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漢方編その2 仁とは

 漢方診察時、患者さんの下腹の中央に力が抜けている状態を小腹不仁といいます。腎の力が落ちている、つまり腎が虚している所見として八味地黄丸などを処方します。今回は医は仁術などの表現でも使われる「仁(じん)」の話です。私が漢方の勉強で習ったのは「仁は痛みがわかること」でしたが一般には仁は人の気持ちがわかることとされています。

 西にウクライナの戦争、東にコロナの疫病と大変な時代です。ウクライナではまさに仁義なき戦いが繰り広げられています。激しい攻撃を受けていたマリウポリの製鉄所要塞がウクライナの戦闘任務完了ということで多くの兵士が投降しました。昔のように敵を引きつけるために最後の一兵まで戦えという悲惨な事態にならなくて良かった。ブチャなどの戦争犯罪で野蛮国の烙印を押されたロシアですが、マリウポリでは投降兵士を丁重に扱って文明国であることを証明して欲しいものです。

 ウクライナの市民の中にはまだ戦えるのになぜ投降するのだという人もいたようですが、ゼレンスキー大統領は「英雄たちが生きることはウクライナにとってなにより大事だ」と降伏を認めました。雨あられのように白リン弾の降り落ちる製鉄所で頑張れば時間稼ぎにはなるでしょうが、全滅は時間の問題です。国のために命を投げ打つのが兵士ですが、その死には本人や家族の痛みがあります。戦争の勝利も大事ですが、何をやっても勝てば良いということにはなりませんし、そもそも勝てません。それを考えるとまことに仁にかなった判断だと思います。一方のプーチン大統領はロシア軍の兵士が欧米の最新兵器の餌食となってバタバタと倒れていくのに軍事作戦をやめる気配はなく、まして相手の国の市民が何人死のうが悲しもうがお構いなしで不仁の人だなあと思います。人の痛みを考えているようでは指導者にはなれない国なのかもしれません。そんな人が選挙で大統領に選ばれて今いるわけです。思えばヒトラーも民主的な選挙の手続きで選ばれた人です。他山の石とせねばなりません。

 先回中国のゼロコロナは無理だと書きましたが、まだ頑張っています。中国シンパといわれたWHOの事務局長も忠告していましたが改める気配がありません。不思議に思っていましたが中国ではコロナが蔓延すると死者が百万を超えると予測されているとのことでした。人口十億の国ですから毎年一千万以上死んでいるのでしょう。しかし、疫病は国の責任が大きいのでゼロコロナはやめられないのかもしれません。それでも数千万の人々を自宅に閉じ込め続けるのは無理がありますし、果たしてそのやり方でゼロまで下がるのかという疑問もあります。そんなことを考えていたら、北朝鮮でコロナ患者が急増しているとのこと。瞬く間もなく発熱患者が100万を超えました。医療が遅れているようですので、死者がどれほど出るか心配です。核実験やミサイル発射は止めてその金で医療を充実した方がよほど人民のために良いと思うのですが・・・。

2022年05月19日

漢方編その1 過ぎてはいけない

 先だって「先生、仕事が忙しくて疲れるので補中益気湯を下さい。」という患者さんが来られました。診察しましたが、補中益気湯を使うような兆候はありません。補中益気湯は、中国の名医であった李東垣(リトウエン)が作ったとされる漢方薬で、元気をつける薬ですが、全身に倦怠感が強い病人に使うもので、仕事をやりすぎる人が飲む、スタミナドリンクではありません。「あなたには必要ありませんね。」と断りましたが、「一度試したいんです。お願いします。」と懇願されて、他医で長期に処方されてもいけないので「では数日飲んでみてください。具合悪くなったらやめなさいね。」と処方しました。同じような人が何人か来ましたが、また下さいという人は1人もいませんでした。実は私も試したことがありますが、健康な時は効果はありませんでした。

 漢方薬には足りないものを補う薬と、余計なものを除く薬があります。
補中益気湯は「気」の不足を補う薬ですから、不足していない人が飲むと気が強くなり過ぎて体調を壊します。過ぎたるは及ばざるとは違う問題を起こすわけです。今の世の中サプリメントが大流行りです。しかし何でも補えば良いわけではなく、特に昔から患者の治療に使われた漢方薬は効くだけに飲み過ぎてはいけません。よく効く薬は、強い効果があるからです。病気の時だけ使うのが正しい。ちなみに江戸時代にも同様の問題があったからでしょうか、津田玄仙という漢方医が補中益気湯を使っても良い症状として①手足の倦怠感②言語軽微③眼精無力④口中生白沫⑤失食味⑥好熱物⑦臍の上の動悸⑧脈散大無力を上げています。このうち2、3の兆候があれば使ってよいと伝えれています。補中益気湯はコロナ感染後遺症の倦怠感にも有効な薬です。もちろん症状が合えばですが。
 最後に老婆心ながらスタミナドリンクの飲み過ぎにも気をつけましょう。食べ過ぎ、飲み過ぎ、働き過ぎ、遊び過ぎ、他何でも過ぎたものは健康によくありません。

 ウクライナでロシア軍が一部退却してその後に虐殺された死体があったとのことです。国際的な法医学の調査が行われれば事実は現れるでしょうが、多くの証言もあり犯罪行為があったことは事実のようです。武器を持った軍人が何も持たない市民を殺すことは犯罪です。ロシアが危ないのは「我々は違法なことはしていない。」と正当化していることです。法律は国が決めることでいつも正しいわけではありません。イラク戦争に従軍した米軍の士官が「法的に正しいことと倫理的に正しいことで迷ったら倫理的に正しいことを選べ。」と言っていたことを思い出します。軍人は人を殺す職業であってはいけません。人を死に至らせる武器を与えられるのですから高い倫理観が求められます。虐殺した遺体を放置したのはウクライナへの見せしめかもしれませんが、完全に逆効果でロシアの敗北が決定的になったと思います。今回のことを教訓に戦争は最後にして欲しいものです。

 コロナ感染者がまた増え始めました。まことにしぶとい。中国はゼロコロナで頑張っていますが、人口2000万の都市をロックダウンし続けるのは無理があります。賢い中国人のことですから上手い解決策を見つけるでしょうが、ウイズコロナになったとして中国製のワクチンの効果が十分か注目しています。


2022年04月05日

No.57 コロナとの戦い42  春は模様替えの季節

 雪も降ったりしましたが、桜も開花しました。春です。動物たちも冬眠を終えて動き出す時期です。この時期は学校の卒業、入学、会社の入社、退社、国の財政の区切りなど生活が大きく変わります。松田整形外科も新しく先生が加わることになり、私の外来も木曜午後と金曜午前中に変更になりました。4月から木曜の午後は漢方と鍼の専門外来となります。他のクリニックでも漢方外来をやっていましたが、そちらは予約制で一時間に4人だけ患者を診ていました。本格的漢方の診療は、しっかり問診して診察しながらいろいろお話して病気の原因を探り、時に鍼灸の治療をしながらその反応を見て治療を続けるので、時間がかかります。今までは時間をかけずにそれなりに効果が上がっていたのですが、これからはさらに診療の質を上げていけるのではと思います。これを機に「後藤先生の部屋」を模様替えします。コロナとの戦いシリーズは一旦終了して、漢方診療の話題を中心にしていきたいと考えています。そのほかコロナなど時々の話題を付録でつけようと構想を練っています。引き続きご愛読よろしくお願いします。

 さて、コロナは落ち着きつつありますがまだ油断はできません。自然変異か人工的変異かわかりませんが人類の対策をくぐり抜けて変異を続け戦いは続くでしょう。コロナを完全に封じ込めようとしている中国で患者が増えているのは気になります。制御不能となれば、かつての武漢が中国全土に広がり大惨事となります。日本でも同じことで、喉元過ぎれば熱さを忘れるではいけないので、常に事態が悪化した場合の対処を準備しつつ経済を戻さないといけません。いえ、戻るのではなく、新しい持続可能な生活を創り上げねばなりません。

 他方ウクライナでの戦争は、平和への道筋が見えず、殺し合いの惨状となっています。
ロシアは以前チェチェンで人口が半分に減るまで殺戮を行なって住民の戦う意志を奪ったそうですが、ウクライナの抵抗は強く、世界からの支援もあるので、あとどれだけ人が死ねばいいのか、どれだけ家を失って難民となるのか検討もつきません。ウクライナにしてもNATOは来てくれず、ロシアの戦意を奪うためにはロシア兵を殺し続けねばなりません。おまけにロシアは自国の軍人が死なないようにシリアから傭兵を雇ってきましたので、終わりはますます見えずまるで地獄の様相を呈しています。最後は生物化学兵器や核兵器の使用も考えるでしょうが、報復合戦になれば死者の数は数万、数十万、数百万と増えていきます。もはや正気の沙汰ではなく世界全体に波及することも考えられます。どこかでは正気に戻ることを期待しますが、ごく少数の人類が生き残って新しい世界を創るというSFのような話になるかもしれません。そんなことを考えると気が変になりますので、ここは落ち着いて事態を静観してとりあえず目の前のことをやるのがよいでしょう。

 それでなくても、地震や大災害の危険はあります。先だって横断歩道に車が止まっていて歩行者の信号が青になったので渡ろうとしたらいきなり車が動き出して危うく轢かれそうになりました。毎日のほほんと生きていますが、実は一寸先は闇で何が起こるかわからない、しかし心配してばかりでは生きるのも大変ですから、運命は神仏にお任せして生きていくのがよいというのが先人の知恵かと思います。

 大変な時代ですが、長い人間の歴史ではそういうこともあると考えて、前を向いて行きましょう。


2022年03月25日

No.56 コロナとの戦い41  ウクライナの戦争とコロナ再拡大

 最近患者さんから「ニュースを見ても戦争のことばかりでしょう。怖くて体調が悪くなります。」という声を聞きました。診察してみると冷えが強くなっているようです。近くに爆弾が落ちたり、戦車が爆発する映像をみると交感神経が興奮して、血管が収縮するせいかもしれません。いつも通り足湯をお勧めしますが、その前に「戦争のニュースが原因なら見ないほうがいいですね。少なくともテレビは見ずにラジオでニュースを聞くようにしてはどうでしょうか。」と提案しました。津波の時もそうですが、体調を悪化させるような情報からは距離を置くのが賢明です。遠くで起こっていることで自分に危害が加わることはありません。

 コロナも大変ですが、それ以上に今後に大きな影響を与える戦争が今続いています。
 ロシア軍の報道官が「アメリカとウクライナはコロナウイルスの生物兵器研究をやっていたことが判明した。」と発表しました。これに対して米国はすぐに否定して「ロシアが生物化学兵器をウクライナで使用する可能性がある」指摘しました。核兵器や化学兵器は自然界にないものが突然現れるので使えば証拠が残ります。その点生物兵器は元々自然界にあるものを使うので果たして兵器として使ったのかわからない。武漢で始まった今回のコロナも生物兵器であったかもしれませんが、証明することは困難です。ロシアは旧ソ連時代に生物兵器を研究しており、生物戦能力は高いと考えられます。しかし、実際使用されるとすると私は使われるのがウクライナではなく、ウクライナを支援する国ではと心配しています。実際ウクライナを支援するNATO諸国はコロナ後に向かって、マスクの着用義務をなくし始めており格好の標的です。

 日本は米国に同調する形の経済制裁に加わりました。外国企業がロシアから撤退する動きが加速し、ユニクロも当初衣類は生活必需品と事業継続の方針でしたが、休業することになったようです。ユニクロには日露友好の旗を掲げて核兵器反対とだけ意見表示して戦争中もロシアで頑張ってほしいと思っていたので残念です。当然ロシアから非友好国とされ、日本もウクライナ軍に防弾チョッキなどの支援を行い、ロシアも北方領土でミサイル演習を行うなど日露関係が悪化しています。つまり日本も攻撃対象になりうると考えます。日本ではワクチンを接種していない人が5人に1人の割合でいるので、攻撃を受けるとコロナが再拡大するでしょう。オウム真理教事件でもありましたが、ウイルスを含んだエアロゾルを散布することで感染を広げることができると考えられます。特定の施設とか自衛隊などでの異常な集団発生についてその動向を調査する必要があります。(疫学調査)日本ではコロナ患者数が減少傾向にあるようですが、自然でなく人為的に感染する可能性を考えて、今こそマスク着用、換気などの感染防護の努力は強化した方が良いでしょう。戦いに勝つ秘訣は敵の不意をつくことであり、不意を突かれると負けます。


2022年03月14日

No.55 コロナとの戦い40  悲しい戦争

 ウクライナでの戦闘が始まって3日が経過しました。最初独立した国から支援を求められて平和維持のために軍隊を出すのだから東部だけかと思ったら、一気に首都に侵攻して国ごと取ろうとしていることには呆れました。ロシア語には安全保障という言葉は危険がないと表現すると聞いたことがあります。危険つまり敵を完全に無くさなければ安全ではないとのことであればウクライナ軍の完全な武装解除が目的となるでしょうが、それでは非戦闘員である住民を巻き込む戦争の敷居が低すぎます。NATO諸国がウクライナ支援のために武器供与するとのことですが、それだけでNATOとロシアの全面戦争になりかねません。

 当初圧倒的戦力差から首都キエフの陥落は時間の問題と言われていましたが、ウクライナ軍は容易に崩れませんでした。その理由は欧米から供与された対戦車ミサイルが戦果をあげているためと言われています。私が自衛隊に入隊した頃は、地上戦闘の勝敗を決めるのは戦車であると考えられていました。当時のロシアはソ連として西側諸国の対峙しており、ベトナム戦争でアメリカが敗北したこともあり、いずれ日本にも侵攻してくるのではと恐れられていました。圧倒的に強力なソ連の戦車師団を貧弱な日本の自衛隊でどう守るか、演習場で戦車との戦い方の教育があったのですが、まず横から近づいて戦車の車輪に材木を挟んで動けないようにして、止まったところで砲塔から手榴弾を投げ込むというもので、思わず「本当ですか?」と目を丸くしたものです。今の若い人が聞けば大笑いするかもしれませんが、当時は真面目にそのような訓練をして、もし戦車が来れば命がけで戦ったでしょう。今も私は笑えません。そんな戦い方が変わったのは1973年の第4次中東戦争です。それまでイスラエルの戦車に負け続けであったエジプト軍がソ連から提供された対戦車ミサイルで次々にイスラエルの戦車を破壊して大損害を与えました。その後、堅い装甲に守られていても戦車は安全とは言えなくなり、走る棺桶と悪口をいう人もいました。対戦車ミサイルでどれくらいロシア軍に被害が出ているかわかりませんが、ウクライナ軍の発表のように3000人以上死んでいれば勝つのは容易ではないでしょう。損害が大きくなれば戦いをやめるのが正しいのですが、ロシア軍には勝つように命令が出ているはずです。対戦車ミサイルが狙えないように徹底的に街を破壊して前進するか、戦術核兵器を使用するかもしれません。どっちにしても多くの市民が巻き添えとなります。悲しいことですが、見守ることしかできません。

 日本ではコロナ患者が頭打ちになってきていますが、より感染性の高い変異ウイルスの報告もあります。ワクチンを3回打っても感染しますし、症状も出るようです。内服薬も増えていますが、この戦いを終わらせる最終兵器とまではなっていません。持久戦です。ウイルスは変異を続けるが人類も新たな治療法をあみだす。もしウイルスが致死性の高い変異を起こせば人類は一気に劣勢となりますが、それでも戦い方はあります。最後まで諦めてはいけません。

 コロナと人類の戦いが続いているのに戦争が始まったのは悪いニュースです。ただでさえ苦しい経済にも悪影響があるでしょう。政治も不安定になるかもしれません。それらを全て受け止めてしっかりと前に進んでいきましょう。


2022年03月03日

No.54 コロナとの戦い39  祭りの後には

  多くの感動と残念さを残して冬季オリンピックが終わりました。オリンピック期間中は戦争をやめようと紛争地域に休戦が求められていましたが、終了とともに現実の戦いが始まろうとしています。21世紀の今、地政学的理由でロシアがウクライナに侵攻することは考えにくかったのですが、祭りが終ってすぐに動きました。内部の紛争を利用して平和を維持するために軍隊を派遣するという間接侵略の常套手段です。反撃すればそれを口実に一挙に大軍を送りこんで国を乗っ取るという筋書きも見えます。乱暴ですが戦争が始まってしまうと止めることは困難です。ウクライナはロシアと同じ国と言い始めたところから徐々に土地を奪っていき最終的に丸ごと併合しようという意図もあるかもしれません。ウクライナでロシアの暴挙を許せば世界秩序が崩れます。日本周辺でも台湾、尖閣など同様の危険は高まっており、準備と覚悟が必要です。北京オリンピックまでは平和だったなぁと懐かしがるようになるかもしれません。残念ですが前を向かねば。

 一方コロナとの戦いは新しい局面を向かえており、新しい戦い方が求められています。感染経路が飲食の場から保育所、学校を通じて家庭内に変化しており、従来の措置では防げない。感染者が多すぎて濃厚接触者を隔離すると動ける人が足りなくなります。以前お家でマスクと書いたことがありますが、可能なら実施すべきでしょうが、短期間ならともかく、長期に継続することは困難です。ワクチン3回目も頑張ってやっていますが、重症化は抑えれるかもしれませんが、感染自体を防ぐ効果は弱い。ですからまず重症化する危険のある高齢者、基礎疾患のある人の接種を急ぐべきです。重症化する確率の低い基礎疾患のない若い人や小児のワクチン接種は後回しか必要ないかもしれません。科学的に判断していたずらに完璧を期すのではなく早く最大の効果が得られるように戦力を集中するのが勝利のために必要です。

 まだ寒さも続き、コロナも終わりが見えません。しかし、必ず春はくるし、どんな疫病も必ず終息します。目の前の困難を乗り越え明日に向かって希望を持って生きましょう


2022年02月24日

No.53 コロナとの戦い38  危機の今やるべきこと

 新しい年が始まってコロナ感染が急拡大しています。感染しているのは、今までとは違うオミクロン株ですので、今までとは違う対応が必要です。まず感染力が非常に強い。今までと同じようにやっていては感染は防げないようです。事実感染が急拡大しています。次にワクチンが効かない。3回目の接種が有効と言われていますが、間に合いそうにありません。幸い重症化する人は少ないようです。治療法も進歩しており重傷者があふれて医療崩壊を起こす危険は低いでしょう。しかし、無症状または軽症の患者が急増することによりエッセンシャルワーカーが出勤できなくなり社会機能を維持できなくなる可能性は高く、実際沖縄では救急医療に支障が出始めているようです。病気になっても助からない、これは社会の危機です。

 今やるべき事は自ら感染者にならないように最大限の努力をして、社会的責任を果たすことです。この危機が去るまで感染者がいるかもしれない状況で、マスクを外すことは控えた方が良いでしょう。以前のテイクアウト方式で食事する方が安全です。集団で食事する場合は沈黙が必須です。若い頃米国の空軍士官学校を見学したとき、大食堂で全員一言も発せず食べ物を口に運んだら口を閉めて手を置きよく噛んで飲み込んでから次を食べていました。そんな米軍の中でも感染が拡大したのは驚きです。感染力が強ければ何をやってもでしょうが、今はできることをやるしかありません。そして戦いで最も大事なこと、それは戦場を離脱せず自分の任務を続けることです。エッセンシャルは絶対必要なという意味です。いなくなると困ります。最大限の努力をして感染を防ぎましょう。自分はエッセンシャルでないという人もそれぞれの立場で感染を広げないように、患者にならないように努力しましょう。全員で力を合わせてこの危機を乗り切りしましょう。


2022年01月11日

No.52 コロナとの戦い37  転ばぬ先のシコ

 本日大リーグの大谷翔平選手がMVPを受賞しました。痛快なことです。日本では大相撲九州場所が始まりました。まだ観客は少ないですが日常が戻って来つつあるように思います。

 歳をとってくると少しの段差でも転ぶことが多くなってきます。どうしたら転ばなくなるか、それには目の前の相手を転ばせることで勝負をつける相撲が参考になります。土俵から押し出しても勝ちではないかとのご意見もあるでしょうか、それは体重で決まります。大きな相手に押されてもその力を利用して転ばせて勝つ相撲の醍醐味は他にはありません。折りしも数々の大記録を塗り替えた横綱白鵬が引退しました。モンゴル人の身体の丈夫さもあるのでしょうが、その偉業が達成できたのは誰よりも多く四股(シコ)を踏んだからと言われています。

 四股とは何か?相撲の超人的な技を可能にする基本が四股であるとのことです。これは松田院長の弟さんで長く力士をされ、シコの研究から「転ばぬ先のシコ」など多くの著作のある元・一ノ矢さんの本からの受け売りです。ご興味のある方は一度読んでみてください。目から鱗で面白い。相撲の取り組みも四股を理解して腰の働きに注目すればまた違った面白さがあります。何より四股は私たちの生活にも有益です。四股をやると転ばなくなります。相撲の技の掛け合いで転びそうになるのをこらえるのは大臀筋や大腿四頭筋のような大きな筋肉ばかりではなくその奥の股関節周囲にある小さな筋肉が大事です。詳しくは本を読んで欲しいのですが、股関節周囲の小さな筋肉が強くなると股関節がガッチリと骨盤にはまり込んで一体となってバランスを取ることができます。そこが緩むと簡単に転んでしまいます。高齢の患者さんは少しの段差につまずいて、崩れ落ちるように転んでしまうことが多い。力士のように踏ん張れないのでしょう。ですから転ばなくするには四股を踏んでこの股関節の奥の筋肉を鍛えることはとても有用です。結論:転ばないために四股の練習をしましょう。簡単にできますが奥が深い。しかも一生懸命やると汗が出るくらい良い運動です。注意として頑張ってやりすぎると痛みが出ますので、足は少しだけあげて毎日10回くらいから始めて続けましょう。せっかくやるなら正しいやり方でやった方が効果があります。

 日本ではコロナ患者が減ってもうどこかに行ったような感じですが、欧州や隣の韓国ではまた患者が増えてしかも重症者も増えています。ワクチンを接種した人の効果が切れてブレイクスルー感染が起こっているようです。他国で起こることは日本でも起きるでしょう。去年も年末患者が急増しました。経済対策も大事でしょうが、コロナ感染が拡大してしまえば社会に大打撃となります。今回こそは適時適切に準備して国としてこの戦いに勝利して欲しいと思います。四股は邪悪なものを地面に押し込めるために行われた神事であったとのことです。四股を踏みながら感染対策を怠らず、抜かりなく寒い冬に備えましょう。



2021年11月22日

No.51 コロナとの戦い36  日常は戻るか?

 8月は非常に厳しい戦いが続いていましたが、9月になって突然コロナ患者が減少して、日常の生活が戻りつつあります。

 患者が減少した理由は色々と言われていますが、1番はワクチンの接種が進んだことだと思います。1人感染しても周りの人がワクチンを打っていれば感染は広がりません。ワクチン集団接種の予診の仕事もやりましたが、摂取会場の熱気は凄まじいものがありました。問診を丁寧に行おうとすると事務の人が「先生、外でたくさん待ってるんです。もう少し手早くできませんか。」とプレッシャーをかけてきます。中に1回目のワクチン接種で強い副反応が出た人がいて、全身の皮膚が赤くなって剥がれてしまったと言っていましたので「2回目はもっと強い反応が出るかもしれないので見合わせた方が良いのではないでしょうか?」と言ったところ、「このウィルスとの戦いは、人類の存亡をかけたものです。家族もいるのでワクチンを打ってください。」と懇願されました。仕方なく、もし副反応が出たら速やかに病院に行くようにと言って許可しました。その人が出て行ったすぐ後にまた事務の人が来て「先生、早くしてください!」松田整形外科の外来も忙しい方だと思いますが、ここに比べれば大した事は無いかと思いました。ワクチン接種を進めた政治家の功績もあるでしょうが、一番は何とかコロナに勝とうという国民の頑張りであったと思います。

 まだ安心はできませんが、今回は日常診療のお話をします。外来にはたくさんの方が骨粗しょう症の治療で通ってこられます。先だって他の病院できちんと骨粗しょう症の治療を受けていたのに圧迫骨折した患者さんが来られました。骨密度を測ってもらったのですが正常でした。不思議なこともあるものだと、患者さんに話を詳しく伺いましたがなぜ骨折を繰り返すのか分かりません。理由がわからないとまた骨折してしまいます。私が師事していた先生は遺伝性の骨の疾患の専門でしたので、「もしかして、ご家族に骨折しやすい人はいませんか?」と聞いたところ「いえ、家族に骨の病気はいません。」「骨の病気はない、では何の病気があるのでしょうか。」「肺の病気です。肺気腫とか」「え、肺気腫!ではタバコを吸うのですね。」「ええ、吸っています。」「それだ!喫煙は骨折しやすくなるんですよ。原因がわかりました。タバコをやめましょう。」と鬼の首でも取ったように、喜んで言ったら、「タバコはやめられません。」とのこと。しばらく押し問答が続きましたが、ひとまず時間をかけて禁煙を考えてもらうことにしました。理由は一つではないのですが、タバコを吸うと骨粗しょう症になりますし、骨折もしやすくなります。整形外科の手術の前にまず禁煙しましょうと言うのは、手術後に骨が治りにくいためです。タバコを吸っても良い事はありません。タバコをやめればいいことばかりです。やめられないと思わせているのはタバコに含まれている依存性の強い成分です。脳をタバコから解放して健康になりましょう。


2021年10月25日

No.50 コロナとの戦い35  アフガニスタンの混乱と日本のコロナ

 コロナとの戦いが重要な局面を迎えている時に、20年にわたったアメリカのテロとの戦いが終わりました。2001年9月11日にニューヨークの摩天楼にジェット機が衝突するシーンは衝撃でした。その日から世界を巻き込む長いテロとの戦いが始まりました。一時日本の自衛隊もアフガン派遣が検討されましたが、現地で活動されていた中村医師が国会で自衛隊派遣は有害無益と証言され陸上自衛隊は派遣されないこととなりました。現在の状況を見れば、その後”戦死”された中村医師の貢献は非常に大きい。感謝の言葉もありません。これからの世界はまたまた混乱することとなったアフガニスタンの問題にどう取り組むかという難題に直面しますが、ロシアや米国はアフガニスタンの人々の恨みをかっています。そこで直接軍隊を派遣しなかった日本に活躍の機会があると考えます。

 それにしても米軍の撤退に伴う混乱は、何とかならなかったのか。ソ連軍もアフガニスタンから撤退しましたが、軍が全て引き上げて最後に司令官が国境の橋を渡ったことと差が大きい。こんなに早くアフガニスタン政府軍が崩壊するとは思わなかった、いわゆる想定外ということでしょうが、いずれ崩壊するとは想定していたようです。当然起こることであっても変化が急すぎると大きな問題となります。

 翻って日本のコロナ対策ですが、ワクチン接種が進み総理も光が見えると言っておられます。ワクチンがコロナに有効であることは間違いなく、国民の多くがワクチンを接種すれば危機的状況は終わるでしょう。それまでどう凌ぐか?それまでに起こる変化はどの程度急なのか?ただ今できることをやって待てば良いのか?政府の責任者と専門家との間で意見が分かれています。専門家が何を助言しようが決断した指揮官が責任をとるのが、戦争の原則です。責任はどうあれ、感染が広がり重症者が増え続け、災害級の医療崩壊の中では、各人一人ひとりが自らと家族、同僚の健康と命を守るしかありません。コロナの予防は当然として今は通常の医療も困難となりつつあります。そんな時は予防が肝心です。病気や怪我をしないように、仕事は無理をせず、安全に気をつけて、睡眠と栄養を十分に取りましょう。コロナを恐れて外出しない人が多いようですが、家の中でも体を動かして体調を整えましょう。ラジオ体操、テレビ体操、ヨガ、何でもいい。


2021年08月19日

No.49 コロナとの戦い34  家でもマスク!

 お盆を過ぎてもコロナ感染者の増加が止まらず、働き盛りのワクチン接種は間に合いそうもなく、重症患者が急増して医療崩壊が現実となりました。中国の武漢やインドで見た医療現場の混乱が、この日本で起ころうとしていいます。国が感染拡大に有効な手を打てないなら、ワクチンがまだの人は自分の身は自分で守りましょう。外出を控えるのは当然として、猛暑の夏はエアコンで部屋を締め切り換気しないので危険です。コロナは症状がない時も感染力が強いので、たとえ家族であっても感染している可能性を考えて家の中でもマスクをつけるべきです。以前ならそんなことできる訳がないと笑われましたが、今は笑い事ではありません。実際家庭内感染が増えています。外で起こることは家の中でも起こるのです。

 医療体制が準備不足のため感染者の多くは自宅で療養することになりました。当然ながら同居する家族はマスクをしないと感染します。病院が足りないなら家の中を病院のように使うしかありません。感染症は予防しながら治療します。家庭では予防しながら生活する、それがコロナとの戦いに勝利する術です。

2021年08月19日

No.48 コロナとの戦い33  熱中症にも正しく備えよう

 長く続いているコロナとの戦いは苦戦を強いられています。埼玉県の感染者数が1000人を超え、さらに上昇する勢いです。緊急事態を宣言しては解除することを繰り返し、国民に緊張感を生み出すことができなくなっています。感染力が格段に強いインド由来のデルタ株への置き換わり、猛暑の夏でマスクをつけるのも息苦しいのかマスクなしで歩いている人の増加、夏休みで人出の増加、唯一の有効な対策であるワクチンは国産ではないので供給が追いつかずなどなど悪条件が重なって、災害規模の医療崩壊が想定され入院患者のトリアージが行われようとしています。いろいろ問題はありますが、なんとか直面する危機を乗り切らねばなりません。

 一方今年の夏も猛暑で、熱中症が増えています。予防法は、テレビでも繰り返されています。汗をかくので定期的に水分を補給するということは常識でしょう。先日手脚のしびれで来られた患者さんに熱中症ではないかと聞いたところ、お茶を2リットル飲んでいるからということでした。どうも整形外科の病気ではなさそうなので、熱中症予防の塩飴をなめてもらったところ、しびれがなくなりました。人間は暑いと汗をかきますが、汗には塩分も含まれます。汗で水だけでなくナトリムなどの塩分が失われるので、しびれの症状が出たのでしょう。筋肉が痙攣することもあります。この症状は熱中症では軽い方でぐったりして反応が悪くなれば重症で命に関わるということを自衛隊で先輩に教わり、そのまま後輩に教えました。熱中症予防のために水分とともに必ず塩分も補充しましょう。

 猛暑下のコロナ感染爆発ですが、マスクを正しく着用出来るようになるまでは人に近づかず会話を控えるしかありません。現在までのところワクチンは重症化を予防できるが、感染自体は完全には防げません。この夏は君子危うきに近寄らずです。

 外来の呼び出しもマスク越しで聞き取りにくいこともあるようですが、どうぞご容赦ください。

2021年08月11日

No.47 コロナとの戦い32 これからどうする?

 大型連休と緊急事態宣言などでコロナが収まるかと期待しましたが、コロナ患者特に重症患者が増加しています。今回は、イギリス変異種の感染が広がっていると言うことで、はじめの頃のような高齢の合併症を有する人が重症化し亡くなると言うことではなく、若くて病気を持っていない人も重症化しているようです。以前から繰り返しているように、コロナが落ち着いているときに医療体制を充実せねばならないわけですが、残念ながらできていません。その結果すでに医療崩壊が起きかけているところもあります。医療が危機に陥ると経済を犠牲にして緊急事態宣言なり蔓延防止措置なりで患者数を抑制することが繰り返されています。しかし、連休中はたくさんの人が出かけていました。今回は変異ウイルスで感染力も病原性も強いので、今まで同様に押さえ込むことができるのか心配です。

 ではこれからどうなるのか?

 ワクチンはそれなりに効果があるようです。しかし免疫が長く続かないので、何回も接種しなければなりません。特効薬はまだできません。ウイルスは激しく変異を繰り返すので、ワクチンや薬についても容易に抵抗性を獲得するかもしれません。アフターコロナの時代が来るのはもう少し先になるかもしれません。それまでは簡単に言えば重症化しやすいインフルエンザが季節に関係なく流行していると言う状態が続くと言うことです。そうなると新しい生活様式を真剣に考えなければなりません。飲み会で肩を抱き合って大声で騒ぐのは過去の事になるでしょう。飲酒を伴う食事を提供する店は今よりも少なくなるでしょう。宴会という言葉は死語になるかもしれません。公共の場所での酔っ払いは犯罪となるかもしれません。酒が飲めない訳ではないようです。酒の飲み方が変わって仕事を変えなければならない人もいるでしょう。悪いことばかりではなく、重症化防止には適度の運動による健康的な生活が良いようですので、みんなが運動して健康寿命が伸びるかもしれません。それにしてもマスクをつけて会話しないといけないのはちょっと困ってしまいますが仕方ない。

 感染力の強いウイルスを防ぐために一時診察室でプラスチックのフェイスシールドをつけていましたが、患者さんとお話が難しく診療に支障があるため今は外しています。患者さんの中にはマスクで話すのは嫌なのか、診察室に入ったらマスクをはずしてしまう人がいますが、感染防止のためにマスクはつけたままお話し下さい。顔や舌の状態を見る必要があればこちらからお伝えします。コロナ時代の新しい受診様式です。

 以前の生活に戻ろうとするから我慢が強いられるのです。日常になってしまえばそれは我慢とは言いません。コロナとの戦いが長期戦ならば、過去の厳しい時代をくぐり抜けた先人の忍耐力を見習うしかありません。


2021年05月18日

No.46 コロナとの戦い31 ふたたびの春あと幾たび

 コロナとの戦いが始まってほぼ1年が経過しました。当初情報が少なく、何をどうしていいか分からない状態が続きましたが、1年のうちに情報が蓄積し戦い方が定まってきたような気がします。2回目の緊急事態宣言が終了し、街に人が増えてきました。時期を前後して感染者数が減少から増加へと変化しています。政府専門家の強調してるように、酒を飲んで大声を出すというのが1番のリスクのようです。病院や介護施設等でクラスターが発生していますが、これは完全に防ぐことができません。防ごうとすれば患者を排除するしかありませんが、それはできません。今の日本で感染を防止するためには、歓楽街や飲食の仕事に就いている人には気の毒ですが、酒を飲むな、大声で話すなと言うことを徹底するしかありません。それでコロナ感染が抑制され、経済が回復するのであれば、社会のコストは安いものです。

 コロナは季節性ですので、暖かくなれば収束するだろうとの予測もありましたがどうも違うようです。ワクチンを打てるようになれば大丈夫との予測もありましたが、ウィルスが変異し感染力を増すばかりではなく、ワクチンの効果も弱くするとの報告があり、楽観はできないのが現状です。コロナとの戦いは長期化するかもしれません。コロナを制御できないのであれば、十分な医療を受けられるように医療体制を充実するしかありません。戦争になれば一般に働いてる人に戦闘訓練を行って戦闘員の不足を補う方法も取られます。兵士は戦争が終われば用済みですが、医療は平和の時も普通の家庭でも必要な能力です。社会全体として感染症に強い医療介護能力を高めることも必要かもしれません。

 オリンピックの聖火リレーが始まりました。外国からの観衆も来なくなり、経済効果も期待できなくなってます。本来のオリンピックの意義を見直す良い機会かもしれません。オリンピックに限らず、世界は温暖化や環境汚染など人類は存亡の危機に直面しています。経済は大事ですが、経済が全てではありません。一人一人がどうやったら幸せに暮らしていけるか、コロナを機会に見直しが必要になったように思われます。

2021年03月30日

No.45 コロナとの戦い30 「外出を控えて」のなぜ?

 患者数に減少傾向が見られず、さりとて諸外国のようなロックダウンもできず、政府指導者からは外出を控えるようにとのメッセージが繰り返されています。しかし、食糧を買わずに餓死してよいわけがありません。先回の緊急事態宣言では不要不急の外出を控えて人と人との接触を減らすようにと丁寧に説明していましたが、今回は事態が切迫しているためとにかく外出を控えてとの表現が目立ちます。その結果外来で困ったことが起きています。

 「〇〇さん、体調が悪くなっていますね。」「外出を控えろと言うものですからずっと家にいました。」「家で運動していましたか?」「いいえ、あまり」「それじゃあ体調も悪くなりますよね。」

 政府の指示で運動不活発病になってしまったのでは仕方がありません。健康を維持するための外出は認められるべきです。要はコロナに感染しないように抜かりなく外出すれば良いのです。人との距離をとり、念のためにマスクをして、会話もせず、風通しの良いところを歩く。これでコロナになるなら、マスクを外して家に居て窓を開けてもなります。このままでは特に高齢者が大勢要介護状態になってしまいます。それは国民も政府も望むところではありません。「外出を控えて」の理由をよく考えて行動しましょう。

 ところで日本でもコロナウイルスのイギリス変異種が広がっていると報道されました。感染力が強まるとさらなる行動規制が必要となります。これからが正念場です。

2021年01月20日

No.44 コロナとの戦い29 運動不活発病

 コロナとの戦いが深刻な状況となってきました。緊急事態宣言も出ましたが、冬のコロナは感染力が強くなっており今までの経験が活かせるのか心配です。街には先回の緊急事態のような緊張感が感じられず、患者数の増加と病院の逼迫は危機的な状況を示しています。そんな中で仲間の医師達は最前線の開業医から重症者を扱う専門病院まで必死になって戦っています。今までに経験したことの無い現実に直面していますので何が正解かはわかりません。しかし、不安になってオロオロするばかりでは、戦いに勝てません。人からうつされない、人にうつさない感染防御に注意するのは最小限のやるべきことです。感染防御に加えて運動不活発病にも注意が必要です。ジムも外出もコロナが怖くて行けなくなると脚が弱ります。すると今までなんでもなかったことでもアイタッとなります。当然ですが検査しても病気が見つかることはほとんどありません。それですめばよいのでが、転倒したり尻餅をついたりすると骨折など大けがしてしまいます。コロナの時代には自ら進んで身体を動かさないと病気になりケガをします。その上運動不足から肥満になるとコロナにかかると重症化します。心筋梗塞などの危険性も高まります。全然運動しない人はまずラジオ体操で良いので運動しましょう。効果は絶大です。


2021年01月18日

No.43 コロナとの戦い28 コロナと生きがい

 感染が広がり、これまでやってきた日常が送れなくなりました。若い時は宇宙飛行士になったりプロ野球選手になったりなど夢を持つことができますが、人生も後半戦になると何か新しいことをするのも大変ですし、億劫になってきます。そんな中で生きがいは昨日まで送ってきた日常を明日も続けることとなります。

 それを困難にする病気と老化を克服するお手伝いをするのが医師の仕事の1つだと思っています。しかし、今回のコロナ禍では否応なく今まで送ってきた日常を改めて新しい生活を送ることを求められます。外来にはコロナのために外出を控えたり、運動ができないことから体調を崩している人がたくさん来られました。友達と会えないことで表情も曇りがちでしたが、最近は自粛生活に飽きたのか高齢の方の活動性が上がっているように思えます。

 だが、しかし、この季節こそ危険です。外出を控えろとは申しません。人と会う時は必ずマスクをつけましょう。顔を見ながら話していた方も、これからは目と目を合わせてマスク越しに話をしましょう。それだけでコロナは防げます。診察室でもマスクはつけたままにしておいてください。よろしくお願いします。


2020年12月10日

No.42 コロナとの戦い27 医療崩壊の危機迫る

 日本医師会長が三連休を「我慢の3日間」と注意されましたが、街の人出は変わりなく、新幹線も満席でした。その後患者が急増して「勝負の3週間」となり現在に至っています。老人のいる施設でのクラスターも多発して状況は緊迫しています。今までなら感染しない行動でも感染するようになったと考えるべきで、一段上の感染防護が必要です。次に来るのが「試練の三か月」とならないために、今こそ一人ひとりがやるべきことをやり、避けるべきことを避けねばなりません。武漢やイタリアで起こった事が日本でも起こる可能性が高まっています。



2020年12月09日

No.41 コロナとの戦い26 強くなった感染力

 冬のコロナの特徴は感染力が強い事です。
 夏のコロナ感染では夜の飲食が主な感染原因で、家庭内感染は少なかったのですが、最近になって家庭内感染が最も多くなっています。同居していても感染する事例が少ないうちはそれほど怖くはありませんが、家庭内で容易に感染するようになれば、非常な脅威になります。今こそ前に強調していたスマホの消毒など、厳密な感染防御が必要です。コロナに慣れて緩くなっているのであれば気を引き締めねばなりません。冬のコロナは今までとは違うのです。



2020年12月09日

No.40 コロナとの戦い25 決戦の冬来る

 北半球でコロナ感染が猛威を振るっています。日本でも感染者、重症者が急増して、専門家が警鐘を鳴らしていますが世間ではまだ緊迫感がありません。夏はウイルスも穏やかでしたが、冬のウイルスは獰猛です。今までの経験は役に立ちません。日本人で重症化しないのはなぜか議論になりました。清潔好きとかマスクするからとか諸説ありましたが、季節が春だったのが大きかったのでしょう。新しいワクチンは早くても来春以降でしょうから、この冬が決戦の時です。知恵を集めて乗り切らねばなりませんので、後藤先生の部屋を再開します。


2020年11月26日

No.39 コロナとの戦い24 新たな時代へ

 自民党の新総裁つまり新しい首相選びと同時に野党も再編されることとなりました。「自民党の長期政権を許したのは対抗できる野党がなかったからだ。」その通りだと思います。前の民主党に対する失望がいかに大きかったかですが、次回はその轍を踏まないようにしてもらいたいものです。

 振り返ればこのコロナウイルスは人類を滅ぼすものではないだろうが、人類の歴史を変えるものとはなったことは間違いないでしょう。世界に与えた影響はとても大きく日米で株価がコロナショック前に戻ったと言っても実態経済の回復は全く見えません。ちょうど明治維新が黒船来航から始まったように、今後紆余曲折はあるでしょうが、新たな時代が始まりそうな予感がします。時代の流れを戻すことはできません。ただ時代の変わり目の混乱と困難をいかに少なくするかが指揮官の腕の見せ所であり後世評価されるところでしょう。

 当面はコロナ対策が重要となりますが、発生源であった中国では新しい患者が一けたに抑えられています。ワクチンを打つわけでもなく、わずかに自由を制限するだけでコロナ感染は抑えれることは参考とするべきでしょう。その中国が、今後繁栄の時代を迎えるかといえば、欧米との対立が激化しており、これまでのような高度成長は困難となると思われます。コロナをきっかけにあちこちで様々な変化が始まっており、世界は大きく変わりつつあります。

 数年前から異常気象が本格化して、毎年のように猛暑の記録が更新され、スーパー台風が発生するようになりました。乾燥地帯では山火事が多発し、水位が上がって街が沈もうとしているところもあります。科学者の言うように人類の危機は間近に迫っており我々が存続し続けるためには生き方を、社会を速やかに変えねばならないでしょう。そのためのきっかけを与えてくれるのがこのコロナ禍かもしれません。災い転じて福となす。これから様々な困難に直面することとなるでしょうが、我々人類は知恵をしぼり力を合わせて困難を克服して今の繁栄に至りました。今回も、そしてこの先も何とか生き延びて新たな時代を築いてほしいものです。

 整形外科や漢方養生への理解向上を目的に創ったこの「後藤先生の部屋」ですが、今年に入って「コロナとの戦い」が始まりだいぶ違った方向に進んできました。思ったことを好き放題書くことができて松田院長をはじめ関係者の皆さまに感謝しております。またときどき患者さんから「先生読んでますよ。」と声をかけていただきおおいに励みとなりました。長く続けることはそれ自体価値のあることですが、必ず変化が必要です。日本と世界が大きな転換点を迎えると感じる今、一度この「後藤先生の部屋」をお休みして新たな時代に備えたいと思います。長きにわたり御愛読ありがとうございました。皆さまお元気で!

ps 松田整形外科での診療は継続しますので今後ともよろしくお願いします。


2020年09月07日

No.38 コロナとの戦い23 指揮官交代

 先日在任期間が歴史上最長を誇った安倍首相が辞職を表明しました。難病を抱えても最高の治療を行えば首相の激務を長くこなすことができるというのは現代医学のすばらしいところですが、その現代医学をもってしても今年始まったコロナとの戦いの中では指揮官の健康を支えることは出来ませんでした。当然のことでしょうがいくら薬がよくてもそれだけでは健康を維持するのは無理です。半年ほど全く休みを取らなかったとのことですが、それはいけませんでした。たとえゴルフしているところを週刊誌に撮られて「国難にも遊ぶ首相」と悪口を言われても正しい判断をするために十分休養をとるべきであったというのは、歴史の教えるところです。大東亜戦争の勝敗を分けたミッドウェイ海戦で日本の指揮官は不眠不休で頑張りましたが、米国海軍の指揮官は艦橋で本を読むなどリラックスしていました。部下から批判もあったようですが「私の仕事は判断することである。判断が必要な時は呼んでくれ。」と意に介さなかったと伝えられています。そして見事に戦闘を指揮して米軍を勝利に導き、日本帝国海軍は惨敗しました。安倍首相が退任の理由として挙げた「判断を間違えてはいけない」というのは正しい。しかし人間のすることですから間違えることもあります。少なくとも間違いない判断ができる健康状態であることは最高指揮官の責任でしょう。

 今後のコロナ対策をまとめたことを首相は強調していました。PCR検査を増加する、今度こそ実現してほしいものです。重傷者の治療に医療資源を集中する、当然です。指揮官は判断し、命令し、その実行を監督せねばなりません。やるように言ったけれども出来なかったではすまされないのです。今回の危機は初めてのことで今までのように出来ることだけやっていたのでは乗り切れない可能性があります。これから何が起こるかはわかりませんが、新しい指揮官にはこのコロナとの戦いを勝利に導く統率力を期待します。

 以前もお伝えしましたが、今回のコロナウイルスは一度感染して治ってもまた感染することがあるようです。これはつまりワクチンを打ってもその効果が切れれば感染するというので困ったことです。決定打はまだありません。しかし、三密を避けるなど感染防護に力を入れ、医療現場を充実させることでこの危機は乗り切ることも可能であることもわかってきました。この機会に生活様式を変えてみませんか。タバコはコロナの症状を悪化させるので止めましょう。食事時は会話を控えましょう。宴会は・・・しばらくネット上で我慢しましょう。


2020年08月31日

No.37 コロナとの戦い22 ピークを越えて

 今年の夏は暑い。去年もそうだったかもしれませんが、最近の夏は本当に暑い。前回暑い時は麦茶もいいとお伝えしましたが、外を歩いたり、夜冷房を切るとすぐに熱中症になりそうです。 先だって暑い中を歩いていて気分が悪くなり、「こりゃ熱中症だ!へたすると死ぬな。」とあわてました。まず冷やす、そしてせっかくの経験なので体温測定、本当は深部体温でないといけないのですが、腋下でも普段より高温となっており、一瞬コロナかとも思ったのですが前後関係から明らかに熱中症の初期です。幸い以前熱を出して寝込んだ時に買いこんだ経口補水液のOS1があったのでそちらを飲んだら速やかに回復しました。後で同じような症状のあった知人が水を飲んでも飲めないと言っていたのでOS1を勧めたところ速やかに良くなったとのことでした。さすが値段だけのことはあると思った次第です。漢方の外来で最近体調が悪くなった患者さんの原因を詳しく聞いたら「夏バテしないように朝起きたら某スポーツドリンクを1リットル飲んでました。でも飲むときに甘く感じましたね。」と言うので、こちらもOS1をお勧めしました。身体に必要なちょうどよい飲み物は違和感なく吸収することができます。甘く感じるなら糖分が多すぎたことが体調不良の原因ということでしょう。ようやくこの暑さもピークを越えそうですが、残暑は続きます。もし暑くておかしいなと思った時にはOS1をお薦めします。

 コロナの感染者数もピークを越えたとの報告がありました。ピークを越えても平地に降りるわけではありません。山登りをしていて高いところを越えて「やった、頂上だ!」と思ったらその向こうにもっと高い山があってガッカリすることがあります。南半球でのコロナ患者数が増加しており、やはり冬季に猛威を振るう可能性があります。準備は大丈夫でしょうか。PCR検査の精度は7割ということで2回やらないと信用できないようです。つまり間違いが0・3なので2回の検査でその二乗で0.09つまり間違いは1割以下になるから2回検査ということでしょう。この戦争に勝つには検査を多くできるようにせねばなりません。もっと検査できるようにするとだいぶ前から総理も言っているのでさすがにもう大丈夫かと思いますが実際はどうなのでしょうか。人工呼吸器や防護資材の準備も大丈夫でしょうか。前の戦争で敵の物量に圧倒された教訓は生かさねばなりません。武漢でコロナが猛威を振るっていた時中国全土から医療従事者が集められましたが、その応援部隊にはコロナ感染がなかったという報告には正直驚かされました。最高レベルの研究機関では絶対感染を起こさないようになっていますが、にわか作りでしかも数万人規模で感染防護を完璧に成功させたとすれば素晴らしいことです。国家が本気になって資源と人材を投入すれば負けることはないとの実例を中国が示してくれたと心強くなります。

 先のことより今はまず予防です。病院の中では痰の吸引などで咳をすることがあるので感染の危険があります。最近の研究で咳をするのと同程度大声で話をすることでウイルスが拡散されることがわかりました。これからわかることは、マスクなしで大声で話をすることは危険です。小声でお話するのがよろしい。耳が悪いかたもおられますので、そのときは筆談で情報交換しましょう。新しい生活習慣に加えたいものです。

 ピークを越えても山道は続きます。引き返すことも横に降りることもできません。
しかし、この道の先には必ずふもとがあります。そこにたどり着くまで一歩一歩踏みしめて前に進みましょう。


2020年08月25日

No.36 コロナとの戦い21 ほうじ茶と麦茶

 長かった梅雨が明けたと思ったらすさまじい暑さです。先日はアフリカの雨季の到来を告げるようなものすごい雷で、何度も停電して一時災害用の紙カルテを使って診療することになりました。この時期はコロナも拡がっていますが、まずは熱中症にならないように気をつけねばなりません。マスクを外すように言われていますが、外を歩くとマスクをしていたほうが呼吸が楽なくらい空気が熱い。周りの環境をよくみて判断し、行動せねばなりません。

 外来に来られた方に練馬総合病院の中田先生の作成した漢方養生の黄色いチラシを配っています。甘いものを控えるというのが第一ですが、その下に「ほうじ茶◎麦茶×」とあります。一般におなかを冷やして調子が悪くなる方が多いので、おなかを温めるほうじ茶をおすすめしています。しかし暑い夏外で仕事される方は身体を冷やす麦茶もよいと説明しています。このように暑い日が続くと麦茶を飲んでさっぱりとするのもよいものです。とはいえ、飲みすぎるとおなかが冷えて調子を悪くします。ただでさえ暑い夏は消化力が衰えるので、外から戻って身体が熱い時に少し麦茶を飲んで冷やし、落ち着いたら冷房を利かせて暖かいほうじ茶でおなかの調子を整えるのがよいのではないでしょうか。

 コロナとの戦いは持久戦の様相を呈していますが、ジリジリと患者数が増えています。特に離島の沖縄県で患者の増加が目立ち、医療態勢を圧迫し始めているのが心配されるところです。ワクチンの開発も進んでいるようですので、結果に注目しつつ暑い夏を乗り切りましょう。


2020年08月14日

No.35 コロナとの戦い20 老いに学ぶ

 感染者数が日ごとに増加して国内では一日千人を超え、東京でも400人を超えるようになりました。政府は経済の影響を懸念して緊急事態宣言は出さず、さらに観光業のテコ入れのためGo to トラベルというキャンペーンを行っています。感染者は若い人が多い、重傷者が少ないと繰り返していますが、果たして迎え撃つ医療態勢の準備は大丈夫なのでしょうか。

 先日の外来で御高齢の御婦人から「便秘はよくなりましたが、最近下痢気味なので下痢に効く漢方薬を下さい。」と言われました。ないことはないのですが、その前にいつものように「甘いもの食べていませんか?」と聞くと、「子供が美味しいメロンがあるのでと持ってきたので・・・」とのこと。「親孝行ですね。でも食べても一口がいいですよ。食べ過ぎるとおなかが冷えて下痢しますから、一口食べて美味しかったと言ってあとは残して下さい。薬より先に養生ですよ。」と申し上げました。子どもが良かれと思ってかえって親の健康を損なうことはあります。賢いお母さんは子どもが美味しいからと言って好きなだけ食べさせることはありません。逆の立場になって大人になった子どももお年寄りになって胃腸が弱くなった親にたくさん食べてもらおうと思ってはいけないのですが、若い人は老人ほど賢くありません。そもそも美味しいものを我慢するのはむつかしいので適量だけに止める強い意志を持たねばなりません。年をとると頑固な人ほど健康を維持できるのかもしれませんね。年をとらないとわからないことの一つです。

 コロナで外出を控えるようにとのことで当然運動不足となります。テレビで人と会わずにできる運動で階段の上り下りを紹介していました。上るときに下の脚でけらずに上の脚で立ち上がるようにすればよい運動になるとのことでした。理にかなっていると考えて早速住んでいるマンションの階段の上り下りを始めました。急に始めると必ずどこか傷めますので、慎重にまず1往復、翌日は1往復半と徐々に負荷を強くすることとしました。そして3日目の朝、「あたたた・・。足が痛い!」左足に激痛が走り目覚めました。「さては痛風か。夏は汗かくから尿酸が濃縮されて出てくるけど、親指じゃない。足の底が痛い?これは足底腱膜炎だ!」と即座に診断をつけてひたすらマッサージしましたが、その後痛みは3日続きました。教訓はいくら身体に良いものでも時期とやり方が正しくないと逆効果だということです。普段とほんの少し違うことをやるだけですぐ痛みという信号を発するようになるのが老いるということでしょうか。足底腱膜炎の患者さんに原因を聞いてもわからないことが多いわけです。長い年を経てはじめてわかったことです。

90歳のおばあちゃんから「先生、いつ見てもお若いですね。」と言われて、「90歳からみれば周りはほとんど若い人ばかりでしょうね。私は30歳も年下ですからねぇ。」と笑って答えました。人生はマラソンのようなものでゴール近くになると先に行く人ははやく行ってしまうし、棄権した人はいなくなるしで次第に孤独になってしまいます。老いの観察眼は近くにいる人を見てその人の状態がどうか関心を持つものでしょうか。そのような人に常に見られているという意識を持って御期待に背かぬようにこれからも若々しく胸を張って歩きたいものです。



2020年08月03日

No.34 コロナとの戦い19 ウイズコロナは節酒の時代

 第2波が来る前に第1波の残りが経済活動の再開にともなって勢いを増し、患者数が増え続けています。戦時中とはいえ食べていかねばならず、子供の教育も継続する必要があり、じっと我慢し続けては息もつまるし娯楽関係者も干上がってしまうので自粛もある程度緩めねばなりません。しかし、空から敵が狙っているのに灯火管制をゆるめて光を漏らして爆弾を落とされては元も子もありません。緩めるにも戦時に許される範囲で止めるべきであり、安全の確保については真剣に厳密であるべきでしょう。

 クラスターの原因を見てみると、どうも酒がコロナを呼びこんでいるようです。自衛隊時代に演習の前後に演習場で宴会をやって気勢を上げていましたが、敵が絶対攻めてこない平和な時代だから許されたことです。実際の戦場では酒飲んで酔っていては同士撃ちかへたすると全滅です。平和ならおおいに飲むもよし。しかし今は戦時です。酒はほどほどに、声が大きくならないくらいが安全ではないでしょうか。

 以前も密教の用語の方の三密をこのコロナの時代にこそ大事だと紹介しました。身密は身体の健康状態を保つこと、口密はおしゃべりをしないこと、意密は油断をしないことです。突然息の詰まる時代になりましたので憂さをはらしに飲んだり騒いだりしたいのはよくわかります。少量の飲酒は健康に良いことは証明されています。しかし大量に飲めば健康には良くありませんし、今はコロナ感染のスキを作ります。コロナにかからないためには気を緩めず、口を閉ざし、身体の守りを固めねばなりません。酒を飲むと私を含めて多くの人は気がゆるみ、声が大きくなり、動きが粗雑になってコロナからスキあり!と攻め込まれます。コロナに一本とられないように限度をわきまえて楽しみましょう。

 ワクチンが出来てもすぐに効果がなくなるとか、かえって重症化するとか不確定ですし、特効薬も全く見えてきません。夏になれば収まるだろうとの期待もありましたが、どうも違うようです。しばらく今の状態が続きそうで当面ウイズコロナの時代が続くとあきらめて、いや開き直って粘り強く生きていくしかありません。



2020年07月25日

No.33 痛みはゆがみから

 コロナとの戦いはまだしばらく続きそうですが、熱心な読者から毎回同じようなことの繰り返しだとの指摘を受けました。もっと整形外科にふさわしい話を読みたい、とのことなので、このタイトルになりました。以前といっても3月ですが、「痛みはゆるみから」ということで書いてその際序文で中国のコロナについて初めに触れてそれからコロナとの戦いシリーズに突入しました。

 もとに戻って今回はゆがみの話です。身体にゆがみがあると痛みが出ます。ゆがみというのを辞書で引いてみると「ねじれ、曲がり、ひずむこと」と書いてあります。一番多いのは背骨で、側弯と言っていますが背骨が曲がっていると痛みを訴える人がいます。背骨は積み木のような円柱形の椎体と呼ばれる骨が首は7個、胸は12個、腰は5個重なったものです。そのため前後左右に曲がり、その上回旋できるようになっています。ですから曲がりねじれることは正常のことなのでそのことで痛みは出ません。椎体に均等に力がかかれば筋肉はあまり使われず痛みは出ません。しかし背骨が曲がったりねじれていると、頭を同じところに維持するために筋肉が緊張して疲労し痛みが出ます。長期にそのような状態が続くと骨自体に強く力がかかるところができて間の軟骨がすり減り、変形を起こしてそのことでまた痛くなることがあります。脊柱の側弯が強くなると、痛みばかりでなく呼吸なども問題となるので手術で矯正することが必要となることもあります。膝も同様で日本人はO脚の人が多いので、内側の膝関節に体重がかかるので内側の変形性膝関節症になります。このようにゆがみは痛みの原因になるので直せるならば直したほうがよい。子供の側弯も早いうちに発見して将来痛みのない腰で生活できるよう日常の生活を正すことが大事です。しかし私自身首が傾く癖がありますが、直そうとしても容易ではありません。将来痛みが出ないよう首の位置に常に注意するとともに首の運動をして柔軟性を保ち老後に備えています。ゆがみがあっても固定しないように身体の柔軟性と姿勢の維持を意識することで痛みは防げると期待します。

 ゆがみは心にもあるようで辞書では「心の正しくないこと。よこしま」ということも書いてありました。今回は善悪の問題ではなく、心が気持ちのよい状態でいられないと痛みが出ると考えることができます。実際不快なストレスは痛みの原因になります。慢性の痛みはいろいろな原因から来ていますので、ストレスの発散や痛みから離れる状態をつくるすることで軽くすることが出来る可能性があります。



2020年07月25日

No.32 コロナとの戦い18 暑いときのマスク

 季節は梅雨ですが、暑い日が続いています。経済活動が活発になるとともに感染者数も増加し、国内で一日200人を超えましたが、暑くてマスクをつける人が減っているのも関係しているかもしれません。個人的意見ですが、アメリカで患者数がまた増加し始めたのは元々マスクをする習慣がないところに加えて、暑くなってよりマスクをしなくなったのも一つの原因と思います。世界でもさらに増えて感染者が1000万人を超えたということです。感染症対策が不十分で経済活動を再開しようとしているのですから当然の結果でしょう。日本では諸外国より感染増加のスピードは緩やかなようですが、それは国民性としてのきれい好きを可能にする豊富な水と積極的なマスク着用可能にする経済力(または協力し合う国民性のおかげ?)であろうと思われます。しかし、いずれ外国との交通も再開されると感染者数ははるかに増えることになるでしょう。これが本当の第二波です。心配ですが、政府は医療に余裕があるから大丈夫とのことで経済の再開を進めています。戦いの勝敗は戦力比によるところが大きいので迎え撃つ医療態勢をさらに充実して来るべき第二波を迎え撃ちたいものです。

 自衛隊で働いていたころマスクといえば防護マスクでした。化学兵器から身を守るためのゴム製の物で顔全体を覆います。化学兵器は日本のサリン事件で有名になりましたが、最初は第一次世界大戦の戦場で使われたものです。塩素から始まりマスタード、有機リン剤と毒性が強くなり吸い込んだり皮膚に触れると死亡する危険なものです。人を虫けらのように殺す化学兵器は非人道的なものなので条約で製造と使用が禁止されています。しかし、戦争になればまた使われるかもしれないので、万一に備えて自衛隊では防護マスクを使って厳しい訓練をしていました。突然「ガス!」という号令がかかるとまず息を止めて、直ぐに腰のバッグから防護マスクを取り出して○秒以内に着け終わらねばなりません。もたもたしていると、「はい、戦死」と宣告されてしまいます。ガスがある間は着けていないと死んでしまうので安全が確認されるまで外せません。寒い時はまだよいのですが、暑い時全く通気性のないゴム製のマスクをつけていると顔も汗だくになって本当に大変でした。それに比べれば今回コロナとの戦いのマスクはまだ快適です。それでも暑い中でずっと着けていると外したくもなります。実際に紙のマスクでも熱の放散を妨げるので熱中症の危険もあります。コロナと熱中症、どちらかといえば熱中症が危険です。この時期熱中症予防のためにもマスクは外せる時は外したほうがよいでしょう。

 コロナとの戦いでは人が全くいない場所ではマスクは必要ありません。最近ジムでの運動を控えて散歩していますが、周りに人がいなければマスクは外しています。人がいたらどうするか。マスクをした人が近づいて来たら、「私もうつさないようにしています。お気をつけて。」という感じで、マスクをしていなければ「うつされてたまるか!」と眉をひそめるのではなく「必要ないかもしれませんが念のため。」と、いずれも微笑みを忘れずにその時だけマスクをつけるようにして、通り過ぎたらまた外します。

 マスクは不要だと言う人もいますがそうは思えない。もちろんマスクしていても食事や飲水では外すので感染の危険はありますがそれは場所を選べばよいのです。諸外国に比べて日本で感染者が少ない理由は積極的にマスクをしていることが大きいからだと考えています。以前よりマスクも安くなりました。熱中症の危険とバランスをとりながらマスクを上手に使ってこの暑い時期を乗り切りましょう。



2020年07月11日

No.31 コロナとの戦い17 養生で予防

 行動制限が国内で完全に解除されました。他県への移動も可能ですが、首都圏にはコロナがまだ発生しており感染を広げてはいけないと気持ちよく動く気にはなりません。東京でコロナの抗体検査をしたところ陽性率が0.1%であったとのこと。衝撃でした。

 以前「コロナとの戦い7」ですでに6%の感染者がいるようだとの慶応病院の報告を紹介しましたがそちらはPCRという遺伝子検査で、今回の抗体検査とは違うものの同じ感染の有無を時期を違えて調べる検査です。あまりにも結果が違いすぎます。どちらか間違いならそれまでですが、どっちが本当なのか。もう一つ、どちらも本当の可能性として感染後に抗体が出来てもすぐになくなる可能性があります。論文を調べたところ、最新の医学論文(Nature)に実際そのようなことが起きている可能性があることが発表されていました。これは非常に重要なことす。抗体をもっていればもう感染しないという保障はなく、血清を使った治療も感染直後の人からしか取れないのであまり実用的ではないし、ワクチンを打っても抗体がすぐに消えてしまうのでは予防効果はあまり期待できません。どうすればよいか。

 私の漢方医学の師匠にあたる中田英之氏は養生によるコロナの予防を提唱しています。氏によれば、コロナが重症化しやすい人には東洋医学的に3つのタイプがあり、①痰飲(たんいん) 食べ過ぎ、飲みすぎ、遊びすぎ ②気虚(ききょ) 元気なし もう頑張れない ③陰虚(いんきょ) 頑張り過ぎ 消耗しすぎ、それぞれについて予防法が違うとのことです。

 まず①痰飲の人は養生あるのみです。コロナウイルスは胃腸機能の急激な低下をきたすので、予防のためには普段から胃腸機能を整えておかないといけません。食生活を正しくすること、これが大事です。②気虚の人は体力をつけることです。食事と運動が大事で先回述べた甘いものを控えて身になる食べ物をとらねばなりません。③陰虚の人はスローダウンすることです。頑張りすぎて寝不足になるのはよくありません。

 聞いてみれば当たり前のことですが、今の日本で出来ている人はあまりいないように思います。自分は大丈夫と思っている人は、なかなか生活習慣を変えることができません。コロナの流行をきっかけとして自らの生き方を見直ししてみてはいかがでしょうか。


2020年06月22日

No.30 コロナとの戦い16 コロナと養生(甘いもの)

 梅雨になりました。東京アラートで都庁ビルが赤くなっていたのが緑となり、全国の感染者数も二けたで収まっています。夜の街での感染が多いとのことでさかんに注意するよう報道されていますが、酒場で三密は避けられず、ソーシャルデスタンスをとることも難しいようですので、つまり行くなということでしょうか。暑くなってきてマスクを外す人も多くなりました。スポーツジムで運動するのにマスクをしていては大変です。まして屋外で走るのにマスクでは熱射病になってしまいます。人がいないところではマスクをする必要もないのでしょうが、都市というのはどこに行っても人が多い。学校が始まって子供はみかけなくなりましたが、通勤電車では学生も増えて以前に戻っています。そうなると電車内はまさに三密状態です。暑いので冷房を効かせたいのですが、エアコンは空気が循環しているだけなのでつまり密閉状態、申し訳程度にすこしだけ窓が開いていることもありますが、これから雨となるとそれも出来なくなりそうで夏に向けて不安が増してきます。

 コロナとの戦いでの勝敗のカギを握ると言われているワクチンや特効薬の開発も時間がかかりそうです。そんな中で経済が深刻な状況となりつつあります。合併症がない若い人はそれほど重篤化しないのでこの際高齢者と合併症のある人だけ外出を自粛する方法が現実的かもしれません。当然感染者と接触する機会が増えることになりますし、マスクを外す人も多くなっているので、各個人の防護がさらに重要となります。ウイルスを避けるマスク、手洗い、三密よけは耳にタコができるほど聞かされていますが、ウイルスが侵入したからといって必ず発病するわけではありません。生き物には免疫という外から侵入したものを排除するしくみがあり、そのおかげで健康でいられます。免疫には二種類あり、ひとつは一度感染を受けた後で次は負けないぞ!とできる免疫、つまり獲得免疫です。今注目されているワクチンはこの獲得免疫を使って身体を守るものです。もうひとつが初めてであっても敵と戦って身体を守る自然免疫です。個人的見解ですがコロナに感染しても発症しない人が多いのは自然免疫が有効に働いているためだと思っています。獲得免疫は一度かかるかワクチンを打つかしかありませんが、自然免疫は生命活動の基本と関連しているので体調を整えることで高めることができます。

 その方法が養生です。養生は昔からの個人の健康を維持増進させるための技術です。今こそ養生の出番ですが今回はまず食べ物から。現代の養生ではまず余分なものを減らすことをおすすめします。現代人は昔に比べて食べ過ぎです。私の父母の時代は少なく食べてたくさん働いていました。ともに健康に80過ぎまで生きています。今は昔より食べ物の量も種類も豊富です。しかし余分なものまで身体に取り入れるので様々な問題が起きています。
 肥満、血糖値の上昇から糖尿病などの生活習慣病と呼ばれるものは主に現代の食べ過ぎが問題です。これらはコロナの重症化にも関係しています。コロナが始まる前から外来に来られた患者さんにはよく「甘いものを控えるように」と助言していますが、よほど健康に注意している人以外甘いものを取り過ぎています。果物、乳製品も取り過ぎている人が多い。その助言だけで薬も飲まずに病気が治った人をたくさん見ていますが、病気と言うより甘いものを取り過ぎたための不具合だったのでしょう。昔の人は米をたくさん食べていましたがお菓子や果物はほとんど食べられませんでした。正月などたまに食べるから美味しいのです。健康のためにはそれで十分です。昔は甘いものを控えようなど言う必要はなかったのですが、今は甘いものがあふれているのでまず甘いものを控えるのが現代養生の第一歩です。まず甘いものをやめてみる、そして身体が心がどう変わるか観察してみる、その養生が健康のための第一歩であり、コロナとの戦いのカギだと思います。

 漢方の仲間内ではこのコロナウイルスの病気は「湿」により悪化すると考えています。梅雨の時期湿気が多くなりコロナが重症化しやすいのではないかと心配しています。甘いものの取り過ぎもこの「湿」を悪化させます。完全な予防、治療法がまだない以上、自らの生活を改善する養生によってこの危機を乗り越えましょう。



2020年06月17日

No.28 コロナとの戦い14 コロナ腰痛

 緊急事態宣言が解除され通勤の電車も少し混み合ってきているようにも思いますが、以前ほどではありません。長い自粛期間のために仕事を失った人も多いと推測されます。今までが順調であったほど急な変化に順応するのが大変でしょうが、頑張って生きていくしかありません。コロナに負けるな!と申し上げたい。

 最近外来で原因不明の腰痛を訴える患者さんが増えています。外出を自粛することになれば体力、特に筋力が落ちるので自宅で運動を続けてくださいとこのコロナとの戦いの最初に書きました。皆さんラジオ体操を何回もやっていますなど頑張っていると言われてはいますが、それでは足りないのでしょう。最近あちこちいたくなった、特に腰が痛くなったと訴える人が多いようです。念のためレントゲンなど調べても異常は見つからないので「これは運動不足ですね」というと、「そうなんですよ、最近全然運動していません。以前はジムにも通って元気だったのに。」と言われます。どうも他人が見ていないと自分だけで運動しても効果が少ないようです。そんな患者さんには腰を中心に鍛えるように前にも書いた寝転んでやる腰痛体操を紹介しています。

 この時期の腰痛を勝手にコロナ腰痛と命名しましたが、コロナ腰痛は運動不足だけでなく精神的なストレス、特に刺激の減少が関係しているようです。外での楽しみがないと家の中で楽しみを見つけるしかないのですが、突然そう言われてもすぐ何か見つかるわけではありません。なにも注意を向けるものがないと自分の中で何かないかと探すようになります。そうすると普段の忙しい生活の中では気にしなかったわずかな違和感を見つけて、それを痛みと認識して、その痛みが次第に大きく感じるようになります。患者さんの話をよく聞いてみるとそのような症状が結構みられます。その場合はお薬やまして手術で治そうとするのは適切ではなく、もちろんそれでは治りません。痛み以外に注意が向くように生活を工夫しなければなりません。何か見つかると痛みも和らいでどこかに行ってしまいます。何がよいかは人それぞれですが、この機会に意外な生きがいが見つかるかもしれません。しばらくは新しい生活にあわせて身体を鍛え、心を整えて乗り切りましょう。

 コロナ自体は外に出ず、人と接触しなければ感染することはありません。しかしそんな生活をいつまでも続けられないと諸外国でも外出の制限を解除し始めました。するとまたコロナが増え始めるところもあるようです。最初の奇襲と違って医療態勢が充実していればコロナが増えても何とかなります。しかし、日本ではコロナ患者の減少とともに民間病院の中には経営が苦しくなったところもあるようです。患者の急増に対応するためには、ベッドと人員を準備しておかねばなりません。次の戦いに向けて十分な医療態勢を維持するために政府の支援は欠かせません。自衛隊にいたころ大先輩から「戦争中は問題ない。戦争のない時にどのように軍隊の医療を維持し続けられるかが問題だ。」と言われたことを思い出します。



2020年06月01日

No.29 コロナとの戦い15 万全の対策

 6月になりました。緊急事態宣言解除後次第に出歩く人の数が増え、通勤電車に空席がなくなりました。空いた席を見つけて座ろうとすると隣りの人が「チッ」と舌打ちします。せめて一人おきに座れればよいのでしょうが、首都圏は人が多すぎます。距離をとりたくても出来ないのはお互いストレスです。最近減っていた新規感染者数が増加しています。外出自粛で感染者数が抑えられていたことは間違いありませんがずっと自粛も出来ません。痛しかゆしですが、今後しばらくはコロナが近くにいる状態で生活せねばなりません。

 パチンコ屋も堂々と開店し、店の入り口に「コロナ対策は万全です!」と書いてありました 。中に入ろうとは思いませんが、「はて万全の対策とは何だろう?」と不思議な感じになりました。万全とはパーフェクト?台を替わるたびにすぐにパチンコ台と椅子を消毒?パチンコ玉の表面ならコロナウイルスも長生きできるだろうから使うごとにすぐ消毒?など妄想は尽きません。もしそこまでやるなら大変なことですがそれでも安全とは思えない。

 「万全」という言葉を私の辞書で引いてみると「非常に安全なこと。少しも不安のないこと。」と書いてありました。どの程度安全なのかはそれぞれの人の考えにすぎません。今安全を確実に保障できるのは直接間接に感染者と接触がないことだけです。また「万全」という言葉には不安を打ち消す作用もあるようです。不安は人をいらだたせますが、本来危険から遠ざけるために必要なものです。不特定多数の人がいる空間に入ることはそれだけで危険です。「万全」ということは「安全」に似ているけれども違うことは理解しておかねばなりません。

 コロナとの戦いの最前線はコロナ患者を受け入れている病院でしょうが、そこでの感染対策は出来る限りの最高レベルであると思います。それでもクラスターが発生しています。多くの医療者が少しのミスも許されない緊張感と自らも感染するかもしれないという不安の中で戦っています。そんな中で東京の上空を医療従事者を激励するためブルーインパルスが飛行しました。今はほとんどの民間航空機が運航休止となっており、展示飛行が可能だったのでしょう。世田谷区にある自衛隊中央病院でも屋上のヘリポートで多くの医師看護師が空を見上げて歓声を上げていました。自衛隊に限らずほとんどの医療従事者はその使命感で危険な仕事も頑張るでしょうが限界はあります。感謝され激励されることでさらに頑張ることができると思います。世の中は先が見えず暗さが広がりつつありますが、このコロナとの戦いに勝利しないかぎり光はさしません。医療の最前線で戦う戦士たちを応援しましょう。



2020年06月01日

No.27 コロナとの戦い13 緊急事態宣言解除

 本日5月25日いよいよ緊急事態宣言が解除されることとなりました。先週国会で発言された経済の専門家から「我々は外出自粛の努力によりコロナとの戦いに勝利した」との発言があり、新聞では日露戦争に勝利した後の連合艦隊解散の辞の紹介もありすっかり戦勝ムードですが、世界での感染患者は増加しており戦いはまだ終わったわけではありません。

 日経新聞で連合艦隊解散の辞が「武人の責務に戦時、平時の差はない。平時には鍛錬に努め、戦う前にすでに勝利の領域に到達している者は勝利を授かるが、平時に慢心して鍛錬を怠る者はたちまち敗者となる」と紹介されました。本文ではそのあとに勝って兜の緒をしめよと続きます。そこで私も所属した自衛隊中央病院の事例が賞賛されています。生物化学兵器による負傷者の治療訓練を毎年のようにやっている自衛隊病院と普段は日常診療をやっている民間病院を比較はできません。しかし、収まりつつあるとはいえしばらくは場所を選ばずどの医療機関でもコロナとの戦いが継続されます。今後解除後の緩みから第二波に、外国との交流再開から第三波に襲われる可能性は高いと考えられます。

 自衛隊の経験からいえば、平時に大事なものが三つあります。

 まず重要なのは装備です。マスクや防護衣など武器がなければ医療従事者が感染する危険は大きく、逃げ出したいと思うのは当然です。米軍と交流する機会も多かったのですが、感心させられるのはその物量の豊富さで、兵站と言われる後方の補給基地はまるで大工場で倉庫に資材が山積みされていました。戦争をしていない時から準備されているのです!今回防護衣が足りなくて何度も再利用したとの話がありましたが、そのような状況で戦わなければならないのでは、先の大東亜戦争の失敗の繰り返しです。世界第3位の経済大国なのであれば安心できる十分な装備を最前線の医療現場に送って戦いを支援できるでしょう。ケチったら負けます。

 次に重要なのは訓練です。武器を与えられても正しく使えなければ倒されます。混乱する現場でも間違えることがないように自信を持てるまで訓練しなければ実戦では勝てません。この訓練は医療従事者すべてに必要です。クルーズ船で完全装備の医療従事者の後ろにマスクをした事務官がスーツで歩いていましたが、戦場ではきわめて異常な光景です。戦場では報道関係者も戦闘服を着ています。危険があるのであれば全ての人が抜かりなく備えなければなりません。

 そして重要なのが士気です。平時ならそこまで追いつめられることはないでしょうが、戦時では不安と過度な仕事量と過酷な環境の中で戦わねばなりません。折れそうになる気持ちを維持するのは仲間の励ましであり、周りからの激励です。経験者は忘れることはないでしょうが、往々にして世間は熱しやすく冷めやすいもので、すぐに他のものに関心を奪われます。長期戦とわかっているからうんざりしてしまうのでしょうが、コロナとの戦いでは傍観者ではいられません。社会全体で次の戦いに向けて各個人防護の鍛錬と医療機関の鍛錬に努めなければなりません。安心したいのであればやるべきことはやらねばならぬのです。



2020年05月25日

No.26 コロナとの戦い12 力士の死

 5月13日28歳の力士が新型コロナウイルス性肺炎による多臓器不全のため東京都内の病院で亡くなったとの報道がありました。日本相撲協会の八角理事長から「1か月以上の闘病生活、ただただ苦しかったかと思いますが、力士らしく粘り強く耐え、最後まで病気と闘ってくれました。」との発表がありました。 発病してなかなか病院で治療がされなかったとのことで、もし早期に治療を受けていれば助かったかもしれないと思うととても残念です。パンデミックという大災害に対する準備の不足が若者の命を奪ったのであれば、その死を無駄にしないよう今後はしっかりと準備せねばなりません。

 それにしてもコロナ肺炎の治療は長期間を要します。患者数と治療期間の積が医療に与える負荷の大きさです。そこで助からない人をあきらめて助かる人に集中するという本来戦場で用いられるトリアージが求められます。自衛隊の医療部隊の訓練では戦闘の現場でたくさんの負傷者が出ることが当然に想定されるので、その現場および治療施設でどの患者の治療を優先するかというトリアージ、患者分類と言っていましたが重視されます。最近広く用いられるようになりましたが、もとは軍事用語です。すぐに治療をしなければいけない人、治療は必要だが少し時間の余裕のある人、しばらく治療しなくてもよい人、治療しても助けられない人に冷徹に分類して治療を行わねばなりません。パンデミックではアメリカで新型インフルエンザで大量に重病人が出たときに誰の治療を優先するかを検討して、すでに多く楽しんだ高齢者より将来のある若い人の治療を優先することとなったのは有名な話です。医療を十分に行えるなら患者に優先順位をつける必要はありません。需要と供給のバランスが崩れるときに必要となる技術です。トリアージは本来医師が行わねばならないものですが実際やるとなると負担が大きい。

 諸外国の死亡者数をみると欧州の死亡率がのきなみ10%を超えています。老人の感染者が多いこともあるでしょうが、欧州では安楽死を認めている国もあり、高齢になったら自分でどういう死に方をするか選択することが多いようです。日本では縁起でもないと毛嫌いされることが多いのですが、誰でもいつかは死ぬのですから自分の最終ゴールをどうするか、一度考えておいてもよいのではないでしょうか。アメリカでは「カリフォルニアから娘がやってきた症候群」というのがあるらしく、死期の近い高齢者に今まで会ったこともない親族が突然現れて治療についていろいろ口を出すということが問題となっているようです。本人の命は本人のものですので死ぬときに他人から干渉されないように意志を書き残すことを勧めています。助かる可能性があれば最後の最後まで頑張るということもあるのでしょうが、激しい病気との戦いでは身体は時間とともに傷み回復の可能性は下がってゆきます。私が若い研修医の頃肺がんの末期の患者さんを何とか助けようと「文献を見たらこの治療が有効だと書いてあったのでやってみます。」と元気よく患者さんに話しかけたときにその人が目に力なく「もう疲れたよ。」と言ったことが印象に残っています。翌日患者さんは亡くなりました。

 コロナの肺炎は進行が速く考える時間を与えてくれません。どう旅立つのがよいか、親しい人と一度話し合って、ゆっくりした時間の中で自分の意志を書き残すのも良いかもしれません。医師のトリアージの負担も少し軽くなります。

 この原稿の構想を練りながら歩いていると「あれ、パチンコ屋が開いている!」以前なら新装開店と派手に宣伝していましたが、今は隠れるように一か所だけドアが開いていました。まだ緊急事態は解除されていないのに大丈夫だろうかと思いつつ、新たな感染者数が減っているからもしパチンコ屋で集団感染が発生すればはっきりわかる。そうすると今まで感染経路のわからなかった原因がはっきりわかるな、それもよいか、長期戦なのだしと考えました。


2020年05月18日

No.25 コロナとの戦い11 ゲリラ戦

 5月11日です。日本では新規患者数が減少傾向ですが、世界ではコロナの感染者数が400万人になったとのこと。12日ごとに100万人単位で増えているというのは想像を超えています。アメリカでの死者がベトナム戦争の死者を超えたというのは数字だけの話ですが事態は深刻なままです。特に米国で最近小児に川崎病のような症状が多数見られるようになったというのは注意を要します。かつて整形外科でも欧米では手術した後に肺の血管が詰まって亡くなることがあるらしいと聞いて、そんなこともあるのか日本とは違うなと感じたことがありましたが、その後生活様式が西欧化したのか日本でも同様の患者が増えてきて注意が必要なようになりました。そう外国で起きたことは日本でも起きるものなのです。

 その点で韓国はコロナをうまく抑え込んで経済活動も再開されつつあり日本も見習うべきかと思っていたところ、ソウルのナイトクラブで集団感染が発生しました。ソウル市長が「世界でも認められた韓国の方式であったのに一部の不心得者のせいでだいなしだ。」と怒っていました。その気持ちはわかりますがコロナとの戦いはゲリラ戦です。

 正規軍どうしが戦う普通の戦争ではジュネーブ条約によって戦闘員はそれとわかる服装をしていなければなりません。一般人の服装で戦いに参加するのはルール違反です。このルールを守る前提で降伏した捕虜は保護されます。一方戦闘員であることがわからない形で戦うのがゲリラです。これはとても戦いにくい。区別がつかないので一般人の被害も大きくなります。コロナについていえば、無症状の人もいれば軽い風邪の症状の人もいて、かかっているのかどうか本人もわかりません。検査すればわかりますが、毎日検査するわけにもいきません。潜伏期が長く無症状で感染を繰り返すと当分コロナはなくなりません。韓国ではスマホや監視カメラを使って接触者をすべて見つけて隔離するやり方で感染拡大を阻止していますので被害は極限できるかもしれません。しかし日本ではその手段がとれないので当分の間経済活動の本格的な再開は無理でしょう。再開されても以前のように酔っぱらって肩抱き合って大声で叫ぶ風景はもう見られないでしょう。ゲリラ戦であるコロナとの戦いでは一瞬の油断も命取りです。若い時ドイツに学会で行ったことがありますが、電車の中で誰一人話すことなく無表情で黙って座っているのを見て「さすがドイツ人は気難しいみたいだな。」と思ったものですが、日本でも同じようなことになるのでしょうか。明けない夜はありませんが、朝になったら季節が変わっているかもしれませんね。


2020年05月11日

No.24 コロナとの戦い10 持久戦

 緊急事態宣言がほぼ1か月延長されることとなりました。安倍総理も言っていましたが持久戦です。徒然草に「勝たんと打つべからず、負けじと打つべきなり」とありますが古来勝負事の秘訣は持久戦です。そもそも戦いはこちらが優勢であれば攻め、劣勢であれば守るといことが大原則です。今回のコロナとの戦いでどちらが優勢かといえば、一 まったく準備していないところを攻撃された、二 攻撃に対して有効な反撃手段、薬やワクチンがまだない、三 侵攻速度がきわめて早い、四 無症状でも感染能力あるので守りが困難、 五 情報が不足している、 など圧倒的にわが方が不利です。今のところ守るしかなく損害を少なくして時間をかせいで状況の好転を待つ持久戦は当然の結論です。

 外出自粛要請は効果を発揮していますが、経済に与える影響も大きく仕事を失う人も出てきました。しかし自粛をやめて自由に動けば敵の思うつぼで、オーバーシュートから医療崩壊、そして社会も崩壊してしまうのは諸外国の初期の状況を見れば明らかです。現在のところどちらがより悪くないかという選択しかありません。厳しい状況ですが各人が出来ることをやって、助け合い、政府も適切に支える、地震と同じく自助、共助、公助の組み合わせで頑張っていきましょう。

 今の主戦場は近接戦闘が行われている病院です。こちらは地上での戦いで弾が飛び交っています。持久戦でも戦闘は続いており医療従事者は危険の中で戦っています。支援と協力をお願いします。

 他方家の外の公的空間も戦場ですがこちらは空中戦に近いものがあり、どこから敵がくるかわかりません。マスクをして守りをかためればより安全ですがこれから温度が上がるとそれも難しくなります。外出すればモノに触るし人とも話すので被弾するのは避けられませんので、家に帰っての手洗い、スマホの消毒がかかせません。

 関東では二か月におよぶコロナとの戦いで自粛疲れか、行き交う人も何かとげとげしく家庭内暴力も問題になりコロナ離婚も増えているとのこと。戦いのはじめは高揚感がありますが長く続くものではなく厭戦気分となるのは歴史の教えるところです。第二次大戦はアメリカの国民が一致団結していたのに、ベトナム戦争で反戦運動が広がったのはテレビで映像を見たからと言われています。そう考えて我が家ではニュースはラジオで聞くことにしています。

 以前自衛隊での経験ですが方面隊の最高司令官に「一番注意していることは何ですか?」と聞いたことがあります。「それは隊員の士気である。士気が落ちれば戦いには勝てない。」とのお答えでした。長引く持久戦でひるみがちな士気をいかに維持するか、そこでヨガの先生の言った「我慢と忍耐は違います。」ということを思い出しました。我慢は感情を抑えてその場にとどまることですが、忍耐は感情を抑えつつ成長を目指すことだとのこと、暑い風呂に入って我慢してもまあ成長することはないでしょうが、学生時代へとへとになりながら厳しい練習を逃げずにやり遂げる忍耐は必ず成長につながるでしょう。持久戦は我慢より忍耐、昨日より今日、今日より明日少しでも成長できるように工夫して生活しましょう。



2020年05月07日

No.23 コロナとの戦い9 頭上の鳥

 緊急事態宣言から3週間が経過しました。東京都の感染者数に減少傾向がありますが、北海道では一度減少した感染者が再び増加しており安心はできません。

 東京都の感染者減少に効果があったと考えられるのが、三密の危険のある施設の営業自粛要請です。ライブハウスやカラオケなどは自粛しているようですが、パチンコ店が自粛要請に応じないことが問題となっています。パチンコは感染者かもしれない人が座った台で遊ぶので接触感染の危険も非常に高い。私が若い頃は娯楽といえばパチンコで私自身の経験からその誘惑の強さはわかります。今でこそギャンブル依存症として治療の対象ですが、当時の自衛隊では休みといえばパチンコという人は大勢いました。私も研修医の頃は眠る暇もないほど忙しかったのですが、地方の病院は暇で休みには「昨日は1万勝ったのに今日は2万の負けか」などと一日中パチンコ台に座っていたものですが、ある日ふと見ると上官が私をじっと見ていました。目が合ったので挨拶したら、ぼそっと「まあ、あんたはいつまでもこんなことやってられないからなぁ。」とつぶやいて行ってしまいました。今でも覚えていますがその瞬間目が覚めたように我に帰りパチンコはやめました。旧日本軍の教科書に「頭の上を鳥が飛ぶことは防げないが、頭の上に鳥が巣を作ることは防げる」ということが書いてあります。パチンコに熱中していた私の頭には鳥が巣を作っていたのでしょう。思い出に残る人との出会いで鳥の巣は消えました。

 頭の上を鳥が飛ばないためには家にいるのが一番ですが、仕事で出ないわけにはいきません。うれしくはありませんが鳥からの落とし物をいただくこともあります。コロナウイルスも同じで、外に出れば接触は防げません。帰ったら手を洗ってスマホを消毒してわが身を守るしかありません。一方ここは明らかに危険だとわかっている場所があります。パチンコ店もその一つです。だから自粛の要請が出ているのです。この機会に頭の上の鳥の巣も取り除いてはいかがでしょうか。


2020年04月30日

No.22 コロナとの戦い8 戦場での自由

 今年初めから始まったコロナとの戦いは瞬く間に世界中に広がり、今や第三次世界大戦ならぬ第一次コロナ大戦の様相を呈しています。アメリカでは大統領が「消毒薬が効くらしいから患者に注射してはどうか」と言ったとか。その時政府の医療担当者も同席していたようですが、ただうつむくばかりではいけません。私が防衛医大に勤務していた時に当時の日本医師会長が来られ、「君たちは患者を治すためにここにいるのではない。」と話を始められました。なんのことかと思ったら自らの戦争体験から「負け戦になると司令部は狂う。それを正せるのは君たちだけだ。」と。非常に印象に残るお話でした。当然消毒薬は注射してはいけません。最悪患者が死んでしまいます。もし私がその場にいれば大統領、ご冗談でしょ?とごまかしたでしょう。それが専門家の仕事なのです。それにしても負け戦とまでは言わないもののアメリカもこの戦いには相当苦戦しているようです。

 かつてゴールデンウイークと言われた大型連休の季節になりました。毎年どこか行きたいけど人が多いからなと悩んでいましたが今年は外出するな、よその県に行くな、うちに来るなの大合唱です。他県ナンバーだと石を投げられることもあると報道されていて、家でじっとしているほうが賢明なようです。先週まで海でサーフィンをやっているということが問題となり海岸が封鎖される事態となっていますが、戦いの場でどこまで自由が許容されるかは議論のあるところです。しかし平和な時と違うことは間違いありません。

 自衛隊に入りたてのころ、夜間の訓練があり出発前にぺちゃくちゃしゃべっていたらゴツンとヘルメットをたたかれました。まだ訓練始まっていないのにと不満でしたが、まあ仕方ない。後で考えると夜間は闇に紛れて敵に見つからないように移動するので出発前でも敵にわかるような音を出すのは絶対ダメということでしょう。戦場に行くのは命がけです。自分だけならまだしも仲間まで危険さらします。そう、戦場では連帯責任なのです。それ以後一人が失敗すると全員で腕立て十回という自衛隊ならではの連帯責任生活が始まりました。自由の前提は自己責任ですが、戦場ではそれは通じません。最初はとても不快であったのですが、一人の勝手な行動が仲間の命を危うくする、隣りの人の勝手な行動で自分が危険になるのが戦場なのです。不平、不満いろいろあるでしょうが、今は国民が連帯して、しばらく不自由を我慢してコロナと戦わなければなりません。戦いはすでに始まっているのですから。


2020年04月27日

No.21 コロナとの戦い7 2つの3密

 今日は4月24日です。著名人が次々と亡くなられて医療に関係ない人にもコロナが他人事ではなく間近に迫った脅威であると思えることでしょう。コロナとの戦いは全ての人がいやおうなく巻き込まれる戦いです。私は自衛隊にいたので申し上げますが、全員がしっかり装備をつけて、必要な訓練を行って日々の生活を送れば必ず勝利します。

 慶応大学病院からコロナの症状が何もない人にコロナの検査をしたら6%が陽性であったと発表がありました。すでに6%!恐るべき侵攻速度で敵は迫っています。松田整形は毎日100人以上外来に患者さんが来られますが、その中の6人がコロナの検査をすれば陽性つまり感染力があるかもしれないということになります。外来でも少し患者さんの椅子を離して置いていますが、よく聞こえないと椅子を近づけて来たり、「何と書いてあるのですか。」と電子カルテをのぞき込んで顔を近づける患者さんがあると、思わず後ろに下がってしまいます。最近感染症の専門病院でも院内感染が多発しており、マスクなど装備だけでは完全ということはありません。緊急事態宣言から2週以上経ちましたが、当分はこの緊張状態が続きそうです。

 密閉、密集、密着の三密が感染を拡げるとのことで政府が繰り返し外出の自粛を呼びかけています。東京の繁華街はまるでゴーストタウンですが、近所のスーパーや公園はかえって人が多くなっています。自宅で仕事をと言われても、平日の通勤時間の混雑はソーシャルデイスタンスをとれるまでにはなっていません。考えてみると現在の都市生活は三密そのものです。田舎から人が集まって密集し、狭いところに大勢いるから密着せざるをえません。おまけに住まいは密閉の部屋ですきま風とは無縁です。まさにコロナの絶好の標的だったということでしょう。都市生活は便利ではありましたが、インターネットの発達した現在田舎でもそんなに困らなくなりました。地震や台風などの災害時に避難所に入りきれないという過密状態は危ういのでこの機会に生き方を根本的に考え直す方がよいかもしれません。

 ところで三密というのはもともと密教の用語です。身密、口密、意密ですが、これについて私の漢方の師匠であり自ら修験道で修行している先生によれば今こそこの三密を実践しなければならいとのことです。まず身密、病気への抵抗力をつけておくために体調を整えねばならない。暴飲暴食を避け、規則正しく消化の良いものを食べて、その上で身体を緩まないように運動をして引き締める。次に口密、不安や不平、八つ当たりなどを口に出さず周りに波風を立てない。これはSNSへの投稿を控えるということにもなりそうです。コロナ対策でいえばおしゃべりしないということにも通じるかもしれません。最後に意密、先の見えない状況ですが、いろいろ妄想を浮かべずにただ穏やかな気持ちでいること、止観といって静かにとどまって物事をありのままに見ること。その意味で私は不安をあおるバラエティを見ないようにして心の平安を保つことが大事だと思います。

 人類が直面する災厄は今回が初めてではありません。祖先は災厄を乗り切る知恵を様々な教えとして残してくれいると思います。心を落ちつけて祖先からの知恵に学び穏やかに、しかし抜かりなく暮らしましょう。


2020年04月24日

No.20 コロナとの戦い6 人から物へ

 今日は4月21日亡くなった人を調べたらコロナ陽性であったとの事例が多発していますし患者数、特に感染経路不明者の増加も止まりません。一方経済では原油の先物価格がマイナスつまりお金をあげるから油を買ってくれという奇妙な事態となりました。経済が不況となるのは間違いないでしょうが、今までとはかなり違っており何が起こるかわからない。世の中不確実を通り越して一寸先は闇状態です。

 かつて太平洋戦争が終わった時、私の親は農家の手伝いをしていましたが、近所の人が駆け込んできて「戦争に負けた!畑仕事している場合ではない。」と叫んでいたそうです。その話を笑いながらよくしていました。「戦争に負けても飯は食わんとね。」ということでしょうか。今回のコロナについて友達の一人は、「いい冥途の土産だ。よく見ておこう。」と開き直っています。何があっても日々の仕事を続け、仕事が無くなったら何が最善か考えて日々生きて行くしかないのです。

 さて先日若い同僚に「スマホの表面ではコロナウイルスが3日くらい生きているから消毒したほうがいいよ。」と言ったら「え!そんなこと知らない」と驚いていました。ネットで調べればすぐわかることなのですが、意外と無頓着です。そんな若い人をどうしたら良いのか、専門家に聞いてみたら「スマホだけでなくお金にもついていますよ。」今度は私が「え!そういえば中国ではお札を消毒していたなあ。」と驚く始末です。その後で郵便局で硬貨を落として拾った時、「あ、コロナウイルスが着いたかもしれない。」と心配になり家に帰って石鹸で洗いました。

 日本では感染経路不明者が増加しているとのことで、その一部はスマホやお金など物によって伝染しているのかもしれません。警戒すべきは人から物です。触らない、手を洗うに加えて汚染されている可能性があれば消毒する必要があります。まるで手術室にいるように感染に厳重に注意しないとコロナは防げないのでしょう。人との接触を避けることも大事でしょうが、そろそろ物についても注意を向ける時期かもしれません。


2020年04月22日

No.19 コロナとの戦い5 コロナとペスト

 今日は4月18日とうとうと言うよりやはりと言うべきでしょうが国内の感染者が1万人を超えました。今日は月1回の漢方の専門外来のため出勤したのですが、まるで台風のような大嵐でずぶ濡れになりました。当然患者さんもキャンセルが多かったのですが、コロナの影響で気持ちが落ち着かない人が多いようです。

 「ニュースは一日1回見れば十分です。」「ストレス発散のためにも身体を動かしましょう。」「甘いもの食べすぎると胃の機能が悪くなって体調壊しますよ。」と生活の指導をしたのですが、中に一人全く体調の良い人もいました。「コロナのこと気になりませんか?」「いや、なるようになるし、もう人生でやることはやりましたから。」さすが!地震の時もそうでしたが、危機的状況でうろたえる人もいますが、逆にどんとこいという人も確かにいます。不安は安心したいという期待から生まれます。どうにでもなれと開き直るのが不安にならないコツです。

 先だってNHKの100分で名著でも紹介されたのでご存知の方も多いと思いますがノーベル賞作家のカミュが書いたペストという小説があります。私は大学に入ってすぐ読んだのですが、疫病が流行って街が封鎖されているのに、人々がわりと平然としているのを不思議に思ったものです。その中で神父さんが「これは神の罰が下ったのだ。」という話があります。

 ペストはペスト菌という細菌の感染症であり、コロナはウイルスの感染症で違うものですが、流行して多くの人が死ぬので非常に恐れられていました。欧州で何度か大きな流行があったので、感染を拡げないために街を封鎖して外に拡げない対策がとられるようになったのでしょう。

 今回のコロナは日本での患者数の増加が続いており、かつてペストを経験した諸外国からもっと厳しい外出制限が必要ではと指摘されています。このまま状況が悪化すれば不安から理由を求めたがる心理につけ込んで「神の罰だ」という人も現れるかもしれません。何か悪いことをしたのかといえば、武漢で新型肺炎が問題になっていた時に中国は大変だなと他人事で、自分に降りかかる問題と考えなかったことです。その後クルーズ船が大問題となり対策が難しいことはわかったのに、その教訓から得られる対策が不十分で現在の苦戦を招いています。悪いことをして神の罰が下ったというよりやるべきことをやらなかったツケがまわってきたということでしょう。

 現在敵の侵攻速度が速くて被害が拡大していますが、まだ敗北したわけではありません。しかしぼちぼち防御態勢を整えて迎え撃たないと総崩れということになります。今の戦場は病院です。コロナに勝つために出来る限りの力を結集しましょう。


2020年04月20日

No.18 コロナとの戦い4 松田整形外科

 この原稿を書いているのは4月17日で昨日全国に緊急事態宣言が発令されました。マスクの配布も始まり、国民一人当たり10万円の経済対策も行われるとのことで、総力戦の態勢は整いつつありますが、患者数の増加が急速であり医療現場での緊迫感は益々高まっています。

 松田整形外科でも院長の地域医療を守り抜くとの固い決意のもと、職員が一致団結してこの難局を乗り切るべく頑張っています。以前私が自衛隊に勤めていた時に米軍の大佐に「戦場において最も重要なことは何か?」と聞いたことがありましたが、彼はすぐに「任務を継続することだ。」と答えたことを思い出します。入院患者さんへの面会謝絶で家族に会えず寂しい思いをしておられる方も多いと思います。入院患者さんが感染しては病院が大事となりますので今少しご辛抱お願いします。外来診療においても、患者さんと距離をとるために少し離れてお話を伺っています。診察室は密閉の状態になりやすいので、風通しを良くしています。待合室もお互いに離れて窓を開けてあるので少し寒く感じるかもしれません。診察する私も寒く感じますが、これはもう少し季節が進むと問題なくなるでしょう。身体が冷えるのはよくないので暖かくしましょう。松田院長は院内の掃除、清潔を徹底するように職員に指示していますが、これは重要なことです。先回にもあったとおりコロナウイルスは椅子やドアに付着して感染します。無症状でも感染する力あるようですのでご本人が気づかずにいることもあるでしょう。トイレをはじめ他人が使ったものは危険と考えてできれば触らない、触ったら必ず手を洗うことです。石鹸で手が荒れるなら水だけでも効果はあります。

 コロナは会話するだけでも感染するので、以前のように親しくお話ができません。患者さんの話を聞くのも治療のうちなのですが、感染防止の観点から手短に話を終えなければならないのは臨床医としてとても残念なことです。

今は緊急事態ですのでご理解をお願いします。

 症状が変わらずに同じお薬だけご希望であれば電話で対応可能となりました。症状の安定している患者さんにはできるだけ受診しなくてよいようよう長めに処方しています。本当は薬の効果確認と副作用の予防のために定期的に診察して症状を確認する方がよいのですが、外出自体が危険な今の状況では仕方ありません。

 大変な状況ですが、医療の質を落とさず安全に気をつけて笑顔を忘れずに頑張っていきたいと思います。


2020年04月18日

No.17 コロナとの戦い3 身を守るために

 先回から1日しかたっていませんが、コロナとの戦いは緊迫感を増しておりシリーズとなりました。今日4月14日は緊急事態宣言から1週間、街の風景も変わり、満員電車も今は昔です。国は人との接触を8割減らせと言っていますが、確かに統計として患者数を抑え医療崩壊を招かないためには必要なことです。いろいろ事情はおありでしょうが努力しましょう。これとは別に一人ひとりにとっては1回でもコロナウイルス(以下コロナ)が侵入すると感染してしまいます。特に我々病院で働くものは、病弱な患者さんに感染させてしまう可能性があるので絶対にコロナに感染してはいけません。実際たくさんの病院で院内感染と推測される事態が起こっており本当に心配です。

 コロナに感染しないためにはどうするか、世の中には絶対はないのですができる限りの手段を使って守るしかありません。コロナは空気中の飛沫を吸い込むか、何かに触ったものが粘膜から侵入すると感染すると考えられています。空気中の飛沫を吸い込まないためには、いわゆる三密、密閉、密着、密集を避けろと耳にたこができるくらい言われています。風通しの良いところに少人数で、お互いに距離を取ればさしあたり大丈夫でしょう。短い時間ですがウイルスは空中に浮かんでいるので常にマスクをしていたほうがより安全です。次に接触感染ですが、コロナは付着した物によって生存期間が違うことが報告されています。アメリカの大学からの報告で生地では3時間、銅や木では4時間、段ボールでは24時間、金属では42時間、プラスチックでは3日間生きるとされています。他の研究機関でもほぼ同様の結果が得られており、我が家では宅配された段ボールは1日以上玄関脇においてから開けます。帰ったら手を洗えとは言いますが、服が花粉症ほど言われないのはこの研究が根拠となっているのでしょう。中国の駅で消毒液を噴霧していましたが理にかなっているようです。デマではなく科学的な根拠をもって身を守るようにしてください。

 ところで東京の感染者数が徐々に上昇し、特に感染経路不明の数が増加しているのでオーバーシュートが近いと報道されています。その点で気になるのが電車でのスマホです。スマホの表面はプラスチックのようなものでできておりコロナウイルスが長く生存できる状態です。食事の時にスマホをいじる人もたくさんいるでしょうから、電車でスマホを開けていれば空中を飛んできたコロナウイルスが付着すると考えらます。そこから感染が広がっているのではと思います。感染経路不明者のうち電車でスマホを使っていた人がどれだけか不明なので根拠はないのですが、最近若い人の感染が増えていることとも合致します。そこで電車内で「スマホの表面ではコロナウイルスが長く生存できますので、感染防止のため電車内でのスマホの使用は控えたほうが安全です。」とアナウンスしたら感染の増加を抑えられるのではと考えています。
2020年04月15日

No.16 コロナとの戦い2 家の中で運動しよう

 トイレットペーパーがないと大騒ぎだと、書いたのはついこの間でした。あれよあれよという間にオリンピックは延期、緊急事態宣言で外出自粛の要請と上を下への大騒ぎです。人類を滅ぼす病原体がこのコロナウイルスではないとは思いますが、世界中の経済が冷え込み、自国第一主義で国際協力がストップしてしまう状況はかなり深刻だとテレビでも伝えるのでストレスもたまります。

 日本中でマスクがない、消毒液がないと困っていますが病院も同じです。総力戦になれば国の持てる力を戦場に集中して勝利しなければ国は倒れます。今の主戦場は病院なので何とかしてほしいものです。

 愚痴を言っても気分が滅入るだけなので、恩師の「時間の無駄になることは考えない」との教えに従って、今の窮状を乗り切る策を考えなければなりません。

 外出するな、家に居ろと言われますが、そうしなければならないのは感染を拡げ自ら感染してしまう人たちです。先日通勤の電車に乗っているとき、もちろんガラガラに空いているのですが、前の席に座った若者がペットボトルで飲料を口にしていました。もう少し若ければ「危ないぞ、コロナウイルスに感染するのがわからんのか!」と言うところですが、最近は本人に聞く気がなければ話しても時間の無駄であることがわかってきたので黙っていました。JRは窓を開けて飛沫感染を予防しようとしていますが、椅子や手すりについたウイルスはしばらく感染力を持ちます。手術の時はほんの少しでも何かに触ったかもしれないと思ったら、手袋を替えなければなりません。術野に細菌を持ち込めば感染を起こしてせっかくの手術が台無しになり、患者さんが危うくなる、その緊張感を持てとは言いませんが、コロナウイルスに感染した人が咳をしてウイルスがくっついているかもしれないところで口に入れるか?と怒りを覚えます。無知なのか無関心なのか無神経なのか、本人だけの問題ならいいけど肺炎を起こして病院に行けば病院の治療機能が奪われ、医療崩壊という深刻な事態を招くのは欧米の状況をみれば明らかです。また愚痴になりましたが後の教訓とするために記録しました。

 さて本題ですが、これを書いている4月12日現在外出禁止とまではなっていません。学校が休みの子供は走り回っていますし、散歩している人も結構います。その中にコロナウイルスに感染した人がいるかもしれないと心配される人も多いでしょう。人に会わなければ感染する危険は減りますので家に居ることは賢明です。総理も知事も家にいろと勧めています。呼び掛けに応じて外出しないのは良いのです。家の中でどう過ごすかが問題で頑張って家の中で運動しないと体調を崩します。ふだんおすすめしているスクワットでもラジオ体操でも何でもいいですのでとにかく運動しましょう。だらんと寝そべっているばかりでなく座っていても筋肉はもちろん心肺機能が衰えます。そして身体の抵抗力が衰えてしまうとコロナウイルスを跳ね返すことができません。健康を維持しストレスを発散するためにも少し汗ばむくらい身体を動かしましょう。立って身体を前後左右に動かすだけでもいいでしょう。横になるなら膝を曲げておしりを上げる運動をしてみましょう。おしりの筋肉がギュッとしまって鍛えられます。この運動は腰痛にも効果があるので、一所懸命にやればコロナ騒ぎが収まったころには腰痛がなくなっているかもしれません。
これは本当です。
2020年04月14日

No.15 痛みはゆるみから

 令和2年になってオリンピックと思ったら、中国発のコロナウイルス騒ぎです。いずれ人類を滅ぼす病原体が現れるかもしれませんが、今回ではないでしょう。やれマスクがない、トイレットペーパーがないと大騒ぎですが、学会を含めてイベントが中止となり、身体を鍛えるジムもお休みと時間ができましたので、久しぶりに書いています。

 今回は先だって経験した患者さんから学んだ話です。患者さんは3年前に別な病院で腰の手術を受けたけれど腰の痛みがまだ取れないとのこと。「ずっとコルセットをつけていないと痛いんですよ」と言われるので「コルセットはあまり長くつけていると筋力が弱って痛みが取れませんよ」と言いました。教科書にも脊柱の筋の萎縮を防止するためにコルセットの装着は漫然としてはいけない、つまり外さなければならないと書いてあります。外すと痛いというのを説得して外してもらうと、それまで伸びていた背中がだらんと緩みました。ちょうど蟹の殻を割って身を出したときみたいにふにゃりとしたのです。「さっきまで痛くなかったけど今は痛いんじゃありませんか?」「そうです。今痛いです。またつけていいですか?」コルセットがあれば痛みは無くなるでしょうが、これではいつまでたっても痛みはなくなりません。「コルセットをつける代わりに背中を支える筋肉を鍛えて自分の筋肉をコルセットの代用にしましょう。そうすれば必ず痛みはとれますよ。」と腰痛体操を指導しました。ふにゃふにゃでは重い上半身は支えられない。それが痛みの原因ということは痛みはゆるみからくるということです。

 それから考えてみると、朝起きるときに腰が痛いという高齢者はたくさんいます。しばらくすると痛みはなくなる。なぜかといえば寝ている間に腰の周りの筋肉が緩んでいるからといことになります。起きてしばらくすると腰の周りの筋肉が引き締まって上半身を支えるので痛みが無くなる。ですから起き上がる前に腰の周りの筋肉のゆるみを引き締めれば痛みなく起き上がることができます。以前紹介したおばあちゃんが言っていた「下腹に力を入れて起きれば痛くないんです。」というやり方は正しい。上向きで寝ていてまず足首を軽く回してから膝を曲げた状態でおしりを少し上げる運動をするのもよいでしょう。是非試してみてください。

 膝の痛い人もたくさんいますが、高齢者で共通しているのは太ももの筋肉が細くなっていることです。膝は骨と骨の間に関節があってそこで曲がるのですが、特に階段を上り下りするとき等に,その関節を骨の間をつなぐ筋肉が引き締めて安定させないと痛くなります。関節にまっすぐに重力がかかると痛くないのですが、骨と骨の間が操り人形のようにバラバラだと関節がゆがんで余計な負担がかかって痛くなるのです。これもゆるみが痛みの原因となるの一つの例ですね。ぶつけて腫れて痛いのは別ですが、動くと痛いという人の多くはゆるみが原因の可能性があります。筋肉を鍛えてゆるみを引き締めればその痛みは無くなります。これは本当です。


2020年04月14日

No.14 針治療と養生のすすめ

 令和元年もあっという間に過ぎ去って新年を迎えました。無常の風が吹いているとだいぶ前に言っていたおじいちゃんも昨年亡くなりましたが、「後藤君、60代はあっという間にすぎるよ。」という言葉は本当であると思います。光陰矢の如しで悔いのない仕事をせねばなりません。

 さて昨年令和改元とともに始めた針治療ですが、やって効果があった人には感謝されています。これは当たり前ですね。残念ながら麻酔とは全く効き方が違うので、やった時は良かったがその後すぐ痛みが再発した人もいます。薬を使わない分切れるのも早いのでしょう。

 そこで今回は針治療が有効な典型的症例を紹介します。心当たりがあれば一度ご相談ください。個人情報保護の観点から脚色してありますが、4か月前に右肩をひねってから肩の痛みがとれないという50代の女性の患者さんが来られました。「そのうち治るかと思ったのですが、痛みがとれないんですよ。」とのこと。肩は上がるしレントゲンでも異常はありません。何か病気を疑うならMRIとかCTとか検査を追加するところですが、診察上はその必要はなさそうです。そこで以前傷めたときの痛みの記憶が残っているのであろうと痛みのある部位に置き鍼をしました。そのうえで忘れずに「甘いものは好きですか?昔は砂糖が痛みに効く薬だったのです。逆に普段から甘いものを取り過ぎていると痛みがなかなか治りません。痛みがとれるまで甘いものを控えてみましょう。あとおなかが冷えるので緑茶、果物、乳製品も控えましょう。それから足湯で温めると痛みは楽になりますよ。冷えると痛みは強くなりますから。」といった養生を指導しました。その後患者さんは来院されなかったのですが、しばらくして今度は腰が痛いと来院されました。診察して「ところで以前肩が痛かったじゃないですか。あれは治りましたか?」と聞くと「ああ、あの後すぐ治りました。」とのこと。このように病気や外傷はほぼ治っているのに痛みだけ残っている患者さんには針治療はとても効果があります。

 針もいいんですが大事なのは養生です。漢方に限らず慢性の痛みに悩んでいる患者さんには養生、特に甘いものをとらないようにと運動をするようにお話しています。昔の漢方の名医も言っていますが養生しなければ薬は効きません。忙しくストレスの多い現代社会でいかに養生を実践できるか、健康な生活に変えることができるかがこれからの課題です。病気だけ治してくれという患者さんの気持ちはわかりますが、病気の原因となった生活習慣を改めないと治せないのです。タバコが原因で病気になった人を治療してもタバコを吸い続けるとまた病気になるのと同じ事です。特に今の時代は甘いものがあふれてますので要注意です。そのほか偏食、夜更かし、運動不足、忙しくてシャワーだけなど不健康の原因ばかりです。薬なしで養生だけで病気の治った患者さんもたくさんいるんです。養生しなくなると再発しますがこれは本人の選択です。健康に勝るものはないと思うんですが。近年医療費がかさんで国の財政が危機的だという話もありますが、みんなが養生すれば自分のためにも家族のためにも国のためにもよいと思います。

2020年01月07日

No.13 針治療はじめます

 新しい元号は「令和」でした。元号が新しくなると、新たな気持ちで頑張ろうという気になります。4月から水曜も午後外来を担当することとなりました。これからは古人の知恵を生かすべく、漢方養生外来として診療の幅を広げていきます。その中で新たに針治療を始めます。針治療は鍼灸師さんが行うことが普通ですが、医師も行うことができます。

 患者さんを診ていると「ああ、この人の痛みには針が効くのだがなぁ」と思うことがよくあります。「痛みを何とかしてください。」という患者さんに「針を試してみてはいかがでしょうか。」「どこに行けばいいのですか?」「ん・・・」という会話を何度か繰り返しました。いっそ自分でやろうと今回針治療を始めることにしました。私の漢方の師匠は針を用いて非常に優れた効果を上げています。私もその指導を受けて整形外科の痛みについては治療を任され、確かに良くなることを経験しました。

 先日の患者さんは肩こりがひどく耳鳴りもするという人でしたが、視力が落ちて疲れるとも訴えており目の問題が肩こりの原因になっているのだろうと考えていました。針治療をしてしばらくすると「先生、何か目が見えるようになってきました。耳鳴りもいいようです。」 とのこと。肩こりと視力障害、耳鳴りが悪循環となって患者さんを苦しめていたのだなぁと思った次第です。針がなぜ効くのか科学的に説明は難しいのですが、肩こりや腰痛などの痛みには本当に良く効きます。東洋医学による説明では気の流れが停滞している場所を刺激して気の流れをよくすると痛みがとれると説明されます。しかし気の流れを悪くした原因が残っているとまた痛みがでてきます。そこで痛みの原因を根本的に取り去るには原因(生活習慣、ストレスなど)を改める養生が必要になります。今の病気の原因の多くは患者さんの養生不足によるところが大きく、薬を出すより養生するだけで病気が治る方がたくさんいるのではないかと考えています。養生は患者さん本人の努力によるので、そのお手伝いをして病気を治すことができれば大きな喜びです。

 針というと「痛い」とか「怖い」と思う方も多いと思います。そういう針もありますが、私がやるのは薄いシール型のものと細い針です。浅く刺すので、ほとんど危険はありません。経験では少し痛いと感じる方が症状はよくなるようです。シール型の針は、置き針として貼り付けたまま3~4日間自然にはがれるまで置いておきます。とれればゴミとして捨ててください。細い針も15分以内で終わります。私の経験では、筋に緊張のある場合は針治療がとてもよく効きます。

 私自身「しまった。寝違えた」と思ったら、シール状の置き針を痛みのある頚のところに貼りつけて、時々自分でツボを押すように刺激しています。軽いものであればそれで十分で久しくロキソニンのお世話になることはありません。

 「令和」の時代に向けて、患者さんに更に喜んで頂ける医療を行えるよう努力を続けていきます。
2019年09月20日

No.12 養生の道は中庸の道

 先だって日本東洋医学会が大阪で開催され勉強してきました。医学は日進月歩で常に新しい知見が増えています。「医師は一生勉強だ」と恩師の先生が力説されていましたが、今までの治療に満足せず少しでも患者さんが良くなるよう勉強し続けたいと決意を新たにしました。

 最近は医学の進歩のおかげで治らない病気も治るようになったといっても、なおそれでも健康の基本は養生であると思います。現代は自然から離れすぎ過食と運動不足、寝不足の不健康な生活を送っている人が多く、そのために心と体を病んでいる人がたくさんいます。最近我々の漢方グループではお薬を出す前に病気の原因となった不健康な生活を改めることをまずやってもらい、治ればその生活を維持する、症状が残ればこのでお薬を出すという方針で治療しています。生活を改めるだけで病気が治る患者さんも結構おられます。医療費がどんどん増えて国の経済が傾くと心配されていますが、患者さん本人が努力しさえすればお金もかからす薬の副作用の心配もないとても良い方法だと考えています。やり方を教えて寄り添って患者さんを健康にするのがこれからの医師の仕事だと考えます。

 今の日本の一番の問題は糖分、特に果糖の取りすぎです。果物も甘すぎてよろしくありません。前にも書きましたが以前私はカリントウ一袋ペロリと食べる甘党でしたが、患者さんに勧めるのに自分がこれではいかんと一切甘い物を止めたところ毎年人間ドックで指摘されていた悪玉コレステロール値が148から正常の118に下がりました。

これまでは余分な糖分が脂肪に変わっていてメタボ状態だったのです!

 体重も落ちて癌じゃないかと心配するくらい痩せました。単純に食べる量を減らしてダイエットするのはかえって死亡率が高まるので危険です。そこでご飯はしっかり食べて、研究の結果カロリーの少なくなった分を脂肪(MCTオイル)で補っています。

 高脂血症でお薬を飲んでいる内科の先生にも「甘いもの止めると薬飲まんでいいですよ。」と勧めたのですが「いや私は甘いものは好きなので。薬飲んで病気にならなきゃいいじゃないですか。」と言われました。

 それでは高血圧には降圧剤、高血糖には糖尿病の薬、腎臓が悪くなれば腎臓のとどんどん飲む薬が増えてしまいます。生活習慣を改めて健康になるのが正しい道であるのは明らかなのに。つらい道を選ばずに楽な道を選ぶのは人間の本能かな。ついでに乳製品も控えた方がよい。東洋医学会でも発表がありましたが、もともとチーズなどの乳製品は乾燥地帯で保存食として作られたもので身体に入ると湿を増やして内蔵を冷やします。湿気の多い日本には向かないようです。糖分と同じく少し取るなら問題ありませんが、たくさん取りすぎてはいけません。いくら身体に良いものでも取りすぎると毒になります。

過ぎたるは及ばざるが如し。

 最近はおばあちゃんから教わらないのでしょうか。医学が発達して薬を飲めば養生しなくても病気を防げる時代だとは思いますが、好き放題に生きるのではいつかしっぺ返しがくる、端っこによらずに真ん中を歩けば溝に落ちないという中庸の道が先人の知恵だと思います。
2019年09月19日

No.11 膝がイタタ・・・

 暖かくなって通勤も快適となり、オリンピックも近づいてスポーツ庁の鈴木長官の「通勤をスニーカーにして運動しましょう」という国家方針に基づいて運動靴をはいて一歩踏み出したその瞬間、「イタタ、左膝が痛いぞ、どうしたんだ?」左膝の関節の外側が痛くて伸ばせない。「これは外側の半月板の症状だな。このタイミングで・・・」などと考えたが痛くて歩けない。

 半月板というのは膝の関節の上の骨、つまり大たい骨と下の脛骨の間にある隙間を埋めるクッションのような軟骨で内側と外側にちょうど眼鏡のような形であります。スポーツ等で切れて膝が腫れて診察するときにまず疑う病気ですが、齢をとると軟骨自体が弱くなって自然に壊れる人もいて整形外科では「変性断裂」と呼んでいます。

「痛みは切れた半月板が関節の間に挟まって起こるわけだから脚を振れば元に戻るかな」

と映らなくなったテレビの感覚で2、3回振ってみるとあら不思議、何ともなくなりました。しかしまた歩き出すとやはり痛い。しかも歩けないほど痛い。「いやあ、困った。しかし半月板であれば、挟まらないように気を付けて歩けば痛くないはずだ。そうでないと手術で壊れた半月板を切り取れば痛みがなくなる説明がつかない。」など考えながら注意しながら膝が捻じれないようにまっすぐに歩いて行くとまた痛くない。「これでよし。何とか出勤できそうだ。すぐ戻るから手術が必要な断裂という大げさなものではないな。でも横断歩道を渡っている時に膝が痛くなったら困るなぁ」そんな心配しながら、そろりそろりと痛みが出ないように歩いていました。

 わかりやすく紹介されている整形外科学会のホームページから引用させていただくと「半月は加齢にともない変性するので、40歳以上ではちょっとした外傷でも半月損傷がおこりやすくなります」とあり、何か理由があるはずだと振り返っても今となっては仕方ない。全ては運命と諦めることにしました。

 ちなみに外来では「理由は何ですか。老化ですか?」と聞かれて老化という後ろ向きの言葉は使いたくないので「長い間頑張ってきたご褒美でしょうね。」と説明しています。

 その夜風呂の中で「長い間よく頑張った。でもまだこれからもあるので引き続き頑張ってほしい。無理はさせないから。」と膝をさすっていました。ところが夜中に今度は反対の右ふくらはぎが、かばった歩き方をしたためでしょうが、これまたこれまで経験したことがないほど痙攣して飛び起きました。こちらもとても痛い。漢方薬の芍薬甘草湯が即効性があるとは知っていましたが、自力で伸ばすことができたのでそのまま寝たら翌朝になっても右のふくらはぎの痛みが取れていない。そんなときは一回だけ飲んだほうがいいかなと反省しつつ左膝を診てみると外側でなく内側が痛い。「おかしいな。そういえば研修医のころ膝が専門の新名先生の手術に助手で入って「いいか。この患者はこれこれの症状があって外側の半月板の損傷だ。よく見てろよ。」と言われていざ手術で見てみると外側の半月は何ともない。「はて?」と内側を見てみるとこちら側がはっきりと切れている。切れた方を治療しながら新名先生が「こんな不思議なこともあるんだな。」と言っておられたのを思い出しました。

 今はMRIがあるのでそんなことはないのですが症状だけで病気の場所を診断するのは注意が必要です。先だってある学会でも膝の痛みを訴える患者さんの膝を調べても何の異常もなく、股関節のレントゲンを撮ったらそちらに病気があったので股関節を麻酔したら膝の痛みが消えたことを確認して股関節を手術したら膝の痛みが治ったという発表がありましたが、人間の痛みの感覚というものは意外にあてにならないものです。

 私についていえばこの程度の半月損傷の痛みは自然に治ることが多いので、太ももの筋肉に力を入れて膝が捻じれないようにまっすぐに前に出して歩いています。これからも脚の筋力を鍛えて齢を重ねていきたいものです。
2019年09月19日

No.10 安全なスクワット

 日本選手の大活躍のうちにピョンチャンオリンピックが終わりました。皆様の応援が通じたのか女子のカーリングも奇跡的に銅メダルを取って万々歳です。オリンピックが始まって最初のころデコボコの斜面を滑り降りて途中で宙返りするというモーグルというスキー競技があり、あんなに膝がガクガク動いたら痛くならないものかなと不思議に思ったものです。じっとテレビの画面を観察すると膝から上はガンガン飛び跳ねているのにスキーから膝まではまったく同じ姿勢で動いていません。その時ヒラメキました。スクワットをやるときに膝を前に出すなと必ず言いますが

実はこれだったのだ!

 日本整形外科学会では運動器の障害のために移動機能の低下をきたした状態を「ロコモティブシンドローム(略称:ロコモ、和名:運動器症候群)」と定めました。ロコモを予防するためにロコトレとして「片脚立ち」と「スクワット」を学会として推奨しており、テレビなどで見てやっている人もたくさんいると思いますが問題があります。スクワットをやって膝を悪くする人がいて、当院では変形性膝関節症の患者さんにはスクワットはするな、筋トレするなら体重をかけないで四頭筋訓練をしなさいと指導しています。スクワットは予防のための運動であり明らかな病気の人はできればリハビリに通って正しい筋トレをすべきです。

 では将来病気にならないための安全なスクワットの運動はどうやるか。膝を前に出すといけないのはなぜか。そこでオリンピック選手がヒントをくれました。

 立ち上がる時に理論上少しでも膝が前に動くと関節の靭帯や軟骨に無理な力が加わり関節を傷めます。そこで地面につけた足から膝関節までは動かないようにふんばって固定して膝の位置を動かさないようにして膝から上で立ち上がれば関節は保護されて傷まない、ちょうど固いビンの蓋を開けるのに指で回そうとすると痛くなりますがギュッと指でつかんで腕の力で開けると痛くないのと同じです。これからスクワットをする人はその点に注意して行ってください。そうやってスクワットをやるとそれはお尻の運動のように見えます。正しいスクワットは膝の運動ではなくお尻の運動なのかもしれません。
2019年09月19日

No.9 甘い物をやめたら痛みがなくなる

 整形外科の外来には痛みがあるために来られる患者さんがほとんどです。私の考えでは痛みには熱い痛みと冷たい痛みの2種類があります。傷が化膿したりぶつけて腫れたなどというのは熱い痛みで炎症を起こして痛むのでこれはロキソニンなどの消炎鎮痛剤が効きます。一方冷たい痛みは熱をもっていないので炎症を抑えるロキソニンなどは理屈からいって効きにくい。その場合は温めると楽になることが多いので足湯などで外から温めることをお勧めしていますが、冷たい痛みはとても治りにくいものです。それは痛みがある身体の内側が冷えていることが原因です。冷たいビールやコーラなど飲めば当然冷えるので冷たい痛みがあるときは温かいものを飲みましょう。

 しかし外来でたくさんの患者さんを拝見して、現在身体を内側から冷やす最大の原因は実は甘いものです。

 世界保健機関も砂糖の取りすぎに警鐘を鳴らしているように、現代人は砂糖を取りすぎています。多すぎる砂糖は身体を冷やします。その説明は長くて複雑なので次回としますが、論より証拠でなかなか痛みの取れない人に一度甘いものをやめてみましょうと勧めて真面目に甘味を控えたら痛みがすっかりよくなりましたと感謝される患者さんはたくさんいます。その後また痛くなったので「甘いものやめてますよね」と聞いたら「バクバク食べています」との回答で少しがっかりしながら「まずまた甘いものを止めることから始めましょうよ」という患者さんも少しいます。甘いお菓子はもちろんいけませんが果物も品種改良によって甘くなりすぎていますので控えるべきです。

 私自身の経験で恐縮ですが、以前はカリントウが好きで一袋ペロリと食べていましたが、患者さんに甘いものを止めろと言って自分が食べているのは言葉に力も出ないし良心も少しとがめるのできっぱりと止めてみました。しばらくすると少しでも甘いお菓子を食べると胃のあたりが冷えて重い感じがして気持ちが悪くなりました。ああこれまで本当に身体に悪いことをしていたのだなぁ。料理に使うくらいの量なら砂糖もよいでしょう。しかし甘いものを食べ過ぎると糖尿病になる以前から身体を傷めます。自分のことはともかく甘いものをやめたら痛みがなくなることが多い、これは本当です。
2019年09月19日

No.8 マイブーム 8.8メッツ

 今回は私のマイブームについて紹介します。マイブームというのはその人の流行ということです。親戚のおじいちゃんが十年くらい前に突然「無常の風が頭の上を吹いている」と言い出しました。事あるごとに何度も繰り返すのでご高齢でもあるしいよいよかなと思ったら家族の人が「あれはおじいちゃんのマイブームですよ」とのこと。流行は一時のことでそのうち言わなくなり無常の風はどこ吹く風で今も元気です。

 8.8メッツのメッツというのはMETs(Metabolic equivalents)身体活動の強さを表す単位のことです。安静にしていると1メッツ、早歩きが4メッツ、ランニングが10メッツなどで、健康づくりのための運動の指針として使われます。

 話は数カ月前になります。松田院長先生は空手部でしたが私は学生時代バスケット部で6年間体育館を走り回っていました。そのバスケット部のOB会があり、後輩でスポーツ医学専門のK先生に「最近電車に遅れそうになって駅の階段を走って上がると息が切れるんだ。齢はとりたくないよ。」と言ったところ、「後藤先生、それは心筋梗塞の兆候ですよ。」と言われてびっくり。「心筋梗塞、おれが!?」「普段運動していない人が突然運動すると心筋梗塞の危険が100倍になります。階段を上がるのは8.8メッツなので、その程度で息が切れるのは危険です。週1回運動しているひとは◇倍、2回なら△倍の危険率で・・・」丁寧に教えてくれましたが、要点は普段運動していなくて急に運動するのはとても危険、運動することはある程度危険だが運動しないよりはよいということのようです。映画などでひったくりにかばんを取られた老人が「ま、待て」と追いかけようとして胸を抑えて倒れるシーンがありましたが、まさしくあれです。心筋梗塞にならない程度に運動するバランスが難しいけど、普段の生活の中で運動の機会をみつけて心筋梗塞を予防しようと決心しました。階段を上がるのが8.8メッツと結構な強度なので、階段があれば階段を使おうとマイブーム8.8メッツが始まりました。ちなみに階段を駆け上がるのは本当は15メッツで相当きつい運動です。急いで電車に飛び乗るのは実は命がけです。

 患者さんに聞くと運動は散歩またはウォーキングしていると話される人が多いですが、これは3メッツ程度です。太ももの筋肉を鍛えるという意味では物足りませんが、心臓にとっては安全です。まったく運動しないのはいけません。
2019年09月14日

No.7 西洋医学と東洋医学

 私も今年還暦を迎えました。仕事のペースもぼちぼちと考えていたら本当に久しぶりに書くことになりました。

 先だって名古屋市で開催された日本東洋医学会に参加しました。漢方の学会最高峰ですが、今回は約25年ぶりに自ら発表することにしました。若い時は上の先生に尻を叩かれていつも学会で発表を行っていたものです。しかし、いつしか大学から離れてしまい時々自衛隊の災害医療について講演をするくらいで、自らの研究を発表して批判を受け医学の進歩に貢献するという本来の学会発表からは遠ざかってしまいました。還暦で何か記念になることをしたいと考えていたところに非常に興味ある患者さんに遭遇して、少し医学の進歩に貢献しようと若返った気持ちで発表することを決断しました。

 その患者さんは別の病院の症例で50歳過ぎの方です。若い時から痛風の痛みに苦しめられていました。痛風は血液の中の尿酸という物質が増えて関節で結晶をつくり、ひどい痛みを起こす病気です。他の病院で血液の尿酸を下げる薬を飲んで尿酸の値は正常でしたが、足の親指の関節が腫れて痛くて杖をつかないと歩けないというつらい状態で来院されました。痛風の痛みを抑えるには、まずコルヒチン、次にロキソニンなどの消炎鎮痛剤、それでもだめならプレドニンなどのステロイド剤というように西洋医学的な標準的な治療が決まっています。

 コルヒチンとロキソニンはいずれも効かないとのことでした。漢方で治療したいということで来られたので、診察してみると詳しくは省略しますが漢方用語で「肝の気が高まった状態」でした。肝の気を抑える薬である抑肝散を飲んでいただいたところ、見事に痛みが治まり杖をつかずに歩けるようになりました。それまで痛風に抑肝散が効くという発表はなかったので、同様の患者さんがいれば役に立つ、つまり少しでも医学の進歩に貢献できると思い発表した次第です。

 ところで抑肝散はここ松田整形でも比較的よく出す漢方薬です。効く患者さんには本当によく効くのですが、認知症の興奮状態を抑えることにも使うことがあるため、患者さんによってはこんな薬を出すのかとお叱りを受けることもあります。もともとは赤ちゃんの疳の虫を抑える薬でしたので認知症だから出す薬ではないと説明するのですが、たまに誤解が解けないことがあるのが残念です。とにかく今普通に使っている西洋薬の基準治療では治らない患者さんが漢方で治ることがあることは事実です。なんでも治せるわけではありません。しかし、今回のように完全に良くなることもたまにあります。なかなか治らない病気が良くなると患者さんにも喜んでいただけますし、私も嬉しくなります。西洋医学と東洋医学、最新医学と伝統医学、良いところを上手に組み合わせて患者さんが良くなればいいなと考えつつ日々の診療を行っています。
2019年09月14日

No.6 足がつる

 外来で80歳を超えられた、高齢の紳士から「先生のホームページの話は面白い」というお褒めの言葉をいただきました。これからもご期待に応えたいと思います。

 No1で紹介した私と松田院長先生の恩師である、徳島大学名誉教授の安井先生が上京され主に防衛医大の同窓生相手に講演されました。犬の脚を伸ばす実験で、若かった松田先生に創外固定機をつけた犬を散歩させてもらったなど懐かしいお話をされました。創外固定でなく骨の中に埋め込むやりかたもあるとのことですが、まだ外につける機械にとって変わるまではないようでした。当時イギリスの研究所から実験の結果が防衛医大のように安定して出せないという話があったとのことですが、No1で紹介した安井先生の厳しい指導を後輩医師たちにも紹介しました。当時は大変でしたが今思えば幸せな時代でした。


 さて、今回は外来でも多く聞かれる「足がつる」という問題についてです。情報が氾濫する時代、ネットで調べればその原因、対処法などいろいろ書いてあります。まず、原因の第一に疲労、サッカーのワールドカップ予選日本は苦戦していますが、後半になってくると敵味方とも足がつったようで大変です。スポーツクラブで言われるのは水分やミネラルが不足すると足がつるので十分に補給するように言われます。

高脂血症や筋疾患など、内科の病気でも足がつることがあります。

整形外科では腰部脊柱管狭窄症や循環障害などでつりやすくなります。

 齢を重ねると足が簡単につるというのは私自身最近実感するところです。以前は平気で胡坐(あぐら)で座っていましたが最近はすぐ足がつるようになって困ったものです。筋肉も齢とともに硬くなるのであきらめるしかありません。つりそうになったら周りの人にわからないようにマッサージするくらいでしょうか。

 足がつった時に治す特効薬として芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)という 有名な漢方薬があります。以前自衛隊に勤めている時、同世代の友人から運動すると足がつって困るという話を聞きました。それには芍薬甘草湯がいいよと言ったところ、しばらくしてあの薬はいいねぇどんなにつっても三袋も飲めばすぐ治るよと感謝されました。その時にそれ以上は一度に飲まないように続けて飲みすぎないようにと注意しました。芍薬甘草湯はよい漢方薬ですが副作用を起こしやすい薬でもあります。足がつらなくてよいと毎日3回ずーっと飲んでいる人もいますが、長期に飲むと血圧が上昇してくるという論文もあります。低カリウム血症などいくつかの病気の人は飲んではいけません。どんな薬もそうでしょうが毒とならないように上手に使って行けばよいのです。

 結論として足がつるのはどうするか、夜つるのであれば寝る前、運動などではその前に芍薬甘草湯を一包飲んで予防するのはよいでしょう。つったらその時に芍薬甘草湯をすぐ飲むのも有効です。最近足がつって齢はとりたくないものだと嘆かれる患者さんもいますが、その齢まで長生きできたご褒美だと思って上手につきあって行くしかありません。親からもらったこの身体取り替えることもできないので。
2019年09月14日

No.5 足腰を鍛えよう

「痛みはバランスの問題」から、だいぶさぼっていました。先だって外来の患者さんにそれとなく指摘されましたので再開します。

 最近、電車に遅れそうになり階段を勢いよく走って登っている時ズキンと膝が痛くなりました。なんとか電車に飛び乗った後痛さのあまり足が前に進まず中腰で立ちつくしてしまいました。

半月板を傷めた?靭帯を切った?関節軟骨を傷つけた?

 いろいろ考えましたが、ほどなく痛みも治まり、一時のものだったと安心した次第でしたが・・・。なぜそんな激痛が走ったか。それは階段を走って登ったからです。以前は階段を走って登るくらいでは痛くなった。何が変わったか、膝が壊れやすくなったこともほんの少し関係しているでしょうが、まずは筋力が弱くなったことが考えられます。自慢ではありませんが人並み以上には運動しているつもりで時々、患者さんに「こうやって膝の筋力を鍛えると痛くなくなりますよ」と実演していますが、膝の筋力と運動負荷のバランスが崩れるとあーとんでもなく痛い。まあ無理をせずゆっくり歩いて一本後の電車で行けば痛くはないのでしょうが、海の傍では津波、街を歩けばテロの心配がある現代、何かの時に素早く動ける筋力は維持しておきたいものです。

 階段での痛みの教訓として筋力を強くしておけば痛みがないわけではないようです。筋肉は力強く縮んだあとすんなりと伸びなければいけません。焼き鳥屋で若鳥と成鳥を比べてもわかるように齢をとると筋肉は軟らかさを失うようです。筋肉の軟らかさを保つためにストレッチ運動も筋力強化と同様に重要です。膝や腰の痛い患者さんを治療するのに理学療法士の先生に筋力強化の指導をお願いしています。それだけで階段の昇り降りが楽になりましたというお話を聞きます。いい仕事してますねえ。

 慢性の腰痛も痛み止めのお薬を飲むより体操をして筋力を強化したほうが効果があるといわれています。変形性膝関節症も筋力を強化するのが有効な治療です。膝が痛い、腰が痛いと思ったら足腰を鍛えてみましょう。ほとんどそれで痛くなくなります。

痛みが続けば一度病院でみてもらいましょう。
2019年09月14日

No.4 痛みはバランスの問題

患者さんはよく「どうして痛いんでしょうねぇ」と聞かれます。

 痛みの原因には2種類あると考えています。まずは病気の痛みです。例えばガンなどの腫瘍や細菌やリウマチなどが原因で起こる炎症、その他放置してはいけない痛みです。中には悪化して命に関わることもあるのでできるだけ早く診断して治療せねばなりません。医師として絶対見逃してはいけない痛みです。この痛みは姿勢に関係なくずっと痛いのでその点に注意すれば見つけることは可能です。しかし、初期には他の痛みと見分けることは容易ではありません。

 忘れもしない私が若い頃、職場の看護婦さん(当時はそう呼んでいました。今は看護師です。)がボーリングをしたときに膝を捻じって痛いので薬をくださいと頼んで来ました。
はい、いいですよと気楽に処方したのですが、その痛みがなかなか治らずに後でよく調べたら膝の腫瘍でした。下手にろくに診察もせずに治療したために発見を遅らせてしまったと反省して、腫瘍だけは絶対に見逃さないようにしようと誓ったものです。病気からくる痛みを診断し、治療することは医師の大事な使命です。

 今回お話したいのは、病気以外の痛みです。ここで病気か病気でないかの違いはほっておけば治るか治らないかの違いと言うことです。無理な運動をしたりすると痛みを感じますが、別に病気ではありません。ほっておけば自然に治ります。今回は病気でない痛みの本質はバランスを失うことで起こると申し上げたい。バランスのとれた範囲であれば仮に少し痛みを感じてもやがて治ります。痛みはバランスを取り戻すための危険信号と言えるかもしれませんね。私は胃の痛みに悩まされますが、胃の痛みは胃の壁を溶かす胃酸と胃の壁を守る粘膜のバランスが壊れることで起きます。食べ過ぎたりストレスがかかったりすると胃酸が出て胃が痛くなるので薬を飲んで治します。程度が軽ければ自然にバランスをとって薬を飲まなくても治ることができます。胃を痛めやすい人と胃が丈夫な人の違いはバランスをとる力の差といえます。程度としてのバランスは痛みの原因になるのは、お分かりいただけると思いますが、姿勢のバランスも痛みの原因になります。

 整形外科での痛みの多くは姿勢のバランスが崩れることから起きます。年齢を重ねると、膝の内側が痛くなる人多くなります。日本人は膝の内側が痛くなりやすい。なぜかといえば日本人はややO脚の人が多く、まっすぐ立とうとしても右と左の膝の間に空間ができてしまうことが多いようです。左右が一本のニンジンのように立てれば恰好がよいのですが、なかなかそのようになる人は珍しい。膝が開いた状態では体重はどうしても膝の関節の内側にかかりますので膝の軟骨も外側より内側が傷みやすくなります。できれば若いうちから膝を傷めないように膝の間が開かないようにまっすぐに立つ習慣をつける方がよいと思います。

 自衛隊では入隊すると立つ、歩く訓練から開始します。私も防衛医大に入ってすぐの基本教練(初歩の訓練をそのようにいいます)で「膝を閉じろ!」と怖い教官から怒鳴られましたが今考えると非常に合理的なことだと考えます。しかし膝を閉じて立つというのは容易なことでないのも実感として解ります。歩く時もまっすぐに内股でも外股でもなく左右の足が平行に出るのが理想です。そのような立ち方、歩き方をすれば膝の痛みの少ない老後を送れると思うのですが、この年齢になってからでは難しい。

それではどうすればよいかは次回。
2019年09月14日

No.3 上手に漢方を利用するために

 この患者さんには効きそうだと思った時は漢方薬による治療を勧めています。整形外科は痛みを扱う診療科と言われますが、痛みにはまだまだ解らないところが多く、何人かの患者さんには満足していただける治療が出来ていません。痛みを和らげる薬も日々新しいものが作られ効果を上げていますが、それでも効かないとか副作用があって薬は使いたくないという患者さんが結構おられます。決め手がない以上患者さんの苦痛を和らげる手段は多い方がよいわけで、一般的な西洋医学の治療に加えて東洋医学つまり漢方薬の治療を行うことで一人でも多くの患者さんに良くなってもらいたいと考えています。


コツ その1 良薬口に苦しといいます

 もともと漢方薬は植物の実や根などを薬缶で煎じて患者さんに飲ませるものでした。専門の薬局では現在でもそのように調合して患者さんに煎じ薬として出していますが、当院で使用している漢方薬は製薬会社が材料を裁断、成分抽出して粉状にしたものです。一般にはエキス剤と呼んでます。従って粉末状になった漢方薬をお椀に入れ、熱湯を注いで煎じ薬のようにしてから飲みます。少しお湯を注いでよく溶かしてから、お湯を薄めて50から100mlくらいのお好みの量で飲み干すのがよいようです。

 苦いから嫌だという人が多いようですが、おばあちゃんも言っています。「良薬口に苦し」と。その薬が身体に合うのであれば苦くても飲んで嫌にならないようです。飲んで飲み続けられれば薬の効果が期待できる可能性があるという印象を持っています。まれには瞑眩(メイゲン)と言ってひどい副作用のような症状を出して元の病気がすっきりと治ることもあるようです。そのようなこともあるので私は効果をみるために短期間、1から2週間漢方を試してみてから続けるのが経済的にも良いと考え勧めています。効くかどうか自分の身体の声を聞いてください。たとえ苦くても身体が必要とするものであれば受け入れることはできるはずだと考えます。

 もし飲んでどうも調子がよくないようなら中止してご相談下さい。


コツその2 食前か食後か迷ったら

 一般的に漢方薬は食前に飲んだ方が効果があります。貴重な食べ物の栄養を吸収するのに他のいろいろなものがあると効果が弱まってしまします。しかし食前に飲むのいっても忘れる人も多いようです。成分として身体に入れば効果をある程度示しますので1日分をたとえ食後になっても飲んだ方が効果があります。


コツその3 飲み合わせと副作用のトラブル防止

 漢方薬は比較的安全な薬です。しかしまれに副作用を起こすことはあります。人が自然界に存在するものにアレルギーを持つことがあるのはソバや卵の例をみてもその通り。漢方薬も例外ではありません。飲んでみて調子が悪ければその薬を飲むのをやめて相談してください。飲み合わせで注意が必要なこともありますので,よく相談して服用を開始しましょう。
2019年09月14日

No.2 漢方治療を試してみませんか

 人工衛星が小惑星に行って帰ってくる時代になぜ漢方という意見もあるかもしれません。最近の医学の進歩は本当に素晴らしく以前不治の病と考えられた病気も治るようになってきました。病気のことが西洋医学の遺伝子や分子生物学の手法を用いてまるで人間が機械であるがごとく修理できるようになったわけですが、それですべての病気が治るようになったわけではありません。最新の西洋医学を用いてもなかなか治せない病気を漢方を用いると治せることがあります。

 先だって富山市で開かれた東洋医学会において川崎医大の沖本先生が発表した症例(O-121)を紹介します。この患者さんは気管支喘息で西洋医学の最新の治療を受けていたのですが、発作で入退院を繰り返すために東洋医学の治療目的で紹介されました。患者さんはとにかく頭に汗をかき、頭を振ると医師の顔にしぶきがかかるほどであったとのことでした。そのような頭の汗に効くと古い文献に記載された漢方薬、今は更年期障害や不眠症で使われていますが、その漢方薬を使ったところ喘息が治ったとのことでした。頭の汗は全く喘息とは関係ないようですが、人間の身体というのは本当に不思議です。

 漢方は約四千年の歴史があり、その歴史の中で培われた経験に基づいて病気を治します。現在腰痛や膝の水腫、打撲やスポーツによる痛み、足がつるなどの症状に漢方を使って効果を上げています。

 「必ず治ります」とは言えませんが、通常行われる医療では今一つ不満足という方は一度試してみてはいかがでしょうか。
2019年09月14日

No.1 骨延長にかけた夢

 整形外科は運動器と呼ばれる骨や筋肉などの病気やケガを主に治療する診療科です。患者さんの中には生まれつき手足が短かったり、事故などで短くなったりする人がいます。下肢つまり股関節から足の長さが片方だけ短いとうまく歩けませんし、上肢つまり肩から手の長さが短いと髪を洗うなど日常の生活に支障が出ます。そのような患者さんのご不便をなくすために骨延長という方法があります。松田院長と私(後藤)は、三十年近く前に防衛医大の骨延長チームで当時日本で最先端の診療と研究を行っていました。その頃の思い出話を紹介します。

 当時私は卒業5年目の専門研修医で後に松田整形外科の院長となる松田先生は卒業2年目の初期研修医でした。もともと防衛医大は初代教授の下村先生の指導で骨はいかにできるかという研究が盛んに行われていましたが、たまたま米国で骨の構成成分であるコラーゲンの研究で有名であった安井先生が大阪大学から着任されました。そして骨の延長研究をやろうと仲間を募られ、現在小手指で開業されている柑本先生と私、そして松田先生の四人で実験が開始されました。

 骨は非常に固い組織で全く形が変わらないように思われますが実は活発に造りかえられています。子供の骨の形と大人の骨の形を比べればわかりますが、基本的に成長にあわせて外側に新しい骨が造られているとともに内側の骨が削られて、全体として大きな骨となっていきます。上肢や下肢の細長い骨はその両端にある成長軟骨という部分で新しい骨がどんどん造られて長くなります。骨は軟骨の部分で伸びるのです。一方骨が折れると出血して血のかたまりである血腫ができます。外来に来られた患者さんが骨折しているかどうかは腫れているか出血しているかで想像ができます。骨折部位にできた血腫は時間とともに繊維分が増加し、その中に折れた両端の骨の間に橋を架けるように軟骨が造られます。この軟骨を仮の骨の軟骨として仮骨と呼びますが、この仮骨の状態で骨を両方から引っ張ると骨の長さを伸ばすことが出来ます。これを仮骨延長法といい、当時ロシアのイリザロフ博士が行っていたのでイリザロフ法と呼ばれています。安井先生はイタリアのバスティアーニ教授の開発した脚延長器を使ってウサギを用いた実験を計画しました。イリザロフ博士は細いピンで骨を串刺しにして両側から引っ張るやり方ですが、それでは骨の周りに丸いリングを取り付けねばなりません。バスティアーニ教授はスクリューのついた太いピンで骨を片側から固定して引っ張る方法なのでピンを固定する添え木のような金属(切り傷を創と呼びますが、その創の外で固定するので創外固定器と呼ばれます)があればよいので動物実験がより簡単に行えます。当時新築された防衛医大の動物実験棟でウサギに麻酔をかけて下腿骨に創外固定器を取り付けて骨を横に切り手術創を縫ってしばらく放置して軟骨ができるのを待ち、骨折部が固まる前に毎日少しずつ上下のピンの間を広げていって骨を長くしました。その様子をレントゲンで観察し、病理組織を作成して観察しました。安全にかなり長くすることができ実際に骨の短い人にも同様の手術で骨を伸ばせることを確認し、多くの患者さんの手足を伸ばすことに成功しました。

 現在は機械の進歩により骨の骨髄に太い管を置いて延長する髄内釘が主流になっていますが、この方法の開発初期において多くの研究成果を発表し、その論文は今でも引用されています。

 当時は昼には通常の診療を行い、夜に麻酔の器具や手術器具を準備して動物実験棟に集まり、夜遅くまで「今日は何匹手術しようか」と言いながら実験を続けました。「いつでも同じように手術しなければ正しい結果は得られない。そのために術者の立つ姿勢も、機械の持ち方も同じでなければならない。」など常に厳しい指導を受けながらウサギを手術しましたが、後になってみるとそのような経験は臨床医になって実際に患者さんを手術する際においても非常に貴重なものであると考えます。安井先生が大阪に帰られた後防衛医大での骨延長が行われなくなったのは残念ですが、医療技術の進歩により治らない病気もいつかは治るようになる、そのために若い医師は研究を怠ってはならないと考えます。
2019年09月05日