2回目は初期化の一つである、各楽器の振り分けです。(少し長いです)
MIDIの作り方なんてそれこそ人によって様々で、ここに書いていることも私のやり方であり、特に「こうしなければならない」というわけではありません。誤解のないようにお願いいたします。
MIDIは1ポートに16チャンネルあります。これは同時に発音できる音色が16種類まであることを意味します。ただし、仕様でチャンネル10は音程のないパーカッション専用に割り当てられているため、残り15のチャンネルに他の楽器を担当させることになります。
トラックは各パートだと考えていいでしょう。1つのチャンネル(楽器)を複数のトラック(パート)で共有が可能です。ピアノ曲の場合、私はこのようにしています。(T.No.はトラック番号、Chはチャンネルです)
T.No. | Ch | Track Name | パート |
---|---|---|---|
1 | 1 | Piano (R.H.) | ピアノ(右手) |
2 | 1 | Piano (L.H.) | ピアノ(左手) |
3 | 1 | (Pedal) | ピアノ(ペダル) |
チャンネルが全部「1」になってますね。楽器はピアノ1台だけなので、チャンネルは1つで十分、という考えからです。初期化データはチャンネルごとに用意する必要があります。チャンネルを1つにすることで手間を省き、データサイズも小さく出来るメリットが生まれます。
トラックは、ピアノの楽譜と同じように右手と左手のパートに分けてます。
オーケストラになると、また変わってきます。今度はベートーヴェンの交響曲第7番第1楽章の場合です。
T.No. | Ch | Track Name | 楽器パート |
---|---|---|---|
1 | 1 | Flute | フルート |
2 | 2 | Oboe | オーボエ |
3 | 3 | Clarinet (A) | クラリネット |
4 | 4 | Bassoon | バスーン(ファゴット) |
5 | 5 | Horn (A) | ホルン |
6 | 6 | Trumpet (D) | トランペット |
7 | 7 | Timpani | ティンパニ |
8 | 8 | Violin I | 第1ヴァイオリン |
9 | 9 | Violin II | 第2ヴァイオリン |
10 | 11 | Viola | ヴィオラ |
11 | 12 | ViolonCello | チェロ |
12 | 13 | DoubleBass | ダブルベース(コントラバス) |
前述の通り、チャンネル10はパーカッション専用です。この曲はティンパニ以外の打楽器を使用してませんので、チャンネル10は不使用となります。
楽器がもっと多いとどうでしょうか? パーカッション以外の楽器が15種類を超える場合は、2ポートにするのが作る側としては楽です。しかし、聴く側は2ポートに対応した音源が必要となり、普通の音源だと作者の意図と違う楽器で鳴るパートが出てきます。
私は出来るだけ1ポートでも聴けるようにしています。例えばホルストの木星はこうしてます。
T.No. | Ch | Track Name | 楽器パート |
---|---|---|---|
1 | 1 | Piccolo | ピッコロ |
2 | 1 | Flute | フルート |
3 | 2 | Oboe | オーボエ |
4 | 3 | EnglishHorn | イングリッシュ・ホルン(コール・アングレ) |
5 | 4 | Clarinet (B) | クラリネット |
6 | 4 | B.Clarinet (B) | バス・クラリネット |
7 | 5 | Bassoon | バスーン(ファゴット) |
8 | 5 | D.Bassoon | ダブル・バスーン(コントラ・ファゴット) |
9 | 6 | Horn (F) | 第1、第2ホルン |
10 | 6 | Horn (F) | 第3、第4ホルン |
11 | 6 | Horn (F) | 第5、第6ホルン |
12 | 7 | Trumpet (C) | 第1、第2トランペット |
13 | 7 | Trumpet (C) | 第3、第4トランペット |
14 | 8 | Trombone | トロンボーン |
15 | 8 | Tuba | テューバ |
16 | 9 | Timpani | ティンパニ |
17 | 10 | Percussion | 大太鼓、シンバル、トライアングル、タンバリン |
18 | 11 | Harp,Glocken | ハープ、鉄琴 |
19 | 12 | Violin I | 第1ヴァイオリン |
20 | 13 | Violin II | 第2ヴァイオリン |
21 | 14 | Viola | ヴィオラ |
22 | 15 | ViolonCello | チェロ |
23 | 16 | DoubleBass | ダブルベース(コントラバス) |
随分、楽器が多いですねぇ。6本あるホルンはスコア(楽譜)では3段に分けてあり、それに倣ってトラックを3つ使ってます。トランペットも同様の理由からです
トラック1と2(ピッコロとフルート)、5と6(クラリネットとバス・クラリネット)、7と8(ファゴットとコントラ・ファゴット)、14と15(トロンボーンとテューバ)はそれぞれが違う楽器なのにチャンネルが同じです。つまり、この4組は同じ音色を共有しています。まぁ、6は5の、8は7の低音バージョンですので、これは解りますね。
でもピッコロ、フルート、トロンボーン、テューバは、MIDI標準の音色にちゃんと用意されています。なのに1つの音色でまとめているのは、似た音色の楽器で、しかも単独で目立つことが曲中にないからです。
同じ惑星でも「火星」や「天王星」だと、トロンボーンとテューバは別チャンネルになってます。その代わり、目立たないイングリッシュ・ホルンがオーボエと同じチャンネルです。
もう一つ、トラック18をご覧下さい。「木星」はハープと鉄琴が同時に鳴る個所がありませんので、音色の切り替えを利用することによって、同一チャンネルに置くことが可能なのです。
これらは全て16チャンネル(1ポート)に収めるための工夫です。
さて、これだけでは全楽器が真ん中で固まっていて、オーケストラらしくありません。次のサンプルを聴いてみて下さい。以下全てのサンプルは、ベートーヴェンの交響曲第7番第3楽章の一部です。
そこで各楽器を左右に分ける、パンポットというパラメータ(値)を使います。0〜127まであり、64が真ん中で、数値が小さいほど左に、大きいほど右に寄ります。弦楽器だけ分けてもだいぶ違いますよ。
具体的な数値は省略しますが、コントラバス以外の弦楽器配列は、左から第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンとしています。確証はありませんが、これが本来の弦楽器の配置だそうです。コントラバスは一番右でもいいんですが、私はヴィオラと第2ヴァイオリンの間に置いています。
他の管楽器や打楽器なども真ん中では具合が悪いので、適度に分けます。ベートーヴェンならフルート、クラリネット、ホルン、ティンパニを左に、残りは右にという具合です。同じ列になるのを避けて、指揮者に近い楽器ほど真ん中から離すようにしています。
そして弦楽器は各パート10人前後でまとまって演奏してますね。この量感を得るためにコーラスを使います。これも0〜127まであり、127(最大)だと全体から音が聞こえるようになります。オーケストラの弦楽器なら50〜60くらいがいいでしょう。
最後はリバーブで遠近感を持たせます。大きいほど残響が増えて遠くにあるように感じ、初期値(0)では、まるで部屋の中のすぐ傍で演奏しているように聞こえます。前の楽器を小さめ(最低でも30)にし、後ろの楽器になるにつれて大きくしていきます。