No.65「一挙手一投足」
まだ20代の頃地方の病院の整形外科医として勤務していた時に、高齢の先生と一緒に外来を担当していました。その先生は仕事がマイペースだったので少しムッとすることもあったのですが、ある時「若い医師と高齢の医師では守備範囲が違う。若い医師は新しい知識はあるだろうが、経験が足りない。何より人間が歳をとるとどうなるのかがわかっていない。だから高齢者を診るのは高齢の医師の方がよい。若者は若者らしく働けばよい」というようなことを言われました。その時はそんなものかなと思ったのですが・・・。
時が流れて最近よく老いを感じるようになりました。カルテの入力で入力ミスが多くなりキーボードから目が離せませんし、患者さんの話を聞いていても聞き違えて「先生、違いますよ。」と言われることが多くなりました。歳をとると困り事が増えるようです。
しかし、老いることは悪いことばかりではないはずで、例えば禅のことを外国に紹介した鈴木大拙が九十歳を過ぎて「歳を取らなければわからないことがある」と言っています。それは何だろう、高齢の患者さんの中にそのヒントを探していました。ふと一挙手一投足という言葉が浮かびました。一挙手一投足といのは、手を挙げて足を踏み出すということで細かな一つ一つの動作の意味です。歳をとると誰でも動作が緩慢になります。早く動かす筋肉が衰えるからと言われていますが、急な動作をすると痛みを感じることが多くなるので、自然と慎重にゆっくり動いていることもあると思います。
患者さんの中に90歳すぎても筋力がしっかりして痛みを訴えない人がいましたが、その動きはゆっくりではあるが洗練されているなと感じました。椅子にどすんと座る患者さんはいかにも痛みが出そうです。そこで考えたのは、歳をとると一挙手一投足を大事にしなければならないのではないか、そうすることで元気で長生きできるのではないかと。一挙手一投足、つまり細かい日常のことが実は大事なのだということを老いた身体が教えてくれるのではないかと思いました。自らを顧みて、若い時は細かいことは気にせずに突っ走っていました。これからは一挙手一投足を大事にしていきたいと思います。
時が流れて最近よく老いを感じるようになりました。カルテの入力で入力ミスが多くなりキーボードから目が離せませんし、患者さんの話を聞いていても聞き違えて「先生、違いますよ。」と言われることが多くなりました。歳をとると困り事が増えるようです。
しかし、老いることは悪いことばかりではないはずで、例えば禅のことを外国に紹介した鈴木大拙が九十歳を過ぎて「歳を取らなければわからないことがある」と言っています。それは何だろう、高齢の患者さんの中にそのヒントを探していました。ふと一挙手一投足という言葉が浮かびました。一挙手一投足といのは、手を挙げて足を踏み出すということで細かな一つ一つの動作の意味です。歳をとると誰でも動作が緩慢になります。早く動かす筋肉が衰えるからと言われていますが、急な動作をすると痛みを感じることが多くなるので、自然と慎重にゆっくり動いていることもあると思います。
患者さんの中に90歳すぎても筋力がしっかりして痛みを訴えない人がいましたが、その動きはゆっくりではあるが洗練されているなと感じました。椅子にどすんと座る患者さんはいかにも痛みが出そうです。そこで考えたのは、歳をとると一挙手一投足を大事にしなければならないのではないか、そうすることで元気で長生きできるのではないかと。一挙手一投足、つまり細かい日常のことが実は大事なのだということを老いた身体が教えてくれるのではないかと思いました。自らを顧みて、若い時は細かいことは気にせずに突っ走っていました。これからは一挙手一投足を大事にしていきたいと思います。