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MIDI作成について(2)

 2回目は初期化の一つである、各楽器の振り分けです。(少し長いです)
 MIDIの作り方なんてそれこそ人によって様々で、ここに書いていることも私のやり方であり、特に「こうしなければならない」というわけではありません。誤解のないようにお願いいたします。

トラックとチャンネル

 MIDIは1ポートに16チャンネルあります。これは同時に発音できる音色が16種類まであることを意味します。ただし、仕様でチャンネル10は音程のないパーカッション専用に割り当てられているため、残り15のチャンネルに他の楽器を担当させることになります。
 トラックは各パートだと考えていいでしょう。1つのチャンネル(楽器)を複数のトラック(パート)で共有が可能です。ピアノ曲の場合、私はこのようにしています。(T.No.はトラック番号、Chはチャンネルです)

T.No.ChTrack Nameパート
11Piano (R.H.)ピアノ(右手)
21Piano (L.H.)ピアノ(左手)
31(Pedal)ピアノ(ペダル)

 チャンネルが全部「1」になってますね。楽器はピアノ1台だけなので、チャンネルは1つで十分、という考えからです。初期化データはチャンネルごとに用意する必要があります。チャンネルを1つにすることで手間を省き、データサイズも小さく出来るメリットが生まれます。
 トラックは、ピアノの楽譜と同じように右手と左手のパートに分けてます。

 オーケストラになると、また変わってきます。今度はベートーヴェンの交響曲第7番第1楽章の場合です。

T.No.ChTrack Name楽器パート
11Fluteフルート
22Oboeオーボエ
33Clarinet (A)クラリネット
44Bassoonバスーン(ファゴット)
55Horn (A)ホルン
66Trumpet (D)トランペット
77Timpaniティンパニ
88Violin I第1ヴァイオリン
99Violin II第2ヴァイオリン
1011Violaヴィオラ
1112ViolonCelloチェロ
1213DoubleBassダブルベース(コントラバス)

 前述の通り、チャンネル10はパーカッション専用です。この曲はティンパニ以外の打楽器を使用してませんので、チャンネル10は不使用となります。

 楽器がもっと多いとどうでしょうか? パーカッション以外の楽器が15種類を超える場合は、2ポートにするのが作る側としては楽です。しかし、聴く側は2ポートに対応した音源が必要となり、普通の音源だと作者の意図と違う楽器で鳴るパートが出てきます。
 私は出来るだけ1ポートでも聴けるようにしています。例えばホルストの木星はこうしてます。

T.No.ChTrack Name楽器パート
11Piccoloピッコロ
21Fluteフルート
32Oboeオーボエ
43EnglishHornイングリッシュ・ホルン(コール・アングレ)
54Clarinet (B)クラリネット
64B.Clarinet (B)バス・クラリネット
75Bassoonバスーン(ファゴット)
85D.Bassoonダブル・バスーン(コントラ・ファゴット)
96Horn (F)第1、第2ホルン
106Horn (F)第3、第4ホルン
116Horn (F)第5、第6ホルン
127Trumpet (C)第1、第2トランペット
137Trumpet (C)第3、第4トランペット
148Tromboneトロンボーン
158Tubaテューバ
169Timpaniティンパニ
1710Percussion大太鼓、シンバル、トライアングル、タンバリン
1811Harp,Glockenハープ、鉄琴
1912Violin I第1ヴァイオリン
2013Violin II第2ヴァイオリン
2114Violaヴィオラ
2215ViolonCelloチェロ
2316DoubleBassダブルベース(コントラバス)

 随分、楽器が多いですねぇ。6本あるホルンはスコア(楽譜)では3段に分けてあり、それに倣ってトラックを3つ使ってます。トランペットも同様の理由からです
 トラック1と2(ピッコロとフルート)、5と6(クラリネットとバス・クラリネット)、7と8(ファゴットとコントラ・ファゴット)、14と15(トロンボーンとテューバ)はそれぞれが違う楽器なのにチャンネルが同じです。つまり、この4組は同じ音色を共有しています。まぁ、6は5の、8は7の低音バージョンですので、これは解りますね。
 でもピッコロ、フルート、トロンボーン、テューバは、MIDI標準の音色にちゃんと用意されています。なのに1つの音色でまとめているのは、似た音色の楽器で、しかも単独で目立つことが曲中にないからです。
 同じ惑星でも「火星」や「天王星」だと、トロンボーンとテューバは別チャンネルになってます。その代わり、目立たないイングリッシュ・ホルンがオーボエと同じチャンネルです。

 もう一つ、トラック18をご覧下さい。「木星」はハープと鉄琴が同時に鳴る個所がありませんので、音色の切り替えを利用することによって、同一チャンネルに置くことが可能なのです。
 これらは全て16チャンネル(1ポート)に収めるための工夫です。

パンポットとコーラスとリバーブ

 さて、これだけでは全楽器が真ん中で固まっていて、オーケストラらしくありません。次のサンプルを聴いてみて下さい。以下全てのサンプルは、ベートーヴェンの交響曲第7番第3楽章の一部です。

   サンプル1(モノラル状態)

 そこで各楽器を左右に分ける、パンポットというパラメータ(値)を使います。0〜127まであり、64が真ん中で、数値が小さいほど左に、大きいほど右に寄ります。弦楽器だけ分けてもだいぶ違いますよ。
 具体的な数値は省略しますが、コントラバス以外の弦楽器配列は、左から第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンとしています。確証はありませんが、これが本来の弦楽器の配置だそうです。コントラバスは一番右でもいいんですが、私はヴィオラと第2ヴァイオリンの間に置いています。
 他の管楽器や打楽器なども真ん中では具合が悪いので、適度に分けます。ベートーヴェンならフルート、クラリネット、ホルン、ティンパニを左に、残りは右にという具合です。同じ列になるのを避けて、指揮者に近い楽器ほど真ん中から離すようにしています。

   サンプル2(1をステレオ化)

 そして弦楽器は各パート10人前後でまとまって演奏してますね。この量感を得るためにコーラスを使います。これも0〜127まであり、127(最大)だと全体から音が聞こえるようになります。オーケストラの弦楽器なら50〜60くらいがいいでしょう。

   サンプル3(2にコーラス使用)

 最後はリバーブで遠近感を持たせます。大きいほど残響が増えて遠くにあるように感じ、初期値(0)では、まるで部屋の中のすぐ傍で演奏しているように聞こえます。前の楽器を小さめ(最低でも30)にし、後ろの楽器になるにつれて大きくしていきます。

   サンプル4(3にリバーブ効果を付加)


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(C)Shiomabushi
2004-03-14 作成
2004-03-16 更新