演奏時間:約60分
旧暦の1905年1月9日日曜日、まだソヴィエト連邦となる前のロシアで、ある革命が起こりました。いわゆる「血の日曜日」で、時のロシア国王に請願書を出すために、十数万人にも及ぶ労働者・市民がデモを行ないました。その参加者のほぼ全員が王宮前で射殺されています。
ショスタコーヴィチはこの革命をテーマに、労働者の革命歌をいくつか引用し、交響曲よりも交響詩に近い描写的な音楽を作りました。全ての楽章は切れ目なく続けて演奏されます。
事件が起こる日の夜明けの、ペテルブルクにある王宮前広場の様子を描きます。
いきなり主題から始まりますが、これは市民が苦しめられている「圧政」を表しています。凍て付くような寒さと暗さを思わせる主題の気分は楽章を支配し、これから起こる悲劇さえも暗示するかのよう。
主題の後に出るトランペットのファンファーレは、交響曲全体で重要な役割を持っています。
この交響曲の中核をなす楽章で、労働者を中心とした市民のデモが、王宮を目指して行進します。
木管で出された「行進」の主題は何度も繰り返され、第1楽章で出されたファンファーレを伴いながら次第に厚みを増します。やがて「圧政」の主題が王宮前広場に到着したことを表します。
そこで待っていたのは兵隊からの一斉射撃でした。小太鼓を合図に始まる荒々しい音楽は、発砲、そしてデモ隊の混乱を描きます。
突然静かになると、広場に残されたのは大量の死体……。「圧政」主題がより一層の陰鬱さで再現されます。
犠牲者を追悼する音楽です。しかし、曲が進むにつれて民衆の悲しみは、徐々に新たな怒りへと変わっていきます。
叩きつけるような主題で始まります。前楽章の怒りが引き継がれ、民衆が再び立ち上がります。
クライマックスの後、「圧政」の影が迫りますが、ここではイングリッシュ・ホルンによる革命歌の引用(A)が重なり、それはやがて第2楽章の「行進」主題へと変貌します。それが終わると、Aが打楽器や鐘の音と共に高らかに歌われます。