アンサンブルを伴うバロック曲には、必ずと言っていいくらい出てくる通奏低音(Basso continuo)。下から音楽を支え、リズムを刻むことで他のパートに対する指揮者の役割も持っています。
使う楽器は特に指定がない限り、低音楽器なら基本的に何でも良く、組み合わせも自由のようです。通常は弦楽器のチェロとコントラバスに、鍵盤楽器のオルガンかチェンバロのどちらかを入れ、場合によっては木管のファゴット、コントラファゴットで補強します。
初めてバロック音楽のスコア(楽譜)を見た時、まずチェロやコントラバスの代わりに見慣れないContinuoなるパートがあって戸惑いました。さらに譜面には数字が音符の下(スコアによっては上)に記されており、「何これ? 暗号?」などと思ったものです。(笑)
そこで曲解説のページを開くと、こんな感じの説明がありました。
「左手で音符を弾き、右手は音符から数字の音程分だけ上の音を、和音として演奏する。コードネームのような役割」
……え〜っと??
どうやら鍵盤楽器用らしいのですが、作曲法も学んでおらず、楽典さえ独学な音楽素人としては、これだけでは解りません。じゃあ数字がない所は和音なし? シャープやフラットだけしか書いてない所はどうすればいいの? 他にも+とか−とか付いていたり、数字に斜線が引かれてるのもあるし……おまけにこの「Tasto solo」ってどういう意味? ……など、疑問は尽きません。
マタイ受難曲の打ち込みでは、これが苦労の種でした。一時は合唱曲やアリアみたいに数字と記号を無視して、明示された音符だけで済ませることも考えました。しかし、レチタティーヴォで伴奏が通奏低音だけになると、どうにも味気がないんですよね。
いろいろと調べてみた結果、次のようなことが解ってきました。
他にも組み合わせがありますが、不協和音なども入れるとキリがないので割愛します。
結局は数字で示された和音から外れていなければ、奏者が自由に伴奏なり対旋律なりを入れても構わないようです。ジャズのような即興演奏を組み込める点が、通奏低音の面白さだと言えますね。もっとも先述の通り、私は素人ですので、数字そのままに和音を付けるのが精一杯なんですが。(^^;)
マタイ受難曲のレチタティーヴォや四季では、チェンバロの和音にも注意して聴いて頂けると嬉しいです。
バロック曲ではありませんが、サンプルとしてきらきら星を例に挙げてみます。調性は変ホ長調で、伴奏は独自に付けました。
通奏低音の例。第1小節2拍目と第4小節1拍目に数字がある。
通奏低音に使用した楽器は、チェロ、コントラバス、オルガンです。記された数字に従って、そのまま和音を入れるとこうなります。
和音を付加したオルガンパート。(オルガンだけのMIDI)
そして全パート演奏させたのがこちらです。
簡単な編曲で、あまり参考にはならないかもしれませんが、雰囲気だけでも感じて頂ければ。オルガンの和音を入れただけで、民謡であるきらきら星が何となくバロック音楽に聞こえてしまうのは、私だけでしょうか?