No.12 養生の道は中庸の道

 先だって日本東洋医学会が大阪で開催され勉強してきました。医学は日進月歩で常に新しい知見が増えています。「医師は一生勉強だ」と恩師の先生が力説されていましたが、今までの治療に満足せず少しでも患者さんが良くなるよう勉強し続けたいと決意を新たにしました。

 最近は医学の進歩のおかげで治らない病気も治るようになったといっても、なおそれでも健康の基本は養生であると思います。現代は自然から離れすぎ過食と運動不足、寝不足の不健康な生活を送っている人が多く、そのために心と体を病んでいる人がたくさんいます。最近我々の漢方グループではお薬を出す前に病気の原因となった不健康な生活を改めることをまずやってもらい、治ればその生活を維持する、症状が残ればこのでお薬を出すという方針で治療しています。生活を改めるだけで病気が治る患者さんも結構おられます。医療費がどんどん増えて国の経済が傾くと心配されていますが、患者さん本人が努力しさえすればお金もかからす薬の副作用の心配もないとても良い方法だと考えています。やり方を教えて寄り添って患者さんを健康にするのがこれからの医師の仕事だと考えます。

 今の日本の一番の問題は糖分、特に果糖の取りすぎです。果物も甘すぎてよろしくありません。前にも書きましたが以前私はカリントウ一袋ペロリと食べる甘党でしたが、患者さんに勧めるのに自分がこれではいかんと一切甘い物を止めたところ毎年人間ドックで指摘されていた悪玉コレステロール値が148から正常の118に下がりました。

これまでは余分な糖分が脂肪に変わっていてメタボ状態だったのです!

 体重も落ちて癌じゃないかと心配するくらい痩せました。単純に食べる量を減らしてダイエットするのはかえって死亡率が高まるので危険です。そこでご飯はしっかり食べて、研究の結果カロリーの少なくなった分を脂肪(MCTオイル)で補っています。

 高脂血症でお薬を飲んでいる内科の先生にも「甘いもの止めると薬飲まんでいいですよ。」と勧めたのですが「いや私は甘いものは好きなので。薬飲んで病気にならなきゃいいじゃないですか。」と言われました。

 それでは高血圧には降圧剤、高血糖には糖尿病の薬、腎臓が悪くなれば腎臓のとどんどん飲む薬が増えてしまいます。生活習慣を改めて健康になるのが正しい道であるのは明らかなのに。つらい道を選ばずに楽な道を選ぶのは人間の本能かな。ついでに乳製品も控えた方がよい。東洋医学会でも発表がありましたが、もともとチーズなどの乳製品は乾燥地帯で保存食として作られたもので身体に入ると湿を増やして内蔵を冷やします。湿気の多い日本には向かないようです。糖分と同じく少し取るなら問題ありませんが、たくさん取りすぎてはいけません。いくら身体に良いものでも取りすぎると毒になります。

過ぎたるは及ばざるが如し。

 最近はおばあちゃんから教わらないのでしょうか。医学が発達して薬を飲めば養生しなくても病気を防げる時代だとは思いますが、好き放題に生きるのではいつかしっぺ返しがくる、端っこによらずに真ん中を歩けば溝に落ちないという中庸の道が先人の知恵だと思います。
2019年09月19日