演奏時間:約13分
吉松氏は、現代のクラシック系列の作曲家としては異端とも言える、非常にメロディックで親しみやすい音楽を書いてます。音響重視である、いわゆる「現代音楽」から最も遠い作曲家です。
美しい音楽が書きたくて作曲家になったという吉松氏。しかし当時の作曲界は前衛主義で、調性やメロディーなどは求めておらず、ギャップに苦しんだそうです。そして、自身の書きたい音楽と時代の要求とを、精一杯融合させようとした作品が《朱鷺によせる哀歌》です。
「この曲は最後の朱鷺たちに捧げられる。ただし、滅びゆくものたちへの哀悼の歌としてではなく、美しい鳥たちの翼とトナリティ(調性)との復活によせる頌歌(しょうか)として」 (吉松 隆)
楽器はピアノを舞台の中心に、弦楽器をピアノの左右、コントラバスを後ろに配置して、指揮者を頭とした鳥の形になるように指示されてます。
曲は弦楽器だけの第1部、ピアノが加わる第2部、クライマックスから終結までの第3部から成る、と見ることができます。旋律らしきものはありませんが、決して聴き難い音楽ではなく、時折挿入される朱鷺の鳴き声が悲しみを誘います。