No.13 針治療はじめます

 新しい元号は「令和」でした。元号が新しくなると、新たな気持ちで頑張ろうという気になります。4月から水曜も午後外来を担当することとなりました。これからは古人の知恵を生かすべく、漢方養生外来として診療の幅を広げていきます。その中で新たに針治療を始めます。針治療は鍼灸師さんが行うことが普通ですが、医師も行うことができます。

 患者さんを診ていると「ああ、この人の痛みには針が効くのだがなぁ」と思うことがよくあります。「痛みを何とかしてください。」という患者さんに「針を試してみてはいかがでしょうか。」「どこに行けばいいのですか?」「ん・・・」という会話を何度か繰り返しました。いっそ自分でやろうと今回針治療を始めることにしました。私の漢方の師匠は針を用いて非常に優れた効果を上げています。私もその指導を受けて整形外科の痛みについては治療を任され、確かに良くなることを経験しました。

 先日の患者さんは肩こりがひどく耳鳴りもするという人でしたが、視力が落ちて疲れるとも訴えており目の問題が肩こりの原因になっているのだろうと考えていました。針治療をしてしばらくすると「先生、何か目が見えるようになってきました。耳鳴りもいいようです。」 とのこと。肩こりと視力障害、耳鳴りが悪循環となって患者さんを苦しめていたのだなぁと思った次第です。針がなぜ効くのか科学的に説明は難しいのですが、肩こりや腰痛などの痛みには本当に良く効きます。東洋医学による説明では気の流れが停滞している場所を刺激して気の流れをよくすると痛みがとれると説明されます。しかし気の流れを悪くした原因が残っているとまた痛みがでてきます。そこで痛みの原因を根本的に取り去るには原因(生活習慣、ストレスなど)を改める養生が必要になります。今の病気の原因の多くは患者さんの養生不足によるところが大きく、薬を出すより養生するだけで病気が治る方がたくさんいるのではないかと考えています。養生は患者さん本人の努力によるので、そのお手伝いをして病気を治すことができれば大きな喜びです。

 針というと「痛い」とか「怖い」と思う方も多いと思います。そういう針もありますが、私がやるのは薄いシール型のものと細い針です。浅く刺すので、ほとんど危険はありません。経験では少し痛いと感じる方が症状はよくなるようです。シール型の針は、置き針として貼り付けたまま3~4日間自然にはがれるまで置いておきます。とれればゴミとして捨ててください。細い針も15分以内で終わります。私の経験では、筋に緊張のある場合は針治療がとてもよく効きます。

 私自身「しまった。寝違えた」と思ったら、シール状の置き針を痛みのある頚のところに貼りつけて、時々自分でツボを押すように刺激しています。軽いものであればそれで十分で久しくロキソニンのお世話になることはありません。

 「令和」の時代に向けて、患者さんに更に喜んで頂ける医療を行えるよう努力を続けていきます。
2019年09月20日