演奏時間:約22分 (反復を含む)
整然として美しいモーツァルトの音楽。ただ、モーツァルト自身は遊び心たっぷりで、皮肉を言うこともしばしばあったそうです。そんな一面が音楽上で最大限に発揮されたのが、その名も「音楽の冗談」(または「音楽の戯れ」)です。一流音楽家気取りで下手な作曲・演奏をする者に対する皮肉が、随所に入ってます。
楽器編成からして奇抜で、ホルン2、第1・第2ヴァイオリン、ヴィオラ、コントラバス……そうです、コントラバスはあるのに、当然入っているはずのチェロがありません。
そして、この時代には曲の中で最も規模が大きいはずの第1楽章が短く、中間の第2、3楽章が無駄に長いアンバランスな構成。更に、音を外すおまけ付き。最初に聴いた時は、モーツァルトの作品とは思えないでしょう。
最初の3つの音が、しばらくの間何度も出てきます。音楽を発展させたいのにさせられない、未熟な作曲家への皮肉です。反復がなければ、それこそあっという間に終わります。
モーツァルトの時代では本来第3楽章に置くべきメヌエットが、ここで登場します。しかも典雅な舞曲であるメヌエットに「マエストーソ(荘厳に)」の指示が。また、メヌエット自体が長いのに、トリオ(中間部)が輪をかけて冗長になってます。
ハ長調……のはずがいきなりト長調で始まり、すぐにハ長調に戻ります。美しい音楽も、やがて終わりが見えてこない退屈なものに変わっていきます。
終わり近くになって、ヴァイオリン・ソロが演奏技術を誇示しますが、音が外れる落とし穴が待っていました。
ようやくまともな、そして終楽章らしい音楽……と思いきや、よく聴けばここも短いフレーズの繰り返しがたくさんあります。極めつけは最後の盛大な音外し!