古都奈良を歩く

奈良県奈良市

学生の頃から秋になると奈良、明日香を歩きたくなる。万葉の故郷、天平文化を
感じながらの散策は楽しく、こんな贅沢な時間を過ごすために何度となく古都奈良
を旅している。

奈良市外の西ノ京と呼ばれる地区に修学旅行でお馴染みの薬師寺がある。東塔、
西塔と二対の五重の塔で有名であり、白鳳時代の文化を現在に伝えている。金堂
を中心とした大伽藍が復元中で、朱と金色のコントラストは平城京の時代から龍宮
造りと呼ばれている。教科書にも必ず載っている薬師三尊像は、理想的な写実美
として国宝になっている。

朝の8時半から薬師寺の境内に入れる。爽やかな秋の澄み切った空の下、白鳳時代
の文化に触れた。古都の散策は朝に限るが、観光客も多く修学旅行生も姿を見せて
いた。1300年の歴史を刻む東塔は法隆寺と同様の重厚な重みがあり、金堂、西塔
の鮮やかな朱と金色は大陸の影響を強く受けた、平城京の時代へと誘う。
 薬師寺といえば管主の法話が有名であり、機会があればお聞きしたい。


観光客でごったがいした場所は苦手なので、殊に奈良、京都などは朝に散策を楽しむ。
広大な奈良公園では、なんといっても鹿に会うのが楽しみだ。神に仕えているだけの
ことはあり実に行儀のいい鹿たち。春日大社や東大寺を守る衛兵のように立っている。
 奈良観光の中心であり天平文化の最高峰ともいえる東大寺、奈良の大仏は、世界に
誇る日本文化だ。1300年の昔に世界規模の大仏が建立され、世界最大の木造建築
が現代に残っている。奈良の都を散策していると、毎回のことながら日本の文化を誇らし
く思う。
 中学、高校時代の修学旅行では強行軍と寝不足で日本文化を感じている時間はないが、
歳を重ねるごとに古都の魅力を肌で感じられるようになる。仕事の休息、人生の休息を過
ごす時、奈良の都は優しく迎いいれてくれる・・・・・。


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歴史・物語の舞台を歩く
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東大寺南大門には、運慶・快慶一門の
大作である金剛力士像が左右に立って
いる。奈良の都は宝物で溢れている。

荒池の辺から興福寺の五重塔が遠望でき、名門の奈良ホテルの建築も美しい。
爽快な森林浴を楽しみながら広大な奈良公園を春日大社へと散策する。まだ紅葉
には早かったが、それでも色ずく葉を見かけることもあった。鬱蒼とした春日大社へ
の森は、藤原不比等が大社を建立した平城京の時代となんら変化していないのか
もしれない。悠久の歴史を肌で感じることができた。
 傍らの鹿が白い息を吐きながらキーン キーンと森に響き渡る声で鳴いていた。
なんとも物悲しく、ふと、百人一首の「奥山に紅葉踏みわけ 泣く鹿の声きくときぞ
秋はかなしき」と思い浮かべた。1000年以上前の、歌人の感性を身近に感じるこ
とができた。


平城宮跡を歩く

後日、横浜でパーティーの席上、奈良
の魅力について話題にしている時に
「あんな古臭い町を旅行してもつまら
ない。修学旅行で充分・・・・」と言って
いる40歳代の人がいた。
なんとも嘆かわしい40代。もう50歳に
手が届く歳になっても古都の魅力が解ら
ないなんて・・・・。思わず苦笑いしながら
グラス片手にその人から席を離れてしまっ
た。