そして裁判のこと 1



私が証人尋問に立つ日

この日は朝から小雪が降っていました。


彼が亡くなった日も

その年 初めての雪が舞った日でした。


「雪が降ってるよ」と

最後に交わした言葉でした。









法廷に立つ

思っていた以上に これは結構きつい事です。


法廷の雰囲気は、威圧的とはいえ

「まあ、こんなものか」で、済みますが

そこで、繰り広げられる「尋問」


たくさんの質問

たくさんの確認


5年たっているのです。

忘れてしまったこともありました。

レポートを基準にしつつも、レポート以外のことも

たくさん聞かれます。


事前に、きちんと答えよう と思っていても

あらかじめ 質問を想定して、答えを考えていても

だめです


本音の本音の部分まで 引きずり出され

それでも答えなくちゃいけません。


彼が死に至るまでの詳細な経過も

「その時あなたはどう思いましたか」と

つらい質問はつづきます。



どっと沸いてくる涙に 何度か言葉も詰まりました。


「ちゃんと答えておられましたよ」と

弁護士さん達は言ってくださいました

「つらかったでしょう」

とも、言ってくださいました。


気が張りっぱなしの私は

「いいえ、まだまだ大丈夫です」と答えます。


でも

本当は

ぜんぜん大丈夫じゃありません。

無事に帰宅できたのが不思議です。


車の中で じわじわと悲しさが湧き上がってきます。

聞かれた質問の一つ一つの場面が浮かんできます。


やっと、治った と思った傷口を 

もう一度 こじ開けているような

そんな気持ちになってしまって気分が悪くなりました。


まだまだ続くのでしょうか



はじめてしまった事だから、最後までやり遂げたい


この気持ちにうそはありません。



結果はどうあれ、最後まで見届けるのが

私の仕事だとも思っています。


でも、本当は


逃げ出したてしまいたいのです。