演奏時間:約70分
いわゆる「第9」です。ベートーヴェンの交響曲の頂点であり、後の作曲家に与えた影響も計り知れないほど大きいです。
有名で規模が大きいので集客力がある、というわけで、日本では年末になると頻繁に演奏されます。
どの楽章も10分を超える(第4楽章は約25分)長い曲ですが、それぞれが充実した音楽で、あまり長さは感じません。第4楽章の「歓喜の歌」だけでなく、全曲通して聴くことをお勧めします。
ホルンの長い音と弦のトレモロで静かに始まり、ヴァイオリンが稲妻の如く音をちらつかせ、この2つが徐々に大きくなって、ついには全合奏で堂々と第1主題が出現します。これはコード(調性)を変えてもう一度行なわれ、静まったところで第2主題が木管で出ます。
この大きな交響曲の開始に相応しい、とても劇的な曲です。
ベートーヴェンはこの楽章を作曲する時、如何にティンパニを目立たせるかを考えました。
A-B-Aという三部構成ですが、A自体も三部に分かれています。リズムやアクセントがはっきりとしたAに対して、中間のBは流れるような音楽です。
(→ 間奏曲の「狂乱のスケルツォ」参照)
恐らくベートーヴェンが書いた中で最も美しい音楽でしょう。歓喜を前にした時の崇高な気分、とも言われています。
4拍子の第1主題と3拍子の第2主題は、共に弦で提示されます。後半にはファンファーレ(と言っても華やかなものではありません)が二度、印象的に挿入されます。
ここでついに喜びを謳歌します。8つの部分から成ります。
1. 叩きつけるような短い序奏。すぐに低音弦が応答します。そして前の3つの楽章の主題が順に再現されますが、いずれも低音弦が「これは歓喜ではない」と否定します。
2. 同じく低音弦が静かに有名な旋律……歓喜の主題を出します。これが繰り返される度に他の楽器が「これこそ歓喜だ」と同意して盛り上がっていきます。
3. 最初の序奏が戻り、これに対してバス独唱が「このような調べではだめだ。もっと喜びに満ちた歌を歌おう!」と歌って、歓喜の主題のメロディーでシラーの詩「歓喜に寄す」を歌い始めます。独唱者と合唱のやり取りが三度続き、最後は長い音でこの部分が終わります。
4. 拍子が変わって行進曲風になり、テノール独唱が元気に歌います。歌が終わると、しばらくオーケストラだけで進み、突然合唱が歓喜の主題を歌います。ここが最も有名な部分です。
5. テンポが遅くなって厳かな、後に神秘的な曲調となります。この時点でシラーの詩は全て歌い終え、この後は同じ詩を繰り返し歌う事になります。
6. 前の部分の旋律と歓喜の主題、それぞれが変形した2つの旋律が重なって、壮大な音楽を形作ります。
7. せわしげなヴァイオリンの旋律に始まって、4人の独唱者を中心に歓喜の主題の変形が歌われます。
8. 熱狂的な全体の終結部。途中でテンポが落とされますが、合唱が終わるとオーケストラが急速に最後に向かって疾走します。