの
は千葉県の放射線総合医科学研究所(放医研)と兵庫県立粒子線センターの2施設のみ。
神奈川県も重粒子線装置の導入計画を打ち出しているが、まだ予算を確保できておらず、
治療開始は
2014年の計画。実現するかどうかはまだ不確定な段階である。又現在、陽子線
治療装置を用いて治療を行っているのは3施設(国立がんセンター東病院、兵庫粒子線セ
ンター、静岡県立がんセンター)。加えて、総合南東北病院(福島県)が来年、福井県立
病院が再来年(
2009年)に治療を開始する計画である。
 最近2010年3月4日の日経新聞夕刊に「重粒子線がん治療海外へ
の表題で日本の千葉の放医研がサウジアラビアと協力協定を締結、更に中国、
フランス、ドイツの機関とも結びノウハウを供与する。現時点では
治療施設は
日本に2カ所、ドイツに1ヵ所あるのみ
。このうち放医研はもっとも早い
1994
年に治療を開始。世界の治療件数の8割以上を占め海外からの患者も
多い。と報道している。

粒子線の理論はかなり難しくて私には理解し難いのですが、現実にその恩恵に与る者として、少し
でも理解したくて、兵庫県立粒子線医療センターのホ
ームページより転記させてもらいました。

粒子線とは放射線はエネルギーをもった粒子の流れである。光はよく知られた放射線であ

る。特に波長の短い(エネルギーの高い)光をx線・
γ線と呼び、電離作用を起こすことから

放射線治療で用いられる。一方、原子の構成要素である電子や原子核の流れを粒子線と言う。

そのうち、
電子の流れを特に電子線といい、X線ともに一般の放射線治療で使われている。

原子核の流れを重粒子線と言う。重粒子線には原子核の種類分だけ種類があり、もっとも軽い

もの(水素原子核)の流れを陽子線と呼んでいる。電子線や重粒子線は、電荷を持っており電離

作用を起こす。そのため、放射線治療に用いることができるのである。
x線やγ線は物質に当

たると散乱され、徐々に速度が落ちていき、ある程度の深さ以上になるとそれ以上先には到達

できなくなる。それぞれの粒子が持つエネルギーによって止まる位置は変わるけども、粒子の

エネルギーがすべて同じであればすべての粒子がほぼ同じ位置に止まる。


加速器とは粒子に運動エネルギーを与え、速度を上げるための装置である。粒子の加速

には電場を用いる。電荷をもった粒子(荷電粒子は電場の中でエネルギーをもらい速度が速

くなる。これは上図のように、二つの電極板により、電場をつくって、負の電荷をもった電

子穴から電場にいれると、正の電極板にむかって引き寄せられる。この時、電子は加速さ

れ、速度をあげて正の電極へむかう。この時の電子の運動エネルギーは、電場の中での位


置エネルギーが運動エネルギーに変え
られたものである。

1Vの電場で加速された電子のエネルギーを1電子ボルト(eV )と言う。このように、

荷電粒子は、電場の中で電場からエネルギーをもらって速度を上げる。

これが加速器の原理である。日常の生活の中でも、加速器は
使われている。その代表が

テレビやパソコンのディスプレー用のブラウン管であり、陰極からの電子が約
2000

ボルトの電位差の中で加速され、
2keVのエネルギーを持った電子ビームとして、

ブラウン管の発光面を叩くことで、光を出している。
放射線治療では、もっと高い

エネルギーの粒子が必要である。そのために加速電場を何段階も重ねて加速する。

加速の仕方から加速器にはいくつかの種類がある。

線形加速装置

シンクロトロン加速装置

線形加速装置

 粒子を直線上にならべた加速電場で加速する

ものを線形加速器と言います。


円筒の加速空洞内に、円盤や小さい円筒を組

み込み、この空洞の中に、大電力の高周波を導

き、円筒内にできる高周波の定在波、または、

進行波が作る電場を利用して加速します。

加速粒子を円形軌道に乗せるための多数の偏向電磁石と、粒子を

加速するための電極に相当する高周波加速空洞から構成されてい

ます。

加速粒子をイオン源からビームとして取出し、線形加速器を使って、

あるエネルギーにまで加速した後、円形軌道に打ち込みます。この

とき、円形軌道上の偏向電磁石の磁場の強さは、最初には小さくし

ておきます。ビーム粒子は、円形軌道を周回するたびに、加速空洞

を通過し、その度に、加速されエネルギーが増加して行きます。それ

に合わせて、磁場も増加させ、同じ円軌道を周回するように調整し

ます。そして、最高エネルギーに達した時、円形軌道から離脱させ

、外部へビームとして取り出します。

                    

   従来のX線治療との違い

X線と粒子線では患者さんの体内での線量分布が違う。X線は表面近くで線量が最大になり、
徐々に線量は減少していく。そのため、体内深く にある腫瘍に対して高い線量を与えにくい。
それに対して粒子線は止まる直前に高い線量を体内に落とす。
  粒子線のエネルギーを調節して癌の位置に合わせておくと、
高い線量の部分が
癌のところにくる。そ れによって、癌に高
い線量を与えることができ、正常組
織に対する障害をできるだ
け低くして治療することができる。

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2003.10.31(平成15年)神大:リュープリンSR注射11.25mg(1回目)
 リュープロレリン酢酸塩11.25mg・・・・・LH-RH誘導体:黄体形成ホルモン放出ホルモンの誘導体
作用機序:高用量の
LH-RH又は高活性LH-RH誘導体であるリュープロレリン酢酸塩を反復投与すると、
初回投与直後一過性に下垂体-性腺系刺激作用が見られた後、下垂体においては性腺刺激ホルモンの産生
・放
出が低下する。更に、精巣及び卵巣の性腺刺激ホルモンに対する反応性が低下し、テストステロン
及びエストラジオール産生能が低下する(慢性作用)。リュー
プリンのLH放出活性はLH-RHの約100
倍であり
その下垂体-性腺機能抑制作用はLH-RHより強い。リュープロレリン酢酸塩が高活性LH-RH
誘導体であり、
下垂体-性腺機能抑制作用が強い理由は、リュープロレリン酢酸塩がLH-RHと比較して蛋白分解酵素に対
する抵抗性が高いこと、
LH-RHリセプターに対する親和性が高いことなどによる。更に、本剤は徐放性
製剤であるので、常時血中にリュープレリン酢酸塩を放出して効果的に精巣及び卵巣の反応性低下をも
たらし、
下垂体-性腺機能抑制作用をしめす。
前立腺癌患者において12週に1回の皮下投与により血清テストステロン濃度が持続的に去勢レベル以下低
下し、薬物的去勢作用が認められる。

リュープリンの効果は抜群で2003.12.5PSA 10.12004.1.17 PSA 2.7 2004.1.30PSA 2.1
とたった一回の注射で3ヶ月で正常値になってしまった。
2004.1.30
 神大: リュープリンSR注射(2回目)

2004.4.2
  神大MRI:前回と同様に、T2強調像及び脂肪抑制T2強調像で、前立腺左辺縁域に低信号域が認め

られます。縮小効果は明らかですが、低信号領域として残存しています。・・・・被膜外浸潤の可能性があります。

又前立腺肥大症があるものと考えます。明らかなLNmeta「リンパ腺転移」も指摘できません。
2004.4.23
 神大 : リュープリンSR注射(3回目)
2004.5.11 兵庫県立粒子線医療センター入院: 平成16年5月11日〜7月7日まで入院、前立腺癌に
陽子線
74GyE/37回照射予定(月〜金毎日照射土日は休み)セットに約1時間、照射は約1分間である。
金曜日の午後から山陽自動車道をすっ飛ばして約1時間30分で帰宅、月曜日早朝に再び病院へ帰っていた。

2004.5.12 陽子線照射開始 PSA 0.789 (入院時) MRI:癌の大きさ:0×0 mm
2004.6.14 粒子線センター  PSA  0.655
2004.6.22 粒子線センター 照射開始後1ヶ月   MRI:癌の大きさ:0× mm
2004.7.7 粒子線センター (退院時)PSA 0.437 尿潜血(-
2004.7.20 神大 リュープリンSR注射 (4回目) PSA  0.428
2004.10.22
 岡本医院 PSA 0.322 テストステロン 6↓300-1050 AST44  ALT44 γGT 65 Tcho226 ↑
TG377↑ TSH8.76↑FT33.0
サイロイドテスト(-TPO抗体(-)・・・・・・・脳下垂体の甲状腺刺激ホルモンが増えているが、甲状腺機能は正常
2004.7.20 神大 リュープリンSR注射  (5回目) PSA 0.260
2005.1.25 神大 リュープリンSR注射  (6回目) PSA 0.195リュープリンの注射1年6ヶ月になり、
ホットフラッシュがひどいため中止とす。

2005.7.5  神大 (粒子線治療より一年経過)精密検査を施行
        骨シンチ:転移性骨腫瘍を積極的に疑う所見なし
2005.7.8  神大 MRI :前回2004.4.5と比べて、前立腺全体の大きさは変化ありません。ただし前立腺尖部
右側に存在する
T2強調像で、低信号を呈する病変は前回より縮小 しています。結腸には憩室が多発して
います。明らかなリンパ節転移なし。骨病変なし。       

005.7月〜PSAは順調に減少を続け、2005.12.13には0.1522006.8.20.0842007.7.26 0.060
最低値を記録した。但しテストステロンも低下し、

2007.7.26
にはテストステロン0.4ng/ml2.07.6と男性ホルモンが激減しているから、男性更年期障
害とも言うべき病態を呈するのは当然のことである。

2007.11.12 PSA 0.069 テストステロン 0.4 Tcho 193 TG351AST 26 ALT 36  γGT  36

※剖険例における検討では、前立腺癌は5784%に骨転移が認められた報告されている。

2008.2.29 神大:PSA  0.074  TG 269↑ Tcho187 AST 23 ALT 25 γGT40 と検査成績はほぼ
安定している。

2008.5.30 神大:PSA  0.068  TG176 Tcho213 AST30  ALT40  γGTP34尿検査尿検査: 蛋白(±)

糖(−)潜血(−)赤血球定量 12.2 白血球定量3.8上皮定量2.7 円柱定量0.6 細菌定量2495
 赤血球14 白血球<1

2008.12.17 PSA 0.097
2009.2.6   PSA 0.117
2009.5.29
神大: PSA0.105 AST16 ALT12 Al-P368
2009.7.26
 岡本医院:PSA0.136 テストステロン0.75 AST26 ALT 15 Al-P290
2010.5.11
岡本医院:PSA 0.171 テストステロン0.53(2.077.61) T.cho192  LDL.cho93  TG358 ↑

 前立腺癌の発病から約6年、粒子線医療センターへの入院(20040510日)から5年を経過して

5年生存を確定しており、リュープリンによるホットフラッシュなどの副作用が残存しているものの、

前立腺癌は軽快しているものとみなされる。

    BGMはタイスの瞑想曲です    

タイスの瞑想曲


音楽は再生ボタンを押すと流れますが、始めはしずかに始まります(MP3

作曲者:ジュール・エミル・フレデリク・マスネ
生没:1842〜1912年
出身:フランス

オペラ『タイース』の第二幕で演奏される音楽。
1894年のパリ・オペラ座にて初演。

 オペラ『タイース』のあらすじ  

 舞台は4世紀末のエジプト。キリスト教の修道士アタナエルは美人娼婦タイースに恋に落ち、享楽的な生活を送っていた彼女

を改心させようと熱心に神の教えを説いていく。 最初はアタナエルを避けていたタイースだが、熱心な説得に心を動かされ、

真面目に生きようとする・・・。 が、反対にアタナエルの方はタイースの美しさにどんどんはまりこんでいき、どんどん堕落の

道を進んでしまう・・。

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