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ショスタコーヴィチ
 交響曲第11番 ホ短調 Op.103 《1905年》

演奏時間:約60分

 旧暦の1905年1月9日日曜日、まだソヴィエト連邦となる前のロシアで、ある革命が起こりました。いわゆる「血の日曜日」で、時のロシア国王に請願書を出すために、十数万人にも及ぶ労働者・市民がデモを行ないました。その参加者のほぼ全員が王宮前で射殺されています。
 ショスタコーヴィチはこの革命をテーマに、労働者の革命歌をいくつか引用し、交響曲よりも交響詩に近い描写的な音楽を作りました。全ての楽章は切れ目なく続けて演奏されます。

第1楽章 王宮前広場: アダージョ (緩やかな速度で)

 事件が起こる日の夜明けの、ペテルブルクにある王宮前広場の様子を描きます。
 いきなり主題から始まりますが、これは市民が苦しめられている「圧政」を表しています。凍て付くような寒さと暗さを思わせる主題の気分は楽章を支配し、これから起こる悲劇さえも暗示するかのよう。
 主題の後に出るトランペットのファンファーレは、交響曲全体で重要な役割を持っています。

第2楽章 1月9日: アレグロ (速く)

 この交響曲の中核をなす楽章で、労働者を中心とした市民のデモが、王宮を目指して行進します。
 木管で出された「行進」の主題は何度も繰り返され、第1楽章で出されたファンファーレを伴いながら次第に厚みを増します。やがて「圧政」の主題が王宮前広場に到着したことを表します。
 そこで待っていたのは兵隊からの一斉射撃でした。小太鼓を合図に始まる荒々しい音楽は、発砲、そしてデモ隊の混乱を描きます。
 突然静かになると、広場に残されたのは大量の死体……。「圧政」主題がより一層の陰鬱さで再現されます。

第3楽章 永遠の追憶: アダージョ (緩やかな速度で)

 犠牲者を追悼する音楽です。しかし、曲が進むにつれて民衆の悲しみは、徐々に新たな怒りへと変わっていきます。

第4楽章 警鐘: アレグロ・ノン・トロッポ (速く、速すぎずに)

 叩きつけるような主題で始まります。前楽章の怒りが引き継がれ、民衆が再び立ち上がります。
 クライマックスの後、「圧政」の影が迫りますが、ここではイングリッシュ・ホルンによる革命歌の引用(A)が重なり、それはやがて第2楽章の「行進」主題へと変貌します。それが終わると、Aが打楽器や鐘の音と共に高らかに歌われます。


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(C)Shiomabushi
2004-01-09 作成